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ズック靴で雪歩き / Light Energy Overboots


Exciteメールの過去メール移行が済んでいないようで、送ってもらったBest3が取り出せないので、先に先日の山行を書きます。
メールが回復したらすぐにBest3を書きますのでお待ち下さい。


Light Energy Overboots TR model / FORTY BELOW

12月22日から24日ま、2泊3日を雪の山を歩き野宿して過ごした。雪の中で目覚めて(一晩30cmも積もった!)始動し、一日歩いてまた雪の中に寝るという完全に雪な日を含んでおり、まぁささやかな体験だが、週末ハイカーの私には意味のある3日間であった。
その雪の中での生活を支えてくれた足回りを記録しておく。

今回は足回りをズック靴を中核とした重ね着で構成した。
目的は軽量で暖かく、かつ足に優しい靴システムの実現とテストである。これは昨シーズンのBPLで紹介されていた方法であるが、試すのに一年待った。
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アルパインな冬物の暖かい靴があるのだが、それは重くて堅い。とっても履いたままでは電車には乗れない堅物。電車で蒸れるし、手に持つとしてもたいそうな荷物になる。その場合、別途履いて来た靴を担いで歩くのもイヤだしね。スノーシューで歩くことを考えると重さも堅さも不要というか邪魔で、ただただ軽く暖かさだけが必要だ。ズック靴は足に合った物があるからそれを使えば良い。ズックなので足と喧嘩をして足に勝つような長時間の慣らしを要求するようなものでは無く、足に優しい。それを核として防寒機能を付加して冬足システムとした。

ズック靴の外側はネオプレーン製のオーバーブーツを履いて断熱材とする。このオーバーブーツはFORTY BELOW社のLight Energy Overboots TR modelと中間層のSimple Slippersを夏の間に発注しておいた。これらは注文生産なので納品までに時間が掛かることは覚悟していたが、どーも秋口にFORTY BELOW社が不意の工場移転を余儀なくされたらしく、なかなか縫ってもらえなかった。何度かメールをやり取りして先方の事情も理解したのだが、季節も変わり雪の便りを聞きくにつれ此方の都合も伝えたところ、次期発売予定の新モデルの試作品で、昨年作成した靴を提供してくれると言う。新品を、急ぎ便の送料も向こう持ちという有難い申し出をいただいた。で、新製品が縫い上がったら、それは注文分として送ってくれるとのこと。
BigSkyの例(テント18ヶ月待ち)もあり、遅れても決してゴメンなさいと言わないアメリカ人の好ましくない一面で押し切られるかと思ったが、オーナーのJoelさんは気にはしてくれたようで、待ち時間は思わぬ報償となって返ってきた。Joelさんとは靴以外の話をすることもでき、理解を深めることができた。日本の温泉に来たいらしい。彼が言っていた白い猿の温泉ってどこだ?
で、彼曰く、目の前の仕事の山が片づいたらお前のを縫うから、そしたら二足になって友達と山へ行けるだろ!だって。ふはは、good excuse!有難く頂戴した。
尤も、彼は先週から年末休暇で、一月も中旬まで休みなのだが..マイペースなのには変わりない。

具のズック靴はMontrail Namcheを使った。Gore-Texなどは使っていない通気性の良い靴だ。これは今回の計画用に少し大きめのサイズを夏にお安く購入しておいたもの。ハイカットで踝まわりの保護が手厚くて足首の固定ができ、ソールの堅さも荷重に対して保ちそうなモデルだ。

ソックスはCoolMaxのライナーとウールの厚手を履いた。CoolMax層は汗の拡散が目的である。靴の中敷きは防寒のものに換えなかった。厚い中敷きで足が圧迫されて血行が悪くなったら元も子もない。Namcheは元々底が厚いので大丈夫と思った。

靴の外側には、本来ならFORTY BELOW Simple Slippersというネオプレーン靴で包むはずであったが、Simple Slippersも来ていない。たぶんオーバーブーツだけで暖かいと言うことだろうが...しかし、足の冷たいのは最悪だ。ガキの頃は冬でもゴム長靴しかなく(当時はそれで普通だが)、足を凍らせては痛い思いをしていたから余計に臆病になる。というわけでSimple Slippersに似たものを探したところ、意外にも自転車乗りが使うネオプレーン製の防寒オーバーシューズが良さそうな予感!急いで阿佐ヶ谷のフレンド商会へ行き、あれこれ使い勝手を想像したが、イケそうなので売っていた3種類の中から一番厚いShimano製を選んだ。3mmのネオプレーンだろうか、Simple Slippersと同じ厚さだ。で、こっちの自転車用は足の底は付いておらず上から被せるだけで、土踏まず部分をベルクロで留めるのだが、ズック靴の底で歩けるのでそれはそれで便利そう。とりあえず代用として採用。

一番外側に履くのがLight Energy Overbootsだ。足を被う部分は3mmのネオプレーンで出来ており、膝下までのゲーターと一体になっている。前はベルクロ開閉なので手袋でも装着しやすい。底は薄い突起付きのゴム製。

Light Energy Overbootsの足底は弱そうなのでゴム製の簡易な滑り止めを二種類用意した。一つはSTABILicersという底にスパイクが17本埋め込まれたゴム製のベルクロ留めサンダル。しかしこれは外れやすいと言う話を聞いたので、もう一つ国産の細いピンが付いた簡易滑り止めを用意してみた。
念のため、Kahtoolaのアルマイト製クランポンであるKTS(Kahtoola Traction System) Aluminumを用意した。軽量でズック靴にも適合する柔軟性がある。
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これだけ足に準備をしたら、どんな寒くても大丈夫だろう。もー平気だ。


重量的には片足
Namuche+Shimano+Light Energyで794g
だった。夏の登山靴としても軽量の部類だ。
手持ちのVasqueの厳冬期用ケブラー編みの靴が片足で1300g、ColumbiaのTitaniumという防寒靴が799gだが、別途ゲーターを要するからもう少し重くなるし、無雪の街は歩けない。

このズック靴保温システムにスノーシューを履いて3日間過ごした実地での感想だが、
・装着はさほど手間ではなかった。ネオプレーンは良く伸びるので着けるのが楽。
・断熱性は完璧で3日間で足に微塵の寒さも感じなかった。
・Gore-Texなどの膜が無いので蒸れがこもらず、足は常に乾燥した感じがした。
・Namcheの足首のホールド感は良く、重い荷でも足首に問題は起こらなかった。
・当然、靴擦れの類は起こらない。やはりズック靴は足が楽であった。
・外側はゲーターと一体なので雪の侵入はあり得ない。
・像足としてIntegral Designs HotSocksの上に履き、テントからの外出が楽だ。
一方、
・3日目ともなると僅かだが湿って朝は凍みたが、断熱性、装着性に支障ない。
・運搬時にちょと嵩張る。
という結果。
番外で、一体型ブーツは写真を撮ると足が長く写るという利点を発見した。女子がブーツを履くのはこのためか...

足が楽で暖かいのは幸せだ。タダでさえ重いスノーシューを着けるから、足の軽さは重要と思いながら歩いていた。

大成功である!
夏も冬もズックで歩く。
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以下、簡単に3日間の概要、
今回の山歩きは最初の一泊をSierraでも一緒だった地獄のUL Hardcore Hiker、SGT.M氏と過ごした。なにも二日目は喧嘩別れしたのではない。彼は用事が出来たので一泊だけと変更になっていた。軽量装備で臨む私たちのスタイルは冬山登山隊がやるような共同装備を持たない。基本が個泊なので、同伴者が来ようが抜けまいが大勢に影響はない。万が一、駅で会えなくても自分の予定を変更せずに山へ向かうことができる。
ちなみにSGT.Mも足元はNamcheで、Kahtoola FLIGHTsystem というオーバーブーツ一体型スノーシューのシステムを投入してくれ、お陰で参考になりました。

行った前日の夜にも降ったようで積雪は充分であった。小屋でお茶を飲みながら仕入れた情報によると、縞枯山は良く歩かれているが、雨池峠から双子池方面は踏み跡が無いという。今回はスノーシューイングに来たので、できるだけ新雪を長距離歩きたいと思っていたからそれは好都合。小屋を出た二人、言わずとも既に今夜の幕営地は決まっていた。

懸念した雨池峠も岩の露出は無く、全行程をスノーシューで歩くことができた。実は岩が出ていたら厄介と思っていたので、これはラッキーであった。
雨池峠から双子池方面は情報通り、今期未だ踏み跡がなかったと思われ、時折、膝まで沈むが、気持ちの良い林道を思う存分スノーシューでラッセルして歩くことができた。
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結構な荷物を背負ったのだが、フローティングテールを追加したMSR DENALI EVO ASCENTはしっかりと浮力を与えてくれた。
初日は3時間も歩いただろうか、双子池に入る林道脇にHex3でキャンプを張った。この季節、昨年同様に雪がサラサラで踏んでも固まらず、そのままではペグが効かないので、地面近くまで掘ってEastonの中空30cmペグをスコップで打ち込んで留めた。しっかり効いた。寝床場所を30cmほど掘り込んだので中は広い。
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今回はHex3で二人収容したが、SGT.Mも自分のタープを持参であった。個泊姿勢は守っている。

飯は、連れてきた老兵ストーブ、SVEA123の燃焼音を楽しみながら餅ラーメンとした。今回はとりあえずULは度外視だ。液出しMSRやコールマンという選択肢もあったが、何だかんだ持つよりオールインワンなSVEA123でポンの方が楽かもしれない。
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(これは朝飯、オートミール、松茸の味お吸い物味)
これのチタン版が出れば..世界的に大ヒットだと思うが誰か作らないかなぁ。

Hex3に入り、寒くもなかったので暫く寝袋の上に寝そべってウオッカを飲んでいた。この夜の肴はチーズと生ハム。少し贅沢。
SGT.Mとは妙に馬鹿話が噛み合う。久々に腹がよじれるほど笑ったあと、笑いで咳き込みながらMnt.FlyのHPD-900にTitanium GoatのPtarmigan Bivyで寝た。マットはORのDownMat7 Shot、短いモデルだから足元にはザックを置いて、その上にアストロフォイルを敷いた。断熱は完璧。こちらも全然冷えを感じることはなかった。
無風でもあり、Hex内は相対湿度で90%以上あった。大人二人が腹をよじって大いに呼吸運動をしたので壁も結露したが、凍っても払えば落ちるから気にしない。湿るとHex3も弛むが、外から一度テンションをかけ直し、二回目は面倒なので中のポールを延ばして張りを掛けた。

夜中に降雪あり。結局、朝まで30cm近い新雪を得た。
前線が太平洋側を通過して降る雪は温度が高くHex3の急傾斜でも雪は付く。夜中に気が付いたら壁をド突いて雪を落とすのだが、裾に落とした雪が積もって通気が損なわれるので、寝ながら腕を伸ばしてトンネルを掘ってやると、スーっと新鮮な空気が入ってくるのを感じた。そんなことを三回くらい繰り返したか。が、充分寝た。
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翌朝、Hex3の中でまどろんでいると、SGT.Mが?!っと、人の声を聴いたという。耳を澄ますと確かに。入り口を開けて外を見ていると視界に女性二人が入ってきた。ををを!お茶でも差し上げないと!と思ったがオジサン3人を含む5人パーティーで、昨日は北横から亀甲経由で双子池にキャンプだったらしい。私たちも双子池まで行かないで良かった...以前+昨夜の新雪をラッセルしてきたのだが、その先にある我々のラッセル跡をたいそう喜んで呉れた。汗した甲斐がある。無論、踏んでくれた方が戻る我々も楽である。

イブ前日のFENは昔と変わらず昔のクリスマス系の曲がかかる。シナトラやナットキングコールが大活躍だ。ガキの頃から聴いているFEN、定番の曲が懐かしい。ご機嫌でFENを鳴らしながらキャンプを撤収し、踏み跡を楽々と雨池峠まで戻った。途中、青空も広がり景色が美しい。直射日光が当たると暑くて汗ばんだ。

雨池峠で軍曹と別れ、私は麦草方面に向かった。麦草方面も笹原木道は今期は人が入っていないと思われ、壷足なら股まで埋まるところ、湿っぽい深い雪での歩き方を工夫しながら進むことができた。一人、歌を歌いながら歩いた。

麦草ヒュッテは有難い。ここで、おでんとカレーをいただき、濡れた物を乾かした。ストーブで和んだので今夜はここに泊まろうかとも思ったが、やがて縞枯山経由の団体が到着し、オジオバの嬌声が賑やかすぎるので時刻を見計らって辞した。何歳になっても元気で楽しげなのは良い。ただ私は一人になりたかった。
私は山に登りたいわけではないので、茶臼へは向かわずに五辻経由でゴンドラに戻るが、途中で二泊目を迎えることにしてある。一人だし、東屋にごろ寝でもしよう。

二泊目の寝袋は湿っていたので、早めに入って乾燥に努めた。去年のこの夜も縞枯山頂でBivyを張っていたっけ。何か馴染みになったイブの前夜のラジオ放送を聴いて過ごす。この夜は-10度くらいか。さほど寒くはないが、汗ばんだタオルなどはバンバンに凍った板になった。曇っていたのだが、その上に月があるらしく薄明るい空に雪を纏ったモンスター達が見えていた。霧も出てこの夜も相対湿度は90%以上であった。前夜のHex3の中が特殊ではないことが分かる。が、今夜は幕を張らずにBivyでごろ寝なので寝袋も湿気らずに直にふっくらしてきた。NunatakのSkahaを着ていたせいもあり、充分温いので横のジッパーを開けて寝ていたっけ。
翌朝、ずいぶん遅くまで寝ていたが人は来ない。昨日少し融けた雪がしっかり凍っていていたのでLight Energyでアイゼン歩行など検証して時間を潰した。
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下のゲレンデでスキーでもして帰ろうかと思ったが..やめた。

二泊目は湿った状態からの単独キャンプであったが、無事に過ごすことが出来た。いろいろ考えることもあった。
今回は試したい物を持ち込んだのでULとは言えない装備であったが、徐々に減らしていけると思う。



ズック靴ですが、何か?
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by ulgoods | 2007-12-26 07:16 | 生活系
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