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MSR FLING

日曜は山へ行かず、子供のスケート教室につき合い、私も30年数余年ぶりにスケート靴を履いた。
小学生の頃は冬の体育の授業は田んぼでスケートだったから、多少は足に覚えはある、あった筈...のだが、ぶざまに転んだ庇い手で手首を捻挫し、キーボードを打つのが辛い。ので、今日は写真だけ。
だいいち、貸し靴がフィギュアとホッケーだけというのは納得できない。ホッケーは湾曲した歯だから前後に転ぶ。フィギュアはホッケーよりは歯が平らだが、先端のギザギザを氷りに引っかけ、前に転ぶ。昔からその二種は嫌いな靴だ。男子ならスピード靴だろうと思うが、狭い神宮のリンクはそもそもホッケー場だから望むのが間違いか。せめて、ハーフスピードの靴だったら、ギラギラと油の様に光る氷のスピードスケートリンクだったら..ぼやいても仕方ない。
子供は言わぬが、今後はお父さんの子供の頃はな..で始まる話しに疑問符が付くことになった。かな?

今日は名古屋方面からSierraを共に野宿し、歩いた友人が出張ついでに阿佐ヶ谷まで足を延ばしてくれるという。Yosemite谷で別れてぶりの再会だ。だからと言うわけではないが、庭にMSRのでかいテントを張った。気が変わって庭で寝たいというかもしれない。
MSRのFLINGというこのテント、フープが前後に2つ入ったカマボコ型の変形で、縦に一本背骨を通して張力前後への張力を与え、屋根を吊っている。背骨が無くても張れるのだが、背骨無しではGolite Den2と大して変わらないから面白くない。
スタッフザックも巨大だが、張った姿は堂々として、間口1.7m、奥行き2.0m、奥の幅1.2mもある。高いところで1.0m。巨大だ。ドアから奥へパパ、ママ、子供二人くらいの一家が寝られるかも!
素材は30DのSiLNylon1500mm対水圧、床は70Dポリウレタン5000mm対水圧。
重量は膜体が1.22kg、ポール三本で約0.59kgで結構軽い。

綱を思い切り緊張させて張った感じは結構堅い。カマボコフープの10時と2時の位置からは更に綱が取れるので、それも張れば主索を補い、風の中でも保つだろう。
結露は...まだ内部で暮らしていないけど、結構あるんだろうな。だが、換気に気を配った作りなので、入り口上を開けて、テント内で煮炊きしなければ大丈夫と思うが。結露の半分はテント内での生活様式によると思う。

テント繋がりの余談だが、先週は雪浅い北八つでNemo Hypno Exを張ったが、防水スタッフザックに入れたものを帰ってから計ったのだが、
Nemo 乾燥前 2105g
Nemo 乾燥後 1861g
だった。差は244gで、これが膜体に染みこんだ水分。
透湿素材では最初は透湿していた。ColemanのPowerMaxストーブのテストも兼ねてテント内で煮炊きし、水蒸気を盛大に上げても、側面に張ったロゴシールの裏側だけが軽く結露で、その他はサラサラだったので透湿していることが分かった。朝になると呼気に依ると思われる霜が付いて、それは払って撤収したから、膜に染みこんだ水分の重量が244gということになる。
透湿性とは言え、外気が-10度近かったが、テント隅の膜内の床は体に近いせいもあってか、以外にも最低で-4度くらいだった。相対湿度は最大で80%くらいが記録されていた。ということは、膜の極近傍で6度の温度勾配があるわけで室内の湿度が高ければ確実に結露し、かつ即座に凍結する。結露が微細孔を埋めて凍り機能を果たさなくなるのは明らかで、かえって、振り払えば氷が落ちる非透湿の方が良いかもしれないと思った。

ちなみにColemanのPowerMaxはでかくて重くて無骨者だが、プロパンを含んだ燃料の液出し仕様のこのストーブは寒冷でもよく働いた。寒冷でもテント内で不安なく煮炊きができる。

まだ、実戦に投入していないのだが、FLINGの写真を掲載する。
購入検討中の興味のある人には何か参考になるかもしれない。

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奥のメッシュはとじることができない
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サイドも重なった生地がメッシュで連結されている。横の綱を張るとメッシュが顕わになり、通気性が上がる。
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冬に暖かいテントではないと思う。
が、寝袋中綿の湿気を帯びた空気の露点以上に室温を保持できなければまずは寝袋が濡れるのだから、人間向きに半端に温かくしても仕方ないと思っている。

結露の起こる可能性があるのは二か所、寝袋内の体温に近い温度が寝袋表面で今回の場合は-4度だから10数センチの断熱材の中で40度の温度差がある。おそらく、寝袋表面付近で結露の条件を満たすだろう。次はテントの内外で、今回は6度の差があった。わずか1mmに満たない膜断面内での急激な温度勾配である。中か外かいずれかで結露し凍結するだろう。室温を寝袋内空気の露点以上に保持できれば(湿らなければ低温でもよいのでVapor barrierも有効)、寝袋表面での結露は起こらず、すべてテント壁に水分をなすりつけることができる。振り落とせばおしまいというのは楽だ。寝袋表面はもしかしたら温かいのかもしれないが、であれば近傍で急に冷やされるから結露が発生し結局は水分が寝袋表面繊維に付着するだろう。
寝袋表面と近傍の温度湿度を精密に測ってみたいな。
とはいえ、測ったところで暖房装置は持って行けないし、VB辛そうだし。極力テント内で煮炊きなどしない、水蒸気は通風で持って行ってもらう。といったところか。


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# by ulgoods | 2007-12-10 09:35 | 宿泊系

Gearlist for Okutama Nov. 24-25

11月末にタワ尾根一泊、雲取-鴨沢を歩いた時のザックの中味、備忘録。

行く前は体重計で測ったらザック、食料で(水含まず)で約5.6kg。試験的に持ったものあり、寒さ対策が過剰で重くなってしまった...でも、1月くらいまでならこの装備で暖かく眠れそうだ。

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ザックの中味を晒します。
軽量化のご意見など下さるとありがたいです。

Gearlist for Okutama Nov. 24-25

Baseweight 5178g

PACKING SYSTEM 242g
Backpack 176 Z-Packs Z1(42.6 liters), Sholder Pouch, Belt Pouche
Liner 66 Sea to summit 35L

SLEEPING & SHELTER SYSTEM 1547g
Tarp 99 MLD Monk Spectralite.60 Tarp, Guyline
Stakes 24 Titanium goat Carbon Stake x 4
Bivy sack 176 Titanium goat Ptarmigan Bivy
Sleeping pad 579 Pacific-Outdoor Equipment Max Thermo
Sleeping bag 590 Nunatak Arc Alpinist EPIC, Jacks R Better compression sack
Pillow 65 Montbell UL Comfort System Pillow
Groundcloth 41 Gossamer gear Polycryo Ground Cloth

COOKING SYSTEM 267g
water boiler Kit 190 Esbit Wing Stove, Titanium Foil Windscreen, Titanium Cup, Lid, Stretchable-Gunte-Gloves, Esbit x 2, Gas Lighter, Aloksak
Utensil 11 Light my Fire
Canteen 38 Platypus
Cozy 28 AGG ENERTIA Warp

EXSTRA CLOTHES 1515g
Rain shell 251 Patagonia Spector Jkt
Rain Chaps 45 Mnt. Fuji Designs
Rain mitts 34 MLD eVent
Under wear 100g Finetracks
Socks 68
Socks 111 Seal Skinz
Down Jkt 432 Nunatak Skaha Plus EPIC, Staff sack
Insulated pants 328 Montbell Thermawrap pants
Insulated socks 146 Integral Designs Hot Socks


MISCELLANEOUS GEAR 1532g
Medic Kits etc. 273 First Aid, Repaire, Supplements, Toilet Kits
towel 16 MSR
Mobile phone 120
Light 82 Petzl Tikka XP, Litium battery AAA x 2
Camera 167 Caplio
GPS 168 Vista HCx, Clip
Radio 157 Panasonic, Litium battery AA x 2
Bear Bell 48 with Silencer
Camp fire 145 BushBuddy Ultra
Meteorologic 56 Brunton ADC pro
Meteorologic 33 Coghlan's
Flask 116 Nalgen
Knife 21
Kuksa 178

Worn
Titanium Goat Adjustable Goat Poles
Montrail HardRock
Smartwool Adrenaline Socks
Uniqlo CW-X もどき
Phoenix 七分丈 Pants
TNF Apex Softshell Jkt
Patagonia Capline 2 Crew
T-Shirts, Pants
Buff Visor Cap
...

Foods
アルファ米100g
おかか
Freeze dried Miso Soupe x 1
Kuskus80g
Trader Joe's raspberry bar x 1
Pemmican bar x 1
Clif Bar x 1
Java Juice x 1
Trader Joe's Trail Mix
Liqor 100cc

急いでパッキングしなければ、あと500gは減らせた気がする。
Nunatak Arc Alpinistは単体では私には-7度は辛い気がする。寝相を考えよう。背中が出ないようにしなければ...
IDのHot Socksは裏が丈夫なので、そこいら中を歩き回っても大丈夫だった。が、不要だったな。
Ptarmigan Bivyは効果があったかは不明。
montbell空気枕に穴が空いた!シロの仕業か?
雨が降りようにない天気だったが、雨を想定して絶対濡らさない構成だったので重くなった。


気温と湿度の測定結果
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夜はBivy脇で-1.6度くらいになった。この日はとても乾いており、朝、落ち葉の上のGround Clothの下に水滴が付いていなかった!
冷涼、乾燥で快適であった。

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バックパッキングとは何を持っていかないかという策略のことである...メイベル男爵
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投稿時の編集で中綿モノ衣類が何点か欠落してましたので、追加しました。
# by ulgoods | 2007-12-06 02:11 | 山行

私とシロとチャと

続き...
一部、犬好きな人には辛い記述があるが、私が突如遭遇した状況に鑑み、了として頂きたい。

Bivyのジッパーを開ける刹那、走馬燈のように考えたことは、
熊か?でも熊鈴を着けた熊はネギを背負った鴨より不可解だ...だからこれは熊ではないだろう。
じゃぁ猪?猪突猛進で来られたら厄介だが...
など考えながらジッパーを開け、点けたライトに目が順応する間も無く、コカコーラの空き瓶色のビー玉を日に透かして見たような薄緑の光の玉が目の前に浮んでいたわけだ。正直なところ驚いている間もなかった。が、Petzl Tikka XPをハイビームに切り替えて遠くからの輝きを確認した頃には近くにある二つの反射の主が分かった。
こりゃ犬だ。
犬が一頭、1m以内にいる。もう一頭は4mくらいか。なんだ、犬か...と思ったが、近くいる一頭が傍若無人にグイグイと顔を近づけてきた。ん?犬、あ”ヤバイ!野犬は猪よりも質が悪いかもしれない。二頭が連携して狩を始めたら厄介だぞと、私の中でアラートが鳴った。こっちは体をBivyに埋め込んで片肘着いて上半身を半分起こしている不安定な状態だ。寝床から体を抜く間もなく犬はどんどん近づいてくる。をいをい、と思ったがヤツはこっちの状態にはお構いなしだ。もはや30cm、私の規定する生物どうしの警戒距離を越えいる。ヤツがその気になったら、鼻を囓るでも頬を舐めるでも一動作で出来る距離にある。もーだめだ。選択も猶予もならない。
テェェイ!空いている手でとっさに犬の頭に拳固を呉れてやった。片肘で体勢が悪くて力が入らないから大した打撃は与えられない。チェ!ヤツは頭に拳固も驚きもせずに、しかし、ちょっとだけ悲しい、同時に少し媚びた目をして首をすくめ腰を落とした。おや、吠えないし反撃もない。見ると妙な首輪をしているではないか..鈴はそれにあるらしい。ふむ..どれ、と離れるでもなくそこに居直った犬の首輪を掴んでグイと引き寄せた。

それは白い犬だった。サイズは立てば私の腰下くらいか、中型犬というのか。逆手に握ってたぐり寄せた首輪を見ると文字が書いてある。住所らしい。メガネを外していたので細かくは読めないが、奥多摩町XXXX小林とあった。飼い主から逃げてきたのか?が、首輪は二本あり、奥の首輪からワイヤーが20cmくらい飛び出ている。ん?罠から逃げたか?が、よく見るとワイヤーの根元には黄色いテープを巻いた小さな箱がある。J-Waveの鳴っているFMラジオに一部ワイヤーが掛かったときにザザッとラジオに雑音が入った。どうやら電池が生きてる電波発信機を付けているらしい。なんだこいつら?飼い犬か?
反撃しないので手を離して放免してやったが、逃げると思いきや、なお寄ってくる。バカ、やめろよ、来るな!と、Bivy脇に置いてあったTiGのCFポールで犬の背を打ち据えた。低く屋根を張っていたので大きく振り上げられない。二度三度叩いたが、やっぱりちょっとだけ悲しい目をして、少し腰を低くするだけで逃げてくれない。とにかくこっちが体勢を整えられる距離の外に出て欲しい。ポールの先端ゴムを犬の腰に当てて、力任せに押したが2,3歩よろめいただけで、やはり動かない...
少し間合いが出来たので上体を起こして辺りを見ると、いつの間にか、後から来た一頭が先の一頭と反対側、1mもない距離に丸く寝そべっているではないか。をっと、いつのまにか背後を取られていたとは。こやつら、味なことをする。目を戻すと先の一頭も丸く寝そべりこっちを見ている。私は二頭に挟まれた格好だ。

ふむ。とりあえず事態は理解できてきた。
第一、こいつらに敵意はなさそうだ。
第二、こやつら飼い犬で、普段から手荒い扱いには慣れてる感じ。
あの悲しげな媚びた目は普段から頭を殴られた時に上目遣いで飼い主に見せる表情なんだろう...
しかし、なぜかこんな山の中に鈴と無線機を付けて?首輪はぴたりとしていて少し窮屈そうだ。どうせならブランデーの樽でもお願いしたい。
発信器は小さく、これではGPSは付いていなさそうだった。アマチュア無線のFoxハンティングの要領で3素子くらいの八木アンテナを使って探す用と見たが、犬の行動範囲の研究用か?
ま、ともあれ再び数秒の静寂が訪れた。とりあえずは平和だ。

改めてメガネを着けて二頭を見た。最初の一頭は白色なのでシロと呼ぶ。後のはチャだ。やれやれと思った時、シロが立ち上がり、クンクンと鼻で落ち葉をかき分けながら私の方に寄ってきた。シロが動けばチャも立ち上がり、しきりと焚き火の辺り、飯を食った辺りの落ち葉を鼻で掘っている。枯れ葉を掘りながら何か期待するげな目をこちらに向けるシロ。ああそうか、こいつら腹が減っているんだ...枕元には食いかけのトレールミックスが置いてあった。慌てて口を折って枕の下に押し込むが、シロは目敏い。枕の辺りに鼻を突っ込んでくる。またシロの頭を掴んで押し戻す。そんなことを何度か繰り返した。

シロとチャは何を食ってこんな山の中にいるんだろう。アバラが浮き出て痩せている。脂肪は付いていない分、腰から足への筋肉が浮き出て見える。精悍とはチョト違う。やつれだ。なんやらナウシカに出てくる半分溶けかかった巨神兵というか、もののけ姫の冒頭に出てくる狂った巨大猪の溶けた筋肉の印象だった。
チャは私との生物的な限界距離を保ち、奴はこっちにはあまり関心をもせずに辺りをクンカクンカと嗅ぎ廻っているのに対し、シロときたら私の髭に飯の臭いでも付いているか?私と食い物が興味の対象のようだった。二頭は目つきが違う。チャは目の中にしっかりした光を持っているのが分かるが、シロのそれは半分溶けかかって虚ろに思えた。空腹と寂しさで半分狂いかけているんだろうか。
シロを押し戻しながら困ったな..と思った時、シロの視線がキッっと斜め向こうを向いたその時、シロが猛然とダッシュして走って行った。それにつられてチャも飛び上がって走る。乾いた縦走路を軽いが逞しい躍動する足音が遠ざかって行った。
あれは何だったんだ?
再び私一人になって考えた。ああ、あいつら猟犬なのかもしれないな。どこかで飼い主がキャンプを張っているのを退屈で逃げ出してきたのか?私は遊ばれていたわけだ...ヤレヤレと思ったが、危害は去った気がしたので再び寝ることにした。
遠くでウォォォーと犬の遠吠えが聞こえた。シロだな...バカめ!

トレールミックスを防水袋に移し、安心して体を横たえて、さっき起きた事を考えているうちに、うつらうつらしてきた。さて寝るかなと思ったら、だ、またダダダと駈ける音がしたと思ったら、だ、...シロが再び近くでガサガサやりはじめた。さっきの拳固を忘れ、さっき叱られた時より距離を詰めて寄ってくる。きっとシロは物覚えが悪いのだ。ガフガフと言いながら、まだ諦めもせずに私の近くを漁っている。枕元に置いたラジヲも踏みつける。お構いなしの傍若無人ぶりに呆れていると、キッっとシロの目が光った。
あ、ヤバイと私も手を伸ばす。さっき外してラジヲの横に置いたメガネめがけてシロが噛みつくのと私の手が伸びるのが同時だった。メガネの半分をシロが噛み、半分を私が握る。ヲイヲイ、やめろよ、壊れるよぉ、力を抜けよ...聞き分けがない犬にウラァ!と大声を出してみても、そんなの慣れっこなシロは動じない。壊れるよぉ..とっさに私は片肘着いていた手でシロの顎を思いっきり握り、ヤツの口をこじ開けにかかった。シロも本気じゃなかったんだろう、数秒も思いっきり握力を掛けたら少しだけ口を弱めてくれた。その隙にメガネを引っこ抜き、唾液でベロベロだが、そのままBivyの中に放り込む。全く油断も隙もない奴だ。一方、チャはと言うと、そんなの横目で見ながら、ちゃっかり私の横で丸くなっている。手を離されたシロはまだ諦めずにクンカクンカと鼻を落ち葉に突っ込んでグルグルやっているが、やがてこれも少し離れた所に丸まって小さくなった。
ん?こいつらヒト恋しいのかい?

夕食で使ったビニール袋は3重に密閉してあったはずだが、食いかけのトレールミックスが出ていたのは失敗だった。野生に対する食料の管理レベルが統一されていなかったのは私のミスだ。本来なら、寝る場所のずっと手前で夕飯を済ませ、なお歩き、食った臭いから離れたところにキャンプを張らなければならない。焚き火とラジオで野生動物に私がここにいることを示していたつもりだが、全ての警戒レベルが整合し徹底していなかったことを反省した。
犬に気付かれたとなると熊なら尚更、もしかしたら森中の噂になっていたのかもしれないな。
以後、奥多摩では食い物はAloksakを二重にして寝床から離して木にぶら下げることにする。そうだ、URSACKを買わないと...

犬共の写真を撮ろうと思ったがカメラは食料と同じ防水袋に入れてある。開けるとシロが煩そうなのでやめた。
幸いzzz_bearさんによって1週間前、同じ尾根のだいぶ下で撮られた写真があるので、許可を得てリンクを張らせてもらう。

これはチャだな。一週間以上前から居るのか?半ば野生の飼い犬はヒトや火を恐れる感覚がないようだ。かえってヒトの近くに寝ることで安心するのだろう。野に放たれてヒト恋しく遊んで欲しかったか...少しの哀れを感じたが、基本的には放し飼いな訳で全く迷惑だぜ、奥多摩・小林...犬が寂しがってるよ!
軍曹からもらったコメントによると、猟期前に猟犬は山に放たれるとのこと。猟犬も飢えて野生を補充するのだろうか。なら私と同じか...

さて、私の体温を感じて近くで丸まる2頭の猟犬、時々頭をもたげたり、遠吠えしたりもする。シロの遊び癖には辟易だが、暇で甘えてるようだから大目に見てやる。どうやら主従関係は成立しているようなので、二頭の番犬を得て、これはこれで熊除けになるからラジオのスイッチを切った。
寝る!こんなアホ犬の遊びに付き合っている暇はない。
その後もシロとチャは何度か遠征しては遠吠えし、私の所に帰ってきてはガサガサと安眠の邪魔を楽しんだ後で寝ていたようだ。何と、チャはイビキも掻く。
いつしか私の意識も飛んで、ん!と、眩しさに目を開けると、東の尾根が赤く染まって太陽が現れていた。その時にはもうそこにはシロもチャも居らず、丸まって寝た落ち葉の痕跡すら見あたらない。奴らも仕事に行ったかな?

昨日のメガネ、Bivyの中に放り込んだままだったのを引っ張り出して日にかざして見てみた。ベッタリの唾液が乾燥している。こりゃ萎える...拭いていて、おやと思い、付いている繊維を擦ってみたが取れないではないか。何度拭いても。それは繊維ではなく、稲妻形に刻まれた何本かの線だった。やられた。シロよ、レンズに歯を立てやがったな。傷のレンズの眼鏡を掛けてみたが、傷が目玉の前でぼんやり見える。ああ、これは気になる頭痛になる。レンズを換えなくっちゃ、これじゃ仕事で使えない..
朝日を見て、シロとチャの居ないのを確認したらまた眠くなった。あいつらのせいで寝不足だ。
昨夜は汗で濡れたまま寝たのだが、最初は冷えたが、目覚めた時にはすっかり乾き、フカフカのポカポカの心地よい寝床になっていた。ああああ、キモチいい...もーどーでもいい。と、次ぎに起きたら8時過ぎになっていた。既に日は高い。仕方ないから温い寝床を出て歩く準備をした。
獣が嫌うかと思った焚き火跡だが飼い犬には通用しなかったようで、ストーブはチャに蹴られたらしく五徳が遠くに飛んでいた。トホホ...

さて飯を食うのは面倒だから省略。あたたかく寝たのだから昨夜の炭水化物の残りが体の中に残っているだろう。飯は歩きながら行動食で済ますことにして、少し湯を沸かしてKuksaにコーヒーを作った。以前、コメントで紹介してもらった本「遊牧・トナカイ遊牧民サーメの生活」にはよくKuksaが登場する。彼らは厳冬の北欧の自然の中でKuksaを携え、ウオッカを入れたコーヒーを大量に飲み、解体したトナカイの脊髄を煮込んだヴイオンを鍋からKuksaですくって飲む。なるほどそんな形に出来ている。

撤収に掛かったが、この夜の空気は全く乾燥しており、落ち葉に敷いたシートには水滴一つ付いていなかった。冷涼、乾燥、落ち葉..あのアホ犬共さえ来なければ完璧なキャンプだったのに。寝床を撤収し、完全燃焼の白い灰を散らし、除けた落ち葉を戻して復元した。
珈琲を飲み乾し出立し歩いていると、遠くで犬の遠吠えがした。おや、シロか。仕事かえ?


長くなった。
その後、長沢背稜を歩き、イモノキドッケで三峯からの道に出会い、雲取山荘から頂上を巻いて鴨沢へ降りた。
快晴の連休最終日だが人は少なく山の紅葉は美しかった。
翌日、電車の中で女性二人の会話が耳に入ってきた..高尾のことらしい。「もー人人人でぇ」「下のおそば屋さんでも行列よぉー」「ヘー」ということだったらしい。季節的に、さもあらん。

装備と計った気候については次の機会にUPする。



月曜に眼鏡屋へ行った。レンズ交換で1.3万円、
奥多摩の小林さん、半分で良いから払ってくれるかい?
「登山・キャンプ」へ+1Point..Ckick!

# by ulgoods | 2007-11-28 13:01 | 山行

暗闇の訪問者

続き..

ネコまんま飯の後に、ささやかな贅沢としてラズベリーのドライフルーツーを囓ってデザートとした。乾燥させたバーなのだが、ラズベリーの濃縮した味が旨い。
さて、全部食ったら飯の袋は口を縛って臭いが出ないようにし、さらにゴミは全部をジップロクに入れて臭いを封じ、その袋を防水袋に入れた。念には念を入れて飯の臭いは三重に気密なわけで、これなら嗅覚が鋭い野生の動物でも気が付くまいて。

とっぷり暮れてもまだ6時過ぎである。飯も食ったし、じゃぁ寝ろ、と言われてもそれは難しい感じだ。今日は無風だ。しかも満月の筈。へへへ、無風の夜に使える日没後の小さな楽しみを持ってきてある。
風がなければBushbuddy Ultra Wood Stoveを使って小さな焚き火をすることにしていた。焚き火用の缶ストーブがあるならそれで湯沸かしもすれば良いのだが、焚き火はあくまで楽しみと獣除けのつもりで、それに湯沸かしを依存するつもりはない。薪など自然物に依存するものが増えれば、逆に宿泊地が制約されるのだ。しかもこんにちの認識として地面に薪を置いた直火は、地面と燃え跡を見た人の心にダメージを与えるので既存の炉以外では許されないことになっている。このストーブは三重底になっているので燃えた状態でも底を掴むことができる。地面には優しい。
獣除けの効果であるが、あるかどうかは分からない。が、獣は火を恐れるというので、無いよりは良いだろう。また、火を恐れるなら燃えかすの臭いもまた獣除けになるかと期待した。

重さ僅か146g、極薄ステンレス製の精巧な二重壁ストーブを取り出して組み立て、枯れ葉を足で薙いで地面を露出させ、できたばかりの湿った黒土の上にストーブを置く。多少火が跳ねても延焼はするまい。そこいらに落ちている小枝を折って入れ、湯沸かしで余った燃えさしの固形燃料に再点火して着火材とした。
このストーブは燃焼室の直径が僅か95mmと小さいので、大きな薪は入らないが、盛大なキャンプファイヤーをするつもりはないので充分だ。私の焚き火はちょろちょろ燃えればそれでよい。最初は中空の萱のような枝や剥ける系の木の皮などを火口として入れておいたのですぐに炎が興った。薪になる木の枝は着火系の火口の上に並べて置き、下からの火で乾燥させながら燃焼ガスの噴出を待つ。中空茎の植物は蒸されると燃焼ガスをストローの先から噴出し、ロウソクのように先端から炎が上がる。面白いほど良く燃える。小枝系も蒸されて乾燥して出た可燃ガスがストーブの空気取り入れ口や二次燃焼口辺りで吸気された空気と混合し、美しい曲線の炎の流れとなって輝く。

(写真は昔撮ったイメージです...)
見とれながらも徐々に太い小枝を乾かしながら炎をつないでいく。木の木地が燃えるのではなく、木から出た可燃ガスが燃えることがよく分かる。酸素が足りないとガスは煙として目を攻撃するが、上手く空気が入るようにしてやれば煙は燃えるガスだったことに気が付くのだ。このストーブは小さくちょろちょと燃やしているのだが、焚き火に必要なテクニックを総動員しないといけない。小さくて薪と熱の容量がない分、しかも太めの枝は湿っていたから、大きな炎に任せっきりの楽はできない。が、それはそれ、突いて隙間を作って空気を入れたり、消えかけたら息で吹いて熾したり、遠火で次の薪を乾かしたりと段取りしながら、それなりに楽しめる。安全に炎を扱って燃えるを観察するのは子供らに体験させても良いかなと思う。

月も東の尾根から顔を出した。何と明るい満月だ!
ナルゲンのフラスコに入れてきた少しのモルトウイスキーを口に含みながら焚き火の横の落ち葉に寝そべり、小さな炎を小枝で突きながら梢を通して月を眺めて時間を過ごした。日没から経過し、次第に空気は冷えてきたが、充分着ているので寒くない。キリッとした空気は爽快ですらある。残念ながら焚き火の炎は暖が取れるほど大きくはない。時々かじかんだ手を炙るくらいだ。
時折、鹿がキューゥと鋭く鳴く。声と物音からすれば結構近いと思うが、野生の鹿は節操があるので近づいてこない。先日、阿佐ヶ谷のワイン屋で偶然会った都レンジャーによると、まだ熊も居るよ!とのことだったので、今夜は夜通しスピーカー付きのラジオを鳴らすつもりだ。

2時間近く焚き火で遊んで、少しの酒を飲み、月を愛でながらラジオで過ごしたが、いい加減飽きたので寝ることにした。この時には月が高く上がり、それは新聞が読めるほど明るい。闇に慣れた目には直視が眩しいくらいだ。月が高く上がり、いったんは闇に沈んだ木々の形が銀色のフィルターで漉された光で細部を現した。これならライトなしでも歩けるだろう。
乾いた落ち葉の上に作ってあった寝床にもぐり込む。Cuben Fiberの膜を通しても月が眩しいのでBivyのフードを閉めるが、10cmもジッパーを開けておけば息ができた。まんじりとラジオを聞きながら眠気が来るまで時間をやり過ごす。J-Waveはジャズ番組が続いてやっているのでご機嫌だ。

と、その時、遠くで聞こえた。シャンシャン..と小さな音だ。空耳ではあるまい。あぁぁ、何か来たよぉ。地獄の亡者か、はたまた、まだ歩いている人がいるのか?と驚きつつ、何かとの遭遇に心の準備をし、聞き耳を立てた。普段は使っていない野生の感覚を取り戻さなければ...
こんな月夜だ。まだ歩いている人がいるのかもしれない。人なら適当に無視してくれるか、声を掛けてくれるだろう。面倒だから寝ていることにした。亡者が来るなら真っ暗闇の夜の筈。
シャンシャン、シャンシャン...しかしそれは足音もせずに鈴の音だけが明瞭に近づき、予想に反して前触れなく私の回りを廻りだした。ガサガサと枯れ葉のこする音、だが足音はない..やばい、こりゃ人間じゃない!別の物だ...早くにBivyから頭を出して警戒すべきだったが、すでに回りを廻られている。後手に回ってしまったのか..
Bivyのままのス巻状態で食われたのでは私も浮かばれない。Bivyから頭を出してライトを点けると、ビカっと明るい反射が二個、射るようにこちらを向いた。

あ、獣だ。
さらにその向こう、新たな光の反射も現れ、計四つ。二匹の獣が私に向いていることを知る。
や、ヤバイのかも..


参加中...あ、歯医者に行かないと..
ストーブの件で長くなりました...メガネは次回囓られます。Clickでも!

# by ulgoods | 2007-11-27 11:38 | 山行

犬にメガネを囓られた

夜中に山で犬にメガネを囓られた。
レンズが傷だらけである...

三連休の後二日は初冬を迎えた奥多摩の件の巨木に会いに行った。
巨木の尾根は今年に入って3回目である。しかし今回は向こうへ行かないと...団栗がのんびりアクビをしているような巨木の畝を出て、尾根を突き抜けて登り、長沢背稜へ出てからは雲取か天目山へ向かいたいと考えていた。
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夏場は暑くて敬遠したが、Mother Tree(勝手に命名)の上の梢にはまだ紅葉が残り、この老巨木が今年も葉を茂らせていたことを知る。

紀行文は省いてメガネの件、
ウトウの頭から向こうはこれまでの穏やかな山容とは一転し、これってザイルが要るかもと思われる峻烈に切れ立った岩場もありで、結構アドレナリンが出た模様。湿った日陰の鞍部には雪も残り、5cmはあろう霜柱が地面を押し上げていた。
出の日はいつも通り道具の組み合わせに悩み、ぐずぐずと出発が遅かったものだから、タワ尾根から長沢縦走路に合う辺りではもう日も暮れかかり、西の尾根でせき止められて作られた日没の影が下から上へせり上がってくる感覚に追い立てられ、数歩登っては高くなった分だけ向こうの尾根に掛かった太陽がかろうじて顔を見せているという、水平に近い影の中での行動となった。やれやれと大きな石を回り込んでふと見ると何か標識がある。行ってみるとGPSがピィと到着を知らせ、踏み跡だけの尾根筋から目的地に出たことことがわかった。
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やはり逞しい踏み跡がある縦走路は何やら人の気配も残っている気がして、こんな夕暮れ時には少しだけだが心強い。ウトウの頭を過ぎてからはまともに寝られるような平らで乾いた場所が見つからないので焦っていたが、ここは少し良さそうだ。縦走路出合から酉谷側へ数メートル縦走路を少し下がった辺りに寝ようによっては水平に近いポジションが取れる場所を見つけ、今夜のねぐらに決めた。
今夜の寝床は
屋根として MLD/MLD Monk Spectralite.60 Tarp、鞘としてTitanium Goat/Ptarmigan Bivy、袋はNunatak/Arc Alpinist Quiltで、断熱敷物はPacific Outdoor Equipment/InsulMat Max-Thermo、シートはgossamer gear/Polycryo Ground Clothとした。汗で冷えた体にはMontbell/UL Thermawrap Pantsを穿き、足にはIntegral Designs/ Hot Socksを、上はNunatak/Skaha Down Sweaterを纏った。全体として-7度(華氏20度)に充分耐えられる勘定だ。
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固形燃料で少しの湯を沸かし、夏のSierraの残り、袋に小分けしてあったアルファ米100gに注いでAntigravity gearの封筒型のCozyに袋を入れて蒸らす。袋と保温材が茶碗の変わりだ。飯を蒸らしている間だにもう一度湯を沸かし、Kuksaにフリーズドライの味噌汁を作った。飯の袋を開いて鰹節を投入、おかずはそれだけ。味噌汁を飲みながら飯を頬張る。ろくに食わずに登ってきたから充分うまい。はふはふと白い息を吐きながら一気に喰らった。ものの数分もかからずカーボンハイドレートのリロードを完了!これは今夜の体温生成の熾き火になるはずだ。
まだ夕方の6時前、向こうの尾根にかすかな残照はあるが、木の根、落ち葉の裏から滲み出た闇が辺りを満たしてとっぷり暗い。人工の明かりのない山の中では、もはや充分に夜である。6時..普段は明かりの中で仕事をし、外に出ても暗くはあるが闇のない街中の生活を思うと不思議ですらある。

おっと、犬の話を書こうと思ったが、駄文を連ねてしまった。
続きは明日...


参加中...メガネ屋に行かないと...とんだ災難だね。Clickでも!

# by ulgoods | 2007-11-26 09:55 | 山行