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たばでんでえろ~飛龍山

■山選び
どこか、人に話してもインパクトのある山、アルプス系とか行こうと思ったが、紅葉のシーズンのこと、土日であれば尚更に帰りの高速や山道での混雑が面倒で、どうにも対象が絞りきれないでいた。いよいよ金曜になったが、まだパッキングに手を付けられない。超軽量ハイキングでは、行く場所の状態や気象に応じて装備の安全係数を最適化して無駄を省くというのがミソなので、最軽量を追求するには行き場所が決まらなければ装備に手を付けられないという側面がある。ま、そこが面白いのだが...
金曜の時計も煮詰まってきた時、そうか、混雑が嫌なんだと自分で納得でき、インパクトな山を辞退し、静かであろう山を目指すことにした。静かということは、マイナーで、この時期ならまだ紅葉の盛りを迎えていない山ということになる。車は混むのが嫌だから電車として、ついでに電車賃も安い方がよいから奥多摩に目星を付けるのは当然の流れだ。で、奥多摩に以前から気になっていた尾根がある。そこは尾根の上の方で等高線の間隔が広いなだらかな地形で、地名的にもそんなことを思わせる場所、丹波天平という場所だ。読み方は、「たばでんでえろ」と江戸風なのもよろしい。尾根の終点は飛龍山であり、標高的には東京都最高峰の雲取山よりもまだ高い。私には充分である。
行き場所が決まれば、この時期の最低気温としてゼロ度程度を想定し、降雨の心配も少ない予報なのでサクサクと装備が決まる。今回は、前回同様にアライのシングルツェルトのテストを行うことにした。寝具系はモンベルの薄手のダウン上下を着込み、NunatakのArc Ghostという羽毛キルトを上に重ねてみよう。中と外で化繊+ダウン、化繊+化線、ダウン+化繊、ダウン+ダウンの組み合わせで最適な物を見いだしていきたい一環でもある。ザックは使っていなかったGossamer GearのMurmurを使おう。背面にマットを挟み込んで骨格とクッションを得る脊椎タイプのペラペラなザックだ。背面のマットは取り外しが容易なので、いままでの巻マットによる内骨格(生物学的には外骨格と呼ぶのだろうが、インナーフレームザックの語感とは違和感がある)と違って休みたい場所でマットを取り出して休むことができるだろう。のんびり山行に便利と思う。飯はα米に乾物を、朝食は菓子パンで、腹持ちや調理時間の短縮と水の節約あたりも確認したいなどなど、低山では低山なりの課題を見つけてパッキングを行った。
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水食料抜きで4.6kg程度であった。行動中はペットボトルのポカリを飲む。真水は1Lの平型ペットボトルを使った。軽くて丈夫でタダ。ザックの背面のメッシュに折りたたんだリッジレストが差し込んであり、骨格兼クッションとして機能している。

■行き
丹波天平に登る道は何本かあるが、今回は親川から入る最も距離のあるコースを選んだ。というのも..ホリデー快速1号に乗り損なったので数少ない丹波行きのバスに乗れず、仕方なく1時間後のバスで直近の鴨沢西からお祭の方向に歩いて入ることになり、一番近い取り付きが親川である。
おや、登山道入り口の看板はサヲウラ峠となっていた。地図では丹波天平の向こうの峠はサオラ峠となっているが、地元的にはサヲウラが正しいのだろうな。サオラではよく分からないがサヲウラであれば竿裏とか、棹裏であろうか、そんな文字も字も当てはめることができよう。帰ってからwebで調べると竿裏峠であったらしい。
サヲウラへ向かう道であるが、奥多摩の例に漏れず、いきなりの急登で始まる。道は整備されていて歩きやすい。その道々に廃屋がある。電柱もあって電気が引かれていたようで、急登を40分以上登ってもまだ廃屋があったには少し驚きである。こういう場所にも人は住んでいたのか。中に雑然と散乱する道具を見ると昭和の様式である。そう古くない時まではここに人の営みがあったのだ..どんな生業であったのだろう?産業構造が変化して住む必然がなくなって下りたのだろうが、人が住んでいた頃は朝な夕なに炊ぎの煙が何本も立ち上がって里から見えていたのだろうな..など考えながら歩かされる道である。人が住んでいたからには水もある。最後の廃屋の手前には生活に十分な量の水が引かれ、いまも流れていた。
最後の廃屋を過ぎて、ひと登りしすると、植生が杉から広葉樹に変わり、天平(でんでえろ)な地形が現れてきた。更に数分行くと、なんということだろう、そこには広大な平地があり、栗、ナラ、唐松の風通しの良い林が広がっているではないか。地図を見て予想したとおりの平らかな場所だ。
このあたりの地名や廃村のことは
でんでえろの峠 / サオラ峠(サヲウラ峠・竿裏峠・棹浦峠)・今川峠・越ダワ(越ザワ?)に詳しい。
さっそく、マットを外して敷いて寝転がって休んだ。なるほど、この方式は便利で快適だ。
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ちょっと小道具を使って自己陶酔写真を撮ろうと思ったが、仕掛けが丸見えである..
暫く休んで今夜はここでも良いかなとか思ったが、まだ先がどうなっているか知りたくて、尻の上に乗っている重い腰を上げることにした。夢のような平らな山道を惜しみながら進んで苦もなく件のサヲウラ峠に出た。直進すれば飛龍までのミサカ尾根、右に行けば三条の湯、左に下れば丹波の村である。今回はミサカ尾根で飛龍に向かうことにした。ミサカ尾根は笹っぽい尾根であるが、広く刈られていて歩く支障にはならない。ちょっと雰囲気が悪くなったので、ときより獣避けにホーホーと声を上げながら歩いた。
大ダワ尾根もそうであるが、この辺の尾根は急な出だしの取り付きの後に緩い天平地形が広がり、その後に少し急な尾根が続いて、やがて尾根の終端付近は岩が露出する急登となる構造が共通である。今回も最後は日没近くなって急峻な岩場を登らされた。
やばい、平地がない..ミサカ尾根筋には小屋などないので、どこか平地を見つけて寝なければならない。目星としては飛龍山の神社マーク。さすがに少しは平地があるだろうと思っていたが、時間的には日没後の残業を強いられる。やれやれ、と思っていたが、飛龍山の前にある前飛龍の直前の露岩の基部に二畳ほどの平坦地を見つけた。周りは切り立っているが、よほど寝相が悪くなければ転落もしまい。17時直前、既に日は向こうの尾根に近くなり、自分のいる尾根の影が谷を被っている。山肌はまだ全般的に緑だが、ぽつんぽつんと赤や黄色の点描が見られ、紅葉が始まっている様子。
今日はここまで。結構歩いた。

■露営
Tyvekを敷き、シングルツェルトを張った。地面は程良く風化したマサ土であり、ちゃんとペグが効いたのは嬉しかった。自然にできた場所だろうか?人の手が入っている気がする。まぁよい。ありがたい。
シングルツェルトはフットプリントの面積がBivy並に小さく、ガイラインも2本だけなので、こんな場所でも苦もなく張れる。今回は立木に後ろのガイラインを取ることができて助かった。フロントはがっちりとエクスカリバー・ペグを打ち込んで張った。四隅はしっかり効いているから、ツェルトから出ないかぎりは転落はしないはず。
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飯は、予め混ぜてきた乾物入りα米を食った。α米100gに松茸のお吸い物、ヒジキ、板麩、代用肉を放り込んで来た。それらをお湯で戻して、削り節と醤油を掛けて食った。乾物混ぜ飯は歯触りもあり、量も増えて食い応えがある。胃の感触からすると朝まで腹持ちしたようだ。
今回は、いつも持ってくるアストロシートによる保温バッグを忘れてきてしまった。何かで保温しないと冷えた飯を食う羽目になる。何か..と見た結果、着替えの靴下で代用することにした。靴下に具の入った飯袋を押し込んで湯を入れて放置していたら飯が膨らんで、妙に暖かいし堅さも人肌、重量感もあって、なんか誰かの取れたばかりの足を持っているような、変な感触であった。
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カップ容積の関係で湯は一度に200ccしか沸かせない。一度湯を入れて、再度湯を沸かして追加する。乾物が多いから湯は多めに入れないと戻らない。今回もストーブは固形燃料。
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■夜の過ごし
ライトを消して見上げると既に満天の星であった。まだ6時くらいなんだが、山は夜が早くて星が近い。
飯も食ったし、日も落ちたし、ツェルトに潜り込んで寝ることにした。いつもながらラジオを鳴らし、チタンのフラスコから少しバーボンを飲んで、ブラスのキャンドルランタンを外に置いてヘッドライトを消した。外は風が出たがガラスホヤのキャンドルランタンは消えることなく、戸外から柔らかな光を投げかける。頼りない炎だが意外に明るい。
夜になり気温も下がるとシングルツェルトは結露した。風通しの良い入り口あたりは換気されるのでよいが、胸から向こうはビッシリである。足元に換気口を開けたが、もっとドアを開いて風を通さないとダメなんだろうな...これが、もっと透湿素材でできていたら素敵なんだが。壁に触れた羽毛キルトは少し湿った。結露っぽい屋根の時は化繊キルトの組み合わせにすべきだと確信した。たぶん、タープを張ってeVentなどの透湿が優秀な素材のBivyザックと合わせるなら羽毛でも良いだろう。ま、非常用のツェルトなのだ、一晩過ごせればヨシとせねばなるまい。
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温度計によるとこの夜の最低気温は2.6℃、まぁまぁ冷えたようだが、ゼロ度用のキルトに羽毛のインナーパンツとフード付きの薄手のジャケットを着ていたので、汗が乾きだしてからは温かかった。
到着から下着を着替えずにウインドジャケットとして羽毛ジャケットの上にブリーズドライテックのジャケットを着て、そのままキルトに入ったので、なかなか熱が羽毛キルトに伝わらずロフトが出ない感じだし、体も濡れていたので少し冷えた。着いてすぐに着替えればいいのだが、いつも着たまま乾燥させるので最初は冷える。ま、飯を食った後だから熱は生産するだろう。たぶん、レインジャケットの下は蒸れて中の羽毛ジャケットも濡れて潰れて全滅だと思い、胸のジッパーを開けて、脇の下のPitZipも全開にしたら、もわっと湿った暖かな蒸気が出てきて、その後はキルトにも熱が回って暖かくなり、中も乾いていった。羽毛の上に膜モノのジャケットを着たまま寝てはいけないな。羽毛は体に近い場所に置いて、外側は薄くても良いから化繊の袋にするのが総合的に高得点だろう。

■翌日
日差しで目が覚めたのは6時過ぎだった。少し風が強い。8時くらいに寝床を抜けて周りを見回した。おお、冠雪した富士が見える。下の谷はまだモヤの中だ。日差しがあるので急に温度が上がって、ぽかぽかした良い朝を迎えた。
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湯を沸かしてコーヒーと菓子パンで朝食とした。朝から甘い物が食える体質なので、これは手間が掛からずに良い。
食事を済ませて、キルトを干してから撤収した。夜と朝で水の消費は800cc切るくらい。
さて、撤収済んで、飛龍に向かった。前飛龍に登って初めて飛龍が見える。一度下って登り返すのか。飛龍の山頂は樹木があって眺望はイマイチな感じだし、行って休んで戻って2時間くらい、2時間あれば天平で寝そべって単行本でも読んでいる方が幸せかもしれない。早めに下りて下の温泉で一汗流すのも旅としては完結性が高いなと思ったら、飛龍に登る気がしなくなり、踵を返して下りに掛かった。あの気持ちよい道をもう一度ゆっくり歩きたい。飛龍山頂を踏むより、あの山道を歩く方が幸福そうだ。というわけで、名残惜しく気持ちの良い山道を下って、丹波天平で寝転んで本を読んで、来た道とは違う山道で「めのこいの湯」へ下りて、一風呂浴びて、バスで奥多摩に戻って、電車を数本見送りながら食堂でヤマメの燻製で熱燗をやり、皆まだアドレナリンが引かずに、更に少しアルコールが入って騒々しい人が多い電車で奥多摩を離れて帰ってきた。
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下りてきて眺めた丹波の土地は山があり、川があり、畑があり林があり..のどかで、のんびり気持ち良さそうな里に思えた。
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■メモ
・Murmurだが、背面のマットを固定するメッシュ部分が色落ちしてズボンに黒い色が付いた。Mariposa時代にBPLで色落ちが指摘されてその後改善したと聞いていたが、まだ付くようだ。一度ブラシなどで洗った方が良いだろう。
・ザックの出来は悪くない。MLDと違ってベルト類がしっかりしているのが良い。マット取り外し式は休憩時にすぐにマットが使えて便利だった。また、撤収時など、マット丸めの内骨格だとマットを最初に入れないと荷物を放り込めずマットを有効に利用できないが、この方式ならマットは最後でよいから、そう言う面でも便利だ。
・靴下の保温袋は使える。今後はアストロシートの保温袋は持たない。
・α米+乾物飯は、食感良く、飽きずに沢山食べられて良い。腹持ちもする。
・寝具系はダウンの外側に化繊キルトにするのが良いようだ。冬期に向かって結露対策にも有利と思う。そろそろ冬用の高ロフトなキルトを縫うかな。ドル安も落ち着いた動きで決済レートも下がっただろうから素材を発注しないと。
・シングルツェルトは噂通り結露だった。でもあの形状は捨てがたい。ドア全開で寝るくらいな覚悟か、透湿素材で作り直すか...本来なら足元に換気口は設けたくない。足元が冷えると元々温度が上がりにくいくせに発汗しているから結露する。
・今回は水は3Lでおつりが来た。
・未だ食料を持ちすぎる。ナッツバーの類で頑張れば2日くらいは彷徨えるくらいは残った。が、こんなものかな。ここをあまり削っても良くないな。
・出会った獣は、鹿、猿、リス。リスは忙しそうだった。
・栗の上にリッジレストを直接敷いてはいけない。イガが通るし、古いイガは張り付いて、イガを落としても針が残る..面倒くさがらずに先にTyvekを敷くべき。

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奥多摩の深い所を探そう...

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by ulgoods | 2008-10-21 01:21 | 山行

賞味期限

blog「あっことひろの楽しい山登り日記」の今日のディナー♪で、賞味期限切れのフリーズドライでグルメだ~い!!という記事を読んだ。
そー言えば、登場していた茶碗で丼ドン!うちにもあるが、期限切れをどうするかなと思っていたけど、人の食事を見ると旨そうだったので食べられるものなら食べてしまえと、開封することにした。
私は無意識にカツ丼が好きなんだろう、いつ買ったのかも覚えていないが、3袋を食料庫から発掘するのは容易なことだった。
06.3.31 1個
08.3.6 2個
で、いずれも立派に期限切れである。06.3.31ってのは激しく超過しているので期待薄と思い、08.3.6を開けてみた。2個あれば晩飯のおかずに充分だろう。
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写真は08.3.6の2つ。
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どーも、左右で色合いが違う。左はカップうどんのお揚げさん状態の褐色を呈し、しかも萎縮している。一方、右は健全な感じ。褐色のそれは、食うてはイカンぜよ!と言っているような気がする。が、困った、1個では半端で腹を満たさない。仕方がないので諦めかけていた06.3.31という2.5年前に期限切れを迎えていたカツ丼を開封した。激しく褐色を通り越して黒いかと思いきや、見た目は健康そうで、写真右のものと同じであった。開封したからには急に劣化しそうだったので、三つに湯を入れて戻るのを待った。
申し訳程度のカツ二切れを乗せている黄色い土台は主に卵とタマネギで構成されている。戻った物を観察したが、褐色なのは炒めタマネギか?とも思ったが、どーもそうではないらしい。色だけに留まらず戻り具合も悪く、さすがにこれには触手が向かない。残った健全な2つを飯にぶっかけて食ってみたが、普通にカツ丼だったので一気に平らげた。
褐色君は申し訳ないが、さよならしてしまった。たぶん、食べずに正解。

さて、08.3.31の二つ、たぶん同じロットであり保存も同じだ。おそらくは褐色化したものは包装に難があって、あるいは取り扱いが悪くて包装に傷が付いて、外気に触れて酸化が長期熟成した物だろう。で、運良く褐色君だけを山に持って行ったときのことを考えると、晩飯にと、夕暮れ時の薄暗い中で開封しても比較する物がないから、大方こんな物だろうと意に介さずに戻して食ってしまうに違いない。で、やっぱりりフリーズドドライは旨くないとか思って、そのまま寝てしまう公算が高い。あるいは褐色は変と言うことを経験済みだと、唯一の晩飯の具が具がぁぁぁと落胆し、冒険を侵すべきか、気味無いα米だけで我慢すべきか、小一時間は悩む羽目になる。どちらにしても楽しい晩飯が台無しの不幸な一夜を過ごすこと間違いない。

この褐色、おそらくは賞味期限の日を境に一気に劣化したものではあるまい。賞味期限内であっても褐色なことは開封してみなければ気がつかない筈だ。私はお山で博打することは好まない。かといって開封して確認してから連れ出すわけにもいかず困ってしまった。解決策としては、
1:メーカーにお願いして、透明な小窓にシールを貼っていただき、連れ出す前に剥がして健康度をチェック可能な包装にしてもらう。
2:保険を掛けて複数個持って行く。
3:開封するまで分からないようなものは持って行かない。
4:気にしない胆力を修練する。
の4つと思われる。
1はコストが掛かるだろうが、悪い案ではない。
2は重量的にも購入コスト的にも無駄で、たぶん、古い1つが長期間開封されることなくザックに入れたり出したりしているうちに包装が破れ、いざ開封したら褐色になっており、保険の意味が無くなっていることが考えられる。
3はウルトラライトハイカー的には正しい選択だ。無駄な包装やらゴミを担いで歩きたくないからね。おかずとしての乾物やふりかけは信頼性が高い。
4は、辛すぎる。

というわけで、今後はフリーズドドライ物はお山に連れて行かないことにした。というか、ずいぶん前から連れ出していないので、賞味期限切れが山積するのだが..
また、賞味期限が数年経過しても包装がが悪くなければ充分食えることも判った。やはり、メーカーには1案を検討して貰いたいな。
賞味期限が切れても素性が良ければまだまだ賞味できるじゃない!と小さなフリーズドドライに少し勇気づけられた自分がちょっぴり悲しかった。


まだまだあるよ、麻婆豆腐も試してみよう...

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by ulgoods | 2008-10-17 10:22 | 生活系

山財布

こんなに天気が良いのに、行楽日和とニュースが言うのに、例年この連休は外出できないことになっている...
仕方がないのでミシンで遊んでいた。
今回作製したのはTyvek製の山財布だ。

■なぜ山財布か
山に持って行く財布を普段の物と分ける派は多数だと思う。理由として、山財布は汗や何やらで濡れたり過酷な状況が予想されるので高価な革製などはもったいないし、普段は大量のカードや領収書入れとなっている財布だが、軽量化のために必要なカードのみ残して抜くと普段の財布はユルくなって何やら不安げ。中身の入れ替えは財布の底に沈んだ領収書類を掘り出すチャンスでもある。
一方、普段持ち慣れた財布を別の物に変えると、手に馴染まず、いつもの定位置に入れないから紛失の危険(ザック内紛失も含む)が増す気がしてならない。というデメリットがあるのも確かだ。
自分的には昔から財布はコードバン(馬の尻の皮)と決めていた。が、財布の浮気をすると財布や中身の一部を紛失するというジンクスを持っていたので、山でも普段用を使っていたのだが、定位置の尻ポケでは激しく歩くと財布も汗で濡れ、後々白く塩を吹いたりして、堅さ自慢のコードバンも次第に柔くなり、縫い目が切り取り線状態になって分解してしまった。悲しかったので、それ以来、財布に入れる程度の所持金より高価な財布は持たない。財布を買いに行って所持金より財布が高い、財布を買っても中身が無くなるのはとても悲しく空しい感じになる。装飾や風水のために高額な財布を持つ感覚は私には無い。
というわけで、私は普段から山財布を使うことにしている。カード類も極力持ち歩かない。某神田方面山道具屋の会員カードが通常のプラスチック製で厚いため、それを嫌って持ち歩かなくなり、自然とその店では買い物をしなくなってしまったほどだ。会員カードごとき、薄いカードなら持ってやっても良いが、厚いのは御免だ。私の財布に収蔵されているカード類は厳選されている果報者たち。

■山の財布
昨年、1週間JMTを歩いたときのお財布はZiplocの袋だった。山に入ってしまえば金は使えないからZiplocに封入してザックの底に入れておいたが、防水だし、それで充分だった。しかし、国内では行き帰りの交通機関や小屋などでも小まめにお金を遣う機会が多いのでZiplocでは少々不便だろう。軽くて、濡れなくて、腐らなくて、紛失しにくくて..と見ていった結果、この数年はSimblissityの財布を愛用している。
実際のところ、山では財布は10%くらいは紛失の覚悟をすると思う。現金は減らすとして、運転免許証、保険証、キャッシュカードとクレジットカードの1、2枚くらいはどーしても必要だ。再発行が面倒なカード類は極力入れたくない。で、Simblissityに共通しているのが紐でグリグリっと巻くスタイル。なんか、財布をどこかに入れる前に巻くという動作が、財布を無造作に放り込むことを防止してくれるような気がしている。どーしても神経質なときは、紛失防止として紐で首から提げたり、ベルトやザック内に結んでおくこともできるので安心だ。

■Simblissity三態
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初代は写真左、X-Pacで作られたLiteFOLD XP Ultralight Bi-fold/Tri-fold Walletというもの、11gと軽い。1年ほど尻に敷いて使ったが、だんだんとヨレヨレを通り越して、ある種の迫力が出てきて、支払いの度に年季の入りように無言で感心されるので強制引退させた。だんだん伸びてカードの収容枚数も増して良い感じだったが..形が伸びて馴染んだ財布というのは切り替え時期が難しい。
二代目は写真無しだが、ALL-ETT Traveler Billfoldという別メーカーのSilnylon製で6gというものだが、これは財布と呼ぶには極限に低機能であり、おまけに滑る素材なので、財布尻ポケット派としては歩いている間にニュルッと抜けそうで怖いのですぐに退役させた。
三代目は写真中央、Simblissity LiteFOLD B-Line™ Ultralight Bi-fold / Tri-fold Walletというやつで、ちょっと重くて25gだが、Dyneema製で耐久性がありそうだ。
右側のはSpinnaker製だが、使う前から諦めているので使っていない。

■作り物
写真中央のダイニーマ製が気に入ったので手持ちのTyvekでコピーを作ってみた。
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Tyvekは防水性が高いからシリポケでも湿らないだろう。
パターンは、勿体ないので現物を解かずに、あれこれ透視したりして割り出したが、なかなか作りやすい構造で関心関心!
Tyvekを切って、折り目は傷を付けてきっちり折って、あとは縫うだけ。至極簡単。
一作目は縫う順序を間違えて失敗したが、多くの経験を得た。で、二作目はいきなり使える物ができてしまった。これとてベルクロの位置がずれているのだが..使えないことはない。
Tyvekも4重くらいになると頼りがいのある素材だと思う。質感も悪くない。この財布は重量も15g(ただし、紐類含まず)で軽い。なんしか、Tyvekを2ロール買ってあるので、追加で100円屋のベルクロを買うくらいで済むのが嬉しい。
しばらく耐久試験を行い、そのうち量産して大金持ちになろうかと考えているところだ。

Tyvekも結構キッチリ縫えますね。何でも作れそうな気がしてきた!

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その後、何個か作ったが、カードを入れるときの微妙な抵抗感の再現が難しい...

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by ulgoods | 2008-10-13 00:28 | MYOG

Ultralight Solo Micro Tarp

Ultralight Solo Micro Tarp

■発端
行き倒れBivy派としては、以前からBivyの頭部だけを覆う最小限のタープが欲しいと思っていた。頭部というか、Bivyの弱点は雨天時の出入りなので、その部分だけ保護できれば結構な気分で、雨がない時はタープも不要だから自然と最小限のものを求めることになる。雨天時Bivy用タープ(と女性の水着)は最小限の布で構成できれば上等だ。
先日、八幡平で使ったアライのシングルツェルトは、あれはあれでステキだが、素材がいま一つそそられないのと、ちんまりとした閉空間を張ってしまうというのは行き倒れ感に乏しいよなぁ...みたいなことを話していたら耳より情報が入ってきた。
英国発の

Ultralight Solo Micro Tarp
というもの。
英国は日本と同様に雨がちなので、野外活動における彼らの動向は米国のそれよりも参考になったりする。古くは極地探検を一人で背負う気概を持っていた国で年季が入っており、スパイ映画でおなじみ極小秘密兵器ガジェット好きなお国柄は日本と似ている気がする。英国紳士は保守的と思いきやUL宿泊系山道具はそこそこ過激だったして、案外とBivy類もお好きなようだ。
傘をキリキリ巻く性格からか、Ultralight Solo Micro Tarpと同じシルエットながらCuben Fiberで作った25g版

も存在しており、彼らの超軽量指向の気合いの入り方が伺える。
私も将来的にCubenで作るとして、これは使える形なのか?先ずは手持ちの材料で作ってみることにした。

■製作
材料は最初はTyvekでやるかなと思ったが、布の幅的に不足で、無用の縫いが必要になるのでRayWayで買ったTarpKitを使うことにした。Kitは失敗に備えて二個買ったが、首尾良く一発目で大物の二人用が出来てしまっており、もう一つ一人用を縫うのもアレな感じで、使うときは二人用を一人で贅沢に使っても良いし、重さが嫌なら二人用を解いて切り詰めて縫い直せば一人用は得られるから、Kitは何か別の形への流用と考えていたところだった。
パターンを見て布から切り出すが、RayのKitからだと二個切り出せる。最初はパターン通り、次はちょと変形させて作ろうと思っている。
パターンを写すのは簡単だった。四角の布を得たら、各頂点からの距離を手近な頂点から測ってマークすればよい。さほど広い作業場所は要らないので助かる。無駄な布が多く出る形状なので、今後は袋類の材料には困らない感じ。手元の布は設計図より10cm広いのだが、きっちり合わせないといけない理由も乏しいので、余った長さは適当に按分した。
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タープの縫製も簡単だった。切り出し後、折り返して縁を縫い、ループ類を縫い付ければお仕舞い。数時間で出来てしまう。腕も少しは上達もしたようだし、迷うことなく一気に縫い上げ、設計通りの120g台で仕上がった。
元のパターンでは左利き文化用になっていたので、裏表ひっくり返して、右手に長い庇が出来るようにした。
今回は#50の糸を使った。上下とも糸の調子を強くして縫い上げたが、調子が強すぎたか、針の速度を上げると上糸が頻繁に切れてしまう..まだ何か変なんだな。全く我流なので試行錯誤の連続だ。

■張り姿
とりあえず、庭で試し張りをした。
SilNylonは良く伸びるので、キリキリ張ると、ねじれの部分にカテナリー曲線のような勝手成り曲線が見られて美しい。
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もっと高く張った方が良いかな?このままでは出入りが辛い。

■Bivyと
運良く雨が降ってきたので、Bivyを持ち込んで庭で寝ることにした。
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使ったBivyは英国製、RabのSuper Light Bivi(米国ではBivy、英国ではBiviというようだ)。7月に硫黄岳下でも使ったeVent製の軽量Bivyだ。作り的には防水されており、雨天でも使えるはず。もっと軽いRabのPertex Endurance製のUltra Biviと合わせることを考えていたが、縫い目は溶着で止水なのだが、メーカー曰く生地自体が防水ではない&ジッパーが雨蓋のない普通の物なので、今夜の雨では保たないだろうと思いヤメた。マットは、MontbellのU.L.コンフォートシステムパッド150に枕を連結して使った。枕を連結すれば身長174cmの私は、膝を少し曲げるだけで全身が乗っかる。寝袋はNunatakのArc GhostというダウンQuiltを入れた。ダウンの湿り具合からeVentの透湿具合を見るのも目的である。0度用のBivyなので、短パンTシャツで充分だろう。

雨中に具を仕込んだBivyを投げ出して定位置にセットして潜り込んでみた。Superlight Bivyの出入りは頭部U字型ジッパーであり、大きく開かないので、出入りに少し難儀する。Tarpはやはり低く、長手の庇は出入り時に利用できなかった。が、出来るだけ体をTarpの奥に押し込んで、少しの間Bivy内部を雨に曝して潜り込んだ。傘があればだいぶ良いだろう。雨で使う場合は、体を起こして雨具の着脱が出来ねばならないと考えていた。が、今回の物はちょと辛いなぁ。少なくとも90cm以上の高さが欲しい。ま、一枚物なので、張り方で所要の高さは得られるはずで、次回はもう少し高く張ってみる。高さがあって、開閉可能な小さな庇が付いているとステキかも、など考えながら時を過ごしていたら寝てしまった。
このBivyは蚊帳が付いていないのを買ってしまった。うちの庭にはまだ蚊がいるので、ツバ付きのキャップを被り、その上からモスキートネットを被って、首元はBivyを締めて保護するで充分機能していた。

時折、雨音で目が覚めた。雨は大粒でかなり強い。Bivyは大丈夫かと内部を触ってみたが、浸水は見られなかった。そりゃ、雨具に使うeVentをシールしてあるのだから、そうそう簡単には漏れないはずだ。湿り具は?eVent部分はさらりとしていて湿りがない。さすがは最強透湿素材と安心したが、床部分は10000mm laminated nylon 40D waterproof baseと言うことで耐水圧は問題ないが、地面は結構冷えていたので、床材が冷やされ、内部の湿気が結露している手触りであった。横寝すると腰の部分のダウンがBivyに圧迫され、かつその位置は直接雨に打たれているので、Quilt表面付近の内部で結露していたかもしれない。結露自体は素材の透湿性とは関係なく、その場の湿度と温度で決まる現象だ。が、腰部分以外は問題なく、それ以外の部分は乾いてフカフカであった。横寝をやめて仰向けに寝て、Quiltとの密着度合いをゆるめて、結局そのまま朝まで寝てしまった。

雨は朝にはあがっていた。もぞもぞ起き出し、Bivyを引っ張り出して、具を取り出した。Quiltは概ね乾いていたが、足元に若干の濡れが見られた。ま、足は温度が上がらないから結露の標的になるので仕方がない。重量を量ったら505g,投入前の493gに比べて12g程増加していた。雨の中で一晩過ごしたにしては悪くないだろう。二泊目に突入しても大丈夫な感じだ。
ああ、Bivy内の環境を測っておくんだった。温度と湿度..センサーを数個投入して、足元と、他の部位で同時に測ってみたいなぁ。

■今後
今回の形状は雨天での出入りが必ずしも便利ではなかった。後頭部が地面に直接ペグダウンなので高さが取れずに有効に利用されていない。幅はあまり要らないので、頭部だけ高くて、小さな庇があって、右側に多めの空間がある形...次回はそんなのを縫おう。アライのシングルツェルトをぶった切って頭部だけ使う手もあるが、アレはアレで軽いので、そんなことしてBivyと合わせても重量が嵩むだけ意味がない。将来的にCuben Fiberで縫えるよう、独自の形を作り上げたい。50g程度なら、持って出ても悔やむことは無かろう。


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eVentでシングルツェルトを作ってくれないかなぁ...

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by ulgoods | 2008-10-09 09:17 | MYOG

氷の袋が便利

最近、プラ系ゴミは分離して捨てないといけないが、意識して見てみるとプラ系ゴミの比率の高さに驚く。しげしげと見てみると、即ゴミ行きになるには惜しい物も少なくない。
コレに取りい出したは、家で飲むときお世話になるロックアイスの袋。擦れば痛いほどの氷の攻撃にも負けない厚みで、完全に閉まるチャックは内部からの圧力にも強いという性能を持っている。ジプロックにも匹敵というか、厚み的にはALOKSACにも迫るではないか!
近所のスーパー(サミット)で買うが、コンビニも同じような物だろう。元が氷だから再利用と言っても臭いや汚れもないのが特によい。
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夏の頃、捨てるのが惜しくて集めておいた。そんなに酒を飲んだのではない。ギクーリ腰の時に、日に2,3個、腰を冷やすために腰に当てていた物だ。溶けた氷はおいしいお水として飲み、袋は乾かして置いていた。

先日の山行では、行動食というか、主食化しつつあるトレールミックス入れとして使用した。
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このチャックは開閉が楽で確実なのが気に入っている。
再び洗って使っても良いし、予定通り捨てるのもご随意に。

ザックの中に台所でおなじみの再利用品が混じっていても良かろう。専用の市販袋も使っているとくたびれるのは同じだし。
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氷の他にはパスタの袋も良い。湿気らない二重チャックが付いた物がある。
詫び寂のULハイキングに生活臭を持ち込むわけだが、山で見かけたら、貧乏くさいと言わずにスマートだと言って欲しい!



ちなみに、お気に入りのトレールミックスはコレ。TRADER JOE'S Sweet, Savory&Tart Trek Mix. これにマーブルチョコを追加して食っている。ま、ナッツ、レーズン、ホワイトチョコと茶色いチョコも入っている。酒の時はナッツ、レーズンを選択的に食っても可。ただ、少し重いのが難点。どんどん食って軽くするしかない。
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袋も買っているわけだしね...
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by ulgoods | 2008-10-03 21:32 | 生活系

二日目

目が覚めたのは5:30位だったと思う。既に周りは起きていたので、その物音で目を覚ましたのだろう。実によく寝て爽快だ。幸せなのでQuiltをかぶり直して少しの間微睡を楽しんだ。
そのうち、沢を詰めてきたお隣さんが朝食を始めた。メニューは菓子パンと湯を沸かしてコーヒか..朝飯に菓子パンは良い考えだな。押されても中身がはみ出ない定番品を探して真似しよう。さて、私も何か食うかと上半身を起こしたが、昨夜のヒジキと板麩入りアルファ米が意外に腹持ちが良く、空腹ではないのでトレールミックスを一掴みとコーヒーで済ませた。コーヒーはJAVA Juiceを水で薄めて飲んだ。別に熱による澱粉のアルファ化の必要がないし、体も冷えていないから湯を沸かす必要もない。ま、固形燃料を屋外で使うのが朝一番は面倒だったこともある。カフェインを摂取して、これで屋外へ出てニコチンを充填すれば必然的に朝のお勤めが始まるはずだ。外は相変わらず曇っていた。約束が違うじゃないかと思ったが、まだ時間も早いから山の天気はこんなもんだろう。
片付けをして掃除をして挨拶をして小屋を出たのが6:30、今日は長丁場になる予定だ。昨日の雨で笹が濡れているから上下とも雨具を着込んだ。靴も濡れているが、Gore靴下を履いているので問題ない。
出だしからこんな道。
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5m行くと笹が覆い被さって前が見えない道になる。

■雨具
当初はシェルターを兼ねてSixMoon DesignesのGatewoodCapeIntegralDesignsのSilPonchoのポンチョ系とモンベルのレインチャプスで良いかと思ったが、普通の雨具にして正解だった。というのも..濡れた笹を跨いだりすると、レインチャプスでは保護されない股の部分を朝露の葉が通過して濡れてしまう。ポンチョも枝に引っかけてしまいそうだ。天気が良くなって朝露も乾いてくるが、上半身の雨具を先に脱ぎ、下半身が脱げるようになるのは10時くらいだった。今回使ったのはモンベルUSAのピークシェルジャケットで、これは脇腹から腕にかけて大きくPitZipが付いているので全快にすると換気が良い。生地の透湿性も優秀だし、胸元も大きく開けるので、結果としてポンチョと同程度の換気ではなかろうかと思う。ああ、雨具のズボンはチャックを開けて歩く。オヤジっぽいが、換気優先。

■八瀬森山荘へ 6:33-9:57
松川温泉への分岐を通過して7:22に大深山1541mに着いた。この頃になるとやっと空も晴れ、岩手山まで良く見通すことができた。裏側から岩手山を見るのは初めてだが結構不細工。眼下に八幡平樹海ラインがすーっと伸びている。単車のようなエンジン音の車が1台、気持ちよさそうに道を登っていった。この時期の早朝に屋根の開く車で走ったら爽快であろう。
このころ、反対側からの二人組とすれ違った。聞くと、乳頭温泉から入り北上し昨夜は八瀬森山荘泊とのこと。笹藪の中で急に出会うので心臓に良くない。地元の人のようであるので、田代平までの道を聞くと、概ねこんな調子だが次第に良くなる傾向だと教えてくれた。ただ一カ所、相当悪いところがあるらしい。昭文社の地図にも出ている曲崎山のことだろう。やれやれである。
しばらく歩いていたときのこと、突然、背後に気配を感じて振向いた。黒いものが見える。ええええっと思ったが、黒いトレパンに赤いヨットパーカー、普段着系のお兄さんであった。この方も地元の人、足が速い。今日中に田代平小屋まで行って、奥さんを乳頭温泉に迎えにこさせて合流の予定らしい。今日中に田代平小屋へ向かう人が居るとは心強い。一緒に歩こうと思ったが、超軽装で微妙に足が速いので先に行ってもらった。その後、道々このお兄さんのスリップ痕を見て楽しむことができた。すぐに八瀬森山荘からの男女ペアと会う。やはり、さっきのお兄さんに少し驚いたとのこと。気配を消して歩くのが上手いのだろう。
小休止時に撮影。靴は水溜まりで泥になり、笹藪で洗われてきれいになるを繰り返す。
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関東森9:36通過。更に小振りの湿原を通って八瀬森山荘へは3.5時間掛かった。昨日、2時間ロスせずに日没近くまで歩けば何とか到達できた計算だ。
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この山荘はブナの森の中にある。羽目板が黒光りしてなかなか堂々たる姿だ。はしごが掛かり、二階にも出入り口がある。小屋の下が黒いのは長期間雪に埋もれる故の防腐剤を塗っているのであろう。内部は土間にテーブルがあり、ストーブも置かれ、二階の手摺りには布団が干してあった。単行本や鍋釜も残置されているが、整理整頓されているので雑然感はない。寝具があるなら食料だけ担いできて逗留しても良いかもな。
小屋の手前を流れていた小川に水を汲みに戻ったが、なにやら飯粒が漂っている。握り飯でも落としたか、食器を洗ったか..ちょと残念。が、水飲み場を汚すヤツも居るまいと目を転じたら5m程上流に踏み固められた水場があった。今回は荷造り時に塩タブが見つからなかったので三沢基地内のバーガーキングで獲得した塩の小包を持ってきてある。二袋を水に塩を溶かし、大量の水と飲み塩分補給とした。ここの水も旨い。
30分の大休止。雨具の下も脱いだ。
この先、なにやら悪い雰囲気が予想されたので熊鈴をストックのストラップに付けた。鳴らしたい時に腕を振って打ち鳴らすことができるので良い。ザックに付けたままで同じ程度に鳴らすには、かなり奇妙なダンスをする必要がある。
朝飯を食っていなかったが、先ほど、塩水を大量に飲んだこともあり腹は満腹。ナッツバーを食ってエネルギーを補給しておいた。

■大白森山荘へ 10:29-14:05
八瀬森山荘を出てすぐ、ブナの森の中、日の差し込む所にヒラヒラと雪のように舞うものがあり、しばし見とれた。羽を広げて2cmにも満たない蝶?私の通過に伴ってどこからか湧いてきてまたすぐ消える。よーく見ていると、ブナの幹から現れまた消えていく。どうやらブナの幹と保護色になっており容易には気がつかないタイプだ。一匹を目で追って止まったところを観察したが、触覚の形から蛾だと思う。その後も数カ所で雪の舞を楽しむことが出来た。
途中、こんな手形を発見。
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ああ、ちゃんと居るんだなという感じ。

曲崎山11:50、笹で覆われた結構急なピークだが、眺めはまずまず。見渡す限り目に入る一面が森、なだらかな起伏が樹木で覆い尽くされている。私も森深いところへ来たものだと嬉しくなった。
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小突起が畚岳でその奥が八幡平頂上付近。あそこから来たのだ。
曲崎山からの下りは背の高い藪と掘れた急斜面で難儀した。ちょうど足の幅くらい掘れており、無造作に足を置くと漏斗状の掘れの底に向かって足が滑り、その後尻餅をつく。足元だけ見て歩くと危うく獣道に入りそうになる。しかも雰囲気も悪い。熊と鉢合わせしないようにと、手首にある鈴を打ち鳴らしながら歩いた。
大沢森12:48を経て、標高1000m未満の低いところへ下がる。その辺りは下草が藪からシダに変わってスッキリした山歩きができた。途中、道とGPSの乖離が大きい箇所があり、大沢へ向かう道に入ってしまったが、沢の音を聞いてこりゃ違うと引き返したら標識を見つけた。いかん、だいぶ疲れてきたようで注意力が落ちている。トレールミックスを食って一服して小休止とした。20分ロス。分岐から30分ほどで大白森山荘に着いた。ここも新しいログハウスである。窓ガラスに反射させてポートレートを撮った。
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ここの水場は一見涸れており諦めようと思ったが、近づいて見ると集水升のオリフィスから升の壁にへばり付いて少し水が流れていた。升の底の奥にシェラカップを差し入れるとありがたいことに1分ほどで満たされた。飲んでみたがここの水も旨い。シェラカップを満たし、ナルゲン袋に移す作業を繰り返して、2Lの水を補給した。口が広いナルゲンの袋は水を移すのに都合が良かった。

■大白森山荘から大白森 14:33-15:00
途中、シャリバテを自覚し、立ち止まってトレイルミックスを食った。シャリバテは少しの登りでも息が上がり足が重くなる。前回の赤岳断念の時と同じ状態だから自覚できるようになった。5分くらいの休憩だが、チョコレートが効いたか、すぐに回復した。とは言え、もう14:30、ちょっと田代平小屋へ着くのは危なくなってきた。
大白森の湿原は忽然と現れた。かなり大規模だ。山の鞍部ではなく頂上付近の起伏のある地形に存在するのも不思議な感じ。長い時間を掛けて形成された湿原にずっと延びる木道をただ一人、秋色の草原を風に吹かれて歩いた。気持ちよい。
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■日没へ
大白森から一旦少し下って登り返すと小白森の湿原がある。ここは湿原の中ではなく脇を通るのだが、湿原に少し入った木道の終点から先に踏み跡があり、乾燥していたのは残念だ。まったく、残念な人が居るものだ。
さて、この辺から日没を意識しなければならない。
案としては、
A案:鶴の湯分岐から温泉へ降りて投宿し、翌日にトレールに戻る。
B案:5時を過ぎて、適地があれば不時露営を行う。
C案:残業をして田代平山荘まで頑張る。
の3つ。A案はあまりに残念だ。一旦降りて温泉でふぬけになれば登り返しなどできようはずもないことは自分が知っている。B案は悪くはないというか、その可能性への対処できる装備で来た。C案では恐らく日没から1時間くらいは歩くだろう、道の状況によっては採用しないこともない。とりあえずA案は破棄と決め、鶴の湯分岐を16:28通過した。
人里に近いと道は広い箇所が増えて歩きやすいが、喜んでいるとすぐに笹藪でがっかりという繰り返しの道が続いた。時計を見ると不時露営を選定する17時になっていた。すぐに1063.4mのピークがあるはずで、山頂辺りは等高線的になだらかであったので、第一候補とした。着いてみるとその場所は道幅も広くなっており、良く踏まれ、おそらく人が休むのだろう、瓶の破片なども落ちていた。取り敢ずその場をチェックして前進したが、その先は緩い下りになっており、先は地図的には鞍部で湿っていることが予想されたので戻って17:03、1063.4mピークで露営と決した。

■野宿
アライのシングルツェルトは出発当日に足元に換気口を開けてメッシュを張る改造をしてあった。こんなに早くにテストする機会を得るとは、不意の露営ではあるが好都合であった。手早く設営を済ませて、必要な物のみ出し残りはザック諸共Sea to Summitの防水袋に入れてシェルター脇に転がしておいた。汗で濡れたパンツを脱いでタイツに穿き替え、これまたSea to Summitの洗濯物干しロープを張って濡れたTシャツやパンツを乾かしに掛かった。ま、乾かないだろうが..
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飯は不思議に腹が減っていないのと、獣のことを考えるとこの場所で食い物を調理したくない気持ちだったので、トレールミックスを食っただけで済ませてしまった。

■熊用心
友人の弘前大学探検部OBのKにこの山域に入るに当たって電話で情報を仕入れてのだが(Kは登録前だが大学の近くの白神山地を釣り竿を担いで縦横に泊まり歩いた果報者)、地元の人は熊避けに蚊取り線香を使うと言うことであった。幸い夏の残りがあったので私も持参した。要は煙なのね!と思い、小さな焚き火を思いついた。道沿いに枝を数本拾ったが湿っている。こういうのは煙が良く出る。親指大の枝を数本組んだだけの小さな焚き火であったが湿った枝では点火には難儀した。燃えやすい樹皮が得られる植生でもなく、小さなビクトリノクスではナイフで削ぐことも出来ない。代わりに持参の単行本と蝋燭を使って何とか点火に成功した。単行本はカバーと巻末の書籍の宣伝ページを使い本文に至らなかったのは幸い。読んだページまでは燃やしても良いのだが、わたし的には本を傷つけるのは嫌な気分な人だ。蝋燭は寝かせて使うと蝋が流出して消耗が激しいので上から蝋を垂らした方が火興しには良かった。チョロチョロだが煙ぼうぼうの焚き火脇に寝そべって小さな炎に魅入って小一時間過ごした。顔を上げると、ほの暗かった筈が既に真っ暗に暮れており、ブナの枝の間からは星の瞬きが認められた。明日も晴れればよいが。その後、持参の蚊取り線香に点火し、シェルターに潜ってラジオを点けた。
さて、人の気配をぶんぶんに振りまいて眠りに入るわけだが、一つ頭を過ぎった心配は、里が近いので残飯などの味をしめた人擦れした獣が餌の期待を持って寄ってくることだった。とは言え、その対抗手段は畢竟、山を下りることに他ならず、私は山に居たいので忘れることにした。蚊取り線香はまだ仕事をしているようであったので、ラジオも煩いから10時くらいには消して寝てしまった。

■股ズレ
焚き火横で寝そべっていたとき、股の付け根辺りにかゆみを伴った痛みを感じた。股ズレか?思えば、昨夜は雨と汗に濡れたが下着を替えずに寝て乾かした。今日も汗で濡れてしまった。パンツはさっき脱いで干しており、今はタイツだけでかなりフリーな状態なのだが、ふぐりと股の境界辺りの皮膚が痛た痒い。下着はボクサータイプだったので、そこの場所は皮膚、布、布、皮膚となっており、今フリー状態で皮膚と皮膚が触れる状態になって痒みが出たような感じ。早速、ファーストエイドキットから、アルコール綿を出して指と患部を消毒し、抗生剤入り軟膏を塗り込んだ。少しヒリヒリするが、快方に向かう予感。持ってて良かった!股ズレで山行中止では情けない...
使った分は補充せねば。

■シェルターの通気性
今回持参したシェルターは小さいので荷物は大半は外の防水袋に入れ、中には酒と緊急用具くらいしか持ち込めない。ま、Bivy泊と同じだから慣れている。
今回は足元を切り抜いて網を貼って通気口を作った。
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アライのシングルツェルトに長年買わなかった疑問を自己解消したつもり。たぶん換気は効いていた。頑張ってたばこを吸ってみたが煙は抜けているようだった。結露低減に役立つ筈だ。

■翌朝、三日目の朝飯
ぼたぼたという雨音で目が覚めた。あーあ、雨かorz
山では朝方は天候が不安定だが、ラジオを聞くと宮城あたりは晴れらしいので晴れが広がることを期待して、化繊Quiltにくるまって待った。そのうち晴れ間も見えだしたので、穴蔵を抜け出して朝飯の準備を行った。メニューは、アルファ米に顆粒昆布出汁と醤油と削り節、それと大量のヒジキ、大豆で出来た代用肉を投入し、湯を掛けて保温袋で蒸らした物と味噌汁である。乾物は土屋さんの店で入手した。飯は結局はゆかりを掛けて食うのだが、アルファ米に乾物の類を入れると歯触りもあって食ってる感が強まり、かつ腹持ちも良いようだ。これなら富山の先生も文句を言うまい。元々大量の脂肪を携えて歩いているわけだから、脂肪燃焼の点火剤程度に炭水化物が取れればOKよ。
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■出発
食後、また雨が降り出した。もう一晩ここにいても良いのだけれど、そのうち水も切れるから歩かないと。撤収に掛かった。やはりというか、また雨なので干し物は乾いていなかった。先ずはマットを丸めて入れて骨格を作る。その筒の中の底に濡れ物を放り込む。続いて防水袋を入れて完全防水区画を作り、化繊Quiltを投入する。Quiltは特にスタッフザックには詰めない。というか、大きめザックなのでキリキリ詰める必要がないし、その方がザックの無駄な空間も減って好都合で化繊のロフトも失われない。次いで食料の袋、着替えの袋、行動食袋を入れて、その上にGraniteGearのザックに着いていた大きな巾着袋を乗せて防水区画を閉じ、その上に水など濡れても良い物を乗せてザックを閉じる。巾着の中はストーブ袋、エマージェンシー袋、トイレ袋、行動食などの小物が入っている。この袋の中は乱雑で構わない。あまり小分けしてスタッフバッグを多用するとその分の重量が嵩むから。脇のポケットにシェルターとTyvekの敷物、水筒を入れてパッキングは完了する。持ち物と定位置が決まってきたのでサクサクと撤収は進むし、足りない物があればすぐに気がつく。

■熊?
雨風が強まった中、既に10:53、荷造りと身支度が出来て数歩歩き下りに掛かったところ、濡れたせいか熊鈴の音が不調だったので視線を鈴に当てて二三度打ち鳴らしてみた。ら、その時、15m位先であろうか、黒い影が飛んでいって藪の中、バキバキという枝を踏み折る音と、ドスドスという振動が起こった。あ、熊か!一瞬の出来事であった。数秒で笹の鳴りは終わったのでまだ遠くに行っていないかもしれない。首から提げたホイッスルを短く吹いて鈴を鳴らし、「おーい、居るよ-、来るなよー」と声を上げた。そういえば、笹藪は時々口を開けて、大きな獣の通った跡が沢山ある。居るんだなーと納得した。頭上では風が轟々鳴ってるし、雨は強くなったし、暗いし、笹深いし...悪い雰囲気充満なので、その後は積極的に鈴を鳴らし、ホイッスルを吹いたり、「ホーホー」と声を出して歩いた。なぜホーホーか理由はないが、他に良い言葉も考えつかなかった。

■下山
11:18、蟹の湯分岐にさしかかった。ここから下れば乳頭温泉は30分。このまま進めば田代平山荘だ。さて、どうするか。予定では今日は小屋を経由して秋田駒まで進み、阿弥陀池避難小屋まで行くことになっている。が、風雨強く荒れ模様。稜線に出るのは辛そうだ。田代平小屋で停滞するのも良いが、なんといっても30分下れば天国のような温泉がある..暫し辻に立ちすくんで考えたが、考えていたのは進む理由であって、心は既に温泉に向いていることに気がついた。温泉!と歩みを曲げて下りを選択した。
相変わらず雨風強いが、森の中は風はなく、ブナの幹を蕩々と水が伝い流れている。雨の中の森を歩くということ、これはこれで幸せなことだ。
やがて藪から舗装の道に出た。突然目の前には大きな宿が立ち、大釜温泉と書いてある。11:55、森から出たら雨も直撃で一層ひどいので温泉の庇に走り込んだ。

■邂逅
そういえば、来るときにバスではあるが仙台を通過するので領主のrwalkerさんに仁義を入れておいたのだが、氏はアグリなお仕事で、収穫が忙しい時期でも天気が悪ければ顔を出すかもしれないと返信が来ていた。緩く言っていたが律儀者のrwalker氏のこと、来ている気がしていた。早速下山のこと、もし乳頭山でお待ちならご容赦の旨メールして温泉に浸かった。源泉掛け流しの乳濁した良い湯だ。どうせバスは1時間に1本、普段は有名温泉でも行水程度だが今回は諦めてゆったり入った。暫く居ても誰も湯に来ない。外は相変わらず風雨強い。飽きたので道後温泉風に床に寝そべり、時々手桶で湯を掛けて寝ていた。そのうち露天風呂があるのに気がついた。頭を雨に打たれながら湯で過ごすのも風流だろう。底に何やら触るので摘んでみたら沢山の団栗が沈んでいた。上の木から落ちたのだろう。野趣あふれる湯であった。
いい加減、手の甲までふやけたので溶けてはイカンと思って湯から出て、帳場で酒を買って飲んでいたらメールが来た。rwalker氏だ。読んで驚いた。隣の孫六湯に下山したとかいてある。早速電話を入れて大釜温泉にいる旨伝えると、2分後に車が駐車場に滑り込み、ちらっと見た運転手はrwalkerさんだった。玄関で再会の握手をし、rwalkerさんも一風呂浴びるということなので、私もほろ酔いではあるが、また湯に入った。本当は一人一回の入浴で500円なのだが、帳場のオヤジも仕方ないでしょと笑って再入浴を許してくれた。湯の中で聞いたが、やはり律儀者の氏ゆえ、言ったからには朝早くに孫六湯から乳頭山に登り、下って田代平小屋で昼寝しながら私を待ったが、現れないので悪天候もあって下山してきたという。こちらの動きを読んだ見事な包囲網。rwalker氏の網からは逃れられないことを悟る。その後、氏の車によって仙台へ連行され、焼き肉屋と居酒屋ハシゴによる酒池肉林の時を過ごし、帰りは足元ゆったりバスで新宿に送致された。普通バスで3000円、ゆったり贅沢タイプで4000円と嬉しい金額である。バスは仙台へ向かう途中の車内から携帯で申し込みが出来た。便利な世の中だ...

田沢湖までは歩けなかったが、楽しく山歩きが出来てよかった。
日本アルプスでなくとも深い森なら満足は大きい。


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by ulgoods | 2008-10-01 12:31 | 山行