二日目は金山の色気に後ろ髪を引かれながら、高低差40mの遊歩道を自転車を押し上げるところから始った。
8:22 出発 高度638m しばらくは緩い道で軽快。2,3個トンネルを越えた辺りから登りの宝庫が牙を剥いた。といっても、柳沢峠まで14km、高低差700mであるから平均斜度5%なわけだが、わたし的には踏んでも踏んでもまだ登り、専ら多摩川サイクリング道や市街地を走っていた軟弱チャリダーが体験する初めてのヒルクライムの類である。今までは山のトレーニングのつもりでモモに負担を掛けるよう重いギアで走っていたのだが、ここに来て軽めのギアでクルクル廻す筋肉の必要性が分かった。フロントのギアを3枚目に落とすのは初めてだし、後ろも8枚のうち4枚くらい、時速にして8km/hを切るくらいでしか継続的に漕げない。これ以上速度を落とすと転倒しそうなので、それなりの高速回転で速度の維持が必要だ。廻す筋肉は養っていなかったので乳酸的に辛い。 9:26 藤尾のキャンプ場前自動販売機でコーラ 短い休みを取りながら登って来たのだが、自動販売機にコーラを見つけたので大休止とした。自転車の良いところはコーラが容易に手に入ること。よほど人家が疎らでも立派な自販機が並んでおり、冷えたコーラを定価で買えるのは超ありがたい。ここは橋の向こうがキャンプ場らしく、道路側には自販機と食堂がある。飯を食おうかと思ったが、ここで食ったらあとで口から直噴しそうなのでコーラで糖分と水分を補給するに留めた。 この辺まで来ると丹波川もかわいらしい小川であり、道と川の間に疎林や草地もあって野宿には良さそうだ。降りて川に足を浸したら気持ち良かろうと思いながらペダルを踏むが、あちらこちらの駐車可能スペースは駐車が多く、車で来て川に降りたり山に入っている人も多いように思う。皆さんそれぞれ穴場をお持ちのようだ。地図で見るとこの辺は多数の点線が交錯しており、古くからよく利用されている山なのだろう。上の方には笠取山があり、交錯した山道は雁峠で集約されて古札山、水晶山を通り、やがて雁坂峠からは秩父へつながる道となる。 やはり上り坂は少しよろよろ登っていくのだが、後ろからのエンジン音には気をつけてシャキッと走るようにしている。よろめいていては自動車の人も怖いだろう。この辺でも道幅は充分だし対向車も少ないので普通の運転者は大きめに迂回して走ってくれるのだが、中にはギリギリ通過するのもいて、こっちは後ろが見えていないから肝を冷やす。また、バイクは必要以上に騒音とガスを浴びせかけ、なおかつギリギリをいく輩がいたのでこちらも負けずにF**k You!○○たれーーーと大声で罵ってやったら少し気が晴れた。ガソリンを焚いてCO2と騒音を散らして行くよりも、こちとらいつもより少しだけ余計なCO2と時折メタンガスを出すくらいで走ってる人力でい!ホンの少しは敬意とまでは言わないが、直接浴びせかける排ガスや騒音には配慮を払ってもらいたいものだ。 ハンドルに付けたGPSガーミン60CSxは一応ルートを選択して示してくれるのだが、何故か自転車モードだと車道を避けて選択する傾向があり、腕時計の高度計もそろそろ1300mを指し、もーそろそろと思っても大迂回ルートを示していてまだ6km以上あるようなことを言って当てにならない。時計の高度計以上に役立たずだったので自動車モードにしてルートを再探索させたら、なんと峠へはあと600mとか言うではないか!行けども行けども登りの絶望が一転して終わりの近い希望へと変わり、心なしか傾斜も緩やかになった気がした。 やがて、ふと顔を上げると道の向こうに空が見え、あの先には登りが無いことを示していた。 10:19 柳沢峠 1472m(GPS的には1473m、ああ地面からの距離が1mくらいか) 着いた...と言っても何の変哲もないので少しガッカリしたが、山梨側に少し下ったところに峠の茶屋があった。持参の道具で湯を沸かしても良いのだが、ここは茶店の世話になる。 バイクや車の人が多い。自転車は私一人だった。 皆さん富士山を見に来るようだが、当日は自転車に嬉しい曇天であり、それでもガソリンな人たちは向こうに微かに見える富士の下辺りの稜線を一生懸命探して眺めて満足していらっしゃったようだ。 茶屋でとろろ蕎麦と味噌おでんを食い、残して置いた握り飯は外で食べた。さすがに少し気温が低い。冷えないようにモンベルのウインドウジャケットを着て、いよいよ下りに移った。 10:47 ダウンヒル開始 蓄えた位置エネルギーを解放す。 この自転車、後ろのリムが少し歪んでいるようなので余り上げると振動が来るなと思って控えめにしたが、メータ目視の最高速度は58km/hだった。だいたい50km/hを越えると路面の反射塗装の凹凸が怖い。道と橋の継ぎ目も怖い。カーブを曲がりきれなかったり小石など踏んで前輪がはね飛ばされたら深い谷に落ちてお陀仏だ。し、50を越えるとウインドウジャケットのフードが風をはらんで膨らんで首を締めに掛るのには参った。ちゃんと心のブレーキになっている。 11:02 裂石、大菩薩峠への分岐 922m 15分で見覚えのある裂石の看板まで500mを降りた。ここまで降りると空気が変わる。温かくて春のような心地がした。 その先は、果樹園とワイン工場の桃源郷を下る道となる。塩山駅はバイパスしたが、柳沢峠からならペダルを踏まなくても塩山駅に行けるだろう。 暫く走り、その名も休息という土地の販売所に入った。葡萄を食うためである。こぎれいな販売所に入り、葡萄を一房だけ呉れろと頼んだが、「うちは安くしているから箱単位じゃないとね..」と譲らない。ちょっと間違った店に入ったようだ。が、大きな梨は1個100円でばら売りだったので、またしても梨を買ってむしゃむしゃ食った。ナイフの刃を突き立てた所から果汁がほとばしる程のみずみずしいの、旨い。でも葡萄を食わないと... 梨を食って少し下るとぶどう園が広がり、どこでも何とか園と名乗って葡萄狩りをさせている。この時期こーいう派手な看板はボルのかなと思いつつも行過ぎては葡萄が食えないので、繁盛していそうな園に自転車を滑り込ませた。聞くと一房OKである。2、3試食して甲斐路に似たカタカナ名の葡萄を一房買った。テーブルに茶を出してもらい、さらには試食で出ている全種類をそれだけで満腹になるほど別な皿に出してくれて.. 忙しくしている割には愛想がよく気持ちの良い対応をしてくれる。食ったら出ようと思っていたが買った一房も食いきれないが、さらに自宅に一箱発送までしてしまった。 昔、子供が小さかった頃、毎年この時期は勝沼を訪れていた。勝沼ワインクラブというワインのオーナー制度で割り当てられた葡萄農家を訪れ収穫したり、低農薬葡萄でワインをケースで2ダースほど作ってもらうのだ。で、農家さんから葡萄の食べ方を指導されたのだが、葡萄は皮も種も食べるべし!サクサクと皮ごと噛む食感がみずみずしいのだ。が、やはり園では皮種を出す皿が用意されており、皆様べったりと唾液の付いた皮を盛り上げていらっしゃる。農家さんも諦めなのだろうね。 その後、食いきれなかった葡萄をフロントバックに納めて笛吹川沿いからR20へ入って尻も痛くなったころ、当初漠然と設定した目的地の甲府駅に着いた。あとは電車で帰るだけなので、ここまで無事で一安心。駅前のプランターの草に分水嶺でもある峠の向こうで汲んだ原泉の残り水をやった。 初めて袋を開く輪行袋はモンベルの前輪だけを外すタイプ。初めての割には無事に袋も被せ、問題なく改札も通過し、鈍行列車の最後尾に席を取った。 走り出してからは紙カップのワインを飲みつつ、残しおいた葡萄をむしゃむしゃ食った。種と皮を吐き出さないスタイルはどこでもキレイに葡萄を食えるので良い。 やがて人も増えたが、鈍行の最後尾というのは不思議と輪行野郎が溜まる場所だと知った。途中から輪講袋を下げてきた人と話をしたが、彼は大月から山中湖を往復してきたのだが、途中で3回もパンクに見舞われたらしい。一度は釘の串刺しだったとか...お祓いが要るかもしれないねなど話しつつ、私もサイクル野郎の端くれくらいになった気がした。途中でまた一人輪行野郎が乗ってきた。 電車も混んできたので自転車を立てた。乗り換えの移動も面倒なので最寄り駅のだいぶ前で降りて自転車で走って帰り、私のサイクル野郎化も完了となった。 人力移動バンザイ!! Click! なーう 知らない街を自転車で走るのが好きだ。あそこは何だろうという好奇心に動かされ、そこに着くまでの空間のつながりを楽しみ、やがて近づいて見えてくる細部を確認しながらその場まで乗り付けるのが良い。向こうに見えたその場所に近づくには歩きでは早まる心の速度に足りないし自動車は捨て置く訳にいかないから厄介だし時空の連続も裁たれる。貸し自転車でパリの街、セーヌ川沿いやブローニュの森や凱旋門の下や路地の裏を走ってそう思ったのはもうだいぶ昔の観光旅行。知らない街に着いたなら地図をポッケにペダルを踏むのが良い。
by ulgoods
| 2009-09-24 01:36
| 自転車とか
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doting on ultralight gears more than mountains...
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