雪の奥多摩
体から山の成分が不足していた。すっかり揮発してしまって軋み音が聞こえてくる。 年末から土日で連続して使える自分の休みがなかったから..もーダメだ、どこかへ行って孤独と落ち葉の匂いを補わないとダメだ。 と思い、この週末は山で過ごす事を考え始めたのが木曜のこと。 最初のプランは塩山から入って大菩薩峠へ登り、牛ノ寝通りを小菅に下って小菅の湯に入ってバスで奥多摩駅に帰ってくるコースだった。検索で最近の雪が残っているらしい写真を見つけたが、スノーシューが要るほどではない。嫌らしい感じの積雪を想定して、金曜の夜、3時まで掛かって荷を作った。明日は7時の新宿発に乗りたいのだが、この時間帯はヤバイ。 しかも、まだ使い込んでいない道具を主体に作った軽いザックに満足してしまっている..行かんでも良いかと思ったり。 ま、とにかく寝た。 明け方、仕事関係の電話あり。 このまま起きていれば良かったのだが、弱い心と温かな寝床は私を二度寝の深淵へと連れて行ってしまい、起きて8時。行って行けないことはないが、早くもプランが崩れてしまい、心も挫ける。 さて、次善の策として...やはりあそこだな。 というわけで、行き慣れた巨木の尾根にプランを変えた。1週間前に降った雪も既にたいしたことは無いだろうから、アイゼンと水作り用のガソリンストーブを装備から外し、マットも羽毛入りから化繊入りに変更した。メールを打ったりの用事をしながら、ザックを一回り小さなGolite Jam2に替えて荷を作り終えたのが11時と、破格の時間になってしまった。なに、下から2時間もあれば寝場所に辿り着けるという算段もあったから、日没を5時くらいとして充分勝算はある。とにかく行って落ち葉を嗅いで眠りたい。それだけだ。 縮小版なので中略 電車・タクシーで2:30に登山口。慣れた斜面をずり上がり、4時には少し残雪があるものの落ち葉ふかふかの慣れた場所に着くことができた。 今回は、尾根までは雪の上に足跡は見なかった。その前のは、トム・ブラウン・ジュニアの本を読んだせいではないだろうが、落ち葉の乱れで足跡が判った!これはおもしろい。尾根上の雪には仕事の人の長靴の足跡があったが、どうやら違う道から上がってきたらしい。帰りはそちらで帰ってみようと思った。 この日のお宿は実地投入初となるBigSkyのSummit Evolution1P1D2Vだ。今日は何故か珍しくテントを持ってきた。このテント、Spinnakerの外張だが、更にカーボンポールに換装して920gの二枚壁自立テントとしては最軽量と思う。地面は少し凍っていたが、カーボンペグを押し込んできれいに張ることができた。 飯はビニール袋に入れてきたクスクスを蒸らして食うのだが、その湯は某社製品テスト中のストーブを使って作った。残念ながら、約束だから写真を掲載することはできない。日没後、氷点下4度を少し下回ったが、それは上手く働いた。 クスクスを松茸の味お吸い物で流し込んで簡単な夕食にした後に、蝋燭に灯りをともしてテントに入った。 今夜の寝床だが、やはり狭い時に右Zipの寝袋では使い勝手が悪い。どうせ締めているとは言え、出入り口のない壁を見て暮らすのは滅入る。 ラジオを聞きながらチタンフラスコからバーボンを飲んで過ごすつもり。 前日に亡くなったと連絡が入った田舎の同級生を偲ぶには人っ子居ない暗闇の山の中が良いだろうと思っていた。丁度、通夜の時間だ。行けないが..少しは空に近い場所がいいだろう。 近くで鹿がキーンと鳴く。 まだ寝る気もなく、アウターシェルを着たままWestern MountaineeringのVersalite Overfill寝袋に入り、ロフトの充実ぶりと、羽毛服とシェルを着たままながらの肩グリの余裕に満足し、蝋燭の灯りを見ていたのだが、いつしか意識が飛んでいた。 夜中、テントにカサカサと音がしていたが、この季節だから小雪くらいは降るだろうと意に介さずにそのまま寝た。POEの化繊入りエアマットは少し冷たいな。地面が凍っている時はORのダウンマットにすれば良かったな。 酒も飲まず、ラジオも聞かずにひたすら寝たようだ。そう、たぶん疲れていのかも。 翌朝、12時間ほど寝ていたか。まだカサカサ音がする。見るとテントのヘリが雪で埋まっている?!何?とジッパーを開けてみると、おぉお、昨日の枯れ葉の原は一変し、空がいっしょうけんめい降らせた雪でましろに埋められているではないか! しかし、呑気に寝ていたものだ。15cmほどは積もったか。 テントは幕体からずり落ちた雪でヘリが埋められ、下からの通気が損なわれた状態。やばかった。蝋燭を点けたまま寝ていたから..8時間燃える蝋燭は夜中の2時には燃え尽きた勘定だが、その時はまだ積もっていなかったのだろう。テントの中で蝋燭の一酸化炭素中毒とかになっていたら私も逝くところだった。 縮小版なので中略 巨木の傍らで降りしきる雪を眺めていたが、いつまでも居られない。止む気配もないので発つことにした。 撤収し、湯を沸かしてチタンテルモスに詰め、残った湯でココアを飲んで出発した。 靴の選択は、奥多摩は雪と落ち葉のMixだろうから、ズックはやめて大昔に買ったライケルのスカウトという軽登山靴を履いてきた。これは軽い。古いからゴアのブーティも破けているかも知れないので帰りは防水防寒を確かにするためにSealSkinzのソックスを履いた。 帰ろうと思っていた新しい道は踏み跡が消えているだろうから、冒険はやめて以前使った道で帰ることにした。何度か通った道だから雪の中でも迷わずに、うっすら見える下山道に入ることができた。結構な斜面に切ってあるスイッチバックを下るのだが、落ち葉の下が凍り、その上に新雪だから滑る。3度尻餅をついた。この辺はまだ良いが、沢に出るとイワイワしているから滑るとかなり傾斜でマズイ。靴底も硬化してダメだろうから、対策を取った。さらさらでスキーには良い雪だが。 大菩薩から奥多摩に変更したことで、Kahtoola KTSは装備から外されていたが、凍結しているかも知れない林道歩き用にSTABILicersを持ってきていた。これはスパイクがついた靴底をベルクロでサンダルのように履くもの。先達の某くんそうさんの話によると、外れまくりで役に立たないと言うことであったが、私のはしっかり止まっており、外れそうにないので、そのへんも試したくて持ってきた。 結果は満足できるものだ。滑らない。外れない。下の方は雪も湿っており、踏まれた雪は滑り止めにもなり、心配した岩場もいつの間にか安全に通過できていた。林道に降りて舗装道の上、くるぶしを越すくらいの積雪をSTABILicersを履いたまま歩いた。暫くして朝早く入ったと思われるタイヤ跡の上を歩いたが、普通なら圧雪され滑りやすそうな光沢なのだが、STABILicersでは踏んだ瞬間にスパイクの接地面が融解し瞬時に凍るのだろう、足を上げる時にベリっというネバつきを感じるほどで、スリップ防止に役だった。 片足340gはアルミ12本アイゼンのNeveより重いが、前爪を立てる状況でもなく、舗装道も歩くとなるとKahtoola KTSも磨り減るから、結果的には今回の雪の奥多摩歩きにはSTABILicersの選択で正解だった。 雪の奥多摩の景色も良いな。 縮小版なので中略 途中、電話でTaxiを呼び、東日原から乗って帰った。奥多摩駅ではいつもの蕎麦屋がやっていなかったのでバス停脇の食堂で、岩魚の燻製で熱燗をキュっとやった。 五臓六腑に沁みるとはこのことだね。オヤジにはオヤジの楽しみがある... しかし、岩魚というのは燻製になっても悪い顔をしている。が、身は美味。少し炙って食うが、気の毒なほど身がきれいに剥がれる。 山の上より奥多摩駅辺りの方がワッサワッサ降っていた印象。 不意な雪ではあったが、持ってきた装備で対応できて良かった。 欠乏気味だった山っ気も補充されたし、今週も保ちそうだ。 スナップ写真 おや、スパイクが一本飛んだなぁ。ねじを補充しないと...。ゴムにイモネジだから岩を踏んでこじると抜けるかも。考えものだ。 奥多摩も根雪になるだろうか。団栗も雪に埋もれて一休み。かな..雪の奥多摩にてULG詠む 「登山・キャンプ」、アゲ基調で+1..Click!
by ulgoods
| 2008-02-04 06:59
| 山行
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doting on ultralight gears more than mountains...
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