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渓流歩き岩魚釣り / TENKARA fishing

渓流歩き岩魚釣り

■口上
テンカラで岩魚をと思い、今期は釣れるまで尾根には出向かない願掛けをしていたのだが、幸運にも3回目の自然渓への釣行でやっと岩魚と出会うことができた。
結果として2回釣れた。1回目は5寸程度の小岩魚だったので撮影後にリリース。2回目は塩焼きにして充分サイズであったが、手にする直前に糸から針が外れて痛恨のエラーであった。針がついたまま逃がしてしまったので、あの魚も長くは生きられまい。ちゃんと取り込んで引導渡して骨まで食べてこの身にしたかったのに残念である。
今回のメンバーは総勢4名。前回の南ア釣行のメンバーにもう1人、西丹沢の猛者、その名も玄倉川の別名である丹沢黒部を名乗るT氏にも参加いただけた。いずれの方も経験豊富なULな渓流爆釣請負人である。テンカラは私一人で他はリール付きの洋式フライ竿。

■遡行開始す
行った場所は南ア深南部、東京から6時間車を走らせて干上がったダム湖が出発点となる。全長200mを越す針金と羽目板で作られた吊り橋を渡って向こうの世界に踏み出すのは結構勇気が要る。
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揺れるというか、裏返りそうでちゃんと怖い。
湖底に下りるとそこは干上がった別世界であった。ああ、今年は渇水なんだねって納得し掛ったのだが、肝心の水が流れていないではないか!川はどこだ?自分が降り立った異次元に一瞬たじろぐ。

とりあえず上流を目指して砂漠のようなダム湖底を歩き出した。10分くらい歩いたところか、微かに水音が聞こえた。音はすれど姿は無し。
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どうせ水まみれだろうからと飲料水を担いでいないので朝飯も食えずに、更に進むこと10分程か、水溜まりがあり、そこが川の終点になっていた。どうやら水が無い訳ではないらしい。気を良くして100mも上がると流れが現われ、更に行くと結構な渓流が出現したのは嬉しかった。おそらく渓流部分は生きていて、ダム湖の堆積部分で全部染みこんでいたものと考えられる。水を得たので安心して朝飯を摂った。

砂地を離れて岩の河原を進む。まだ若い角が多い岩だらけだ。この日の足こしらえは前回同様の沢足袋で足裏や爪先の保護が無いに等しい。次第に足裏のツボが刺激されというか、すぐに痛くなってしまった。たまにある数歩の砂地がオアシスに思える。その辺りは既に釣れそうな雰囲気もあるのだが先頭の人は更なる上流を目指し決して歩みを緩めない。ほどなく足裏に加えて爪先も泣きだした。2時間程か、予定通り最初の沢が差すところまで進んで竿を出した。1人J氏はは支流へ、残るT氏N氏と私は右岸左岸に分かれて追い越しながら釣り上がって行った。先ずは師範達の竿捌きやポイントの選び具合など見て、竿を振る練習などして後に続いた。
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ザックはGossamer GearのMariposaである。荷が軽いので担ぎながら釣り上がる。

しばらくは何でもなかったが、師範達もどうにも釣れない模様。そういえば来る途中でまだ新しい足跡を見た。神経質な岩魚のこと、先行者が居るとなると一気に難しくなるらしい。結局T氏とN氏が普段は放す骨酒サイズを一尾ずつキープするのみで3kmほど釣り上がり、14時くらいにビバーク予定地点に到着した。最初の沢で分かれた爆釣野郎AチームなJ氏も追いついて合流したが手ぶらである。ま、魚影さえ見ない私とは違ってアタリはあったらしいが、水量が少なく岩魚が警戒しているとのこと。今夜の岩魚尽くしの宴会計画に赤信号が点った。最悪、飯と塩昆布はあるが、何とか岩魚にはお出まし願いたいところだ。

■遊んで食う寝る
我々はビバーク予定地は支流が2本差すので三股と呼んでいたが、さっそく荷を置いて身軽になって散ることにした。確保の上限は一人4匹までとされた。私はしばらく泊地前で独り竿を振っていたが、岩魚の居ないことが明白なのでいよいよ渓を進むことにした。既にメンバーが入っている沢なので、彼らに釣り漏らしは無いはずであるが、もしもということもあるから釣れぬなりに丁寧にフライを流したつもりである。やがて行く手に釜が現われた。どうしたものかと思案したが、結局は竿を畳み胸近くまで浸かってヘツって突破した。ら、先行のJ氏が戻ってきた。どうやら滝がキツいらしい。高巻きは残置ロープで登れるが向こうに降りられないと。もちろん沢登りの技術が皆無な私には手も足も出まい。再び胸まで浸かって戻ったら、頭上の岩をJ氏が歩いていた。なるほど、ここは上を行くのか...少し沢歩きの技術がないと釣りにならぬと実感した構図の対比であった。

泊地まで戻り、J氏はもう一度釣り下がるという。ほどなく本流を行っていたT氏も戻る。泳ぎが必要な釜があるらしい。この時点で3尾程度の岩魚があったと思う。人数は4人。私は釣っていない。せめても薪集めで貢献することにした。1.2mスリングを2本、小学校の校庭の二宮尊徳のように薪を背にして対岸とこちらを何度も徒渉して薪を集積した。急峻な斜面に横たわる長さ10mくらいの猿梨の木も川の中を引きずって持って来た。タープの支柱が要るはずである。続いてT氏が魔法のザックから取り出した鋸で猿梨を切り、二間四方の農ポリシートを100円荷造りロープで立てる作業に入った。さすがは丹沢黒部氏である、全てが手馴れたものである。J氏も戻り支柱を建て終わったその瞬間、ザーーっと大粒の雨が落ちてきた。間一髪とはこのことか、とすればまだ天には見放されていないはずだ。
そんな折、独り沢に入っていたN氏が戻ってきた。どうやら腰の袋に膨らみがある。堂々5匹余の釣果らしい。いつもはこんなに確保はしない氏であるが、本日の状況に鑑み奮闘してくれたらしい。救われたと拝見したら..おお、尺ものも居るではないか。これだけあれば宴会はなる。
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早速T氏がガムテを着火剤にたちどころに火を熾し、続いて河原で岩魚を捌き始めた。あまりの手際の良さに私は火を育て飯を炊くことくらいしかできなかった。農ポリも2m程の高さに張っていたのでアホ程大きな火を立てねば溶けることもなく、渓の奥は余程のことがない限り風は穏やかだと言う。この環境であればこの屋根が最も理に適っている訳だ。
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やがて料理も出来上がり。
尺岩魚の刺身
岩魚ナメロウ
皮と臓物のバターソテー
岩魚骨酒
岩魚塩焼き
岩魚あら汁
飯4合
という豪華な夕餉になった。
刺身やナメロウも岩から出ている葉っぱを敷けば彩りも美しく、小さな演出であるがこの上ない清涼感と高級感を醸し出す。
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しかし、T氏の経験に裏打ちされた渓での確かな生活術とマメさにはほとほと脱帽した。いずれはああ在りたいものだ。

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酒も進み、飯も進み..4合の飯はあっという間に平らげられて、その夜のうちに更に4合を炊くことになった。飯炊きは私の担当だが、どうにも飯を失敗する気がしない。2回ともふっくら焦さず炊けて好評であったのはBOZEな私にはせめてのも救いであった。

ビールで始り骨酒で一升、仕上げはモルト酒1本と調子よく酒も回って、私も昨夜から寝ていないので急激に眠気が襲ってきた。予定の寝姿はGatewood Capeで屋根をこさえて薄手の化繊QuiktをPertex QuantumなBivyでくるむ予定であったのだが、まー、農ポリタープもあることだしと半袖姿でゴロリとリッジレストに横になった3秒後から記憶がない。夜半目が覚めたら皆様Bivyにくるまってちゃんと寝ていらっしゃる。私も慌てて寝具を整え、薪を足してから再び眠りに落ちた。
不思議なことに渓に充満する流れの音は気にすると聞こえるのだが気にしなければ3秒で消えるものだ。人間の耳というか脳は巧く出来ている。

翌朝、目を覚ますと既に明るく、T氏が朝餉の準備に取りかかっていた。岩魚は釣らないは、飯は喰らうは、酒は一人前だわ、朝は起きないでは立つ瀬がない。未練のQuiltから体を抜いて支度に掛った。
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朝はソーメン、揖保の糸を9束茹でるのが私の当番。そう、私は前回に引き続いて炭水化物担当を言いつかっている。火は既に熾きていた。ビリ缶に湯を沸かしてソーメンを茹で、バグネットに放り込んで川に晒して出来上がり。バグネットに移すときに間抜けにこぼさなければ失敗のしようもない簡単なお仕事だ。N氏が薬味を刻む、T氏が残り飯に岩魚の身を解いて混ぜて飯を握る。昨日の残りの岩魚汁も湯と味噌を足して温めた。まだ暗い渓にたなびく焚き火の煙に日が差して美しい。
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朝飯終えて、竿を損傷したT氏を残して三人が散った。私はN氏と交互に釣り上がっていくことにした。J氏が昨日岩魚を見たというポイントに岩陰から忍者のように忍び寄り、昨日の傾向から流心の白泡切れ目が狙い目だとアドバイスをもらってフライを流してみた。実は昨日の段階で軽いアタリは得てあり、フライの流し方など魚が居れば絶対掛ると言っていただいていたので、岩魚が居ると信じて2度3度流してみた。スゥうっとフライが沈んだので慌てて上げたが、どうやら早すぎたようだ。魚が掛るのは思ったより静かでささやかなサインでしかないと思った。TVで見るカジキマグロの1本釣りのような派手なジャンプなどはないのだ。1度失敗したので駄目かと思ったが、居ると分かったら勿体ない。もう一度フライを流したその時だ、再びフライが不意に水中に消えたではないか。キタ!と思ったが、そこは待ち、1、2秒後に竿を引き上げると、グビグビと竿に振動が伝わってきて魚が掛っていることが分かった。小さな魚だろう、針を掛けるに引き上げた反動でもう陸に引き抜かれていた。
よほど腹が空いていたのか、テンカラによる渓流岩魚の初釣果はかわいらしい小さな岩魚。これはキープサイズではないねとN氏に確認し、幸いにも返しのない針だったのですぐに針も外れたので放すことにした。
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小さいとは言え、引き抜いてから着地までのほんの数秒間、竿を介してだがその躍動感をこの手に感じることができたのは嬉しい。

その後、頭上の木を釣って針を無くしたので、ティペットと針を交換して先行するN氏を追った。その時点でN氏は一匹確保。さすがである。ここは試したので上へどうぞと言われて進んだポイントは、こりゃ釣れなきゃ嘘でしょという見事な一級ポイントに見えた。どうやら岩魚が居るかしら?とか半信半疑で臨んではいけないのである。先ほどの釣果でこれまでの確信の持てぬ気持ちが切り替わり、岩魚は居ると信じてフライを流すことが出来たその気が功を奏したか、3度ほど流してまた先ほどと同じように、フゥっとフライが消えたのを視認した。2秒待ち竿を引き上げたら、な、なんと水から揚がった岩魚は今度は塩焼きに充分なサイズ、腹の黄色も見て取れた。が、ここで慌てた。テンカラの場合は一気に引き抜くのが正しい揚げ方と後で聞いたのだが、こんなの初めて的なうぶな私のこと、岩魚を一旦水に落とし、ラインをたぐり始めた。今度は岩魚の振動と重さが直接指先に伝わってくる。私も狩猟本能が喚起される。ようやくラインをたぐり寄せ、水面から揚げようとしたときだ、それは不意にすっぽ抜け、揚げたのは針のない糸であった。糸が切れたのではない。縮れ具合からも糸が解けて針から外れたことが分かる。私も拍子抜けして立ちすくんだが、針を刺したまま逃走した岩魚も哀れである。今回はJ氏が巻いてくれた最後の1本、返しの付いた針であるから外れることもない。長くは生きられないだろう。ちゃんと釣らずに申し訳ないと詫びた。
件の釜まで進み、どうやらその上は岩魚の楽園なのかもと思ったが、登ってしまえば容易に戻れず、撤収時刻に遅れるので、余裕と余韻を残したまま引き上げることにした。
N氏の一尾をTさんが捌いてくれて、皮はソテーして、イクラも出来、再びソーメンを9束茹でて、残りのビールで乾杯して銘渓と別れの昼食とした。
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帰りは意気揚々とは行かないのは足のせいである。往路に増して足裏の刺激は許容量を超え、爪先をぶつけるのでおそらく内出血してるだろうと思いながら腰の引けた歩きをするものだから、みるみる遅れてしまった。休憩の度に追いつき、短い休憩での後、痛みに半べそをかきながら後を追うことになる。
やがて懐かしい足裏に優しいダム湖底に戻り、ほっと安堵して歩いたが、埋没していた石にけつまずき、涙ぐみながら石に悪態をついてしまった。やっぱ靴にするか。テンカラには足袋が似合いそうだが、こう痛いと釣りに障る。
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足裏と爪先を鍛えて思ったスタイルを通すのか、普通に靴を履くのか..どうしようか思いながら帰途についた。
数日経った。まだ足の裏に刺激は残り、足裏が厚くなった気もする。

さて、秋は尾根に戻れるな。今期中に釣れて良かった。


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by ulgoods | 2010-09-11 04:44 | 釣りとか沢とか

南ア釣行

人の身は何れは髑髏になる定めであるが、それまでは何かに成りたいと身悶えを続ける性がある。私なども脳の結線を組み直しては何かに成り掛るのだが、すぐに他のものに成りたいと願い、どれも半端だから結局マトモに成れるのは髑髏くらいかと思うが、それさえ怪しいかもしれない。もがくばかりで前に進まないのはシナプスの自己結線のやり方か、脳内物質の分泌に不具合があるのだろうか。
などと思いながらも最近ささやかに始めた釣りは魅力的だ。魅力的なので釣りに出かけた。

出かけたのは南アの山体を削り続けているトある川。渓で未だ泳ぐ魚を見たことがない私に初釣果を授けようと声を掛けてくれたのは..山あれば渓あり、渓あれば岩魚泳ぎて釣れぬ訳なしのJ氏とN氏のお二方である。幸い比較的近所にお住まいのお二方に近所のスーパー前で拾ってもらって意気揚々と源流部に向かったのは日付が土曜に変わった直ぐであった。
二人とも釣りは釣るために行うのであって喰うためにあらずの人なので、釣り好きで酒好きのN氏は岩魚の骨酒を飲んだこともなく、釣り好きでこれまた酒好きのJ氏は岩魚のなめろうなどは作ったこともないという聖人であるが、俗な私が予め籠絡しておいたので、N氏のザックには茗荷やショウガの薬味類が大量に、J氏のザックも骨酒用の燗映えする日本酒の酒蔵と化している。元来、単独ULスタイルで源流部を素早く釣り上がるが信条のお二人であるが、身を削る思いで稼いだUL的な軽量を俗な誘いに明け渡して戴いた。こりゃ宴会が楽しみだ。もちろん私も釣るつもり満々である。

夜の中央道をトあるICで下り、やがて市街地も抜けて漆黒の闇を切り裂くのは車のヘッドライトのみという道をひた走り、舐めロウだ骨酒だ、いや皮のソテーだと言っていた私たちの目の前に現われたのは「この先崩落でダメです」みたいなことが書いて閉じられた頑なゲートであった。え”、そんな!予定ではこの先20km以上の林道を走り抜け、行った終点から更に2時間以上も歩き詰め、本流に差すトある支流との出合にキャンプを張り、日の出直後の寝ぼけた岩魚をゴボウ抜きという筈であったのだが..魚を釣るには釣る気充満の気を悟られぬよう無我の境地で臨まねば微弱電流が伝わって魚に逃げられてしまうとは聞いていたが、なめろうとか骨酒とか2週間も前から舌なめずりしていた私の過大電流が崩落を招いた訳でもあるまいが、目の前の現実はあまりに無慈悲であった。
さて、ここから7時間も歩いて目的地に向かうか、あるいは別の手を考えるか..ボンネットに地図を広げて思案していたJ氏が、谷の向こう斜面に付いている林道を行けるところまで行って降りまして、目的地手前で不本意ではありますが小さな沢で励みましょうとおっしゃる。さすが、渓あれば岩魚釣れるのJ氏であるというか、渓がなければ始らないJ氏であるから、細かいことは考えずに突っ込んでみることにした。
対岸の林道を走るうちに日も昇り、今日も晴天の予感がする。良い朝であったが道は悪く、どちらかというと街用の車は頻繁に腹を擦る。乗っていても擦る毎に肩に力が入ったり軽量化しようと息を大きく吸い込んでしまうのに疲れたので運転手に必要のないN氏と私が下りて石など退かしながら進んだが、遂にこれ以上は行かれないようになったので2回目の作戦会議が招集された。すでに谷底からは遙かに高い。これを下るよりは戻って7時間の林道歩きが遙かに楽に思えたとき、さすが、迷った山では持つべき物は友より地図、J氏がだいぶ戻った所から谷に下る髪の毛よりも細い線を見出した。地図作り百有余年の国土地理院のご苦労が報われた瞬間である。が、残念ながら地図はそこで紙面が切れており...しっかーし、そこはそれ、山より道具のULGがGPSを起動して地形を追い始めた。確かに点線が谷底まで下りている。ご丁寧に向こうに登りの点線まであるし。なーに、下ってしまえば沢足袋の天下である。とりあえず下降点を求めて戻った。
以下長いので省略。
股下を濡らすほどの徒渉を何度か行ったが、腿のポケットに入れ忘れていたタバコに浸みも付いていなかったストームゴージュパンツは正解だったと思う。
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結局初日の私はBOZEであった。魚影すら目にすることなく渓をあっちへ行ったりこっちへ渡ったり。とは言え、障害物少なく広い本川は振りたい年頃の私にはストレス無く、抜けるような青空にぽっかりと白い雲も浮んで夏の空の下、沢足袋のスネまで洗う清流は心地よい。なんとも良い時間を過ごした。
釣れた話はJ氏N氏のblogに詳しい。

渓あらばのお二人は..さすが、釣れない私を見越してか10尾ほど確保していて下さった。とりあえず荷物を置いた場所から更に5分ほど遡ったところに天国があるとN氏が言うので、ゴツゴツ岩に沢足袋で足のツボを刺激されまくった足を引きずって約束の地へと向かった。

そこは河岸段丘と言うには大げさだが、流路から一段高くなった氾濫原的な平らかな草地が広がる素敵な場所だった。空も開けて星も見えよう。もう日没まで間がないので、それぞれ分担を決めるまでもなく作業に掛った。
岩魚を捌くN氏、薪と山菜集めのJ氏、私は焚き火&炭水化物α化担当である。釣れない腹いせではないが、せめて豪華な焚き火にしようと大人げない大きな焚き火を画策し、ぶ太い流木を2本並行に置き、先ずはその間に小さな焚き火を熾した。時間があれば燠火を作ってその側らにビリー缶を置いて飯を炊くのであるが、もう暗くなりそうなので直火炊きである。とは言え釜をひっくり返したのでは両氏に申し訳がないココロの私には秘策があった。針金を少しばかり持参してある。これで三脚を組んで上から吊すというボウイスカウト的な策である。我ながら用意がよーい。よく喰うお二人に+私なのでビリー缶2Lで5合くらいの米を炊いた。薪を入れたり引いたり三脚を移動したり高さを変えたりで火勢を調整して、手間隙かけたおかげで奇跡的に飯が上手く炊けたので私も面目を保つことができた。魚は釣らないは、飯は焦すはではどーしようもないからね。
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小振りな2尾を焼き枯らして骨酒用、3尾は遠火の強火で塩焼きね!残るは刺身とナメロウで、剥がした皮はバターでソテーだし、アラはスープの出汁になる予定である。余ったら明日朝のお握りとか思っていた5合の飯はナメロウと塩昆布を友としてあっという間に売り切れ、焼き枯らした小岩魚は3度も熱燗に漬けられたらもう勘弁と言って砕け果てた。何と言っても抜き出して内容物を検められた後の胃袋はコリコリと美味であり、塩焼きはちゃんとこの上ない塩焼きに仕上がっていた。
ああ、今夜は満月であったか..腹を満たして見上げた空には月も昇り、銀の光は釣らない私にも煌煌と降り注ぐ。焚き火の明かりと相まって、ヘッデン無しでも新聞が読めそうだ。飲み食い、語って笑った。

N氏がもー寝ると言い、焚き火の近くにマットを敷いてQuiltとバグネットをひっ被って2分後に落ちた。今夜は屋根は要らないだろう。
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私とJ氏はモルト酒に切り替えてまだ寝ない。星を見に来たのにこうも月が明るんじゃ見えやしないと残念がるJ氏と盛大な焚き火に取り憑かれた私であったが、やがて月も向こうの尾根に掛ろうかという頃にJ氏も沈んだ。やはり屋根無しで蚊帳を巻いて寝ることにしたようだ。私も焚き火の火勢が落ちるのを待って寝ることにした。焚き火はぶ太い幹に火がついているから朝まで燻るだろう。
冬にVBLに使った巨大ビニール袋(降ったら切り開いて屋根にするつもりであった)の上にリッジレストを敷き、BPLで買ったPertex Quantumのメッシュ付き袋に潜り込み、これまたBPLのUL 60 Quiltで眠りに就いた。明け方に少し冷えたが、マジメにQUiltをかぶり直したら温かくって目が覚めたら7時を回っていた。
私の脱皮跡
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二日目である。先ずは食わねばならない。
飯は昨晩食われてしまっているし、残った米を炊く時間もないので昨夜の熾きに手早く火を熾し、既に生活臭の染み込んだ三脚を物憂げに立てぶら下げたビリ缶に湯を沸かし、素麺6束を素早く茹でてお腹の空いた釣り人に供した。我々は瞬く間にソーメンを吸い込んだら林道に這い上がって更なる上流部を目指し歩き始めた。天気は上々、今日は私も釣れそうな気がしていた。
中略...
やはり釣れない。魚っ気がしないのだ。まぐれにでも引っかからないところを見ると、あえて魚を避けて針を流しているのだろう。教科書通りなんだがな...次の機会がああったら逆張りをして見ようかと思う。
時計も廻り、相変わらずの夏の空と清冽な流れに誘われて幸い周囲には人も居ないからパンツ一丁になって浅瀬に寝転んだ。パンツまで脱いでも問題はなかったのだろうが、不意に100年に一人くらいの割合で山スカートなど巻いたお洒落な山ガールが遡行してきたときに失礼なので最後の一枚は身につけていた。冷たい流れに洗われたら少しは岩魚とお友達になれるかもしれない。とは思っていなかったが、背中を流れる水は縮み上がるほどヒャっこくて気持ちいかった。寝転びながらスキットルから昨日の残りの余市を飲んだ。横を向けば自動的に口の中で水割りになる。目の高さに流れる透明な流れ、ボッカりと雲の浮かぶ紫外線のキツそうな空、泰然とそこに在るお山、あの尾根に上れば北岳がすぐに見えるはずだ。横に広がる草原を眺める私の背中に南アルプスの天然水が染みこんでくる。ああ、いつかこんな景色を見たっけと思う。
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そ、少し慎ましいがこれはLyell Forkの風景だな。ああ、ここでこんな風景に身を投じているのだから、無理に仕事をやっつけて飛行機に乗って太平洋を渡り、バスに揺られてYosemiteに入って、馬糞だらけのSierraの道を歩かなくたっていいやと思えるくらいに心まで洗われた。満足である。
いつまでもチジミ上がっても居られないので服を着て草原の奥のまた一段高い所が雑木林になっているところで雑用を済ませて振向くと河原にJ氏が釣り上がってきた。見ると釣果がないようである。J氏が釣れていないのだから私にアタリがないのも当然か。私も大人なので敢えてゼロですか?とは問わない。にこやかに微笑んでやり過ごし、少し遅れて私も竿を伸ばして行った。
中略...
試しにと私のテンカラを振る本来フライ一筋のJ氏の所に上流からN氏合流、昼飯とした。
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小さな流れが糸のように落ちてくる滝の岩場で揖保の糸である。再び6束を茹でてバグネットで濾して滝の清水で冷やして締めた。J氏に釣れませんねぇと水を向けたが、J氏曰く、いや面白いほどに釣れたけど、ゆんべ腹いっぱい食べたので今日は全部リリースですと、さすが余裕である。そんなJ氏と事前に遭遇し、あまりの余裕に打たれたN氏が慌てて確保に走ってくれたお陰で素麺のおかずに岩魚4尾が付いた。岩魚は..N氏曰く、釣ってる途中で小腹が空いたら皮を剥いて生でかじっておやつにするんです...そそ、サバイバル登山の服部氏ではないが、岩魚のかぶりつきは是非やってみたかった。本来は自ら釣った岩魚でやるべきと思っていたのだが、昼飯にて竿を畳むことになっていたので、それ用にと一人1尾の割り当てがあり、ありがたくかぶりつくことにした。岩魚の皮は..奥多摩の食堂では岩魚の燻製のあまりに潔い身離れの良さに感心する私であるが、皮まで潔く剥ける様には更に感心の度を深めた。生でかぶりつく身もほのかに甘く、アリや甲虫やかげろうやバッタやネズミを食って育ったとは思えない上品さである。
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残った一匹は...普段お二人はなさらないのだが、100尾も釣れたらどうしようと持参した糠に塩を混ぜたお持ち帰り保存材のテスト用にと私に下賜された。
後で聞いたのだが、釣ったお二人はやはり教科書通と違うポイントで釣れたとのこと。先ずは教科書通りにやってみてダメなら裏本的なポイントを狙うのが定石らしい。その見切りのタイミング、やはり渓あれば岩魚ありの自信に裏打ちされなければ難しいだろう。私など、この川には岩魚なんて居ないんじゃないかと思いつつもバカみたいに最初に教えられたようなポイントに糸を垂らしていただけだ。裏本も読んみなけりゃ裏も表もわからない。

帰りは延々と林道を歩き、道もないのに架かっている立派な橋を渡って朽ちた道を探して登って車に帰ることができた。ここでもGPSは大活躍であった。
人里に出て最初の自販機でコーラと三ツ矢サイダーを買うことを申し合わせて林道を下り、街では温泉に浸かって肩をほぐし、ラーメン屋で餃子ラーメンに更に餃子を追加して喰らい、大渋滞の中央道を途中運転を交代してしのいで出かけたスーパー前に戻ったのは日曜も終わる頃だった。

山あれば渓あり..一山につき渓は複数ある勘定だ。山も渓も、魚も菜も楽しめれば富士や百名山に行かずとも100年は遊べそうである。
次回はアタリが出ますように。

帰って糠漬け岩魚を取り出した。
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前の晩に飲んで取れ忘れ冷蔵庫で余計に一晩寝かしてある。さすが推奨される保存法だけあって、適度に水分が抜けて状態は悪くない。きれいに洗って、余計に寝かしたせいで皮がずる剥け気味であったが、水分が抜けているのでガス台の魚部屋ですぐ焼けた。塩味も程良くごちそうさまでした。
あと二日も漬け置けば乳酸発酵し岩魚のなれ寿司にでもなったかもしれないが、アレ系は私はちょっとアレなので試してみる気にはならない。

渓には自然の巨岩と共に巨大なコンクリート塊や強大な力でひん曲がった鋼材、赤く朽ちようとしているコンクリートミキサーやトラックの残骸まで転がっている。かつて人が治めたに見えたが、未だ山肌を削り出す激流は隙を見つけては土台から洗い流して抵抗するモノを許さない。コンクリート塊はいずれは砕けて砂利になり、鉄も溶けて流れ出すだろうし、費やした金の事も検査が済めば忘れ去るのだろう。


J氏、N氏、良い場所に連れ出してくれて感謝している。


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by ulgoods | 2010-08-05 15:19 | 釣りとか沢とか