カテゴリ:山行( 61 )

2012奥秩父主脈縦走

ちょうど一年前の縦走の記事です。
要約がヤマケイのウルトラライトハイカーという本に掲載されたのですが、だいぶ文章を書いたのですが文章の圧縮が強くて訳が分らなくなっちゃったし、写真も小さすぎで少し残念でした。機会があればオリジナルを出したいと思っていたのですが一年経って..そろそろblogに掲載してもいいでしょ。強圧縮される前の原稿のコピペです。

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■計画:三泊四日で奥秩父主脈縦走を金峰山から雲取山へ。足が延びれば奥多摩駅まで。
一通り軽い装備を買い揃えて一応の軽量化が済んでから、更に一段の軽量化を推めようと思うなら、持たない事、持つ物は徹底的に切り詰めると言う事を考えなければならないだろう。なかなか辿り着けない境地なのだが、今回の縦走ではそういうことを多少意識してみた。縦走の計画、準備、実施を通して私の考え方を表現してみようと思う。

■準備:実施時期は10月中旬を考えていたが時間が作れず、ついに11月の中旬になってしまった。想定すべき気象条件としては、ネットからは金峰から甲武信岳は雪、気温は-5℃程度という事、天気予報からは中一日に荒天が予想されるという情報が得られた。
装備を決める時に、何か主題がないと多くの組み合わせの中から選択するのが難しいものだ。この縦走路は2009年に大弛峠から雲取山まで単独で、また2010年にはGossamer GearのGlenさんらUL仲間と歩いたことあがる。その時のGlenさんのSULな装備に感銘を受け、いずれそれと近い装備を担いで歩きたいという思いを持っていたので、彼が使用したDRIDUCSの雨具、単四電池1本で点けるフラッシュライトなどの非力な小物を真似るところから道具選を始めた。

DRIDUCSは不織布で出来た簡易雨具である。軽量であるが強度も弱いので、担ぐ荷物の軽量化を進めないと生地が保たないという制約を持っている。これを使いこなすためには装備全般がSULに片足を突っ込むほどの精進が必要になると考えていた。DRIDUCSだけでは長時間の降雨には耐えられなさそうだったので、補完する物としてGatewood Capeを選んだ。これはSilnylonなので防水性があり、シェルターとしてもある程度の耐候性を持っているので、兼用で重量を削減できる。

LEDライトはGlenさんと同じFhenix L0D(14.5g)を買ってみたが、後発で更に軽量なiTP A3 EOS(9g)を選んだ。A3 EOSは電池の保ちはLowで50時間、Midで4時間、Highで0.9時間であり、LowとMidを使い分ければ3泊程に間に合うはずだ。というか、間に合うようなシンプルな生活を考えるきっかけになった。これによって予備の電池も単四1本で済むので相乗効果で軽くなる。

靴は雪道で濡れることが分っているのでGore膜入りのMontrail Hardrock GTX Midとした。更に靴の防水が破れていて水が沁みた場合の保険と防寒を兼ねてSealSkinzの防水靴下を追加した。もし、これでも水が漏るようであればコンビニ袋を履いて対応する。この点は重点的に手当てした。これに合せるクランポンはチェーンスパイクとなる。

寝姿であるが、0℃~-5℃程度に使える手持ちの寝袋はISUKA Air450やNunatak Arc Alpinist Quiltが使えそうであるが、今回は思い切って頭部のないGoliteの40°F用 Feather Liteでの軽量化を考えた。Feather Lite適用範囲は40F(4,4℃)と心細い設定であるが、首回りをしっかり締められる構造と、封入ダウン量から考えて0℃くらいまでは使える印象を持っていて、ゆったりしたデファレンシャルカットなので着て寝してもロフトが潰れず、行動用防寒着を併せればなんとか-5℃で眠ることができると期待した。寝袋は温かさの保険を掛けても良い装備であるが、今回は少しストイックにいくこととした。この寝袋には頭部が付いていないので、防寒着はフード付きのものが必要となり、着て寝るので湿気にも強い化繊綿の物にした。

選んだシェルターが床無しであり隙間も多い作りなので、雪による寝袋の濡れ防止と吹き込む風で熱が奪われないようにBivyサックを使うことにした。一応、屋根があるから強い耐候性が不要なのと、顔まで覆うと呼気が入って寝袋を湿らせるのでモンベルのブリーズドライテックでジッパー無しの寝袋カバーを選んだ。ブリーズドライテックは透湿性が良いので、内部での結露が少ないという期待がある。マットは山と道の15mm厚のショートタイプをバックパックの骨格としても使用。グランドシートはお馴染みのTyvekではなく、雪の上では穴も開かないだろうから防水性を優先して建築資材の薄いビニールシートとした。

衣類はPatagoniaのR1 Hoodyを中心に考えた。これは、行動中にフードが欲しかったのと、丈が長いので背中が露出しないのでこの季節には良い。R1 Hoodyの上にはR2を着る。R2は直接の風は和らげるが、ある程度の風通しがあって行動中でも蒸れないから雪の季節に重宝している。

これで主要装備が決まった。その他は無雪期と大きく変わらない。これらをMountain Laurel DesignsのZIPに詰めた。ZIPはペラペラ系であるがWebing類が幅広で扱いやすい。寒い中で捩れたWebingを直す作業が不要になることを期待した。

多少の心細さはあるが、これらの装備を担いで三泊四日の旅に出た。

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続く..
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by ulgoods | 2013-11-07 15:55 | 山行 | Comments(0)

グレンさん軽荷の中身 Glen's Gear List - Chichibu Trail (Japan)

Glenさんのお許しもらったので彼のGear Listを掲載します。
Thank you, Glen-san!

クリックするとデカく見えます
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あ、靴下のメーカー同じだとかいろいろ分かって有り難い..

いわゆるベースウエイトでいうと2114g
着ているもの、帽子の重さまで..1977g
食料燃料込みで5363g
って、超絶

食料の重さも彼が言っていた一日の必要量×日数になってる
毎回ギアリスト見習いたい習慣。
コメント欄で意見交換して味わいたいですな


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by ulgoods | 2010-10-21 18:30 | 山行 | Comments(9)

進めULグレン隊

進めULグレン隊

Glenさんに会えてそれだけで嬉しかったが、やっぱり挨拶や写真が済んだら歩き始めなければならない。そ、歩きに来たんだっけ。
コースの段取りは
DAY1 瑞籬山荘から金峰山を越え大弛小屋泊
DAY2 大弛を発して甲武信経由雁峠泊
DAY3 雁峠から雲取
DAY4 雲取から石尾根で奥多摩駅
皆さん歩く人たちなので妥当な距離割りか。
私はDAY3に東京で外せない用事があるので早朝に下山することになっている。
さてDAY1、歩き始め10:20頃。金峰山は山歩きを始めた年の雪の残る時期に歩いて以来だから久しぶりでだ。昨年は行こうと思うも道具迷いのせいで塩山からTAXIで大弛に入ってしまいパスしているし、金峰山から大弛峠までは歩いていない区間なので期待が膨らむ。
さすがに皆ペースが速い。
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Glenさんは長身で足が長く、汗もかかずにゆったり歩いているようでもちゃんと速い。普段は単独の人たちであるが、ネットで親交のあるULナカーマと会ったもんだから、途中で写真を撮り合ったりと、まるで修学旅行気分で楽しい山歩きとなった。

富士見平小屋11:11で水補給。Glenさんには日本の水は安全だと伝えてあったので、彼もフィルター無しで水を補給した。

大日岩12:36に大休止。岩に駆け上る人有り、腹にカーボン補給する人有り。Glenさんは車中で配給された?人生初の魚肉ソーセージと、大判のクラッカーのようなのにMiguelさんから差し入れのシシャモを乗っけて食べていた。この時取り出した行動食を見せてもらったが、これは1日分かと尋ねたらこれで4日分と言う。
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体がデカイ割りに食い物が少ないな..後でHiker's Depotで行われた講演で聴いたが、ハイキングに出る前と帰ってから食料の重量を量って、平均一日の炭水化物消費実績をチェックしているらしい。数多くの山歩きを経験して割り出した重量だから信頼性も高いだろう。私は食料に関してはいい加減、というか、あれば食う、無ければ食わない、不安だから多めに持つ感じだが結局は残して帰ることが多い。道具を揃えて軽いよねーとかの段階を過ぎたら、自分の体のことを(体重含めてね)管理しないと、その先には進めない気がした。

13:01出発、15:06金峰山着。ガスが掛かり眺望は無い。
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Glenさんと土屋さんはコマーシャル系の撮影で金峰山頂から狙う望遠レンズに合わせて何度か急登を行ったり来たりでちょっと気の毒であった。仕事の二人と大弛から登って来た撮影スタッフを残し、ここからは適当にバラけて大弛小屋を目指す。金峰から大弛を歩いたの初めてである。金峰周辺はかろうじて森林限界上の風景であったが、進んで鉄山、朝日岳あたりはお馴染み奥秩父的な森歩きとなる。
大弛峠16:48 いきなり立派な舗装道路に出るので少し興醒めであるが、大所帯だし水があってテントサイトも多いから野営場所としては適当。小屋もお留守だったので幕営代をポストに入れて(釣り銭がもらえないのでお札で..)各自設営に掛った。
各自のんな幕を張ってどんな寝姿なのか、興味津々である。

大弛ULテント村の様子

Beyond Integral Designs SilTarp2 充分長いので低く張れば吹き込みにも対応でき、雨天時の宴会用にと応用範囲は広い
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Tsuchiya FineTrack ツェルト2 堅い選択。どこで張っても安心感がある。軽いって自由!
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Chiyo Six Moon Designs Gatewood Cape 私もお気に入りの屋根。ただ、奥秩父で雨具にするには不安があるので、別途雨具を持つならと私は持ってこなかった。
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Glen GG cuben Wedge 77g サイドを折って耐候性を上げてある片屋根式住居。さすが本家で軽さはダントツ。
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Yaslow Golite Poncho Tarpであろうか?色が違うかな.. お馴染みの張り方。張る用に必要な1本ポールで歩く人。傘も利用して張っている。
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Jotaro Locus Gear Khufu Culen Shelterは Ryan Jordan氏も絶賛、美しく耐風性も高い
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Miguel GG SpinnShelter 暗くなってから張った割にはシワもなくきれいに張れている。シートもポールもGG製で揃えてきた感じ
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zzzBear MLDのCuben Poncho Tarpであろうか。スケスケで良い感じ
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Bmp ID SilPoncho改 リフターを二カ所追加してあるとのこと。入り口を狭めて風除けフォーメーション
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ULG アライのシングルツェルト 足元に換気口を付けてある
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写真上手く取れなかったのが残念だけど、FukushiさんはAnti Gravity Gear TarpTentという渋い選択であった。

設営と仕事が終わったので皆で夕食を摂ることにした。火器とメニューのチェックも面白い。
全体的にアルコールストーブ派が多いような気もしたが、私もGlenさんもEsbitとCaldera Cone Stoveである。Esbitは鍋底が汚れるのが難だが、収納時、他に汚れが移らない工夫をしていれば何の問題もないと思っている。
食い物は、私はずいぶん前に買って放置していたMountain Houseの野菜ラザニアを消費してしまわないとイケないので持って来て、野菜だけではアレなので、沖縄のハムやさんが作っているタコライスの具、レトルトの味付き挽肉をぶち込んで湯を入れた。一袋二食ぶんなので、夕飯と翌朝の朝食のつもりであったが、旨いので少し頑張って平らげてしまったが、ここでも食料計画が破綻していたことになる。
Glenさんは、CousCousのような顆粒状にアレコレ手間を掛けて数種の具を足し煮込みて、最後に大量にガーリックオイルを掛けて食べていた。重量削減と朝まで温かく眠るのに必要な体温生成のカロリーを得るの両立には油分を多く摂るのは正しい。私もCousCousの時はオリーブオイルを入れるが量が違う。馴れないと下痢するかもと思った。同じオイルでもガーリックオイルの方が食欲が増進するだろうから見習う。食事の仕方も、少しずつ時間を掛けて、慎ましい感じで食べていたのが印象的である。海外で食事をするときに見掛けるのだが、大柄な男性でも肉を小さく切り分けてホンの小指の先くらいに小さく切ってゆっくり食べていたっけ。ゆっくりの方がお腹によいのはもちろんだが、何というか、慎ましく食料を大事に摂り込んでいるという感じが印象的だ。
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他のメンバーの食料もα米が多いのだが、最近は無印のやつがイケるらしい。味見をさせてもらったが旨かったので今度試してみよう。
食事の方法であるが..Glenさん以外は皆でワイワイ食べることを見越して、上下の防寒着を着用し、そのぶん寝袋を軽めにする方向だったと思うが、Glenさんは正しいUL手法に則り、防寒着は薄手のベストのみで、集まっての食事では寒そうにしていた。というのも、正しくは、というか、心底重量を削減しようと思ったら防寒着は少なくして、飯を食ったら即寝袋に入るのが正解。あるいは日があって暖かいうちに夕飯を済ませてからまた歩いて日暮れと共にサッサと寝てしまう、これはキャンプサイトに食料の匂いを充満させて熊を引き寄せる心配が少ないし、夕食と夕方最後の休憩を兼用できるので無駄時間の削減もできる上手いサイクルだ。寒い中でキャンプサイトで座って話そうと思ったら、寝袋を着て防寒着にするのも見た目は怪しいのだが使える手だ。Jacks R Betterというハンモックの底に付けられるQuitで有名なメーカーがあるが、そこでは積極的に着られるQuiltを作っている。見た目は不思議だが、山の中で誰が見る訳でもなく、見られているとしても兼用マジックを進めて軽量化を図るUL的に正しい。また、 防寒着、寝袋と分けて重量が嵩むよりは防寒着を省略してその分をの重量を寝袋に与えるのが就寝時に得られる暖かさは大きい。このことは後のHiker's PartyでGlenさんが実例を挙げて説明してくれたが、Glenさんは実践で見せてくれた。今日くらいはイイかとかの甘えがない姿勢に三度の感心である。


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by ulgoods | 2010-10-20 16:32 | 山行 | Comments(14)

ULグレン隊 集結す

ULグレン隊 集結す

Glen Van Peski氏と言えばご存知Gossamer Gearの創設者であり、World Wide有名な筋金入りのUL Hikerであるが、この度、機会があって来日の運びとなり、コマーシャル系の用事の合間というか、こっちがメインかもしれないが日本のTrailを一緒に歩く機会を得た。タイトルのグレン隊とは、Glen氏を囲んで軽荷で野宿散歩の会を意味しているつもり。
今回は平日含む3泊4日で奥秩父主脈を縦走するという課題が勧進元の一人Hiker's Depot店主である土屋氏から与えられ、平日を含むこともあり堅気系の仕事に就いていなさそうな?メンバーが招集された。
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写真左から
Miguel
ULG
zzzBear
Glen(Gossamer Gear)
bmp
jotaro(Locus Gear)
Tsuchiya(Hiker's Depot)
Chiyo(Moonlight Gear)
Yaslow
Beyond
Fukuchi(Evernew America)
それぞれUL道具の蒐集とそれを用いたハイキングの実践に一家言持つUL Hardcore系を自認するHikerである。
GlenさんとFukuchiさん以外とは既に夜の巷での濃い面識はあったが、基本的にSolo Hiker達なので私含めて一緒に歩くのは皆初めてであったと思う。

韮崎駅からバスに乗り着いた瑞籬山荘前で別働隊含めて全員集合となったのだが、早速Glenによる重量チェックが待っていた。
私は出がけに量ったところで食料水抜きベースウエイト5kg(4.5kgから快適方向に振って5.0kgを作った)であったが、現地で食料とbooze(酒、ですな)込みで16lb.(7.25kg)と計測された。
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私の主要装備を紹介すると
ザック MLD Prophet pack
寝袋 Nunatak Arc Ghost Quilt Down 2oz.増量済み
屋根 Arai single Zelt
マット Therm-a-Rest Ridge Rest 3/4
防水 Sea to Summit Ultra-Sil Pack Liner
火器 Trail Designs Caldera Cone for BPL FireLite 550 w/Esbit
防寒上着 BPL cocoon
防寒ズボン Montbell UL Down inner pants
雨具上 OR Helium Jacket
雨具下 Montane Featherlite Pants
水筒 2Lペットボトル
といったところ。
その他、救急箱、補修箱、雪隠具、替えの下着靴下、MLD eVent Rain Mitts、快適睡眠用にBPL PossumDown Beanie, gloves, socks
要らなくて重い物だがGarmin 60CSx、カメラ、iPhone+電池など。
だいたい気温で零度、樹林帯での小雨程度の天候に対応できる装備を作ったつもりである。Gossamer Gearはいろいろ持ってはいるのだが、直前になって天の邪鬼が顔をもたげ、GG以外で構成してみることとした。ああ、ザックの腰ベルトはオリジナルは薄くて滑るのでGG Murmur の物に交換してあるのと、ウエストポーチとシェルターに敷くポリクロシートはGossamer Gearであった。
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ここでGlen氏のザックを小指に引っかけて持たせてもらったのだが..軽い!とんでもなく軽いのである。ちゃんと4日分の食料も入っているらしい。その軽さと実際の生活術を拝見するのが今回の目的であったので、こりゃーすげぃ、何が入っていて何が入っていないのか、どういう生活を送るのか?歩きながら、泊まりながら拝見することになる。


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by ulgoods | 2010-10-14 01:44 | 山行 | Comments(8)

栃本から梓山への峠道

■口上
連休中の陽気で一気に季節も更新したが、その僅か一週間前(4/24-25)に名残雪を得た十文字峠を抜けて栃本から梓山へと歩いてきた。
秩父は盆地だけあって何処へ行くにも峠を越えなければならない。その峠道の数は100を下らず200とも言われており、峠道の宝庫といったところである。峠だらけで大変ではあるが、見方を変えると奥多摩、甲州、信州、上州、児玉や入間などへは峠を越えることでどこへでも最短距離で届くことになり、十文字峠は信州と江戸を結ぶ最短経路として甲州街道や中山道の裏街道的側面を持つ。古来から信仰の道、交易の米の道、馬産地からの馬の道であり、嫁入りの道でもあったという(山村と峠道/飯野賴治)。また別な本で同氏が書いた栃本辺りの木地師の生活を読んだこともあり、ナマの人々がさまざまな用事を抱えて往き来した峠道にふと温かみを感じていた。また、栃本、十文字、梓山の地名は田部重治の著書にも良く登場し、ワラジ履きの彼らが驚異的な速度で縦横に歩き回った山域の一端を歩いてみたいと思い始め、昨年は甲武信岳や奥秩父主脈縦走などをし、どちらかというと地味な山域ではあるが、やはり秩父側へいかなばなるまいという機運が醸成されていた頃のこと、同時に日本のULハイカーにとって峠越えは格好のフィールドではないかとも感じており、かつての峠越えは追いはぎや山賊や狼も出るから夜間に通ることは稀で、大体は明日は峠越えともなれば麓に一泊し翌早朝に大きな握り飯を持って歩を急いだというが、交通が発達しているので前泊までする必要はなく、朝一に都内を出ればバスで最奥地の峠の登り口に着くのはだいたい10時を過ぎで、この時点で4,5時間の遅れであるから、走る人や夜歩き系でなければ挽回するのは困難であって、お陰で按配良く途中で一泊する行程を考えることができる。道の多くは樹林帯であり、険しいところを避けて付けられた道であるし、張るにしても峠道は結構立派な道幅だったり、昔の休憩所や中継ぎ場の跡などはBivyを広げるくらいの場所が見つかるとくれば好都合。こんな道はデカいザックに重登山靴などという、おおよそ古人の格好から乖離したアルピニストの孫請けのような装備より、ズックと軽量装備で歩を進めるべきだろうし、可能である。泊まるにしてもBivy、ツェルトやタープなら古道の雰囲気にマッチするんじゃないかと思っている。
全くの負け惜しみであるが、山の高さや連泊数を誇るでもなく、普段の生息の場から手軽に移動して誰もいない山で充分に心細い一夜を思い知らされるような、そんな一泊山っ気補充型な過ごしをしたい恰好の場所として価値が高いのではなかろうか、と考えることにしている。

■装備(※は新規投入品)
最高所1800mm付近の最低気温は八ヶ岳の予報を参考に-5℃と見積もった。これを基に
屋根
・BlackDiamond Lightsabre Bivy
寝姿
・Nunatak Arc Alpinist Quilt
・POE Peak Oyl Mtn 2/3
Snow Crash PossumDown Haramaki
・BPL COCOON 60 Parka Pertex Endurance,full zip.
・Montbell Down Inner Pants
その他
Caldera Cone Stove, BPL 550 Pot, w/Esbit
Aquamira Frontier Pro Filter
・Six Moon Designs Swift pack'09※
・Montrail Hardrock Mid GTX
・Kahtoola KTS Crampon
・CyberShot DSC-HX5※
極力無駄な物を持たなかったので、そこそこ軽い荷で収まった筈。

■登山口まで
池袋から西武新宿線で秩父まで行って御花畑で乗換えて三峰口からバスってな感じだよねっていい加減に時刻表を引いたのが失敗だった。池袋を7:35発に乗ってから何気にiPhoneで確認したのだが、三峰口発9:35発バスに対して、秩父鉄道急行秩父路 1号で三峰口着が9:40で5分の遅刻となる事が判明。えっ?これってデスマーチ進行なの?急行と接続しない訳ないしとか思っていたけど、やはり秩父1号の到着時にはバスは出た後であった。このバスに間に合うためには池袋を7:30発の西武特急ちちぶ5号から秩父鉄道快速急行に乗り継がねばならなかったらしい。なんということ!閑散とした駅前で臍を噛んだも後の祭りである。ぽかぽか陽気になった駅前で暫し思案する。駅を一つ戻れば熊倉山から酉谷峠を経て日原へ下りる峠道も選べるのだが、GPSはあるが楽しむべきコースの下調べができていない。ちょっと考えがまとまらなかったので、客待ちのタクシーに栃本までナンボと聞いたら六千円ほどだという。安くはないなと思いつつ、先ずは駅前うどんを食ってから考えることにした。で、天ぷらの出来はアレだがうどんは安いなぁと感心していたら、せっかくうどんが安かったのでタクシーに乗ろうという気になった。次の使える休みが来るまで暫く間が空くし、酉谷も嫌いではないけれど、せっかく盛り上がった十文字の機運を没にしたくないしで。というわけで、場所が変わっても例の如くTAXIで時間を買うことにした。が、乗ったTAXIの運転手はいい人で、山歩きする人なので周辺の山の話も聞くことができたし、秩父往還を栃本関所までと走ってもらって5750円。流石プロである見積もりはかなり正確だった。メータを上げてから運転手曰く、先日雪が降ったので奥まで道を確かめたいので入るけど良かったら乗って行くかい?と言うことなので、有難くその上の栃本広場まで乗せていただいた。ラッキーであった。

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■歩き
11:00 栃本広場には立派なトイレが建っており水道もあったので水を補給した。途中の水場を知らないので、とりあえず無補給で行けるだけ3Lを補給し、フワフワしていたザックも落ち着いて安定が良くなった。実は前日に降雪があったので、充分な雪があったら水を捨てて広口のPlatipusに雪を放り込んでAquamira Frontier Pro Filterで吸いながら歩こうと思っていた。さて、本来なら栃本関所跡から両面神社方向へ行ってから一里観音で尾根道に入るのであろうが、今回は有難いことに楽をして栃本公園まで行ってしまったため、先ずは公園から見えている尾根に短い急登をして登ってしまった。実はこの辺は道が入り組んでいてよく分からない。歩き始めて、途中倒木や荒れて心細い道もあったが、一里観音に合流してからの道は流石に昔から踏まれた道らしく、時に軽トラックなら通れるくらいの幅になったりで歩きやすい。が、新旧取り混ぜた鹿の落とし物だらけなのには参った。下手に避けて転んでも運がないので、まだつやのあるヤツはアレだが、きな粉状の古い物は踏んで歩くことにした。JMT馬糞街道に比べたら小粒でかわいいモノである。暫くは南面に付けられた暖かな道を歩いたが、そこから見える向こうの山の北面はまだ雪で真っ白であり、なんでもその前の週にも降雪があり、三峯で50cmとか言っていたからこちらも北面に入ればそれなりかもしれないが、今回はズックに付けられるKahtoola KTS Cramponを持って来ているので安心することにしていた。
やがて東京大学の演習林の標高1500mくらいからか、日陰に昨夜の降雪の残りが現れるようになったが水を作れるほどは採取できないが、梢からは雪解けの滴が落ちてきて時に首筋に心地よい。昔の人ならいざ知らず、あまり急いで歩いて今日中に向こうへ突き抜けてもつまらないのでユルユルと歩く。

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13:42 いよいよ白泰山に掛るところで道は北面を巻くようになると、鬱蒼とした奥秩父の樹林帯の中、昨夜の雪の下に先週の雪も残っていて一変して冬の道となった。雪面を嘗めて谷から吹き上げる風は冷たく、手の指もかじかんでくる。Cramponを着けるほど凍結はしていないが、無造作に足を置くと滑りそうな箇所も増えて来た。早くも南面の春が懐かしい。白泰山山頂への分岐に差し掛かったが、看板によるとヤブで眺望もないとのことなので先を急いだ。二里観音まで歩けば南面に出られるはずである。

14:08 二里観音は残念ながら観音様は見つからなかったが立派な避難小屋が建っていた。奥の暗さの予感で少し躊躇われるような重い扉を開けてみたが、中にはストーブが据えられていて板間も小綺麗な感じでわるくない。
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のぞき岩の展望台でDSC-HX5でスイングパノラマ写真を撮ってみた。確か雁坂嶺方面である。
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一切の編集なしで下手くそな私が撮ってもパノラマ写真になるのは素晴らしいが、270度のパノラマになるので、けっこう腰をひねらなければならない。

その後も何度か春と冬を行き来したが、15:50、三里で観音様の姿を拝むことが出来た。文献によると「大村久兵衛、上田平右衛門、従梓山三里六丁」と刻まれているらしい。
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手がふさがっているので詫びるように片手で拝して礼をした。
黒戸尾根の様に所狭しと奉納されたお地蔵さんだらけというのも私念が渦巻く感じで薄ら気味悪いのだが、公に全ての旅人を想って建てられた里程ごとの観音様にはそれもなく、建立者や維持してきた人々が有難い。この少し先に昔の中継小屋跡(電波ではなく米とかの中継)があるらしいのだが、歩いているときは気がつかなかった。あるいは道が付け変わっていたかもしれない。1860mの南面を巻くように歩くと、岩の斜面に水が表れたのでAquamira Frontier Pro Filterの出番である。ホースを窪みに伸ばすことで無理な姿勢にならずとも冷たい水を腹いっぱい飲むことが出来るのは嬉しい。
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あまり急いでも十文字小屋に着いてしまうが、この辺りになると道幅も狭く寝床にするには頼りない感じだったので、17時まで歩いて良さそうな場所があったら少し戻ってでも泊まることにして、水が出ていればすすったりしながら歩を進めたが、四里観音様のお導きか刻限の17時丁度、目の前に避難小屋が現われた。とりあえず覗いてみたが、ここも小綺麗なログハウス造りである。水場も近いし、どーすんべ?と思ったが、17時を過ぎていること、あと一時間も頑張れば十文字小屋に着いてしまうこと等勘案し、とりあえずここで晩飯にして、18時を過ぎても誰も来なかったら避難小屋のお世話になると言う方針を立てた。
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今日は賞味期限を迎えそうなので連れてきたアルファちらし寿司である。Caldera Cone StoveにEsbitを使って湯を沸かす。付属の袋のままだったので保温用の靴下には押し込めなかったが、ちらし寿司などは冷たくても構わないだろうと暫し放置とす。
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延焼しないように石ころを台にしてEsbit燃やしている。
スープは..おお!食料庫の底から冬におでんをやったときのヒガシマル粉末出汁が見つかったので、そいつを飲むことにした。申し訳程度の乾燥ネギではあるが、ちょっとうれしい。

■泊まり
18時、他に人の来る気配がないので予定通りに小屋で寝ることにし、防寒着を着けて寝床をしつらえた。泊まりのBivyは担いできてあったが、ま、この状況で外で寝るのも変だろう。小屋の中の物干し紐に化繊の夏用の封筒型シュラフが干してあったので有難く敷物として使わせてもらった。Quiltにくるまり、でも背中が露出して冷えない様にPossumDownの腹巻きをして、スキットルからジンをストレートで飲みながら熊谷達也の短編を読んでいた。山の日はすぐに暗くなる。そうなると、こういう広い屋根を持つ建物っていうのはテントと違って音に敏感になる。というのも屋根の面積が広いので、時々どこかに落ちた松ぼっくりの音なども屋根全体に響いて驚かされるワケだ。夜も更けてジンも空になった頃、どうやら木の実や風の音以外にも何か生き物の音も聞こえてきたが、観音様の御利益があろうから気にせずに眠ることにした。マットをQuiltの底に巻き込み正しくCocoonモードにセットアップして肩グリも絞ると温かい。防寒着、マット、Quiltを一体にすることで無駄なく軽量で窮屈のない寝姿が得られる。Quiltの場合、肩と首が少しでも外気に触れると寒さを感じるので、フード付き防寒着とニット帽を着用するのがよい。今回は腰回りの腹巻きがあったので、更に按配が宜しかった。私の郷里の言葉で言うと、あずましいということになる。一度起きて屋外の気温計を読んだが予想通りの-5℃であった。

■翌朝
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7時くらいに朝日で目が覚めてから二度寝を楽しんで、でも仕方なく起き出して土間で湯を沸かして2杯分の珈琲を飲んだ。
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飯は握ったレーズンパンである。スティック状のレーズンパンは湿り気もあって良く握れる。体積も小さくなり、具のレーズンも嬉しいし、安いが朝飯にするには充分な量だし、いざとなったら火や水が無くても食えるので少し重いが重宝する。
腹巻きは、Quiltで寝以外でも無造作に背中が出ないのが嬉しいな。
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贅沢な腹巻きを...Snow Crashさん、ありがとう。
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8:30 サクっと撤収し、床を掃いて小屋を出た。ここから十文字までは小一時間で着くだろう。等高線に沿った北面の雪道をそろそろ歩き、どこが峠だったか分からないままに小屋が見えてベンチに腰掛けたのが9:30、丁度一時間だった。十文字小屋はまだ開いていないらしく人の気配がないが、登って下りた長靴の足跡があったので、小屋の人が昨夜は詰めていたのかもしれない。
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10分ほど休んでいよいよ信州側への下りに掛った。いままでの鬱蒼とした樹林帯から世界が変わり、明るい唐松の八丁坂をどんどん下る。千曲川の源流部であるから、やがて水の音も聞こえてきて顔を洗った。チョロチョロしていた流れが源流と合流する辺りに五里観音が立っており、これが見えれば梓山も近い。

10:56 橋を渡って毛木平の駐車場に入ったが、ここも立派なトイレが建ち自動販売機が置いてあった。いつもの習慣で、山を降りたから炭酸系でも飲もうかと販売機の前まで行ったのだが..実はお腹が千曲川の源流で満たされており、何も人工の物を詰め込むことも無かろうと腹が言うので買わずに済ませた。毛木平から梓山までは、田部重治の頃は見渡す唐松の林であったらしいが、同時期には既に都会の資本に買われてしまったとも書いていた。現在では切り開かれて高原野菜の産地になっているが、遠く八ヶ岳を正面に望み地面のうねりのままに真っ直ぐに伸びた道も気持ち良く、こんな景色も悪くない。
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一本道を歩き、だんだんと畑仕事の人たちを見かけるようになったら川を渡って梓山に入る。
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11:54 清冽な梓川にかかる橋の横に白木屋旅館を見つけた。田部重治や木暮理太郎ら縁の宿である。浴衣が干してあるから泊まり客も居たのだろう。私も今後何度かこの地に来たらお世話になることもあるかもしれない。
あと一時間、白木屋横のバス停の場所を確認し、千曲川の向こう側に細い橋で渡って鳥居の下の芝生の公園で寝転んでバスを待った。暖かで明るい光と心地よい水音に誘われ、不思議に満ち足りた気持ちで少し微睡んでから10分前にバス停に向かった。
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時刻表が調べてきたものとチョト違い10分遅くなっている。小海線の電車との接続が怪しいのでバス停に寄ってきた少年に尋ねると、ちゃんと接続は考えられているから心配ないと思うとのこと。なるほど、そうだよなぁと納得して行き過ぎてから先の広場でUターンしてきたバスに乗り込んだ。停留所でお年寄りが乗ってきては皆顔見知りなのだろう、四年ぶりの御柱祭りの話に花が咲いているご様子。互いにどこで降りるのかも知っているのだろう、名残惜しむ訳でもなく畑の真ん中から乗って来て林の真ん中で降りてゆき、未だ頂の白い八ヶ岳に向かってバスは走る。
田舎道、バスに揺られて帰り道...梓山の帰り道ULG詠む
信濃川上駅には定刻に着いたのだが、お婆さんが急いで降りていったのを見て、電車の時刻が変わっていない予感がした。とすれば接続は2分しかない。私も続いて降りるが..SUICAが使えない。お婆さんは切符売り場の人と世間話などしながら切符を買っている。一万円札のお釣りもゆっくりだ。そのうち踏切が鳴り出して電車が入ってきた。とりあえず近場までの切符で乗り込もうとしたが、切符売りのおばさんにどこまでかと尋ねられ、東京と言うとご親切に新宿までの料金を調べ始めて..もう電車がそこに入ってるし、後ろにもう1人居るし、全然急ぐ気配がないのには参った。発車ベルをホームで聞いたが、外に出ていた車掌にもう1人いる旨を伝え電車に飛び乗った。あら、電車にバスと同じ整理券発行機があるじゃないの!おばさん、無理に窓口で買わせなくても列車内で買えるとか教えて行かせてくれればいいのにね。
その後は沿線に咲く桜を眺め、いや桜以外も一斉に咲いていおり見事であった。小淵沢に着いてホームで蕎麦を食ってカップワインを買い込んで、ゆるりと鈍行で帰って参りました。
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週末とは言え、山の中では誰にも会わなかった。
突然笹藪に飛んでいったあの大型獣は、たぶん鹿だよね。
峠道で一泊か。良いじゃないか。



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こっちは、たぶん押してもらった1/100くらいしか反映されない模様...
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by ulgoods | 2010-05-10 20:14 | 山行 | Comments(39)

再びイグるも

今期二回目のイグルー構築に予定していた日は、折しも新潟でも二十数年ぶりという豪雪のニュースが飛び込んでくる程の大雪の日に当たってしまった。嬉しいやら困ったやら...
今回は新規調達したイグルー製造器を加えた2台体制で臨む。小型を二基、素早く構築するのが目的だ。
人員は六名。とあるルートで闇の人買い市場で参加を表明してくれた方々だ。
Locus GearYoshidaさん
水上の筏漕師 ガイド風間さん
新・放置民が行く ひとりでできるモン!いのうえさん
物欲と偏執の館nutsさん
ファミリーキャンキャンプynさん
わたくしULG

前日にマチガ沢出合いを通り、一ノ倉沢が見える場所まで1時間楽勝で行けたという風間さんの事前調査を受けていたが、この雪では前回のラッセルの再来だろう。嫌いではないが避けられる苦労は買っては出ない派、ということで予定地は武尊山の麓のスキー場の先の除雪が尽きたところ、緩やかな斜面を適当なところまで登って構築しようということになり、群馬県で3番目に売れているというコンビニで握り飯を調達して向かった。昨夜こちらに着いてから宴会の予行練習を盛大に行ったので少し残っている...この朝は豪雪のため電車は止まっているらしい。
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車を出したが雪は一層強くなっており、スキー場へ向かう道では多くの車がスタックし動けなくなっている。おつきあいしていられないので、立ち往生している車には救いの手を差し延べてサッサと路肩に寄せてもらうという善行を積みつつ予定地に向かうことになった。最近の車はペコペコなので下手に押すと凹ませてしまいそうで、善意とはいえ凹ましたらそれはそれで請求されるだろうから車体がカーブした固いところを探して押さなければならない。
宝台樹スキー場の道路脇を通るリフトを見上げながら現地に着いたが、なかなか立派な降りっぷりにチョット怯み、取り敢ず空荷で場所の選定に向かった。股くらいの沈み込み、強力な突風がホワイトアウトを起こす。
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ゴーグルしてなきゃ立ち往生だ。が、雪質は締まる系で期待が大きい。六名で交代ラッセルしながら200mくらい進んだが、うーん、いくら雪の中で寝たいと言っても、こんな強風雪下でやれるのか?ふと一人が口に出すと思いは皆同じ、さっさと退却することになったが時刻は早くも12時近く、大幅な時間ロスで痛い。
次に向かったのは出発点の至近、ガイド風間氏がキッズコースとして設定している沢沿いの林道を進むコースである。ここは頭上で風が轟くも平和な道だった。膝を越すくらいのラッセルで緩い登りを適当に進み、平らな広場を見つけて、先ずは予防的に各自のシェルターを設置してから作業に取りかかったので14時。時間的に厳しい。

今回は、iglooマシンを1台追加し、2チームでそれぞれ小振りなものを短時間で構築する方針であったので、私は8フィートの二人用に竿の長さをセットした。これは一昨年の八ヶ岳でも比較的短時間で構築した扱いやすいサイズである。風間チームも同様の筈。今回はビルーダー、シャベラー、雪収集係各1名の3名の2チームで臨んだ。収集係が専属というのは作業の効率が(シャベラーの疲労が)高い。雪は遠慮無くどんどんモリモリ降っているが、風が無いので作業に支障はなかった。途中で雪質が変ったようで良く締まるようになり、構築中の崩落の心配が無くなったので、どんどんと作業が捗った。作業方法も販売元のビデオを見直したり、マニュアルを再度頭にたたき込んだり、雪質がよいので締め固めの手抜きをしたりで、チーム各自が高速とぐろ巻きマシーンと化して汗を流した。
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16時を過ぎた時点で胸の高さまで積み上げることができ、これはイケるのかも!と思ったので、屋根の閉鎖を目指して働いた。うつむいたまま無心に雪を固める作業をしていたが、ふと目を転じてみると、風間チームも快調に作業を進めているのだが、何か変?2人用の筈だったのだが竿の設定を間違えたらしく前回同様4人用くらいのサイズで進行している...しかも、途中で支点が抜けたことに気がつかず、一部が膨らんでしまって真円ではないらしい。辺りも暗くなってきたが今さら縮める訳にもいかないので、それはそれで作業続行だ。16:30、急速に開口部が狭くなり、肩が壁面に触れるようになってきたので一気に閉鎖に取りかかった。ブロック積みから左官屋的な作業に移行する。そして17時、垂直に押さえを立てて、天井に雪を盛り、外から堅めに掛ることができた。既にトンネルも完成しており、あとは支え棒を外して天井が崩落しなければ完成である。三度目であるが天井の支えを外すときは緊張する。
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もー勘弁してくれと言いそうなくらい雪を盛って外から叩きいたので、頃合いも良かろうと支柱を緩めた。おおお、不思議と雪は天井の平面から崩れず、無事にドームを閉鎖することができた。成功である!その後、狭かったトンネルを拡幅し、床にこぼれて固まった雪を削って整地して完成とした。外は既に暗い。
風間チームもヘッドライトを装着して作業を進めているが、いかんせんデカ過ぎた。まだ胸の高さで、あと2時間は掛るだろう。取り敢ず完成した2人用は詰めて入れば座った状態の6人を収容できそうだったのでこれを宴会場とし、風間チームの作業も明日に持ち越すことにした。
お疲れさんでした。雪はワサワサ降っており、積んだブロックの不整を埋めて綺麗に雪化粧してくれた。同時に各自のテントも既に雪に埋まり...先が思いやられる。

各自、寝床の用などを済ませて完成したiglooに集合したのは18時も過ぎていたか。天井付近に換気口を空け、壁に枝を刺してCO感知器電球色LEDランタンをセットした。LEDランタンに照らされた壁面は蝋燭の時と同様、オレンジに染まり雪の中でありながら暖かみを添えてくれた。
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今日の晩飯は凄いのだ。風間氏が全員分のキャベツと豚バラの蒸し焼きポン酢添えと沖縄風ソバを出してくれることになっている。その他各位も概ね三人前の料理を提供することになっており、私は前回同様におでん、ポークソーセージ入り、他の方々もコラーゲンたっぷり美人鍋、カレーうどん、大根おろしで炊く常夜鍋、豚トロ焼き、麻婆豆腐などの出し物が予定されている。酒も充分。日本酒、焼酎、うおっと!危険なボンベイ・サファイア も一本飛び出てきた。火器はなぜかPrimus Eta Powerの2.1L+1.7L鍋セットが三つもある..常夜鍋はトランギアストームクッカーで炊かれる予定だし、焼きうどんは炭火でヤルという。外の豪雪をものともせずの宴会が始った。ら、すげーサプライズがあった。ガイド風間氏のBora80から、ナンと取っ手付きビールの3L缶が!食材のみならず、こんな重い物まで..雪遊び労働後には何よりのご褒美だ。途中そんな凄い物を担いでいるとは言っていなかっただけに感謝!男は黙ってビールを担ぐ、か。鍋を囲んだ車座で宴会が始った。
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Eta Powerを3台も出してもアレなので、火器は1台を据えて鍋は各自のを使って順に調理を行った。igloo内の気温も上がり、天井付近の荒れた部分から水滴が垂れだした。構築担当としては締め固めの手を抜いているので少し心配ではあるが、まー、20cm近い壁面厚だし、表面が少し融けたくらい平気だろう。酒も進み次々に出される料理に満腹中枢も満たされた頭はそれ以上のことは考えることができない。鍋類は大いに水蒸気を放散しているが、壁が雪であるから、全部吸収されて濡れ戻りがないのがテントと違って冬の宴会に理想的だ。
炭、大丈夫かな?とカレーうどん担当が言う。炭はCOを大量に出すので危険だが、通気口も拡大したしCO検知器もあるので、やってみるかとなった。が、炭というか大きな竹輪状の練炭は着火剤が着いていて、濛々と刺激性の白煙を上げだした。まだCO検知器は鳴らないが、目や喉が辛い...炭は退場していただき、野外での調理用となった。CO検知器は積算濃度で鳴るので瞬間的には反応しないようだが、人間は高濃度のCOに触れると瞬間的に落ちてしまうので、その差、狭小な空間内で着火剤付の炭を熾すということは厳に慎むべきである。
igloo内での食料消費にタイムリーに対応するため、私も屋外でおでんを煮始めた。雪室内でもにんにくホイル焼きなどの調理が進んでいたと思うが、複数の蝋燭も灯していたし、やはりCO検知器が鳴りだした。血中CO濃度10ppmで鳴り出すことになっており、その状態で小一時間は死なないのだが、センサーがうるさいのでCOに気をつけることにして電池を抜いて黙らせた。
おでんも好評のうちに売り切れ、雪の中、アルコールストーブで炊きあげられた常夜鍋も供され、熱燗も進んだ。が、ボンベイサファイヤも空きそうだ。特に冷やしておかなくても冷たい状態が維持される。壁面をコップで軽く擦って雪を中に削ぎ落とし酒を注ぐ。強いジン、よく冷えたジンほぼストレートは危険だが旨い。
馬鹿話の名手が揃い、酒も料理も充分堪能し、いやー、和んだ和んだ。
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寝落ちする人はテントに強制送還し、残りのメンバーで暫くやっていが、中は防寒着が要らないくらいに暖かくなっており、心なしか雪室が締まって縮んだ気がする。やがて、外のトランギアで作られた本格ドリップ珈琲に呼ばれたのでお開きとなった。〆のコーヒーは旨かったなー。
雪はなお強い。各自寝る前にシェルターの掘り出しが必要だった。
私のHex3も裾に雪が溜まって超トンガリ尖塔状の屋根になっている。本来であればVBLのテストのつもりだったが、やはり酔ってしまえば面倒だ。雪かきも面倒なので入り口のファスナーを開いて寝てしまった。

翌朝、雪はまだ降り続いている。幸い埋もれてはいないが、かなり居住面積が狭まってしまった。
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ああ、人の声が聞こえる..もう構築が再開されているのだな。暫くして外に出たら昨夜iglooに宿泊したメンバーが自分のシェルターを掘り出している。聞くと、igloo内部が凄いことになっているらしい。外見は昨日のままだが...若干狭くなったトンネルを潜って雪室に顔を入れてみたら、おおお、何ということか!外見形状は変っていなかったのだが、内部は一部の壁が大きく孕んで床に近づいているではないか!これでは寝ていた中の人は驚いただろう。
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昨夜の長時間の煮炊きと、発熱体が一晩居たことと、朝で+1度という暖かさで緩み、呆れるほど降り積もった湿雪の凶暴な重量と...壁面のブロックがゆっくり流動して潰れてきたようだ。この形は!基部の2段くらいはそのまま残り、壁面の一部が孕んで内部に落ち込み、反動で天蓋が盛り上がっている。前回の消失後の姿の途中経過であることが分かった。やはりコレだったか!雪は凹みに溜まるから、昨夜降った数十センチの雪で窪みは重点的に隠され、雪室の縮みも気がつきにくかった。
もう一基の構築中のiglooは..ああ、こちらも組み上げ途中の壁が飴細工のように内部に倒れかかていた。よく見ると..構築途中で残しておいた竿に力が掛かり、大きく曲がっているではないか。
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構築中は外れやすい支点であったが、なにもこんな時に頑張らなくてもと泣けてくる。昨日遅くまで頑張ったこちらチームも無念だろう。彼らには申し訳ないが壁面に倒れかかったり残ったアーチ状に登って強度を確かめた。人が乗っても壊れないほど結構固いことは分かったが、長い時間では流動するのだ。気温がプラスではどうしようもないな。
意気消沈したが、やることもなくなったのでお茶を飲んだり豪雪風景を楽しんだり、ゆっくりと時間を潰して帰途についた。昨日埋めたペグなどは最初は効きが頼りなかったが、撤収時には雪も締まったので掘り出すのに苦労した。昨日付けたトレースはほぼ埋まり、また新たに膝上くらいのラッセルを強いられた。林道入り口に停めておいた車は巨大な豆腐のような、白くて四角い物体になっていた。
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スコップで車を掘り出して帰った駐車場も雪が膝くらい。掘り出さねばネーチャーナビゲーターの事務所にも入れないし、何より帰りの車を出すことができない。一番の難所に思えた。運良く隣の自動車整備工場がブルトーザで除雪をしていたので、風間さんが話を付けてこちらもやってもらうことができたのは大いに助かった。でも、その後に車を掘り出すのに小一時間は必要...何をするにも雪をどかさなければ始らない。
一段落して事務所に入り、昨夜作りきれなかった料理を作り昼飯とした。いやいやコレはコレは、たっぷりと腹が苦しくなるほどの分量の料理が出てきた。どれも旨い。

やはり低地ではiglooを保たせるのは辛いようだ。しかし、3時間という短時間で構築できたのは成功とする。
次回は、パイプの曲がりを直したら、標高の高いところでの構築に取りかかろうと思う。
いや、今回も楽しかった!ありがとう。

igloo製造器の1台を風間さんの所に置いてきた。遊びたい人は連絡してみると良いかもしれない。


ただ自然の色々の現象について正当な理解を持ちたいと思っていられる人々に...「雪、中谷宇吉郎博士著」より
いまさらながら、名著です...
Click! Thank you!!

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by ulgoods | 2010-02-11 11:13 | 山行 | Comments(6)

谷川イグルー構築 最終

ガイド風間氏から行く朝の写真が届いた。写真を撮る余裕があるとはさすが。先を行くのはJOTARO氏
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こちらは私のラッセル風景。後ろの2人は途中で追いついたお父さんと屈強なお兄さん。向こうに小屋が見える。この辺、雪は浅い。
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そー言えば、靴は10年も前に行った先の須玉の雑貨屋で急遽買ったボア付きの安い編み上げ長靴を履いていた。底のスパイクを立てた畳んだりもできるし、背が高かく脱着が容易で暖かさも充分だった。かんじき用だろうかカカトに段が出ているのでスノーシューとの相性も良い。

で、就寝中の話しから
顔に舞い落ちる粉雪の冷たさに時々睡眠を妨げられたが、ペロっと口ひげに付いた水を舐めて水分補給しつつ生きていることを確認してから睡眠継続に努めた。たしかナミブ砂漠のゴミ虫がこんな感じで水分を得ていたんだっけ...なんて朦朧と思い出す。たぶん足元とかも埋もれているんじゃないか?と思いつつも、見ることすら面倒だし、幸い暖かさに関しては問題ないので寝続けた。穴蔵生活もテントと違って換気とか結露とかの心配が不要なのでかえって気が楽である。熊の冬眠の気分を味わっていた。
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この夜の寝姿は、まず、Goreの類の膜シェル物は全て脱いでスタッフザックに詰めて転がし(枕にすれば良かった)、ダウンのインナーパンツとダウンジャケット、化繊綿のテントシューズ、帽子、フリース手袋を着用している。暖気を逃がさないためには寝袋の首の回りのチューブを苦しくなる寸前までキツク締めること。これが緩いと台無しだ。顔自体はいつも外気に晒されているから比較的強いと思う。呼気で寝袋の口元が濡れるので、タオルなど仕込んでおく。なことを仕込んでおいたので朝までよく寝た。
POEのAeroGelマットは、ありがたいことに冷たくなかった。というか充分。AeroGel部分が梁になってマットが潰れすぎるのを防ぐことで厚みを維持しているのだと思う。
翌朝は8時行動開始を申し合わせており、各自の朝のスタイルを逆算して起きていただく。別々に寝ているので人に煩わされずに済むのがありがたい。合宿じゃないしね。私は6時くらいにアラームで起き、二度寝を楽しみ、7時過ぎから寝たままで餡パンを放り込み、珈琲を飲むのに仕方がないから寝袋から身を抜いた。直ぐに上下ともGoreのシェルを羽織って羽毛服を濡らさないようする。Jetboilに雪を詰めてどんどんお湯を作って多めのコーヒーをすすりながら穴蔵から首を出した。曇天、風雪..昨日より悪い。また積もったようだ。トレースが埋まりかけている。
さて、今日中に仕上げないと...
大量の湯を飲んで体も温まったので、周囲を散策した。といっても踏み跡を外れると雪に溺れるので気をつけなければなならない。LOCUS GEARのJOTAROさんは自作の極薄Cuben FiberのKhufu Shelterを持ち込んでテスト中。
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裾は雪で埋まっている。ん?換気不足で大丈夫?と思って声を掛けてみたが返事がない。ふと悪い予感が過ぎり再び呼んでみた。ら、うおぉーっと返事があった。なんだ寝てたのか。もう作業開始の時刻が近いのに..ま、仕事じゃないからいいか。しかし、自分でデザインして縫ったシェルターで過酷な夜を越えたというのは良い気分だろうな。ガイド風間さんもREIのテントでよく寝たようだ。この日の風間さんはプライベートモードで参加なので寝坊しても問題ない。私は朝の準備が済んでしまったので、みんなが来るまで寒いのでイグルーの回りをグルグル歩いて圧雪に勤めた。

パウダー雪条件でのigloo構築、初段は粉雪を投入して締め固めに苦労したが、昨日の作業で一度踏んで空気を抜いた雪を投入する方が質の良い材料を得られることが分かったので、体温キープと材料確保のために歩くのだ。
皆が朝の支度を終えてイグルー回りに集まったのは9時くらいであった。今日中に屋根の蓋をして空間を維持しないと、小屋の例からして数日内に雪に埋もれて雪の中のただの壁になり、投入した労力の全てが無駄になる。みな無言のうちに持ち場に着いた。
私と風間さんは交代で積む係を、JOTAROさんは入り口トンネルの掘削に取りかかった。積む方は、なかなかうまくいかない。箱の角度によって下段とのギャップが大きくなり上手く詰めないし、箱自体が水平に近く傾斜が付いてくるので雪を詰めた後しばらく養生して雪粒子の再結合を待たないと次に進まない感じだった。騙し騙し少しずつ、尺取り虫が進むようにそろそろと、とぐろの長さを稼いでいった。箱が内側を向くので外からの雪の投入はビルダーの胸をめがけて雪を放り込むようになる。ビルダーは胸で雪を受け箱に落とし手首のスナップを利かせながら、時には肘打ちもかませながら、イグルー作りは雪と格闘技といった様相を帯びてくる。とはいいながら、段の上に行くと少ないブロックで一周できるので急速に屋根が狭まってくるのは嬉しい。
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とかやっているうちにJOTAROさんのトンネルも掘り進んだ。もはやトンネルを造らないと中の人が外に出られない。が、このトンネル、堀り進みすぎの懸念がある...あまり掘ると入り口と反対側に取る2人分の居住スペースが無くなってしまうし、作業中は竿の設置点は崩す訳にはいかない。10ft.イグルー内の人の配置は、中央まで開削したトンネルの両側に1人ずつ、奥に2人で計4名となる。トンネル堀も楽しそうだが、中の人に竿の支点と壁の間からピットを掘って貫通させ適当なところで切り上げてもらって、グルグル歩いての材料作りに専念してもらった。
出られるようになったので昨夜の宴会場で昼飯を摂った。私は凍ったコンビニ握り飯を煮て、粉末のうどん出汁とうどんの残りも投入した雑炊ヌードルとした。下界では残飯並と言われるだろうが、コレがなんとも旨いのである。
まだ屋根がふさがっていない。この頃では箱の傾斜がきつくなって崩落も起こったりで進みが遅い。何だかんだとあと3時間で16時を迎える。とりあえず、パッキングを済ませて作業に戻った。ここからは時間との戦いになる。
飯も食って元気になって作業を再開したが、どーにも捗らない。もはや傾斜的には限界だ。箱をずらすとヒビが入って崩れてくる。ブロックが重いのだ。屋根は結構高くて背が届かないので足元は雪を盛ってある。
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もーだめか、言わずとも皆に諦めの空気が漂った。このまま蓋をしないで帰るのは悔しい。ビニールで蓋をしても雪で潰れるだろう。何とか薄くても良いから蓋をしたい。ここで、戦法を変えた。予定ではあと数段積むのだが、一気に閉じるモードに入ることにした。駄目なら諦めるほか無い。
閉じるモードでは箱をやめて内側の板だけにして手で厚みを取りながら、ブロックを巻くと言うよりは端面に雪を押しつけて、ちょうど蜂が巣を作るように少しずつ巻いていく。確か、一回目もこうやって閉じたんだっけ。問題は雪が着いてくれるかだ。この頃では雪の空気抜きも上手くできるようになり、上質の締まった雪が得られていた。少し盛って板をずらし、おおお、崩れないじゃないか!と安堵しつつまた雪を着けて、を繰り返していった。もはや竿は垂直に近い。何とかなるんじゃないかと思い始めた頃16時になった。日没まであと1時間、明るい道を帰るならリミットの刻限だ。が、惜しい..協議の結果、踏み跡があるので暗くなっても歩けるだろうから、このまま作業を続行することにした。やはり、地形を覚えたガイドがいるのは心強い。
と決まれば気張って最後の仕上げに掛る。もはや上半身を出すこともできないくらい口は狭まった。腕だけ出して手の感覚でペタペタと雪を着けていく。出した手をめがけて外から雪を放り投げてもらう。中では頭から雪をかぶるが、板に残った少しの雪を着けていくを繰り返した。不思議に水平に近いのに崩落しない。イけるのか!
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最後は竿を垂直に立て、外から雪を投げ込んで、もはや腕も出ないので外からスコップで叩いて固める。手で締めていないので感覚が分からない。板を外して崩れはしないか...心配なので、長い時間掛けて締め固めを行った。中の人も補強に余念がない。
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蓋をした途端に内部は暗い。トンネルの出口が青く光る。そ、この感じだ!海底に沈んだ浮遊感がある。やがて、そろそろよかんべ、と恐る恐る竿を緩めてみたら...おおお、崩れないぢゃないか!これにて目出度く半球を閉鎖することができた。嬉しい。皆で喜んだ。しっかりアーチが組み上がったので、今後は雪が積もって厚みを増して強くなっていくだろう。時々、風間さんに見に来てもらう。
内部を整地して寝転がったりする。蝋燭を灯せば、外からの光の透過で青みがかった壁面がオレンジに染まる。これもこれで美しい。
モデルは安らぎの座敷童と化した風間さん...入り口の青と壁面のオレンジがイイでしょ!
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外の風と音から遮断された安心空間。壁が垂直に立ち、少し堀込んだこともあって内部はかなり広い。やったなーと、しばらく喜んでいたのだが、内部は呼気の蒸気がいつまでも浮遊して濁ってきた。あ、換気口を開けないと。スコップのブレードを外したシャフトでグリグリやって天井に拳の太さで屋根を開けることで空気も流通し、たちまち空気が改善された。あまり細い穴では効果はない。拳ほどがちょうど良いのは前回のCO感知器を使った実験で学習済み。
とか遊んでいたら外はもう暗い。昨日今日の重労働の末に出来上がったシェルター、いとおしい。名残惜しいのだが帰えらねば...

とりあえず、蝋燭と風間さんのスコップを残置した。使う人は私か風間さんに連絡して欲しい。蹴りを入れるとかは勘弁してくれ。あるいは使ったら状態を知らせて欲しい。床を汚したら雪を交換してね!
風間さんの連絡先は所属する事務所ネイチャー・ナビゲーター(冬期は風間氏が留守番役)、
あるいはスタッフのブログのコメントで!
入り口の場所と換気口の位置を教えてくれると思う。彼にコマーシャルモードの案内を頼むとあれこれ安心だ。今シーズンはこのイグルーをベースとしてさらに増築予定である。
様子を見に行ったらblogに書いてもらうことになっている。

とっぷりと日が暮れてから、ヘッドライトを灯して埋まりかけたトレースを伝って土合に戻った。ナイトスノーハイキング!やろうと思ってはやらないが、それも良い経験だった。

雪は全てを埋め尽くし凍らせる。厳しい。が、ふっくら優しい面も見せ、
恐れながらも防御怠りなく近づく努力をすれば遊んでもらえる。
あ”-おもしろかった!



もしも惜しみない讃辞があるとすればクリックで(^^;; Click! Thank you!!


谷川イグルー野郎どもの記念写真(Clickで拡大)
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by ulgoods | 2010-01-22 13:08 | 山行 | Comments(8)

谷川イグルー構築 その2

さてigloo構築場所の定であるが、マニュアルに依れば斜面を崩して造成すべしとある。出入り口の設置が楽なためである。が、ここでは足の下に確実に2mの積雪がある、というか斜面に入ると積雪が胸で面倒だったので平地に作ることにした。さて、イグルのサイズを決めなくてはならない。今日中に作って泊まる予定が既に12:30になっている。小さいイグルーの方が圧倒的に少ないブロックで作れる(直径の二乗で効いてくる)のだが、ちょっとデカめの男3人が今夜泊まるつもりで作るのだから、ここは奮発して4人用、直径3mを作ることにする。大きいのを作る練習だからね、小さくまとめてもしょうがない。黙っているとそれなりに寒いので、2人にグルグルと円を描いての整地をお願いし、私は担いできた製造器を組み立てに掛った。スノーシューでは圧雪が足りない気もするが、ツボ足では果てしなく潜るだろうし...完成したイグルーが自重で沈まないかちょっと心配はあるが、不等沈下でなければ入り口を掘り直せばいいか。なんしか、もう作業に掛らねば絶望的だ。

このigloo ice boxによるイグルー作りは、基本的には中心を固定した竿の先に付いた箱に雪を詰めて円を描くようにブロックを置いくことを繰り返す。最初の数個のブロックは傾斜を付けおいて、一周したらその上に乗ってとぐろを巻いて上の段に移ってまた巻いて、巻いて巻いて半球のてっぺんに最後の1個を置いたら完成となる。って、てっぺんには置けないので途中で積み方を変えるのだが、とにかく今は土台になる一段目を丁寧に作らねばならない。しかしフワフアで良い雪。雪を投げ入れてもらって手でぺたぺた叩いて固めるのだが、容積的には4倍くらい必要だろうか。ひたすら雪を投げ入れ、叩いて固めて、枠をずらして進むを繰り返す。雪盛り係もぺたぺた係もすこし汗ばんできた頃、2人の呼吸が餅つきの感じでシンクロしてきた。
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二段目に上がるときにちょっと竿の長さを調整するのがミソらしいのだが、ここで過ちに気がついた。一段目を地面に垂直に置いたのだが、本来なら内側に10度以上の傾斜を付けることになっていた。マニュアル通りに竿を短くするとものすごい段差ができてしまう...ぐぐぐ、コレはまずい。仕方がないので、ここを一段目と考えることにして、二段目はごまかしながら積んでいった。破綻しなければよいが。ちょっと心配だが、そんな顔色を悟られないように...
とぐろを巻いて作るので下段ほど円周が長く、多くのブロックを要する。日没は17時を想定しているが、どーやら完成しないことは確実なので予め16時の段階で撤収か泊まり込みかを決めることにしてあったのだが、2周半ほど巻いたところでその刻限になってしまった。
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実は私、出来上がるものと思って屋根を持って来ていない。他の2人は泊まる用意があるらしい。実はテントを持とうと思っていたのだが...夜の宴会の食材などが嵩んでしまって、どーせ屋根は要らないしとか思い込むことにしてその分の容積と重量をPRIMUS ETA POWERストーブに振り替えてしまっていたのだ。拙い...一応、退却を提案してみたが、多数決で棄却されてしまった。何とか寝床を作らねばならない。どーするULG?
敷物用にビニールのシートがある。シートというか、昨年VBL用に使った全身がすっぽり入る巨大な袋なので、それに入って寝るか、切り開いてシートにして屋根にするか。寝袋は-15度実績のあるMnt.Flyダウン900g入りを持って来ているし、低地のお陰でそんなに冷えていないので、雪にさえ埋まらなければ何とかなるだろう...と思ってザックを取りに戻ったが、ん?目に留ったのは埋もれた小屋。ここの雪を掘って軒先に寝れば屋根の分だけ楽かということに気がついた。他の2人がテントを張り始めた時、私はスコップを振るって雪を掘り始めた。少し掘ってというか、踏みつぶして小屋の軒先に頭を入れて中を覗いてみたが、幸い奥の方は大棟の下に空間が空いていた。
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屋根の雪が崩れたら怖いのだが、幸い屋根の雪も固いし、屋根裏は切妻の端面が空いており、いざとなれば梁の間をすり抜けて脱出できそうな気配である。ここで寝るのが良さそうだな。決心を決めて、万が一の屋根雪の崩落に備えて奥の方を寝られる分だけ棚状に掘り出した。ついでなので、庇の下も堀って宴会場とした。なにしろガイドの風間さんがフルスペックの角スコを担いできてくれたので、雪相手に振るうには無敵の掘削能力を発揮する。こちらの作業は捗って、2人がテントを張っている間に寝袋を広げて宴会場にストーブを据え、首尾良く雪を溶かして湯を沸かし始めることができた。

今回の火器はPRIMUS ETA POWERのガス版に、近所のホームセンターで買ったcolemanのプロパン入りregularガス500を二缶持って来た。ガス消費が140g/hだから900gの燃料だと、液出しで低燃費だとしても5時間は燃やし続けられる算段だ。このストーブ、というか、Jetboil的な熱交換機を備えた専用鍋が付いたクッキングシステム、だいぶ前に海外で安かったので買っておいたのだが、グループ向けの重さなので今まで使わずに塩漬けだったのだが、風除けも付いて気化管も付いて液出しできるから冬場には良いだろうと連れてきた。国内版とは異なり、海外版は鍋の蓋がフライパンになる。その辺の鍋の性格に合せて考えた今夜の献立が、おでん。紀文のネタパックを4人前とウインナーソーセージも入れて煮る。次はその残り汁を当てにして餅入りうどん。フライパンではベーコンを焼いて、最後はコンビーフを焦し焼きしながら酒の肴にする予定だ。酒は日本酒を2L担いだので(JOTAROさんに担いでもらった)、別途熱燗用にJETBOILを持って来ている。回りの雪をどんどん投入してお湯を作り、おでんを煮込んで2人の野営準備の完成を待った。が、お腹も減ったし...大きい声で、おーいごはんだよー、って(笑)お袋さんの気分である。テント内じゃないので盛大に湯気を上げて煮込んで待った。
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ETA POWERの風除けは確かに機能している。液出しも問題ない。担いできて正解だな。
やがて3人が揃ったので、JETBOILで熱燗を作って乾杯した。きゅーっと胃の腑に染みこむ堪らない。おでん!ハフハフ言わして、鵜が魚を飲み込むように喰らい、口から盛大な蒸気を吐く。外は当然真っ暗、頭上は風が吹きピットに雪も舞うのだが、熱燗おでん、この上なく幸せだ。おでんは直ぐに売り切れたので、残ったつゆに雪を足して沸かし直し、粉の出汁も入れてうどん玉を茹でて、薄切りの餅を投入して煮た。溶けた餅がうどんに絡んで、これも堪りませんな。うどんは4玉に餅は一袋もあるので、心ゆくまで炭水化物を摂取していただく趣向だ。その間もお袋さん役は熱燗を作っては飲ませ、湯の加減を調整し、消えた蝋燭を点け直してと忙しい。うどんの後は風防を外してフライパンモードに切り替えて厚切りベーコンをジュウジュウ焼いた。タンパク質も取らないとね。この頃には日本酒2Lの紙パックも空く目処が付いてきた。ジェットボイルで直接沸かすので、アルコールが飛んで屠蘇みたいな熱燗を飲むのであまり酔わない。翌日に残っても重いだけなのでどんどん食べて飲んでいただく。やっと腹も満たされ、酒も回ってきたところで、コンビーフ缶を開けてフライパンの上を転がし、焼けたところから箸で突っついて食った。体温生成用に油も摂らないとね。コンビーフ焼きの途中で2Lの酒が空いたのでガイドの風間さんが担いできた缶入りの谷川岳という酒をジェットボイルに空けて燗をして飲んだ。このメニュー、おでん、ベーコン、コンビーフはタンパク質と油分で筋肉の補修と睡眠時初期の体温生成用カロリー源として、うどんの炭水化物で夜通し体温維持用の燃料のつもりで食べてもらった。必要な物を腹に詰め込んでもらったし、酒もなくなって寒いので、とっとと寝ることにした。

それぞれ分かれ私は雪の棚に敷いた寝袋に入ったのだが、やはり外で風が吹くと雪が舞い込んで顔に降る。このぶんでは顔がびしょ濡れになるので、向こうを向いて顔に雪が当たらない姿勢キープで寝ることにした。
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ああ、新しいマットの具合を見るのも今回の目的だった。前回の北ヤツではダウンマットの不調で寒い夜を送ったので、今回はPacific Outdoor Equipment Peak Oyl Aero Mountain Sleeping Padの短いヤツととRidgerestのやはり短い3/4を持って来た。躯体部分は二重化で足元にはザックとなる。POEのマットは夢の断熱材、AeroGel入りで軽い割にはR-Valueが高いという売り込み文句を信用してみようと思うが、裏切られると夜が辛いのでRidgerestで補強という構成だ。広げて思ったのだが、Aerogelといっても申し訳程度にしか部分部分にしか入っていない手触り。こんなんで利くのか不安だった気持ちもある。

やれやれ、旨い飯は食ったがこんな夜を迎えるとはね。


この稿、さらに続く...


降り積もる 野にも山にも 屍にも ...軒下で寝る心境ULG詠む Click! Thank you!!


次回予告、でけた...
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by ulgoods | 2010-01-20 23:30 | 山行 | Comments(8)

谷川イグルー構築 その1

東京では情けない程度のミゾレ交じりの雨で初雪宣言がされた頃、群馬の水上(ミナカミ)では、わんさか雪が降っているらしいとLOCUS GEARのJOTAROさんから一報が入った。いよいよ谷川イグルー(igloo)プロジェクト2010の発動である。実は、年末とある飲み会でJOTAROさんに紹介されて知り合った水上にあるラフティング会社ネイチャー・ナビゲーターに所属するガイドの筏漕師こと風間アキラさんが今年から始めた冬場のスノーシューツアーのコースの途中に、どーせなら大きなiglooを作って休憩宿泊場所にしようゼ!ということになっていたので、早速、週末を待っての出動となった。
土曜の未明、杉並でJOTAROさんに拾ってもらい、渋滞もなく快適に車を走らせて(もらって)一気に水上へと突き進む。こっち方面に来るのは久しぶりだ。子供が赤ん坊の頃に託児所があるノルン水上スキー場に何度か来たが、もう10年以上も来ていないだろうか。インターを下りると、やはり期待にそぐわずに、カラカラの東京とは打って変わって重い雪布団をまとった風景に出会うことができた。野山が静かに休んでいる。で、インターすぐにあるネイチャー・ナビゲーターの事務所で風間さんと再会を果たした。冬場は彼一人で留守居役らしい。少し寂しいと言うが、ちょっと羨ましい気もする。雪を握ってみると、ギュッと締まる...太陽は出ていないが、こりゃigloo日和だ。一服してから1台の車で土合駅の駐車所に向かった。

車道を少し歩き、白髪門への登り口を過ぎ、一の倉沢へ向かうトレッキングコースに入った。JOTAROさんと風間さんは先週も一の倉沢までトレッキングし、素晴らしい風景を写真に納めている。できるならそこまで歩いてiglooを構築したいと考えていた。ががが、この一週間降り続いた雪で、踏み込んだコースはスノーシュー履いて股下までの新雪、しかもトレースは無い...初っ端からヘビーなラッセルを強いられることになった。コースは殆ど平坦なのだが、緩い登りに入るとたちまち積雪は胸まで来る。こうなるとスノーシューも足が抜けないから一歩一歩が重労働だ。それぞれ踏み方はあると思うが、私の場合は...雪の中に踏み込み(腰の高さまで足を上げては歩けないからね)膝を折って胸も使って前方の雪を崩してから更に体重を掛けて踏み込むという動作である。踏み込む労力は同じなので大股で歩くことにしている。三人で交代しながら雪の中を半ば泳ぐように道を造っていたが、振り返るとラッセル跡にお客さんが来ていらっしゃった。年配のカップルであるが、お父さんもラッセル部隊に加わっていただくことになった。なんせ、予定の1/3のスピードも出ていない。そのうちもう1カップルが追いついてきて、屈強なお兄さんを得て、合計で男子ラッセル要員5名、女性2人はお客さんというラッセル部隊の構成となった。大汗をかかないように交代しながら、先頭の番が回ってくると決死の覚悟で雪を切り開く。隊列の2番目といえども普通のスノーシューイングと同じくらいの労力で足場を固める必要があり楽ではない。が、さすがに重労働を交代してもらって最後尾にまわると、踏み固められた道を、眼下に流れる川を見ながら歩く余裕が与えられるのである。陽は出ていないし、風も吹き雪も舞ってはいるが、こういう雪深いのも悪くない。こういう景色に会いたくて来たんでしょ!という感じだ。ラッセル先頭は深雪の開拓者な訳だから、名誉ある労働である。
んなわけで写真は無い...

目前にこんもり盛り上がったモノが見えてきた。あれが小屋の屋根だろうとガイド風間氏が言うので、暗黙のうちにそこが目標地点になった。終わりが見えて救われた。予定(前週実績)では30分なのだが、今回はその4倍、2時間チョイを掛けて辿り着いた。30分の4倍だから良いものの、4時間の予定の4倍だと16時間で、殆ど死の雪中行軍となる。しかも今回は比較的平坦だったが、登りが多いと更に時間増加係数はUPすると考えるべきだろう。

小屋は三面板張り構造らしいのだが、何とか屋根の梁だけが見える状態にまで雪に埋まっており、そのままでは小屋の使用は不可能。
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そのうち、ガイドツアーの三人、単独のお兄さんなどがトレースを通ってやって来たが、この先は断念して小屋影に雪を掘って風を防いでお茶など始めたりしたので結構賑やかになっている。我々はというと、ここからがお仕事なので休憩も早々に切り上げて近くの空き地の整地作業に取り掛った。今回作成するのは4人用、直径10ft.の大型である。先ずは目見当で直径4mくらいの円を踏み固めた。スノーシューで股まで沈む。横では壺足で雪に溺れかけている人も居たりするくらい。小屋の埋まり具合からして2~3mは積もっているだろう。最初が肝心なので丹念に踏み固めた。のだが、ここまで来て雪質は..上等のパウダーである。踏んでも踏んでも容易には固まらない。滑る系には最適なのだが構築系にとっては一抹の不安が湧く。大丈夫なのか俺たち。小屋の雪を掘って雪洞気分でも良いかな、なんて気もしてきたぞ。

この稿、続く...



がんばれ谷川イグルー野郎ども く Click! Thank you!!
予告、現地泊での宴会風景...
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by ulgoods | 2010-01-19 07:05 | 山行 | Comments(8)

定点観測2009

定点観測

クリスマス前の週末の北八ツ定点観測も昨年のソリ敗退を除いては順調に回数を重ねている。今年は星を撮りたいというBBさんと方角が重なったのでガス割り同行していただくことにした。
やっとパッキングも終え少しでも寝ておこうと眠りに就いたとき、予想を遙かに遅まわる時刻に「今起きましたー」とメールが来たが、余計に寝られるので実は嬉しかった。今日の歩く時間が短くなるだけ、どーせ北八ツのあの辺を出ないハイキングの予定なので問題ない。もう一眠りっと...
高速は諏訪南IC辺りでチェーン規制をやっていたが、事前に金曜の夜は降ってもおかしくないと情報を得ていたので前日にスタッドレスに履き替えておいて良かった!規制をさっくり通過して諏訪で下り、徐々に増える積雪の下道を通ってピラタスに着いたのは11:30くらい。2000mくらいから上がガスっているのは気がかりだが...行くしかあるまい。上がって昼過ぎからの行動になる。
今回の足ごしらえだが、積雪が少ないことも考慮してズック(montrail namche)、軽登山靴、ワンタッチアイゼン対応の冬靴とスノーシュー、Kahtoolaのアイゼンを持って来ていたが、このぶんでは上の駅を出て直ぐに積雪だろうから、ズックとオーバーブーツ、スノーシューを選択した。オーバーブーツは往年のForty Below Light Energy Overboots TR modelであるが、中間にCrescent Moon Over-Shoe Booties を持った。これは5mm厚のネオプレーンで以前までの自転車用に比べて厚くて履きやすい。
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スノーシューはMSR DENALI EVO ASCENTだが、縞枯山荘のHPに依ると以前湿った雪が降ったとのことで、下は固いだろうからフローティングテールは付けなかった。
ザックは夏の間にUSのバッタ屋で安売りしていたGoLite Odysseyを投入した。95Lで1.64kg、背が高く大容量、嵩張る寝袋や防寒着類をあまりキツく圧縮せずに放り込めるのでパッキングが楽であった。実は、この選択が我が身を助けることになるのは後述...

ほぼ100%ユルい服装のスノボの人たちに紛れて12時のゴンドラで上がった上は風も強く白くガスって雪も舞う、絶好のシーズン最初の慣らし歩行日よりであった。先ずは情報収集のために縞枯山荘に向かった。山荘までは踏まれており、ツボ足でなければ問題ない。いつもながビュンビュン回る風力発電の羽根が怖いが..暗い小屋に入りストーブ脇に座って甘酒を頼んだ。小屋はスキーの客8人くらいが出るところであったが、客に同行して出かけそうな小屋の人に尋ねたところ、雪は昨夜50cmくらい降ったと、縞枯山と雨池方面は踏み跡がないこという情報を得た。で、同行のBBさん、分散保管しているスノーシューを回収できずに今回はワカンである。新雪が深いと辛そうということで、坪庭まで戻り踏まれている五辻方面に向かうことにした。
その後は踏み跡の付いた、既に貫禄の付いたモンスターの、心配した木道もそれなりに埋まった道を快適に歩いた。適度に寒くて気持ち良い。白駒池のキャンプ場まで歩けそうであったが、気がつくと15時を回ったので平地を見つけてビバーク態勢に入ることにした。

ちょうどテーブルのある平地を見つけたので、テーブルの間の夏なら通路であろう場所を野営場所とした。踏み固めて設営に移ったとき、出てきた幕は...二人とも申し合わせたようにBDのOneShot、しかもカーボンポールである。これを2台並べて張る!チームBDみたいで良いかもしれないと思った。OneShotもカタログ落ちすると聞いている。小さく固くて冬場も良い幕と思うが、新作にも期待したい。
一年寝かせたOneShotであるが、カーボンポールのショックコードが伸びきっていた...カーボンは継ぎ目がキッチリ入らないで力を掛けると折れるという話しをUSの人から聞いていたので、ここは慎重に継ぎ目を確かめてから押し込んだ。少々風があったのでペグとしてスノーバスケットを外したトレッキングポールを深々と刺した。他の2箇所はMSRのスノーペグを使ったが、これも良く効いた。綱は取らなかったが大丈夫そうである。
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気温は-11度くらいである。水が凍ると厄介なので固くなる前に湯を沸かすことにした。持って来たのは、冬場には頼りなさげな空き缶の自作カーボンフェルト芯のアルコールストーブである。これをCaldera Coneと合せて使い、BPLの550cc鍋に湯を沸かすのが今回のテストのひとつ。以前10月末にテストしたとき以来、燃料を染みこませたまま放置したままであったが、中には湿り気も残り、そのままでも火が点きそうだった。チタンテルモス一杯500ccの湯が欲しかったのでとっておきのエタノールを少し足してオイルラーターで点火したが、そこそこの風の中、一発点火し、風に吹かれながらも延焼し、即座に実用強度になった。すばらしい!コーンを被せ水を張った鍋をセットしたが、コーンの内部は殆ど風の影響を受けず、炎が着実に鍋の底を外さない。カルデラコーンは空気穴が偏在しているので、穴のない側を風上に向けてある。あとは時間だけ、余計な騒音を立てずに時々ボっと言いながら、たぶん冷えて力を失ったキャニスタストーブよりは確実に湯が沸く感じだ。ストーブとカルデラコーンの最適化をしていないので蒸発しすぎか?少し不完全燃焼臭がするのでテント内では使わない方が良いと思ったが、もう少し芯の出し方とかフェルトの詰め方とかで調整が効くと思う。
とにかく野外の、どちらかというと強い風の中で湯を得ることができた。幸先がよい。テルモスに湯さえあれば飯も食えるしスープも飲める。安心だ。
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次に寝袋を広げたときに不幸の種を運んできたことに気がついた。昨年買って室内試しのみの新型ダウンマット7,しかもレギュラーサイズを膨らましているときに異変は起きた。縦に走る隔壁の一部が膨らんでいるではないか!保管中に隔壁の接着が剥離し隣と繋がってしまったらしいが、それは悪い知らせ。というのは剥離した部分は、以前の旧版の修理の経験から恐らく気密層が破れていると予想されるからだ。ともかく、凍える中、手を弁にする必要性から素手になって、いつもより長い時間掛って膨らましたマットをテント内に放り込んで寝袋を広げた。が、はやりマットは予想を超える速度で張りを失っていた。抜けながらでも一晩保てばと思ったが、どやら辛い夜を強いられる予感だ。予定では今夜はIntegral Designs VBL Hooded Vapor Barrier Liner を使ってベーパーバリアのテストであったが、底が冷えるのではスッポンポンで寝る訳にはいかない。昨年、ポリ袋でVBLをやって不評だったので、機能的にはさほど変わらないと思えるが、見栄えだけの問題で夏の間に入手しておいたVBL、ま、何のことはないシルナイロンのライナーなのだが今回はテストを見送ることにした。仕方ないのでザックを、Odysseyを潰れたマットの上に敷いた。このザックはサイズや形状的にGoLite Treckの後継であろうが、しっかりした背面パッドが付いているので少しは断熱になるだろう...
となれば、食って体温を絶やさないようにしなければならない。先ほどのストーブに燃料を継ぎ足し(コレ便利!)更に湯を沸かしてドライカレーを仕込んで、更にも一度沸かしてポタージュの粉を溶いて夕食を整えた。
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CFアルコールストーブは絶好調である。湯さえ沸かせれば何とでもなる。

食ったら寝袋を温めなければならない。寝袋はいつものMt.Fryの900gダウンの信頼を寄せている袋を持って来た。VBは寝袋を湿らせない以外に、多少の温度の付加が期待できるが、まだ自分の中で見極めができていないので現時点では温度付加を当てにして薄い袋を持つ気にはならない。だが、やはり背中が冷たい。Odysseyの場所を調整しつつ、肩と腰だけザックに乗るようにし、首は靴の甲を枕とし、足元は履いてきたネオプレーンのオーバーブーツを敷き、モモの辺りはダウンジャケットを敷く&半身で寝ることで何とかやり過ごせそうな体勢を編み出した。地面に奪われる体温より生成の方が勝っていたようで、やがて心地よくなってきた。本当にストイックなULとか指向したら次回からこのスタイルが最も軽いのだろうが、袋とマットだけは削りたくないのが本音だ。寒さに凍えて寝るのは詫び寂を通り越して惨めさが漂うからね。
寝心地は悪いがOdysseyの上に乗っかってひととき良く寝た。風が吹き、雪が舞い、只だそれだけしかない夜を味わった。ら、夜中にBBさんが起き出して...元々BBさんは星の写真が撮りたくて、D90と魚眼レンズ+UL野郎にあるまじき1kg超の三脚をGoLite Treckに詰めて担ぎ上げていたのだが、白濁した空と風に舞う雪では星は望むべくもなくテントの撮影に切り替えて活動を開始した模様だ。
私も前回奥多摩で好評を博した竹鶴12年の湯割りを啜って過ごした。凍りそうな容器の(首の細いペットボトル)の水を沸かしてしまうことにし、OneShotのドアを開けて寝そべったまま湯を作った。この時、持参したプロパン含有率を高めた再充填式ガスライターの点火性を試したがのだが着火しなかった。胸ポケットに入れて温めておいたのだが..で、ダメ元でCFに押しつけて火花を飛ばしたところ、ナンと!ライターの燃焼室内に飛ぶ圧電素子の火花だけで-13℃超まで下がった風のある環境でカーボンフェルトに一発点火したのには驚いた。炎が着実に延焼したのでコーンを被せて難なく沸騰した湯を500cc得た。完璧である。
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BBさんが、私のヘッドライトが天幕を透過して辺りを照らしている写真を長時間露光で撮ってくれた。おお、梟ほどの目の感度があればほんの僅かな光でもこんなに明るいのか...
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やがて本格的に眠りに落ちた。テント内結露を避けるためにドアの上部は開け放ってある。少し寒いが元々テントの暖かさは期待しておらず風除けのつもりなので問題ない。夜中、1、2度テントを揺すって雪を落としたが、結局明るくなってから起きて時計を見たら7時過ぎ、BBさんも活動の様子がないので寝直して8:30くらいに名残惜しい寝袋から体を抜き去った。テント内部の霜の付き方は、ポールが白くなっているが、さほど深刻ではない。大方、昨夜の湯割りの湯気のせいだろう。寝袋はカバー類は用いなかったが、濡れるほど温度が高くないのでこれもOK!
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靴を履く間にコーヒーの湯を300ccくらい沸かしたが、片足を履く前に沸騰してしまったので、片足の状態で寝起きのコーヒーと餡パンで朝飯にした。ああ、Forty Belowのオーバーブーツは薄手のモンベルのテントシューズの上に履けばトイレくらいは大丈夫で便利だった。
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いい加減9時になるのでBBさんを起こし、撤収して、山頂とか池とかは視界がないのでサッサと帰ることにして来た道を引き返した。
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今回、VBLのテストはできなかったが、CFストーブ+カルデラが予想以上に好成績で成果はあった。鍋などせずに湯だけで過ごせればバカ重い冬用の湯沸かし道具はもー持たない。その分の重量を酒と寝袋に捧げよう。着火性もアレだが、消火して燃料を再利用できるし、予熱用に燃料を垂らす必要もなく、今回は合計2Lほど沸騰させたが、燃料消費は50-60cc位だと思う。
あと、私の所に来るダウンマットは素性がよろしくないので、別のマット、信頼性の高いマットの重ね使い+ザックも動員してR値を確保する方法を考えたい。その方が不幸があってもダメージが少ない筈だ。


それにしても良い雪だった...
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BBさんのTrangiaとULGのCF Stove
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CF Stoveは予熱なしの一発炎上で、重量のみならず取り扱い的にもTrangiaを越えています。BB氏に進呈したので公園のゴミ箱で空き缶探さないと...



シーズン変わりは出かける前に細部までチェックをしないとね...

こちらは漏れなくクリック補充で吉... Click! Thank you!!

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by ulgoods | 2009-12-21 20:59 | 山行 | Comments(29)