厳冬期の寝姿システム考察

厳冬期の寝姿システム考察

厳冬期のキャンプ、特に連泊した場合の問題の一つに寝袋の濡れがある。
これに対しては方々でいろいろな取り組みが成されており、自分としても軽量で保温性が高く持続する寝姿システムを模索しているので、ここで自分の頭の中のモデルを整理してみたい。
考え違いがあるようならご指摘を乞う。

冷えの主な原因は汗だ。体から出た汗の水分が羽毛なり化繊なりの断熱層を満たし、外側の冷えた場所で結露し液体になって凍結する。温度によっては寝袋の表面だったり、近傍の内側だったり。外で結露しても濡れは付く。あるいは低温では外気の飽和水蒸気量は極端に小さいので、体温程度の高温で飽和している体表付近の水分は空気中に放散されることなく蓄積し寝袋を濡らして毛細管現象で寝袋表面に輸送されて凍結する。霜柱と同じ。
凍結自体は悪いことではない。問題は羽毛の場合は、濡れによって羽毛が萎んで嵩が減り、断熱層を薄くすることで断熱効果が著しく損なわれることにある。化繊の場合は湿気による嵩のヘタリは少なく、濡れても断熱効果がある程度は保たれると言うことになっている。しかし、凍結しないにしろ、空気の23倍もの熱伝導率を持つ水が体の近くに充満しているわけだから、伝導による熱損失の増大は免れようがない。湯の風呂とサウナでは入っていられる温度に大きな差があるが、寒い場合も同じこと。空気は最良の断熱材だ。
いずれにしても濡れれば冷える、これは日常で体験しているとおりで、今のところは高価な寝袋に入ったところで劇的に物理が変わることはない。

要は濡らさないこと。
一つは、テント内で煮炊きによって発生した水蒸気が繊維などに付着して成長して濡らすこと。これは煮炊きしない、あるいは通風を充分行うことである程度は軽減できる。
二つ目は、呼気に含まれる水蒸気、これも通風で持って行ってもらうしかない。蒸気の粒子が小さければ零度では凍結せずに過冷却のまま漂うから、これを繊維に付着させないことだ。また、寝袋中に呼気を出すと激しく水分を供給することになるので、口と鼻は出しておいた方が良いだろう。
三つ目は、ここからは未知の世界だが...不感蒸泄の制御。不感蒸泄は汗として感じていなくとも体から放出されている水分のこと。これが寝袋を湿らせるらしい。これを無くする方法はないが、これによって寝袋を濡らさない方法はある。Vapor barrier だ。要は体と寝袋を水分的に遮断してしまう。ビニール袋に入って寝れば寝汗は寝袋に伝わらないので濡れないということ。しかも、生理的には体表付近の湿度が飽和すると体は発汗を諦めるらしいので、朝起きたら自分の汗の中で溺れ死ぬと言うことは起きないらしい。それと皮膚呼吸の阻害はさほど深刻ではないとも聞いた。もちろん、Vapor barrierを使っても他の原因での濡れは起こりうるから万全ではない。
Vapor barrierについては本ブログの過去記事にカワサキさんが訳してくれた洋物の主張があるから、Vapor barrierをキーにして検索すると良い。有用なコメントも寄せられている。ただし、私自身で検証していないから保証はしない。

黙って横たわっていたら凍死するような非日常の山な状態では、安全に体温を保持できる寝袋は生命の最後の砦だ。風を防げる樹林帯に於いては寝袋の性能がキャンプの安全係数を決定する。森林限界より上では風の遮蔽(テント)と寝袋の弱い方が安全係数を決定する。いずれにせよ、寝袋に入っていさえすれば凍え死なない安心があれば、風雪にやり込められても生存の可能性は高いと思っている。単壁テントじゃ寒いとか二枚壁は暖かいとかいう話も聞くが、風を防げる程度の強度のテントがあれば(場所によっては降雪の重量も)テントに期待する暖かさ分の重量は全部寝袋に呉れてやるのが同じ重量を担ぐなら生命に対する安全係数が高いと考えている。
冬のデナリという本を読んだが、デナリ初登頂のアタック隊も何はともあれ寝袋だけは手放さなかった。森林限界上でも岩陰やパラシュート生地で風を遮蔽して寝袋に入って風雪をやり過ごす。もちろん、寝袋の中には巨大な氷の固まりが形成されているのだが、それでも寝袋が最後の砦。と読んだ。
Vapor barrierはとても古いアイディアで、それなりの効果も上げていると聞く。軍隊や極地探検で使われるらしい。植村直己さんも安東浩正さんも極地ではVB派だった。
Vapor barrierで検索するとソックス、手袋、衣類、寝袋ライナーを見つけることが出来、その気になればそれらの製品が手に入る。が、買ったところでただの防水性の袋物だからガッカリするのがオチだ。特段、市販の製品だからと行って魔法はかかっていない。カットと縫製で少し快適なくらい。だが、靴下の下にスーパーのレジ袋を履けば即席の水蒸気遮蔽壁になる。靴を汗で濡らさないのも歩行では重要。私はゴアなどはあまり当てにはしない。表面が凍れば抜けようがないから。これは朝のガチガチに凍った靴に足を通す不快とVBで歩く不快の両天秤か。手袋も台所用のビニールの薄いのがあればいいだろう。手がふやけるかもしれないが..寝袋ライナーはアルミホイルの緊急用のやつが使えそうだ。一度アルミの袋で寝たことがある。単体では伝導で熱を奪われて暖かくなかったが、寝袋の中で使えばよいだろう。代替え品の場合はシワや締め付けで血行を阻害せぬよう。
素肌とVBの間には出来るだけ衣類がないのが望ましいのは明らか。汗で下着をベッタリと濡らしたのでは冷えて仕方ないし、乾かさないと着られない。風や雪に触れないで着替えられる屋根や床もほしい。

寝袋を表面から濡らさない方法はSGT.Mが精力的に昨年から検証をしてくれている。羽毛寝袋に薄い化繊のQuiltをかぶせる。結露点を化繊Quiltの中に押さえ込むことで羽毛が濡れるのを防ぐ作戦だ。表面が濡れても化繊だから羽毛の致命傷にはならないし、緩いQuiltはダウンのロフトを妨げずに保温力を付加してくれる。
なかなか良好な結果らしい。
ただし、汗が充満して湿気った羽毛を乾かさないと、運搬中とか、いずれ凍る。

八ヶ岳辺りも冷えているようだ。今年は一回試してみるかな...寝る前に寝袋の重量を量り、起きてからもう一度量ろう。というわけで、電子式の手秤を用意してある。20kgまで10g単位で測定できる。
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一つあると何かと便利だろう。

超軽量で限界を超えて凍死が出る前にこの件は片付けたい。


あーあ、言っちゃった...春までには何とか。今年の宿題だ...
体を純化して老廃物の蓄積と微生物の活動(臭い)を防がないとね(汗




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by ulgoods | 2009-01-07 01:36 | 生活系
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