暗闇の訪問者

続き..

ネコまんま飯の後に、ささやかな贅沢としてラズベリーのドライフルーツーを囓ってデザートとした。乾燥させたバーなのだが、ラズベリーの濃縮した味が旨い。
さて、全部食ったら飯の袋は口を縛って臭いが出ないようにし、さらにゴミは全部をジップロクに入れて臭いを封じ、その袋を防水袋に入れた。念には念を入れて飯の臭いは三重に気密なわけで、これなら嗅覚が鋭い野生の動物でも気が付くまいて。

とっぷり暮れてもまだ6時過ぎである。飯も食ったし、じゃぁ寝ろ、と言われてもそれは難しい感じだ。今日は無風だ。しかも満月の筈。へへへ、無風の夜に使える日没後の小さな楽しみを持ってきてある。
風がなければBushbuddy Ultra Wood Stoveを使って小さな焚き火をすることにしていた。焚き火用の缶ストーブがあるならそれで湯沸かしもすれば良いのだが、焚き火はあくまで楽しみと獣除けのつもりで、それに湯沸かしを依存するつもりはない。薪など自然物に依存するものが増えれば、逆に宿泊地が制約されるのだ。しかもこんにちの認識として地面に薪を置いた直火は、地面と燃え跡を見た人の心にダメージを与えるので既存の炉以外では許されないことになっている。このストーブは三重底になっているので燃えた状態でも底を掴むことができる。地面には優しい。
獣除けの効果であるが、あるかどうかは分からない。が、獣は火を恐れるというので、無いよりは良いだろう。また、火を恐れるなら燃えかすの臭いもまた獣除けになるかと期待した。

重さ僅か146g、極薄ステンレス製の精巧な二重壁ストーブを取り出して組み立て、枯れ葉を足で薙いで地面を露出させ、できたばかりの湿った黒土の上にストーブを置く。多少火が跳ねても延焼はするまい。そこいらに落ちている小枝を折って入れ、湯沸かしで余った燃えさしの固形燃料に再点火して着火材とした。
このストーブは燃焼室の直径が僅か95mmと小さいので、大きな薪は入らないが、盛大なキャンプファイヤーをするつもりはないので充分だ。私の焚き火はちょろちょろ燃えればそれでよい。最初は中空の萱のような枝や剥ける系の木の皮などを火口として入れておいたのですぐに炎が興った。薪になる木の枝は着火系の火口の上に並べて置き、下からの火で乾燥させながら燃焼ガスの噴出を待つ。中空茎の植物は蒸されると燃焼ガスをストローの先から噴出し、ロウソクのように先端から炎が上がる。面白いほど良く燃える。小枝系も蒸されて乾燥して出た可燃ガスがストーブの空気取り入れ口や二次燃焼口辺りで吸気された空気と混合し、美しい曲線の炎の流れとなって輝く。

(写真は昔撮ったイメージです...)
見とれながらも徐々に太い小枝を乾かしながら炎をつないでいく。木の木地が燃えるのではなく、木から出た可燃ガスが燃えることがよく分かる。酸素が足りないとガスは煙として目を攻撃するが、上手く空気が入るようにしてやれば煙は燃えるガスだったことに気が付くのだ。このストーブは小さくちょろちょと燃やしているのだが、焚き火に必要なテクニックを総動員しないといけない。小さくて薪と熱の容量がない分、しかも太めの枝は湿っていたから、大きな炎に任せっきりの楽はできない。が、それはそれ、突いて隙間を作って空気を入れたり、消えかけたら息で吹いて熾したり、遠火で次の薪を乾かしたりと段取りしながら、それなりに楽しめる。安全に炎を扱って燃えるを観察するのは子供らに体験させても良いかなと思う。

月も東の尾根から顔を出した。何と明るい満月だ!
ナルゲンのフラスコに入れてきた少しのモルトウイスキーを口に含みながら焚き火の横の落ち葉に寝そべり、小さな炎を小枝で突きながら梢を通して月を眺めて時間を過ごした。日没から経過し、次第に空気は冷えてきたが、充分着ているので寒くない。キリッとした空気は爽快ですらある。残念ながら焚き火の炎は暖が取れるほど大きくはない。時々かじかんだ手を炙るくらいだ。
時折、鹿がキューゥと鋭く鳴く。声と物音からすれば結構近いと思うが、野生の鹿は節操があるので近づいてこない。先日、阿佐ヶ谷のワイン屋で偶然会った都レンジャーによると、まだ熊も居るよ!とのことだったので、今夜は夜通しスピーカー付きのラジオを鳴らすつもりだ。

2時間近く焚き火で遊んで、少しの酒を飲み、月を愛でながらラジオで過ごしたが、いい加減飽きたので寝ることにした。この時には月が高く上がり、それは新聞が読めるほど明るい。闇に慣れた目には直視が眩しいくらいだ。月が高く上がり、いったんは闇に沈んだ木々の形が銀色のフィルターで漉された光で細部を現した。これならライトなしでも歩けるだろう。
乾いた落ち葉の上に作ってあった寝床にもぐり込む。Cuben Fiberの膜を通しても月が眩しいのでBivyのフードを閉めるが、10cmもジッパーを開けておけば息ができた。まんじりとラジオを聞きながら眠気が来るまで時間をやり過ごす。J-Waveはジャズ番組が続いてやっているのでご機嫌だ。

と、その時、遠くで聞こえた。シャンシャン..と小さな音だ。空耳ではあるまい。あぁぁ、何か来たよぉ。地獄の亡者か、はたまた、まだ歩いている人がいるのか?と驚きつつ、何かとの遭遇に心の準備をし、聞き耳を立てた。普段は使っていない野生の感覚を取り戻さなければ...
こんな月夜だ。まだ歩いている人がいるのかもしれない。人なら適当に無視してくれるか、声を掛けてくれるだろう。面倒だから寝ていることにした。亡者が来るなら真っ暗闇の夜の筈。
シャンシャン、シャンシャン...しかしそれは足音もせずに鈴の音だけが明瞭に近づき、予想に反して前触れなく私の回りを廻りだした。ガサガサと枯れ葉のこする音、だが足音はない..やばい、こりゃ人間じゃない!別の物だ...早くにBivyから頭を出して警戒すべきだったが、すでに回りを廻られている。後手に回ってしまったのか..
Bivyのままのス巻状態で食われたのでは私も浮かばれない。Bivyから頭を出してライトを点けると、ビカっと明るい反射が二個、射るようにこちらを向いた。

あ、獣だ。
さらにその向こう、新たな光の反射も現れ、計四つ。二匹の獣が私に向いていることを知る。
や、ヤバイのかも..


参加中...あ、歯医者に行かないと..
ストーブの件で長くなりました...メガネは次回囓られます。Clickでも!

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by ulgoods | 2007-11-27 11:38 | 山行
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