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失敗作

アルコールストーブの細くたなびきたる炎は美しい。
しかし、いつまでも細くたなびかれてもコッヘルの底から漏れたりして困るのである。"たなびき"がどーいうことか、少し考えてみた。
・アルコールストーブの炎は蝋燭と同じ類の表面燃焼というらしい。
・噴出したガス量が多いと酸素と接していない部分は燃焼できない。
・高温の燃えるに燃えられないガスたちは仕方なく上昇する。
・上昇したガスはそのうち酸素と結合する機会を得て燃えて輝く。これがたなびきに見える。
・ある高さまで行くともう燃焼するガスがないので炎はそれ以上に伸びない。
・炎の先んぽや外側は燃やす酸素が相対的に豊富なので高温になる(理科の実験の割り箸の焦げ跡..)。
だとすると、
"たなびく"ことは不完全燃焼の先送りの結果ということができる。私みたい..これではイカーン。ちゃんと燃焼させてあげたい。炎の断面を考えると炎の内部に豊富な酸素を供給できれば炎が立ち上がらずに高温に燃焼することになるのではないかな?!
それと、シェルタ内でアルコールストーブを使うと燃焼後に刺激臭&催涙性のガスができるようで、咳き込み目が痛い。これもなにやら不完全燃焼っぽいガスが生成されていそう。エチルアルコールのガスだとしたら、吸い込むと体に悪そうだ、というかお馬鹿になりそうだ。当たり前だが酸素が豊富でスッキリ燃焼するとよいのではないかと考えた。
そこで早速、炎の中にアルミパイプを使って息を吹き込んでみた。適度に吹き込むと、ゴーっという音と共に
・炎の高さが減少する
・コッヘルを乗せていると沸騰音から判断するに温度の上昇が起きているらしい。
という良いことづくめ。
欠点は..息はいつまでも続かないということだ。急に肺活量を大きくするのは難しい。
困った。
で、考えた。缶を貫通するようにパイプを通して炎の中に空気を供給するのだ。底面から貫通させると燃料漏れの処理が面倒そうなので側面から貫通することにする。側面を貫通させるには二重壁だと面倒なので単層で加圧型のPhoton Stoveが良さそう。
空気は炎の上昇に引っ張られて炎の中に入っていくだろう。使えそうなPhotonストーブをこしらえ、アルミパイプ、リーマー、パイプカッター、耐熱パテ等をハンズで調達し、文字通り突貫工事を実施した。
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左下から右上にΦ10mmのパイプを貫通させた。
できたストーブはパテパテの汚れストーブだけど、炎はそんなこと気にしないだろう。パテがある程度乾いた時点で点火してみた。何らかの変化が観察できればおっけーである。
結果は..やはり思ったような効果は得られなかった。
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が、よーく見るとパイプの出口あたりに小さな炎が形成されていることがわかる。ガスが豊富も酸素不足で、これから上に行って燃えようという奴らが一部ここで燃えているようだ。
しかし、ま、炎の中は気圧が低いわけでもなく、ビューっと空気が吸い込まれることはないから、これでは焼け石に水だな。このパイプにストローで息を吹き入れるとやはりガーっと燃える。こーなるとファンか何かで強制的に空気を補給するしかない。いずれ適当なファンを見つけてやってみよう。どこでもベープNo.1のモーターとファンが良さそうな気がしている。虫の季節が終わったらバラしてみるかな。

あと、細くきれいにたなびいているということはガスが層流になって流れているということだ。周囲の空気を引き連れて静かに上昇し、やがてコッヘルの底を感じて緩やかに広がっていく優美な曲線を描く。がだ、層流では混じりが悪い。コッヘルの底を感じると言うことは速度が遅い常流(昔習った水理学の用語です)という状態だ。ガスの速度が上がると射流になってコッヘルに炎がぶち当たるようになり熱効率も上がるかもしれない。それと、やっぱり優美な炎の曲線を捨てて酸素が豊富な環境下で燃料と酸素が混じった乱流にしてやる必要がある。で、射流化は難しいかもしれないが、炎の中にファンを置いて掻き混ぜて乱流にしてやれば良いかと思い、走馬燈を駆動するファンのような上昇気流で回るファンを炎の中に置くことを考えた。が、恐らくそれも焼け石に水だろう。炎の上昇気流を受けて回るファンが炎を掻き乱すほど威勢良よく回るとは考えにくい。さっきの突貫工事の反省で、あまりにダメそうなことは除外することにしよう。たなびいている炎にスプーンを入れてかき混ぜてみても燃焼促進とはならなかったし。走馬燈案は没。モーターとかで強制的に回して周囲の空気を中に送るような構造なら多少は効くかな?
となると、ガソリンストーブのような燃やし方か..敬愛的JSBさんのサイトでSVEA123のアルコールジェットのことは以前見ていた。’A’の刻印のあるアルコール用AJetがあるという。だいぶ前に見たときはヘンなこと(失礼!)してるなと思っていたけど、今や俄然試したくなって早速海外のあっちこっちを探してみた。が、これがなかなか見つからない。OptimusのサイトでAJetの部品の型番は判ったのだが単品あるいはセットに含まれて売っているお店が見つからない。しっかーしである。ナント日本のナチュラムで売っているのを発見。ここはスベアの部品類が豊富に揃っていて有り難い。早速購入手配した。届くまで暫く待つことにしよう。JSBさんのサイトには過去に実験したアルコールSVEA123の写真も出ていたがあまりガーっとは燃えないらしい。Optimusのサイトでも燃費が悪いと書いてあった。アルコール燃料自体の熱量が小さいので(ガソリンの半分らしい)仕方ない。でも取扱が簡単で非化石燃料のアルコールストーブの可能性をもう少し追ってみようかと思う。ちなみにフォンブラウンのV2ロケットの燃料はアルコールだったらしい。
まずは'A'Jetで行こう(ジャズ「A列車で行こう」のもじりですが..最近はゲームの方が有名か)ということだな。

結局、燃焼を調べていたらいつものZen Stoveサイトに詳しく紹介されていた。モヤモヤと考えていたことは概ね正しかったようで、こちらはスッキリ燃焼することができた。
ここではJSBさんのサイクロンも引用されていて(さすが敬愛的先生)、私がやっているのは諸先輩方の3歩後というのが判るが、何事も経験が大事、頭の中でアルコールの燃焼がシミュレートできるような経験を積まないと新しいのはデザインできないからね。

要は、前回作った炎が美しい内向きストーブは巨大な蝋燭だったことになる..ファラデーの「ろうそくの科学」という少年少女向けの物理の入門書があったが、あれを読み直してみるのも良いかもしれない。ガキのころは漫画ばかり読んでた..燃焼の理解を進め、ちょいと方針を変えてやってみるかな。でも、圧力とか扱うようになると缶ストーブ工作ではまずそう。銀ロウ付けとかマスターして真鍮とか使ってバナーとか作るようになってしまいそうだ..



JetBoiLとサイズ的に相性の良いトランギアの五徳にラッチが引っかかるようにイモネジを埋めてみた。ちゃんと接合できて持ち上げても大丈夫。取り外しもスムーズ。
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やっぱりこれに見合うガーっと燃えるアルコールストーブが欲しいのである。


BackcountryGear.comに発注したBivyだが、送料確認が来て喜んでいるのだが依頼した発送通知が来ない。メールで催促しても黙りだ。以前もこーいうことがあった。もしかしたら在庫が無かったかもしれないな。こーなると先が長い。以前のGolite Infinityでは1ヶ月以上待たされた。新たなヤキモキ勃発。
by ulgoods | 2005-08-11 05:42 | 燃える系
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