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Igloo 構築編

Igloo ICE BOX

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いくらなんでも、来期には持ち越せない。春になったのでは使えないモノ...
去年の夏に仕込んだGrand Shelters Inc.のIgloo IceBoxを使ってみた。詳しくはメーカーページと購入時の記事にあるのだが、要はイヌイットの氷の家を造る道具である。彼らはこれを使わないと思うが...

blogでは大々的に建設隊を募集して、錚々たる方々に名乗りを上げて戴いたのだが...いきなり大隊で繰り出すには問題があった。
雪と時間の問題。
あまりサラサラの雪玉も作れないような雪では固めようがない。少し湿った雪が良いのだ。北八つは今期これ以前に2度行ったが、いずれもサラサラの砂のような雪で固めようもなく、スキーには最適なんだが家造りには向いていないことは分かっていた。たぶん日本海側が良いんだろうが、ぽっと行って作れる場所は思い浮かばなかった。というか、最初から北八つでと思っていたし。
それと時間。フィンランドのユーザで、最初は5時間掛かったと書いたものを読んだ。北八つに駅寝せずに当日電車バスで行くとなると、ゴンドラ頂上駅でほぼ11時40分。真冬では日没まで5時間もない。作れそうな場所へ行ってそれから作業したのでは天井をシートで覆った情けないiglooモドキを作るのが精一杯だ。それじゃぁガッカリだ...わたし独りならガッカリでも良いが、大隊をガッカリさせては、隠れる穴を掘らなければいけなくなる。事前にiglooマイスターにならないと。
で、この週末。さすがの北八つの雪も締まってきたと聞いたし、日没も6時くらいまでは作業できるだろう。これ以降だと雪も融け過ぎで手に負えなくなりそうだし。ということで木曜に一念発起、SGT.M氏のピラタスから渋ノ湯への縦走を予定変更してもらい、こちらへお願いした。

新宿7:30、前回同様ホームで待ち合わせだが、既にホームに入っていたSGT.Mに電話をし、自動販売機で隣の席を確保した。便利な世の中だ。
電車の中では二人で英文マニュアルを読み合わせたりしたのだが、どーしても意味不明な箇所があった。けっこう肝な部分なのだが...建設途中で竿の長さをこまめに調整するのだが、手順は分かるがその真意が分からない。意味が分からないと応用が効かない。夏から半年ほど悩んでいる箇所だ。英語達者に聞いてもモノを見ていないから分からぬと言う。もっともだ。と、一抹の不安を残しつつ、茅野着。バスでピラタスへ向かった。
忘れ物をしたので、茅野駅バス停横の食品屋でロウソクを買った。小指ほどの太さの中太のお灯明用。へへへ、こいつを雪の家の中で灯したらきれいだろうな。

ゴンドラ駅で以前お会いした二人組を発見!年末にSGT.Mと来た時にも同じ場所でお会いした。GraniteGear VaporTrailだから覚えている。ここで二回も会うのも何かのご縁。ご挨拶をし、縞枯方面というので翌日に時間があったら見に来てくれるようigloo宣言をしてしまった。
下界は春の機運が満々だったが、さすがにゴンドラを上がると一面の雪である。これが北八つの良いところ。
この日の荷物は巨大だ。Keltyのフレームザックにigloo ICE BOXをくくりつけてきた。来る時はさらにスノーシューもくくりつけていたのだ..後ろから見ると荷物が歩いているような。
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五辻あたりを想定していたので、SGT.Mと先を急いだ。が、一面の雪野原、別に五辻でなくても良いわけだし、どんどん標高が下がっていくので雪的には宜しくない。と思いつつこの辺か?とSGT.Mと選んだのは、ま、結局五辻の辺り。
N36 04 10.3, E138 19 36.1
12時ちょい過ぎだった。

プロジェクトX、これは男達の壮絶な雪との格闘の物語である...

作る場所は傾斜地が宜しい。付録のビデオにあるような傾斜地を選んで、上側の雪の堆積を切り、その雪を下に盛って固めて斜面に平地を造成せねば。
この日の雪は表面から5cmは水が滴りそうなザラメ状。その下30cmほどは程良く湿り、更にその下はサラサラ雪だった。あまり使える雪はないなぁという感じ。腹ごしらえを済ませ、SGT.Mと二人、討ち死に覚悟で作業に入った。
作成するのは3人用の9フィートのもの。とりあえず器具をセットして必要な円を採寸して造成工事に入った。使う手袋はガソリンスタンドが使うようなゴム引きのゴツイものを持ってきた。ゴアとか何とかではなくゴム!完全防水だ。ちょっとだけ裏起毛でうれしい。ショベルは、いずれもBlackDiamondの柄が伸び縮みするやつで面が小さいモデル。SGT.Mのは柄が曲がっており、かっこよいがちょと短い。ULGの物は柄が直線でちょと長いモデルだ。いずれも非力...フルサイズのショベルが欲しいが、担いでこられない。
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造成終了が13時ちょっと前。思ったより時間を食った。大丈夫なのか?
と、腰が引けても仕方がない。一服して13時からigloo作りに入った。
とりあえずマニュアルは熟読していたので粛々と作業を開始し、最初の一個のブロックを置いた。中で積む人をFORM HOLDERといいULGが担当。雪をくべる人をSHOVELERといい、SGT.Mが担当した。さすがはトーチカ作りをさせたら右に出る者がいない地獄のUL鬼軍曹、雪を掘らせても天下一品!
一段目は円に並べるだけなので簡単だが、土台になるので稠密に心がけて作った。ザラメとその下の層をformに投げ入れて拳で殴って混ぜながらが良い。混ざると良く固まる。この雪も悪くないと思った。SHOVELERも大変なのだが、FORM HOLDERも始終雪を殴り倒して固めないとイカンので結構疲れる。
ICE BOXでは段々に積むのではなく、コロネのようにとぐろに巻いて作っていく。ので、2段目に掛かるところは3ブロックほどスロープを切って上の段に写って行くのだが、マニュアル的にはこここで長さ調整の指示が入っている。まーよく分からないがその通りに操作して、具体的には長さを10cm程度詰めるのだが..合わないところは誤魔化しながら2段目を積み始めた。とりあえず快調!
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一服して3段目。今度は詰めた柄を伸ばす。最初何のこっちゃ?と思っていた柄の長さの調整だが、此処で全てが氷解した。マニュアルの一部にcatenary curve(懸垂曲線)と書いてあったのだが、縦断面的に下部をカテナリーにしているのだ。要はベルマークのベルの形の下部の反った部分を形成していることになる。分かった!うれしい。
三段目くらいまでは余裕で積めた。予定では7段までこの調子でやることになる。だんだんと柄を伸ばすのだ。すると半円ドームではなく、ベルマークのベルの中程と同じように直線状の壁ができることになる。半円ドームでは建設中は中から支えがないと壁が中に倒れてくるが、直線なら多少の横断面方向のアーチ効果を使いつつ、崩れを防いで高く積むことができる。と理解した。
三段目を積んだ時に出入り口を掘削した。雪を盛ったところは充分な深さが取れるので、そこを掘削する。向こうとこちらから掘って目出度く貫通と相成った。SGT.Mにはマニュアルの挿絵にあるポーズを決めてもらって写真を撮った。
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マニュアル通りに決めてくれた!
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こちらも何となく
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段数が進むとSHOVELERは大変だ。使える雪を離れた場所から運ばなければならない。高いところまで持ち上げなければならない。でもFORM HOLERも結構大変。箱の位置を確保しつつ、箱が内側を向いてくるので投げ込まれた雪を体で受けて箱に落とし入れ、なおかつ拳や肘で打ち固めつつ...という複合ワザが要求される。formの傾斜を間違うと下の段と15cmkくらいの隙間ができてしまうこともある。なんとか誤魔化し誤魔化し、でも重心が下のブロックに掛かるよう調整しながらトグロ巻きを進める作業となった。

5段目か、ついにformを箱として使うことができなくなった。ここからは外板を外して目見当で内板の上に雪を積んでいく。マニュアルに45度がどうやらと書いていたが、このことかと!だんだんとRがキツクなっていって固定Rの型枠では回らなくなってくるので、誤魔化し誤魔化し...少しずつ積んでいった。もうSHOVELERも背が届かない。こちらからも見えないが、相当にバテているだろう。が、逆に半径が狭まってくるからここからは急速に高さを稼ぐことができた。
直線壁もここに来て長さ調整を止めて半円ドームを形成することになる。もはやFORM HOLDERも肩で板を支えながら、片手だけ外に出してココ!とか言って雪を投げてもらう。手の感触だけで厚みを測って盛る作業が続いた。
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最初、ドーム屋根を完成させるのは無理かと思い、上に被せるようにシートを持ってきていたのだが、ここになって何とか出来るかも!という期待が湧いてきた。ついに柄を垂直に立て、板で屋根を塞ぐ段階になった。
屋根を塞ぐと同時にドーム内部に闇が訪れ、積んだブロックを通した蒼い光に満たされた。う、美しい。流氷の海の下にいるような、周囲一面そんな感じだから上下感覚も薄れて浮遊感すら感じられる。
完成させたい!と強く思った。
こうなるとFORM HOLDERはすることがない。外に出て頂部に雪を投げ入れ、外した板を使って外からペンペンと叩いて固めた。
もーいいだろう。圧縮された雪が融着したのを見計らって中に戻って恐る恐る支柱を外す....ををを、頼りなさげだが雪がつながって完全にドーム屋根が閉じられたではないか!頂部は締めが甘いので光が余計に通る。さっきよりいちだんと流氷の下の感じが強まった。外でSGT.Mが何か言うが、防音性も強まったので、良く聞こえない。暫し呆然と過ごした。
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外に出てSGT.Mと握手を交わし、お互いの健闘をたたえ合った。
すでに日は傾き、iglooに樹木からの長い陰が掛かっている。時計は5時近く。整地後に巨大雪トグロを作るのに四時間を要したことになる。間に合った...
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空気が薄いところでこんな肉体労働をし、最後は畳み込むように作業を進めたものだから、お互いに息が整わずハァハァゼイゼイが止まらない。SGT.Mはあまりの過酷さに全身から塩を吹いたという。お疲れ。ありがとう。

SGT.Mが担いできてくれたギネスビールで乾杯し、出入り口を整え、中を整地して”お家”に引っ越しを始めた。
入り口のトレンチを挟んでそれぞれの居場所となる。内部はGolite Hex3とほぼ同じ広さで、高さはもう少しある。出入り口に立つと天井は更に高く、手を伸ばして着かないくらい。
でも思ったより狭いな...どーやら柄の組み合わせを間違ったようだ。これは8フィートで、正に二人用を作ったようだ。が、これは逆に幸いだった。小さいほど速く作れる勘定で、大きいのを作っていたらブロック数も格段に増えるし高さも増して屋根が作れなかっただろう。脚立も要るし、ショベルの柄も長くなくては無理だった。

お家に引っ越しを終え、夕食作りに入った。今日は珍しく食事らしい食事を持ってきてある。栄養が悪いと叱られるからね..
食事の準備は中で火を使う。温度上昇の測定と一酸化炭素の検知も目的だ。

続きの生活編は次回にするが、そこでは予想を超える成果が得られたっ!


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野郎二人が真面目にで雪遊び...こんな休日もいいな。
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by ulgoods | 2008-03-18 08:11 | 生活系
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