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私とシロとチャと

続き...
一部、犬好きな人には辛い記述があるが、私が突如遭遇した状況に鑑み、了として頂きたい。

Bivyのジッパーを開ける刹那、走馬燈のように考えたことは、
熊か?でも熊鈴を着けた熊はネギを背負った鴨より不可解だ...だからこれは熊ではないだろう。
じゃぁ猪?猪突猛進で来られたら厄介だが...
など考えながらジッパーを開け、点けたライトに目が順応する間も無く、コカコーラの空き瓶色のビー玉を日に透かして見たような薄緑の光の玉が目の前に浮んでいたわけだ。正直なところ驚いている間もなかった。が、Petzl Tikka XPをハイビームに切り替えて遠くからの輝きを確認した頃には近くにある二つの反射の主が分かった。
こりゃ犬だ。
犬が一頭、1m以内にいる。もう一頭は4mくらいか。なんだ、犬か...と思ったが、近くいる一頭が傍若無人にグイグイと顔を近づけてきた。ん?犬、あ”ヤバイ!野犬は猪よりも質が悪いかもしれない。二頭が連携して狩を始めたら厄介だぞと、私の中でアラートが鳴った。こっちは体をBivyに埋め込んで片肘着いて上半身を半分起こしている不安定な状態だ。寝床から体を抜く間もなく犬はどんどん近づいてくる。をいをい、と思ったがヤツはこっちの状態にはお構いなしだ。もはや30cm、私の規定する生物どうしの警戒距離を越えいる。ヤツがその気になったら、鼻を囓るでも頬を舐めるでも一動作で出来る距離にある。もーだめだ。選択も猶予もならない。
テェェイ!空いている手でとっさに犬の頭に拳固を呉れてやった。片肘で体勢が悪くて力が入らないから大した打撃は与えられない。チェ!ヤツは頭に拳固も驚きもせずに、しかし、ちょっとだけ悲しい、同時に少し媚びた目をして首をすくめ腰を落とした。おや、吠えないし反撃もない。見ると妙な首輪をしているではないか..鈴はそれにあるらしい。ふむ..どれ、と離れるでもなくそこに居直った犬の首輪を掴んでグイと引き寄せた。

それは白い犬だった。サイズは立てば私の腰下くらいか、中型犬というのか。逆手に握ってたぐり寄せた首輪を見ると文字が書いてある。住所らしい。メガネを外していたので細かくは読めないが、奥多摩町XXXX小林とあった。飼い主から逃げてきたのか?が、首輪は二本あり、奥の首輪からワイヤーが20cmくらい飛び出ている。ん?罠から逃げたか?が、よく見るとワイヤーの根元には黄色いテープを巻いた小さな箱がある。J-Waveの鳴っているFMラジオに一部ワイヤーが掛かったときにザザッとラジオに雑音が入った。どうやら電池が生きてる電波発信機を付けているらしい。なんだこいつら?飼い犬か?
反撃しないので手を離して放免してやったが、逃げると思いきや、なお寄ってくる。バカ、やめろよ、来るな!と、Bivy脇に置いてあったTiGのCFポールで犬の背を打ち据えた。低く屋根を張っていたので大きく振り上げられない。二度三度叩いたが、やっぱりちょっとだけ悲しい目をして、少し腰を低くするだけで逃げてくれない。とにかくこっちが体勢を整えられる距離の外に出て欲しい。ポールの先端ゴムを犬の腰に当てて、力任せに押したが2,3歩よろめいただけで、やはり動かない...
少し間合いが出来たので上体を起こして辺りを見ると、いつの間にか、後から来た一頭が先の一頭と反対側、1mもない距離に丸く寝そべっているではないか。をっと、いつのまにか背後を取られていたとは。こやつら、味なことをする。目を戻すと先の一頭も丸く寝そべりこっちを見ている。私は二頭に挟まれた格好だ。

ふむ。とりあえず事態は理解できてきた。
第一、こいつらに敵意はなさそうだ。
第二、こやつら飼い犬で、普段から手荒い扱いには慣れてる感じ。
あの悲しげな媚びた目は普段から頭を殴られた時に上目遣いで飼い主に見せる表情なんだろう...
しかし、なぜかこんな山の中に鈴と無線機を付けて?首輪はぴたりとしていて少し窮屈そうだ。どうせならブランデーの樽でもお願いしたい。
発信器は小さく、これではGPSは付いていなさそうだった。アマチュア無線のFoxハンティングの要領で3素子くらいの八木アンテナを使って探す用と見たが、犬の行動範囲の研究用か?
ま、ともあれ再び数秒の静寂が訪れた。とりあえずは平和だ。

改めてメガネを着けて二頭を見た。最初の一頭は白色なのでシロと呼ぶ。後のはチャだ。やれやれと思った時、シロが立ち上がり、クンクンと鼻で落ち葉をかき分けながら私の方に寄ってきた。シロが動けばチャも立ち上がり、しきりと焚き火の辺り、飯を食った辺りの落ち葉を鼻で掘っている。枯れ葉を掘りながら何か期待するげな目をこちらに向けるシロ。ああそうか、こいつら腹が減っているんだ...枕元には食いかけのトレールミックスが置いてあった。慌てて口を折って枕の下に押し込むが、シロは目敏い。枕の辺りに鼻を突っ込んでくる。またシロの頭を掴んで押し戻す。そんなことを何度か繰り返した。

シロとチャは何を食ってこんな山の中にいるんだろう。アバラが浮き出て痩せている。脂肪は付いていない分、腰から足への筋肉が浮き出て見える。精悍とはチョト違う。やつれだ。なんやらナウシカに出てくる半分溶けかかった巨神兵というか、もののけ姫の冒頭に出てくる狂った巨大猪の溶けた筋肉の印象だった。
チャは私との生物的な限界距離を保ち、奴はこっちにはあまり関心をもせずに辺りをクンカクンカと嗅ぎ廻っているのに対し、シロときたら私の髭に飯の臭いでも付いているか?私と食い物が興味の対象のようだった。二頭は目つきが違う。チャは目の中にしっかりした光を持っているのが分かるが、シロのそれは半分溶けかかって虚ろに思えた。空腹と寂しさで半分狂いかけているんだろうか。
シロを押し戻しながら困ったな..と思った時、シロの視線がキッっと斜め向こうを向いたその時、シロが猛然とダッシュして走って行った。それにつられてチャも飛び上がって走る。乾いた縦走路を軽いが逞しい躍動する足音が遠ざかって行った。
あれは何だったんだ?
再び私一人になって考えた。ああ、あいつら猟犬なのかもしれないな。どこかで飼い主がキャンプを張っているのを退屈で逃げ出してきたのか?私は遊ばれていたわけだ...ヤレヤレと思ったが、危害は去った気がしたので再び寝ることにした。
遠くでウォォォーと犬の遠吠えが聞こえた。シロだな...バカめ!

トレールミックスを防水袋に移し、安心して体を横たえて、さっき起きた事を考えているうちに、うつらうつらしてきた。さて寝るかなと思ったら、だ、またダダダと駈ける音がしたと思ったら、だ、...シロが再び近くでガサガサやりはじめた。さっきの拳固を忘れ、さっき叱られた時より距離を詰めて寄ってくる。きっとシロは物覚えが悪いのだ。ガフガフと言いながら、まだ諦めもせずに私の近くを漁っている。枕元に置いたラジヲも踏みつける。お構いなしの傍若無人ぶりに呆れていると、キッっとシロの目が光った。
あ、ヤバイと私も手を伸ばす。さっき外してラジヲの横に置いたメガネめがけてシロが噛みつくのと私の手が伸びるのが同時だった。メガネの半分をシロが噛み、半分を私が握る。ヲイヲイ、やめろよ、壊れるよぉ、力を抜けよ...聞き分けがない犬にウラァ!と大声を出してみても、そんなの慣れっこなシロは動じない。壊れるよぉ..とっさに私は片肘着いていた手でシロの顎を思いっきり握り、ヤツの口をこじ開けにかかった。シロも本気じゃなかったんだろう、数秒も思いっきり握力を掛けたら少しだけ口を弱めてくれた。その隙にメガネを引っこ抜き、唾液でベロベロだが、そのままBivyの中に放り込む。全く油断も隙もない奴だ。一方、チャはと言うと、そんなの横目で見ながら、ちゃっかり私の横で丸くなっている。手を離されたシロはまだ諦めずにクンカクンカと鼻を落ち葉に突っ込んでグルグルやっているが、やがてこれも少し離れた所に丸まって小さくなった。
ん?こいつらヒト恋しいのかい?

夕食で使ったビニール袋は3重に密閉してあったはずだが、食いかけのトレールミックスが出ていたのは失敗だった。野生に対する食料の管理レベルが統一されていなかったのは私のミスだ。本来なら、寝る場所のずっと手前で夕飯を済ませ、なお歩き、食った臭いから離れたところにキャンプを張らなければならない。焚き火とラジオで野生動物に私がここにいることを示していたつもりだが、全ての警戒レベルが整合し徹底していなかったことを反省した。
犬に気付かれたとなると熊なら尚更、もしかしたら森中の噂になっていたのかもしれないな。
以後、奥多摩では食い物はAloksakを二重にして寝床から離して木にぶら下げることにする。そうだ、URSACKを買わないと...

犬共の写真を撮ろうと思ったがカメラは食料と同じ防水袋に入れてある。開けるとシロが煩そうなのでやめた。
幸いzzz_bearさんによって1週間前、同じ尾根のだいぶ下で撮られた写真があるので、許可を得てリンクを張らせてもらう。

これはチャだな。一週間以上前から居るのか?半ば野生の飼い犬はヒトや火を恐れる感覚がないようだ。かえってヒトの近くに寝ることで安心するのだろう。野に放たれてヒト恋しく遊んで欲しかったか...少しの哀れを感じたが、基本的には放し飼いな訳で全く迷惑だぜ、奥多摩・小林...犬が寂しがってるよ!
軍曹からもらったコメントによると、猟期前に猟犬は山に放たれるとのこと。猟犬も飢えて野生を補充するのだろうか。なら私と同じか...

さて、私の体温を感じて近くで丸まる2頭の猟犬、時々頭をもたげたり、遠吠えしたりもする。シロの遊び癖には辟易だが、暇で甘えてるようだから大目に見てやる。どうやら主従関係は成立しているようなので、二頭の番犬を得て、これはこれで熊除けになるからラジオのスイッチを切った。
寝る!こんなアホ犬の遊びに付き合っている暇はない。
その後もシロとチャは何度か遠征しては遠吠えし、私の所に帰ってきてはガサガサと安眠の邪魔を楽しんだ後で寝ていたようだ。何と、チャはイビキも掻く。
いつしか私の意識も飛んで、ん!と、眩しさに目を開けると、東の尾根が赤く染まって太陽が現れていた。その時にはもうそこにはシロもチャも居らず、丸まって寝た落ち葉の痕跡すら見あたらない。奴らも仕事に行ったかな?

昨日のメガネ、Bivyの中に放り込んだままだったのを引っ張り出して日にかざして見てみた。ベッタリの唾液が乾燥している。こりゃ萎える...拭いていて、おやと思い、付いている繊維を擦ってみたが取れないではないか。何度拭いても。それは繊維ではなく、稲妻形に刻まれた何本かの線だった。やられた。シロよ、レンズに歯を立てやがったな。傷のレンズの眼鏡を掛けてみたが、傷が目玉の前でぼんやり見える。ああ、これは気になる頭痛になる。レンズを換えなくっちゃ、これじゃ仕事で使えない..
朝日を見て、シロとチャの居ないのを確認したらまた眠くなった。あいつらのせいで寝不足だ。
昨夜は汗で濡れたまま寝たのだが、最初は冷えたが、目覚めた時にはすっかり乾き、フカフカのポカポカの心地よい寝床になっていた。ああああ、キモチいい...もーどーでもいい。と、次ぎに起きたら8時過ぎになっていた。既に日は高い。仕方ないから温い寝床を出て歩く準備をした。
獣が嫌うかと思った焚き火跡だが飼い犬には通用しなかったようで、ストーブはチャに蹴られたらしく五徳が遠くに飛んでいた。トホホ...

さて飯を食うのは面倒だから省略。あたたかく寝たのだから昨夜の炭水化物の残りが体の中に残っているだろう。飯は歩きながら行動食で済ますことにして、少し湯を沸かしてKuksaにコーヒーを作った。以前、コメントで紹介してもらった本「遊牧・トナカイ遊牧民サーメの生活」にはよくKuksaが登場する。彼らは厳冬の北欧の自然の中でKuksaを携え、ウオッカを入れたコーヒーを大量に飲み、解体したトナカイの脊髄を煮込んだヴイオンを鍋からKuksaですくって飲む。なるほどそんな形に出来ている。

撤収に掛かったが、この夜の空気は全く乾燥しており、落ち葉に敷いたシートには水滴一つ付いていなかった。冷涼、乾燥、落ち葉..あのアホ犬共さえ来なければ完璧なキャンプだったのに。寝床を撤収し、完全燃焼の白い灰を散らし、除けた落ち葉を戻して復元した。
珈琲を飲み乾し出立し歩いていると、遠くで犬の遠吠えがした。おや、シロか。仕事かえ?


長くなった。
その後、長沢背稜を歩き、イモノキドッケで三峯からの道に出会い、雲取山荘から頂上を巻いて鴨沢へ降りた。
快晴の連休最終日だが人は少なく山の紅葉は美しかった。
翌日、電車の中で女性二人の会話が耳に入ってきた..高尾のことらしい。「もー人人人でぇ」「下のおそば屋さんでも行列よぉー」「ヘー」ということだったらしい。季節的に、さもあらん。

装備と計った気候については次の機会にUPする。



月曜に眼鏡屋へ行った。レンズ交換で1.3万円、
奥多摩の小林さん、半分で良いから払ってくれるかい?
「登山・キャンプ」へ+1Point..Ckick!

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by ulgoods | 2007-11-28 13:01 | 山行 | Comments(37)

暗闇の訪問者

続き..

ネコまんま飯の後に、ささやかな贅沢としてラズベリーのドライフルーツーを囓ってデザートとした。乾燥させたバーなのだが、ラズベリーの濃縮した味が旨い。
さて、全部食ったら飯の袋は口を縛って臭いが出ないようにし、さらにゴミは全部をジップロクに入れて臭いを封じ、その袋を防水袋に入れた。念には念を入れて飯の臭いは三重に気密なわけで、これなら嗅覚が鋭い野生の動物でも気が付くまいて。

とっぷり暮れてもまだ6時過ぎである。飯も食ったし、じゃぁ寝ろ、と言われてもそれは難しい感じだ。今日は無風だ。しかも満月の筈。へへへ、無風の夜に使える日没後の小さな楽しみを持ってきてある。
風がなければBushbuddy Ultra Wood Stoveを使って小さな焚き火をすることにしていた。焚き火用の缶ストーブがあるならそれで湯沸かしもすれば良いのだが、焚き火はあくまで楽しみと獣除けのつもりで、それに湯沸かしを依存するつもりはない。薪など自然物に依存するものが増えれば、逆に宿泊地が制約されるのだ。しかもこんにちの認識として地面に薪を置いた直火は、地面と燃え跡を見た人の心にダメージを与えるので既存の炉以外では許されないことになっている。このストーブは三重底になっているので燃えた状態でも底を掴むことができる。地面には優しい。
獣除けの効果であるが、あるかどうかは分からない。が、獣は火を恐れるというので、無いよりは良いだろう。また、火を恐れるなら燃えかすの臭いもまた獣除けになるかと期待した。

重さ僅か146g、極薄ステンレス製の精巧な二重壁ストーブを取り出して組み立て、枯れ葉を足で薙いで地面を露出させ、できたばかりの湿った黒土の上にストーブを置く。多少火が跳ねても延焼はするまい。そこいらに落ちている小枝を折って入れ、湯沸かしで余った燃えさしの固形燃料に再点火して着火材とした。
このストーブは燃焼室の直径が僅か95mmと小さいので、大きな薪は入らないが、盛大なキャンプファイヤーをするつもりはないので充分だ。私の焚き火はちょろちょろ燃えればそれでよい。最初は中空の萱のような枝や剥ける系の木の皮などを火口として入れておいたのですぐに炎が興った。薪になる木の枝は着火系の火口の上に並べて置き、下からの火で乾燥させながら燃焼ガスの噴出を待つ。中空茎の植物は蒸されると燃焼ガスをストローの先から噴出し、ロウソクのように先端から炎が上がる。面白いほど良く燃える。小枝系も蒸されて乾燥して出た可燃ガスがストーブの空気取り入れ口や二次燃焼口辺りで吸気された空気と混合し、美しい曲線の炎の流れとなって輝く。

(写真は昔撮ったイメージです...)
見とれながらも徐々に太い小枝を乾かしながら炎をつないでいく。木の木地が燃えるのではなく、木から出た可燃ガスが燃えることがよく分かる。酸素が足りないとガスは煙として目を攻撃するが、上手く空気が入るようにしてやれば煙は燃えるガスだったことに気が付くのだ。このストーブは小さくちょろちょと燃やしているのだが、焚き火に必要なテクニックを総動員しないといけない。小さくて薪と熱の容量がない分、しかも太めの枝は湿っていたから、大きな炎に任せっきりの楽はできない。が、それはそれ、突いて隙間を作って空気を入れたり、消えかけたら息で吹いて熾したり、遠火で次の薪を乾かしたりと段取りしながら、それなりに楽しめる。安全に炎を扱って燃えるを観察するのは子供らに体験させても良いかなと思う。

月も東の尾根から顔を出した。何と明るい満月だ!
ナルゲンのフラスコに入れてきた少しのモルトウイスキーを口に含みながら焚き火の横の落ち葉に寝そべり、小さな炎を小枝で突きながら梢を通して月を眺めて時間を過ごした。日没から経過し、次第に空気は冷えてきたが、充分着ているので寒くない。キリッとした空気は爽快ですらある。残念ながら焚き火の炎は暖が取れるほど大きくはない。時々かじかんだ手を炙るくらいだ。
時折、鹿がキューゥと鋭く鳴く。声と物音からすれば結構近いと思うが、野生の鹿は節操があるので近づいてこない。先日、阿佐ヶ谷のワイン屋で偶然会った都レンジャーによると、まだ熊も居るよ!とのことだったので、今夜は夜通しスピーカー付きのラジオを鳴らすつもりだ。

2時間近く焚き火で遊んで、少しの酒を飲み、月を愛でながらラジオで過ごしたが、いい加減飽きたので寝ることにした。この時には月が高く上がり、それは新聞が読めるほど明るい。闇に慣れた目には直視が眩しいくらいだ。月が高く上がり、いったんは闇に沈んだ木々の形が銀色のフィルターで漉された光で細部を現した。これならライトなしでも歩けるだろう。
乾いた落ち葉の上に作ってあった寝床にもぐり込む。Cuben Fiberの膜を通しても月が眩しいのでBivyのフードを閉めるが、10cmもジッパーを開けておけば息ができた。まんじりとラジオを聞きながら眠気が来るまで時間をやり過ごす。J-Waveはジャズ番組が続いてやっているのでご機嫌だ。

と、その時、遠くで聞こえた。シャンシャン..と小さな音だ。空耳ではあるまい。あぁぁ、何か来たよぉ。地獄の亡者か、はたまた、まだ歩いている人がいるのか?と驚きつつ、何かとの遭遇に心の準備をし、聞き耳を立てた。普段は使っていない野生の感覚を取り戻さなければ...
こんな月夜だ。まだ歩いている人がいるのかもしれない。人なら適当に無視してくれるか、声を掛けてくれるだろう。面倒だから寝ていることにした。亡者が来るなら真っ暗闇の夜の筈。
シャンシャン、シャンシャン...しかしそれは足音もせずに鈴の音だけが明瞭に近づき、予想に反して前触れなく私の回りを廻りだした。ガサガサと枯れ葉のこする音、だが足音はない..やばい、こりゃ人間じゃない!別の物だ...早くにBivyから頭を出して警戒すべきだったが、すでに回りを廻られている。後手に回ってしまったのか..
Bivyのままのス巻状態で食われたのでは私も浮かばれない。Bivyから頭を出してライトを点けると、ビカっと明るい反射が二個、射るようにこちらを向いた。

あ、獣だ。
さらにその向こう、新たな光の反射も現れ、計四つ。二匹の獣が私に向いていることを知る。
や、ヤバイのかも..


参加中...あ、歯医者に行かないと..
ストーブの件で長くなりました...メガネは次回囓られます。Clickでも!

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by ulgoods | 2007-11-27 11:38 | 山行 | Comments(10)

犬にメガネを囓られた

夜中に山で犬にメガネを囓られた。
レンズが傷だらけである...

三連休の後二日は初冬を迎えた奥多摩の件の巨木に会いに行った。
巨木の尾根は今年に入って3回目である。しかし今回は向こうへ行かないと...団栗がのんびりアクビをしているような巨木の畝を出て、尾根を突き抜けて登り、長沢背稜へ出てからは雲取か天目山へ向かいたいと考えていた。
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夏場は暑くて敬遠したが、Mother Tree(勝手に命名)の上の梢にはまだ紅葉が残り、この老巨木が今年も葉を茂らせていたことを知る。

紀行文は省いてメガネの件、
ウトウの頭から向こうはこれまでの穏やかな山容とは一転し、これってザイルが要るかもと思われる峻烈に切れ立った岩場もありで、結構アドレナリンが出た模様。湿った日陰の鞍部には雪も残り、5cmはあろう霜柱が地面を押し上げていた。
出の日はいつも通り道具の組み合わせに悩み、ぐずぐずと出発が遅かったものだから、タワ尾根から長沢縦走路に合う辺りではもう日も暮れかかり、西の尾根でせき止められて作られた日没の影が下から上へせり上がってくる感覚に追い立てられ、数歩登っては高くなった分だけ向こうの尾根に掛かった太陽がかろうじて顔を見せているという、水平に近い影の中での行動となった。やれやれと大きな石を回り込んでふと見ると何か標識がある。行ってみるとGPSがピィと到着を知らせ、踏み跡だけの尾根筋から目的地に出たことことがわかった。
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やはり逞しい踏み跡がある縦走路は何やら人の気配も残っている気がして、こんな夕暮れ時には少しだけだが心強い。ウトウの頭を過ぎてからはまともに寝られるような平らで乾いた場所が見つからないので焦っていたが、ここは少し良さそうだ。縦走路出合から酉谷側へ数メートル縦走路を少し下がった辺りに寝ようによっては水平に近いポジションが取れる場所を見つけ、今夜のねぐらに決めた。
今夜の寝床は
屋根として MLD/MLD Monk Spectralite.60 Tarp、鞘としてTitanium Goat/Ptarmigan Bivy、袋はNunatak/Arc Alpinist Quiltで、断熱敷物はPacific Outdoor Equipment/InsulMat Max-Thermo、シートはgossamer gear/Polycryo Ground Clothとした。汗で冷えた体にはMontbell/UL Thermawrap Pantsを穿き、足にはIntegral Designs/ Hot Socksを、上はNunatak/Skaha Down Sweaterを纏った。全体として-7度(華氏20度)に充分耐えられる勘定だ。
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固形燃料で少しの湯を沸かし、夏のSierraの残り、袋に小分けしてあったアルファ米100gに注いでAntigravity gearの封筒型のCozyに袋を入れて蒸らす。袋と保温材が茶碗の変わりだ。飯を蒸らしている間だにもう一度湯を沸かし、Kuksaにフリーズドライの味噌汁を作った。飯の袋を開いて鰹節を投入、おかずはそれだけ。味噌汁を飲みながら飯を頬張る。ろくに食わずに登ってきたから充分うまい。はふはふと白い息を吐きながら一気に喰らった。ものの数分もかからずカーボンハイドレートのリロードを完了!これは今夜の体温生成の熾き火になるはずだ。
まだ夕方の6時前、向こうの尾根にかすかな残照はあるが、木の根、落ち葉の裏から滲み出た闇が辺りを満たしてとっぷり暗い。人工の明かりのない山の中では、もはや充分に夜である。6時..普段は明かりの中で仕事をし、外に出ても暗くはあるが闇のない街中の生活を思うと不思議ですらある。

おっと、犬の話を書こうと思ったが、駄文を連ねてしまった。
続きは明日...


参加中...メガネ屋に行かないと...とんだ災難だね。Clickでも!

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by ulgoods | 2007-11-26 09:55 | 山行 | Comments(10)

鴨沢

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日原出てタワ尾根から長沢背陵経由で雲取で鴨沢。
バス待ち中。
夜中に犬にメガネかじられたけどいい山だった。
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by ulgoods | 2007-11-25 16:34 | Comments(11)

SpinnShelter / Gossamer Gear

SpinnShelter / Gossamer Gear

まだ山では張っていないのだが、Gossamer GearのSpinnShelterは重量と居住性が日本的気候にもマッチする全天候保護超軽量シェルターだと思う。
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とりあえず基本形を庭に張って寝たが、思ったより快適だ。入り口の高さがるからアルコールストーブが使える。で、出入りは楽な方だ。側面の傾斜があるので二人は辛いと思うが、一人なら悠々の広さだ。奥行きも充分なので雨の中を出入りしても寝袋は濡らさないだろう。
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重量はシームシール前で9.0 oz(255g!)。軽い。
生地は名前の通りSpinnekerだ。ヨットの帆に使われるこの生地は数日張ったままでも伸びや湿気による弛みが出ていない。最初はレジ袋並にパリパリしているが、いずれ落ち着くらしい。
これのリッジラインが懸垂曲線なので壁に皺が出ず、ピンと張れる。風が強い朝にも本体部分は予想以上に静かだった。ただし、今回はBeak(くちばし部)をちょっと低く張りすぎたか張りが弱くて風ではためいた。次回はもう少しだけ高く張ってみる。
この手のシェルターは間口の開きで高さが変わるのだが、SpinnShelterは内部に張り綱を張るので、綱に長さを記憶させておくことができる。しまう時に少し狭めておけば次回は良いだろう。

終端の三角もマジックテープで留めているので、ここは開けることができ、側壁に隙間を作らなくても換気が取れる。
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もっと高く側縁を浮かせて張れば半タープのような張り方もできる。この手のシェルターとしては張り方に多様性があり、晴れた日なら片側をガルウイングとして跳ね上げれば良さそうだ。
明け方の雨に降られたが、シームシールした縫い目から漏ることはなかった。Spinn生地はシンナーで溶いたSilNetがよく効いてきれいに仕上がるので、目止め作業をしていても楽しい。

Integral DesignsのSilShelterはカタログ的には二人用であり、高さが低いので側壁を吊り上げて広さを稼ぎ出す必要があるが、SpinnShelterに比べると背が低くて居住性は劣る。また、足元を外から吊ると距離があるために剛性がイマイチで、仕方なく中に骨を立てると居住性が阻害されるが、SpinnShelterの終端はは思い切った切妻屋根なのでピッチり張力を掛けることができて剛性感が高いし、空間が分断されずに居住性がよい。これで側面を吊ればもっと広くなるのだけれど、おそらく風へのはためきを嫌って採用しなかったのではないかと思う。側壁を吊らなくても一人用としては充分な広さになるよう高さと幅を決めたのだろう、バランスがよい。側面を吊った多角形的な佇まいのSilShelterも美しいが、SpinnShelterにはそれとは異なった合理的な美しさを感じる。細部までよく考えて作られている。

IntegralDesignsの新作のSilDomeかmontbellのMONO FRAME SHELTER DIAMONDも候補に上げたのだが、SpinnShelterに比べると張るのは簡単そうだが、一人用の空間としても、重量的にもSpinnShelterを凌駕する魅力が感じられなくなってしまった...

先日紹介したMFD(富士手芸店)の亀の子タープはSilShelterが変形してSpinnShelterになる中間に位置する形状と言える。亀の子タープの側壁を長くして側壁を吊るのを前提にすれば高湿多雨的な日本の気候に合った使いやすいタープになるのではないかとSpinnShelterを経験して感じた。良いとこ取りを狙って亀の子も詰めて欲しい。

これ以前はIntegral DesignsのSilShelterがお気に入りだった。SilShelterもSilnylonを使った傑作シェルターだが、SpinnShelterも単に素材の軽さでのみならず、その性能において素材の名前を冠したシェルターとして記憶されることになるだろう。


ある日の寝床...
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SpinnShelterの中はTitanium GoatのPtarmigan Bivyだ。底部にReflect-Texを使い、熱反射を目論んでいるが、体一つでは比較のしようがない。素材のカタログ的には少し効果があるとのこと。Lサイズだが、重量が160g程度なので、冬場に使うならコレ。TiGのBivyは3つ目だ...縫製が良くて値段も手頃!

寝袋はNunatakのArc AlpinistのEPIC生地版だ。-7度対応とのことであるが、少し寒い気がしている。山に担いでいくまで、もう少し試してみる。幸い、東京もこの数日は気温が低いので、ようやく庭で試せるようになってきた。

Bivyの下はこれもGossamer GearのPolycryo Ground Clothだ。どんなもんかと買ってみたが、ただのポリエチレンな膜なので岩場では使えない。農業資材売り場で買えそうな感じがした。、ま、軽くて完全に防湿なので枯れ葉の上で寝る時には使うと思う。

Bivyの中にはPacific-Outdoor Equipmentの合成繊維入りの全身サイズ空気マットMax-Thermoを入れている。ORのDownMat7のショートでは仰向け寝の私には短い気がしたので、雪上でこれが使えないか、ちょと試し中。

これらを使って、さらにNunatakのSkahaダウンセーターを着て寝てみた。さすがに冬の低山フル装備に近いので汗をかくが、Arc Alpinistは締め付け感や密閉度を調整しやすいので、どーにもならない脱げば寒くて着れば熱いという状況には陥らずに済む。

これらは個別にもっと経験してから書きたいと思っている。


参加中...い た だ い て 足 り て 一 人 の 箸 を お く...山頭火、知足か。Click!!

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by ulgoods | 2007-11-21 01:28 | 宿泊系 | Comments(22)

結露を計る / Brunton ADC pro

Brunton ADC pro
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かねがね、テント・シェルターやBivy内での結露に対する理解を深めたいと思っていた。
結露とは、暖かく湿度の高い空気がその露点以下に冷やされて保持できなくなった水蒸気を吐き出すこと、と理解している。私には気象の制御はできないにせよ、それ(主に気温と湿度、希に圧力)がどうなって「いた」かを知ることは、ちぇ!たまたま運が悪くて濡れちゃったよー、と天候や道具に毒づかないために必要なことだ。

この夏のSierraの帰りにコフランの最高最低気温を保持できるデジタル温度計(Coghlan's Time and Temperature Digital Dangler )を買ったが、昨夜の寝袋の寒暖の結果を納得するには良いとしても、それでは「日の出前が一番寒い」と言われるが、本当は何時に最低気温だったのかは分からないし、本当に気温が低かったのか?体温生成が切れて寒く感じるだけなのか?そんなことまで知りたいとしてもジッと温度計を眺めて過ごすのは、それはそれで寒いより辛いので経時変化を記録できる機能が要る、ということになった。
テントが結露したの理由をちゃんと解するには、気温と湿度の経時変化も記録できなければならない。それでようやっと点が線になり、そして面として記録される。屋根系だけでなく、Bivyサックやシェラフカバーと寝袋の濡れる関係や、衣類の中の蒸れ蒸れが場所やベンチレーションの具合でどう変化するのか?とか、知りたいからできるだけ小型軽量が望ましい。
という理由と条件で探してみた。が、湿度が測れてデータが記録できるのは結構上位機種らしく、業務用を除くとKestrelなら4000以降、Brunton(Silva)ならADC proしかない。
軽いのはBruntonだ。ボタン電池込みで55g。kestrelはいろんな重量が書いていてわからんが、単4を2本使うのでそれなりに重そうだ。100gを越すだろう。
精度は業務用に比べたら、どちらもそれなりだろうから、別に0.1度を争う状況ではないので小型軽量が優先でBrunton優勢。
風速は、わたし的にはオマケなので、プロペラが小さい方が破損がしにくいだろうでBruntonにもう一票。
価格も探せば$130100ちょっとからあるのでBruntonに利がある。
うーん最初はKestrelが良さそうだったんだが、何だかんだでBruntonか...が、ただ一点、Reviewなど読んでいて気になったのが、どうやらBruntonはデータ記録時にビープ音が鳴るらしい。例えば夜中にビッ!30分毎(1秒から設定できる)にビッ!...それって、たぶん気になる。気になって寝られない気がする。テン場でも周囲で気になって寝られない人を量産してしまうかもしれない。何かです巻にして消音すると計った気温や湿度が怪しくなりそうだ。困った...
しかしKestrelにすると、+50gは重そうなので、担いでいて絶対に後悔しそうだ。天候に毒づかなくても重さに文句を言うと思う。それはダメダメ、断じて許せない。
というわけで苦悩の末BruntonのADC proを選んだ。

ボタンが三つしかないので操作が面倒だが、慣れれば設計者の意図が分かり苦ではない。
データは専用のUSBの赤外通信デバイスを専用ソフトで駆って行う。PCに付いていた赤外デバイスが有効だと競合するようでダメだし、PCのモノは認識してくれない。ばかでかいUSB赤外は嫌いなのだが抱き合わせで買わせる作戦らしいが、無ければ結果を眺めるだけでつまらないから乗るしかない。
時計はもちろんだが、アラームとストップウオッチ機能がある。
気圧計、高度計はもちろんだが、原理はわからないけど天気予報までしてくれる。
風速の羽は一つが赤で塗られており、これは磁石になっていて方位も分かる。キャラメルのオマケ程度なのだが、風速計は周囲にコイルが仕込んであってそれをこの磁石羽が切って発生する電気パルスを数えて風速を出すんだろうから、赤く塗っただけで書ける機能を一つ増やしたことになる。
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計測時のピッは...やはり鳴った。消せない。気になる。遠慮のないはっきりした音が鳴る。ボリューム調整もできない。設定温度を下回っても鳴る。風速を考慮した体感温度も設定を下回ると鳴る。高度をセットしておいても鳴る。タイマーでも鳴る。やたらと鳴る。が、どれも音色が同じだ...この辺、あちらさんは芸がない。
メモリーは1980組しかデータを保持できない。ま、30分に1個でも1日で48組だから充分と言えば充分。
音色を設定できて赤外をやめてMicroSDに記録してくれるとステキなんだがな>Brunton殿

本当はテント内を計るにしても複数個を用意して同時に複数箇所測定したいのだが、そんなに買えないし重くなる。第一に何しに山へ行くのか分からなくなる。さらに複数個、非同期にピィが炸裂しては寝られない...ので1台だけにして、あとは最大最低を記録する温度計との併用で我慢するしかない。
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とりあえず何とか操作は会得したと思う。どうせ電源OFFスイッチがない!ので、先ずは普段の生活環境を計って遊んでいる。


参加中... この季節、乾燥するから湿度が測れると良いよ...Click!

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by ulgoods | 2007-11-19 00:22 | エレキ系 | Comments(6)

Carbon fiber tent stakes / Titanium Goat

Titanium Goat 製のカーボンファイバー製ペグ、長さ9"、直径0.3"である。
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鉛筆ではない。
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重量は実測で7g!
1円玉7枚分...ウソのように軽い。

ちなみに下の写真は手持ちのペグ達で、左から
6g チタン
8g チタン
7g カーボン
16g チタン釘
18g Eastonアルミ中空 31cm
である。
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やはり中空物(カーボンと右端のEaston)は見た目を裏切って軽いな。実が詰まっていないので強度は無論弱いだろう。間違っても岩石に打ち込んではいけないと思っている。でもこのカーボンペグは結構堅い。腕力だけで折り曲げるのは私には難しそうだ(実は勿体ないので力が入らない)。

通常、テントの設営場所の状態が不明な時は8gチタンペグが主であるが、岩石貫通用にチタンのネールペグを一本持つ。地面が土(腐葉土とか)の場合は、長いペグでないと効かないのでEastonの31cmモノを2本くらい混ぜていた。
が、これからは土ならカーボンだ!記述によると2007年製からは先端にアルミチップが付いたので凍みた土にも打てるとある。仮にEastonを6本持つとして、カーボンに置き換えると66gの儲け!これはでかいぞ!

ただ、頭のプラスチックがヤワなので、石での打撃には向かないと思う。木か何か噛ませて叩かないと割れそうだ。気を遣うのはしょうがない。


ULからSULに移行しつつあり。
薄くてヤワな道具ばかり偏集中...



参加中... 今週末は晴れて欲しいよ、ね...Click!

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by ulgoods | 2007-11-13 03:06 | 宿泊系 | Comments(13)

KUKSA / ククサ

二年前、仕事でフィンランドへ行った時、自分用の土産にKUKSAを買った。北欧バックパッカー御用達のカップと聞いていたからだ。

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ヘルシンキ、駅前広場横の坂上にある二軒のデパートのどちらだっただろうか、土産物売り場の一角にKUKSAはさほど有難味も見せずに、他の特産品と共にありきたりの土産物として売られていた。その他特産品としては蜜鑞の石鹸やムーミン柄のネクタイなど。
KUKSAはバハカと呼ばれる白樺の瘤を使って作られるため木目も複雑で詰んでおり一部で光沢さえ放っている。バハカは寒風とオーロラが作り出すという。確かにそんな光沢だ。冷たい要素で作られたらしいが、出来たカップは木製で断熱性は高いので、熱い飲み物に使うのに適している。かちゃかちゃと神経質な音を立てない。暖かくて丸い。

さて、飲むにあたって洗礼の儀式が要るらしい。ありがたいことに日本語を含む各国語で書かれていて読んでしまった。儀式か...少し気味が悪いが読んだからには実行せねばなるまい。そう、それが出来ずに今まで仕舞っておいたのだ。
フィンランドのヘルシンキはやはりヨーロッパの都市であり、石で作られた街だった。訪れた教会、レストラン、パブ、全てが石とその凹凸に巣くうシミのような闇とで構成されてる。炎が影を生み、その影を幾重も塗り込んだ、ある種おどろおどろしい地下の部屋でその儀式は執り行われなければ、という気持ちが最近まで私のKUKSAの儀を滞らせてきたのだった。

今日、何かの拍子にラジオでヘルシンキの名前を聞いた。気温は2度らしい。
もう長い夜の季節に入っているのだろう。オーロラは見えるだろうか。ヘルシンキで歓待してくれたスオミな人たちは元気だろうか。地下牢パブの隅に膠着した闇はどうしてる。
懐かしいな。
そうだ今日はKUKSAの魂を呼び起こしてやろう。

洗礼の式:
貴方のククサにラム酒、又はブランデーを注ぎ北極星に思いをめぐらし貴重な液体をすすりながら自然の語りかけをククサを通じて聴きなさい。この儀式で塩味を感じたら儀式は成功です。

とある。塩味を感じなかったら?
少したじろぐが、やってみよう。残念ながらラム酒もブランデーもない。夏の北岳の残りのモルト酒があるだけだ。まぁ良いだろう。やってみる。

いつか、北欧、クングスレーデンを歩きたい。
先ずはククサで酒でも飲んで荒野に思いを巡らせてみるか。

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ん、気のせいかな?塩味だ。
私のKUKSAになったのだね。
時々、野山へ連れて行ってやろう。そして私を連れて行っておくれ...


参加中... 秋 風 あ る い て も あ る い て も ...山頭火
オーロラの下に立ってみたいよ、ね ;-) Click!


やられた..木地を舐めたら塩味だった....
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by ulgoods | 2007-11-04 00:43 | 生活系 | Comments(23)