スライドライター三品

後付ですが、安全のために末尾のおまけ2の部分もお読み下さい。

普段ライターのお世話にならない人でもお山へ行くときはライターを持つと思うが、お山にはどういうライターだろうか?
私は着火を確実に得るために数種類のタイプの異なるライターを連れて行くが、スライドライターも常連の一つだ。
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このライターは圧電素子で着火するタイプだが、通常よく見かける親指を使うタバコ用ライターとは異なって本体をスライドすることで着火させる。このタイプの良い所は、
・炎と指先が離れているので長時間着火していてもやけどしない
・奥まった所に差し入れて着火できる
・スライドという大まかな動作で着火できるので手袋をしたままでも操作でき、かつ手袋を焦がさない
・炎を下向き出せるので、ストーブ系の点火には好ましい
・先端が細くなっていないのでザックやポケットの中で破壊されにくい
など。敢えてフツーのライターを持つ利点が見あたらないほど優れている。
本来はネイルアートを施した長い爪でもを痛めずに着火できるという着眼だったらしいが、お山や裏庭でアルコールストーブや固形燃料ストーブ、あるいは焚き火の点火に都合がよろしい。日本ではフジサワという会社からSlide66という名前で売られている。いわゆる100円ライターなのだが、残念ながらコンビニの店先で見たことはない。爪の長い人が多いような地域では売っているのかしら?最近ではタバコを取り出すとライターが差し出されるような社交場にも顔を出さないので、フジサワの目論見どおりに売れているのかも定かではない。
フジサワのWebページ等では一箱20本入りの箱買いが可能である。

先日、知人からライターのことで相談を受けた。何でもお灸にハマっているんだが、点火に程良いライターはないかというのだ。藻草をずらっと並べてから一気に点火して、目眩く刺激を得たいと..いう壮絶な願望の持ち主。数十秒間は点火したまま、なおかつ火を下方向に向けなければならない状況だ。チャッカマン等でも良いだろうが、火口が遠すぎても手元が震えて毛を焦がしてしまうだろうから、私はすかさずスライド式を提案した。が、私自身、売っているお店を提示できなかったので、それではということで20本入りの箱買いを共同購入することにした。
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5色4セットで20本。色合いは3系統あるが、私は野外で紛失し難いよう一番ケバい系統を選んだ。これで当分はスライドライター長者だ。

同形式のライターは海外でも売られている。
2枚目写真の手前に横たわる4本が海外組だ。一番右は、昨年JMTを歩いたときに、サンフランシスコで出迎えてくれたBB氏から頂戴したもの。JMTの道中はアルコールストーブの点火でお世話になった。サイズは日本のスライド66と同じ。手前の左側の三本はSUPER SLIDE CHILD RESISTANT REFILLABLE LIGHTERとして売られているモノ。作りが太いのが異なる。このまん丸の形状、男子の手にはこちらの方が握りやすい。SLIDE66系が指でつまむ感じなのに対して、太いSUPER SLIDEは掌で握る感じで保持できる。ガスもたっぷりだ。

海外組に共通しているのがREFILLABLEであって、かつCHILD RESISTANTということ。
再充填可能(REFILLABLE)、これはガス充填式で繰り返し使用することができると言っている。日本のモノは充填ができずに使い捨てだ。ガスの残量が減るとお山へ持って行くには不安だから自然とお役御免となるところだが、充填式なら100円で売っているガスで何度でも充填できるし、お山の時は満タンにできるから心情的に安心だ。現代においては減少しつつある”使い捨て”という風潮の中、文句を言われずに使い捨てが黙認されている使い捨てライターであるが、そんなもん買い換えたらええやん、というのも確かにアリだが、スライド66系が日本津々浦々のコンビニで手に入らない以上、エコ云々もあるが、充填式の方がありがたいのだ。

耐ガキ性能(CHILD RESISTANT)、これはスライドによる点火動作それ自体が小さな子供では困難だという所から来ているのだが(フジサワのSLIDE66もそう謳う)、もうひとつ、ガス充填孔を被う白いカバーはガス充填時に横にスライドさせて孔を露出させるのだが、これを横にスライドさせると本体の点火スライドが機械的にロックされ、点火自体が不能となる。このロックを外して点火できるくらいの知能を持っていれば不意に点火して火事を起こさないということなんだろう。充填機能と連動していて誠に結構なことだ。ザックの中での運搬中でも何かの拍子でスライドしての誤点火や、点火に至らなくてもガスの遺漏を防ぐ役に立つ。
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真ん中のライターの充填孔カバーは、ガキ並みの知能の私が大人の力でコジって壊してしまった..が、尖ったモノでスライドすることができるので、一層耐ガキ性能が高まっている(^^;;

このライターの点火方として、親指を上にスライドさせて云々とあるが、実際には人差し指側の複数の指での握りを下にスライドさせる意識で操作した方が指が痛くならずによろしいようだ。

この形式のライター、フジサワが爪の長い系女子をいたわって開発したと書いてある本もあるのだが、若干疑問があって情報を追跡してみた。
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右がフジサワSLIDE66、真ん中は海外組の細身のモノ、左端がSUPER SLIDEだが、燃料タンクの材質、親指の滑り止めの配置、上の金属のカバーのデザイン、ガス量調整レバーの材質と形状、背面も同様、どれをとっても同じである。同じ場所で?同じように量産されていることは想像に難くない。細身の海外物は製造元を表す表記は見つからないのだが、検索しまくった結果、GIBSONのPOCKET SLIDE LIGHTERだろう。本体にGEIと刻印されており、これはGibson Enterprisesと関連ありそう。太いのもGIBSON製だ。海外ではGIBSONブランドであることはフジサワのページにも書かれている。また、ライターで有名なRONSONのブランドでもRonson SLYDA ( Slide Lighter ) Refillable Piezo Lighter として売られており、デザイン、材質などは写真で見た限り同一である。これらを検索していくと、どうやら売り主は香港にあるMEYWIN LTDに集約されるようだ。これがフジサワとどうつながっているのかは不明。ちなみにSYLDAにはpatent 6655953と刻印されており、これは使い捨てライターに関するUSでの特許のようだ。SUPER SLIDEにはCHINAの刻印がある。フジサワ製も底にCHINAと書かれている。
額面通りならフジサワは世界中にスライドライターを供給している巨人なのかもしれない...


ホーボージュン氏の実戦主義道具学でも紹介されており、読み物としてはそちらの方が面白いだろう。
本の記事と似たレイアウトで海外組の写真を撮ってみた。
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これからの季節、ロウソクに点火する機会も多いと思うが、コレは便利ですぞ。ああ、お彼岸の時期に線香の束に点火する時もね!ポケットに一つ忍ばせておけば感謝されることが多いと思う。


どうしてフジサワのものは再充填式ではないのだろう?
国内でもスライドの再充填式が買えるように希望する人はClickして欲しい。
記事が目立てばどこかに声が届くかもしれない...フジサワが何とかしてくれるか、どこかが輸入するとかネ






おまけ、
複数の着火形式ライターを持つ利点
・高々度で空気が薄い場所では圧電型は着火しないことが多い。ターボ系は絶望的に着火しない。
・オイル式は着火が容易だが、炎がダラっと上がるだけだからストーブに着火し難い。
・回転ヤスリ(フリント)式は濡れると火花が飛ばない。
・どれかを紛失してもなんとかなる。
これらは組み合わせることで着火しない難を逃れることができる。以前、雨の黒戸尾根を下りてきたときのこと。中腹の小屋にたどり着いてお茶で体を温めようとしたが、フリント式の100円ライターが胸ポケット中で汗で濡れて火花が飛ばずに着火できなかった。そう、ガスでもオイルでもライターは肌身離さず暖めなければ燃料が出て行かない。さて困ったなと小屋を見回すと、残置された圧電ライターが見つかったが、これはガスの残量がゼロ。そこで、湿ったライターからガスが出た状態にして、空の圧電ライターの火花だけもらって着火に成功したことがある。それ以来、複数派になった。最近では、その他に削って火花を出すファイヤスチールと湿式の火口、フリント部分だけの火花着火用具も携行する。いかなる状況に於いても炎を得ることは生命の維持に関わるので三重以上の冗長性で保険を掛けている。ウルトラライトでも削れない部分だ。

その2
書いてから調べた
・再充填できないのはPL法対応かと思われる。付いていないのは自己責任とで使うと言うことね。山ストーブのガスはメーカが違うガスを使っただけで対象外だ。無謀な状況で使われることもあるから、メーカーも怖いだろう。豊かな国の人は100円をケチって万が一でも事故に遭ってはイケナいのである。USで安全なモノがJPに来て危険とは思わないが...
後述するが、想定外のガスを入れられたのでは責任が持てないから入れられないようにすると言うことと思われる。

・ブタンガス用ライターにはブタンガスを使うべし。プロパンガスが入った物は低温下でもガスの気化が期待できるが、蒸気圧が高いのでブタン用の外殻で保つかどうかが心配。狙い目の東京パイプの共用ガスボンベはプロパンを25%ほど含むが、プラスチック外殻のライターに使用して良いのかどうかの指針は見つけられなかった。
喫煙具協会の規格によると、圧力テストは55℃における蒸気圧の2倍の内部圧に耐えられることという計算の取っ掛かりがあるので、実際の温度を考えて、あちこち参考にして計算すると..
ブタンの55度に於ける蒸気圧は約5.74kg/cm2だから、2倍として使い捨てライター族の外殻は11.5kg/cm2程度の圧力に耐える作りと考えられるが、お山での運搬時は体温(@37度)としてプロパンの蒸気圧13.311kg/cm2に対しては明らかに強度不足。イソブタンの37度での蒸気圧は5.00kg/cm2であり、11.5kg/cm2用ブタン容器で安全係数2を確保しており何とかなりそう。ただし、それ以上に加熱されないこと。ちなみに、37度でのブタンの蒸気圧は3.54kg/cm2だから、プロパン25%として加重平均すると約6kg/cm2であり、その温度帯に於いても規格適合品の外殻は安全係数2に満たない。ので、安全係数2の根拠は判らないのだが、よい子なら共用ガスボンベのプロパン入りは避けるべきと言わざるを得ない。
Webを漁るとプラスチックの耐圧モノの安全係数は2程度の事が多いようだが、2.5ならかなり安心という記述が見られた。ライターの警告文には50度以上に置かないことが記載されているから、55度で2倍の安全係数と言うことは、使用制限の50度ではもう少し安全側になっている。そう、100円ライターはブタンを使用する限りは通常の使用に於いて充分安全に作られている。
その他、喫煙具協会の規格では
http://www.jsaca.or.jp/info/anzen.html
落下テスト 1.5mの高さから3回落下させてもガス漏れなどがないこと
温度テスト 65℃の温度環境に4時間置いてもガス漏れなどがないこと
というのもある。運搬温度に於いてそれらもクリアしていることが望ましい。落下テストだが、ぶつける対象の材質が判らないから何とも言えないが..鉄?コンクリートくらい?痴話喧嘩で相手に投げつけるくらいでは大丈夫と思われる。
温度テストだが、ブタン以外のガスが入っている場合は65度ではテストに供する前に強度の不安がある。
なお、計算結果やその解釈に責任は持たない。AT OWN RISKで頼む。
ま、冬期はブタンを体温で暖めておいて手早く使うのが吉だろう。安物ライターに高性能ガスを入れては釣り合わない。

・タバコ用は長時間点けっぱなしはダメ。線香やロウソクで長時間は危険ということか。今回の海外組でも30秒以上の連続使用はダメよと書かれている。長時間使用したいときは、複数個を使い回すこと。事故が起きて訴えるときは、30秒未満を証明できることが必要か。

やれやれ...手軽で安いモノはそれなりだということだね。



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by ulgoods | 2008-12-14 13:27 | 燃える系
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