雨に打たれて 白根三山縦走二日目 その弐

早く最終章を書かないと、次の山や道具達が溜まってしまって...
何やら気の抜けたレポートとなったが。

11:40、大門沢下降点から這い松の道に入り間もなく樹林帯を歩く。地図でも示されているが、かなりの傾斜をスイッチバックが切ってあり右へ左へ振られることになる。ここで抜きつ抜かれつの同ペースで歩くA氏が登場する。抜く時に軽く会釈する程度で声も掛けないが同ペースなので自然「行かば諸共感」が醸成されていた。
A氏が先にスイッチバックを曲がった所、ふと目をやると変な草が道に張り出して生えていた。それを視野に収めつつA氏の位置を確認しつつの複眼的な意識をした次の一歩、少し崩れた路肩の外に足を着いたらしい。一閃、目前に地面が流れ道を踏み外したらしいことを知る。草木を掴んで停止を試みるも止まらずそのまま流れ二度目の試みで停止した。というか、僅か4mくらい斜面を滑っただけだで自然に止まったのだ...ぬかりました。全然足元に注意が及んでいなかった。僅か2秒くらいの出来事か、脳は理由を理解していないが体は反射的に停止を試み(もがいている状況だ)滑っている間は時間の経過を感じた。幸い膝にべったりと草の汁を付けたくらいで済んだがショックだった。おそらくバキバキと小枝を折る音がしたのだろう、「オーイ、大丈夫ですか?」と先行のA氏が声を掛けてくれた。「大丈夫です」と応えながら水平に斜面を歩いて道に戻った。
その後もA氏とは抜きつ抜かれつであったが、私の方が数分早く大門沢小屋へ到着した。

14:12、大門沢小屋を訪れたのは初めてである。屋根の掛かった休憩席へ着くと野外の帳場にオヤジが立っていた。先ずは喉が泣いているのでサイダーを所望したのだが、炭酸系はビールはあるがサイダーは無いという。むむ、飲んだら登るな登るなら飲むな!を旨としている私に一つの難問が与えられたのだ。しかし、大概の小屋は不思議なことにサイダーは品切れでビールは豊富だ。荷揚げで同じ重さなのだから儲けの大きいビールを優先するのだろうか?ビールは小屋の中にしまって表にはサイダーを置いて欲しいのだが...ね。
従ってあっさりとビールを選んでシュパッと空けたところにA氏が到着した。降ったり止んだりにウンザリしたのだろう、上はファイントラックのフラッドメッシュTシャツ一枚の姿である。自然と並んで腰を下ろして挨拶をし言葉を交わした時、大粒の雨がバタバタとビーニール波板の屋根を叩いた。

雨は強い。小屋には人がゾロゾロ到着するが、オヤジは泊まるも何も聞かずに「何人?何人?」と客も「3人」とか言って泊まる前提で言葉掛けが成立している。確かに時計を見ると最終バスに乗るには怪しい時間帯だ。しかしなぁ、へそ曲がりだから泊まると決めつけられるのも癪だと思っていたら、どうやらA氏も同様らしい。「小屋が8千円で奈良田の民宿と同じなら下が良いなー」と言う。ビールで挫けかかった私の心にも灯がついた。オヤジはさっきから「下は満員だよ」と言っているが、傍若無人?な私とA氏は一部屋くらいは空いているだろうで意見が一致した。A氏は温泉で汗を流して翌朝ゆっくり、私は今日の最終バスに間に合うことを疑っていない。縦走路で見た顔達が皆さん疑問無く宿泊の手続きをしている。なーんだ、全員、今日の目的地は小屋だったのか...小屋な人たちを後に二人、雨の中へと飛び出した。こちとら未だ山小屋に泊まったことはないのだという変な記録更新中意識もあったかもしれない。あっさりビールの禁は犯したのに。

道は小川になっていた。ゴアの靴下を履いていても靴への浸水の感触はある。が、そんなこと構っていられない。。私もA氏に習って雨具の上を脱ぎ、Tシャツ一枚で歩く。幸い冷えない。どんどん歩いた。途中滑って尻餅2回。足をひねり気味が3回あった。雨の日のズック靴はカカトが出ていない分、岩へ足を着いた時の滑りに抵抗しない。重心位置と足の着き方に注意して繊細かつ柔軟に歩かないと、だ。足はがに股気味に開くのだが爪先はX脚気味、スキーのエッジ立てと同じ感じ足裏の母指球に乗って着地する。そうすれば捻挫を起こすことはないだろう。とか考えながら歩いた。一方のA氏はガルモントの重登山靴でガシガシ歩く。少し離れても小枝の折れる音でA氏の接近を知ることができた。
A氏が先行していた時だ、少し遅れて私が通過するとA氏は5mほど下の河原で何やらストックを振っていた。釣りでもするのかと追い越したのだが...後で聞いたらA氏もそこで滑落したのだそうだ。釣りではなく、ストックの曲がりを直していたところらしい。雨の日は怖い怖い。

汗だく、雨ダクとなって何本か吊り橋を渡り、工事中の堰堤を越して舗装路へ出た。バスの時間まではあと数分である。A氏は見えない。一抹の期待を抱いて舗装路を急ぐが、これが結構長い。飽きるほどの林道歩きとなった。バス停に着くと身延行き快速バスは25分前に出た時刻だった。幸い、奈良田行きの最終バスがある。もー歩くのはいやなのでバスを待つことにした。しばらくしてA氏到着、一緒に宿を探す話をする。
この日の11時間の行動が終わった。

e0024555_15153635.jpg


バスは私とA氏の他は運転手とモギリの爺さんが乗っているだけだった。モギリの爺さんに下に宿はあるかと聞いたが、結構難しいかもと言われる。どーしたものかと、でもまだ楽天的な気持ち、ものの数分でバスは奈良田のバス停に着いた。ここでモギリの爺さんがバス停の清掃に来ていたおばあさんに声を掛けてくれた。泊まる所さがしてるんだと..と相談モードに入った。有難い。二人で近所の民宿を当たってくれたが、やはり満員だったり、予約無しの飛び込みにしては時間が遅いようで、奈良田温泉に浸かって優雅に酒を飲む夢は費えた。が、ここからが田舎の大人だ。じゃぁねー!と言って知らん振りはしない。掃除のおばさんが帰り道だからということで車に乗せて道々宿を当たってくれるという。有難い。衣類が汚れているのを見かねたモギリの爺さんが敷く用にと大きなビニール袋を持ってきて呉れる。有難い。
三連休の中日の夜のこと、道々立ち寄れど宿は無く...走りながら小学校を改築した町営のヘルシーセンターの二階に明かりのついていない部屋のあることを見つけたお婆さんが車を乗り付けて交渉してくれた。待つこと3分、出てきた表情は明るくない。ここもダメかと思ったら、部屋が取れた!と伝えてくれた。温泉もあるという。有難い。一度締めた帳場では宿泊手続きの分かる人を呼びに人が走る。有難い...。有難いことに?今夜はA氏と一つ部屋の同宿となる。

お婆さんにどうお礼をしたらと話したら、お婆さんも予約無しのぶらり旅が好きで、よく行くが、大概は地元の人が良くしてくれて宿は見つかるし、電車は丁度来るものだと言って、だからお礼など要らぬと仰る。善意の輪廻が私まで回ってきた。次回は私の番だな...

汗と雨で濡れた体で宿に上がる時だった、靴下は濡れ濡れだろうとゴア靴下を脱いでかまちに足をかけたのだが、意外や意外、中の靴下は汗で湿っている程度で濡れはなかった。小川化した道をじゃぶじゃぶと歩き、増水した川を渡り...でもゴア靴下の中は一切の浸水が認められない。ほほー、やるなお主!一方のA氏だが、いつしかゴツいゴア靴に上から浸水し、防水性に優れているのでそのままじゃぶじゃぶだったらしい。宿ではビトビト靴の水を出し...翌日に備えて古新聞をもらって詰めていた。
ま、なにはともあれ、予想外の温泉に浸り、宿が握ってくれた握り飯で予想外の夕食にありつき、妙に話の合うA氏とビール三本、焼酎一本を空け、北海道出身だというA氏と投合し部屋のクーラー最強で瞬間的に寝てしまった。

翌朝一番のバスで身延へ向かう途中、A氏が家へ電話したところ、え”俺は此処にいるぜ!という声が聞こえてきた。ナンでも...彼は職場の緩いグループ数人で来ていたのたが途中から肩の小屋へ行く筈を間違って北岳山荘に行ってしまい、単独行動に移った。2日目も一緒に大門沢小屋へ泊まることになっていたもう一人とは会えず、メモも残さずに私と下って飲んだでいたのだが、実はその時には大門沢泊の仲間から当局へ遭難届けが出されていたそうで...それで家には警察から電話があったとのこと。せめてメモを残せばと私も思った。
バスの中から電話で対応に追われるA氏、連絡先を書き留める紙とペンが無いというのでBPLで買った防水メモ紙と防水ペンをお貸ししたが、身延ではすぐに電車に接続だったので電話ボックスに籠もった彼から返して貰いそびれてしまった。ま、事態が無事に収拾してくれれば良いのだが。
A氏、社会的な無事を祈る。



参加中...ゴア靴下とズック靴で雨の白根三山を歩きましたよ..Click!

[PR]
by ulgoods | 2007-09-26 14:46 | 山行
<< NEMO HYPNO EX tent 風に吹かれて 白根三山縦走二日... >>