雲取山の地図を見るといつも気になる尾根がある。登山道が通っていない、それでいて等高線が緩やかな尾根はのんびりと気持ちよさそうに思えていた。
それとは別に何故か急に巨木が見たくなって、良さそうな巨木の検索を始めていた。どうやら奥多摩にあるらしい。地点は巨木保護のためか、ツアープログラムの保護のためか、詳細な地点は出ていない。更に地点を検索していくと、どうやら気になっていた件の尾根の上にあるらしいことが分かってきた。 これは行かねばなるまいて。 ということで、土日で日原へ行って来た。可能であれば巨木の傍らで添い寝させて頂こうと。幸い手持ちの装備はこの季節の低山野宿なら通用しそうだし。 出発は遅かった。なんせ大した行程でもないし、急いで行っても時間を持て余すだろう。というか、例によって寝袋やザックの選定に手間取ったのだが.. 大まかな装備は 寝袋:MountainEquipment / LiteLine EN Limit: -5°C Bivy:Integral Designs / Crysallis Bivy bag 火器:FireLite / Titanium Esbit Wing Stove ザック:Golite / Jam シェルター:Six Moon designs / Gatewood cape ジャケット:Paine / eVent soft shell 日原へ行くバスは便が少ない。昼頃に着いたのだが、1時間以上バスがない。仕方ない、時間を買うことにしてTaxiで日原入りとなった。 取り付きは神社の裏なのだが、厚く積もった枯れ葉に目を細めると薄っすらと道が分かる程度。Garmin 60CSxにも登山道は乗っていないので、見落とさないように歩く。トム・ブラウン・ジュニアではないが、トラッカーになった気分。 それにしても川に削られたのだろう出だしの斜面は強烈な斜度だ。尾根が緩やかな分、この斜面で高度を稼いでいる?落ち葉の道を度々ずり落ちる。アイゼンとピッケルを持ってくるんだったと思うほど。 最近、片道12kmをパパチャリで通っているのだが、お陰で太股の馬力は付いたようだ。が、ふくらはぎが着いて来ない..。なんとか大汗を掻いて尾根に出た。 そこからは地図の等高線で予想した通り、なだらかな尾根が続く。しかも地面が乾いた落葉林なのでサクサクと気持ちがよい。途中で野宿好適地をいくつも見つけたし、疎林なのでハンモックの方が良いかもしれないと思いつつ、肝心の巨木の位置は不明なのだが、そのうち出会えるだろうと歩を進めた。 途中で山の作業をしている3人に会った。標高1000m位までの尾根の南側は杉の植林なので、その作業だろう。竹で編んだ籠とか使ってました。山の人。 黙々とトレースを探して歩いていたら、なだらかな台地に出た。下を向いて歩いていたが、ふと振り返ると、なんと、そこに写真で見た巨木がいるではないか!ああ、危うく通り過ぎるとところだった。巨木様に引き留められた感じ。をいをい、オレに会いに来たんだろ、みたいな。 来る途中でも大っきな木は何本か見たが、こりゃまた幹が太いデカい木だった。姿は何やらでんでん虫のお化けのようでもある。 広々平坦、倒木に苔が付き、こりゃ結構天国に近い場所かも知れないと思った。 荷を置いて散策していたら人の声、を”と思い、戻ったら4人のパーティが見えた。一応、愛想よく挨拶したら、こちらへ歩いてきた。 4人は何と都のレインジャー、トレンジャー四人衆だった。噂では存在は聞いていたが、お目に掛かれるとは光栄。ここで泊まるの?と聞かれたので、咎められるかと思いつつも嘘はイケナイ、ダメなら下れる時間だし。ので、はい、テント無しで野宿しますと答えたら、凍死しないでね(@_k)と言ってくれた。レンジャーの方々も巨木で記念撮影をしていたので、私も一枚お願いした。ラッキー! 来た道を聞かれたので、神社の裏からと答えると、下りは急で危険だからと緩やかな道を教えてくれた。指さす方向、目を細めると落ち葉の堆積に微かに平らな一筋が見えた。 この場所は鞍部のような、モレーンの内側のような勾配の付き方なのだが、古い木は一様に一方向に撓んでいる。若い木は垂直だ。昔は雪が相当積もったのか、隆起したか(それはないだろう)、地滑りしたか、なんとも不思議な感じのする場所だった。 と書いていると長いので、端折ります。 ・雨に備えてCrysallisを持ってきたが、やはり冬の雨では辛そうなので、Gatewoodを張った。ペグはEastonの30cmを3本あったので、要所に配置した。 横たわると落ち葉の地面は目と鼻の先だ ・火器はEsbitのみとした。食器はスノピの700cc、チタニュームホイルを風除けとした。尤もほぼ無風だったが、炎が揺れると極端に熱効率が悪くなるので。 ・夕食は早茹でクルルにトマトのカップスープを2袋ぶち込んでEsbit1かけら分煮込んだ。ま、食える。 ・ライトはe+Liteを主として、でもまだコイツはテスト中なのでPetzl Tikkaをサブで持ってきた。e+Liteでも生活出来るが、深山の野宿では物音の方向を照らすビームが欲しくなるので、時々はTikkaも使った。光量はe+Liteで充分。額に付けても小さく軽いので寝袋に入っても外すのを忘れていた。 ・Gatewoodは結露して凍った。地面からの蒸散をトラップしたのだろう。無風だし。背面も完全にペグダウンせずに少し浮かせる張り方を練習しないと。翌朝は朝日で溶けてきたので、中が雨にならないように気を付けて外してバサバサと払ったら全部取れたのでヨシとする。 ・熊や鹿を警戒し、食料と使った食器は離れたところに置いたが、杞憂だったろうな。 ・朝食はスキムミルクをまぶしたグラノーラを袋に入れて持ってきたので、湯でぐちゃぐちゃにして袋から食べた。牛乳好きなので、ミルク味が嬉しい。 ・ICI石井のバーゲンで買ったICIオリジナルeVentのソフトシェルは大正解だった。PitZipが無いが、透湿性はよく働いていたと思う。トレンジャーもDiaPlexのジャケットだったし、無理にGoreで無くてもいいかも。第一、Goreはデュポンにライセンスを払い、たぶんブランドにも払うから高価なんだろうな。 しかし、2年前の型落ちだというICIのeVent、ずいぶん早くからeVentに着目していたのは恐れいる。侮れないな。別なパーカータイプのeVentもあったから、そっちをもう一枚買っても良いかな。 ・LiteLineのシェルはDriLiteLOFTだが、濡れには強くない印象。重く嵩張るだけかもの感あり。 ・夜は寒暖計(小さいので誤差あるともう)-7度くらい。 ・下りは教えてもらった道で楽だった。登山道は地図には出ていないが、GPSでトラックを採取したので、次回は雪でも大丈夫だろうと思う。 腹ポケットに色々入れているので、実物以上に出て見える、中に化繊の防寒着も着ているし。しかし、腹が出てソフトシェルのジャケットは将軍様のユニフォームのようでもあり、自分ながら何とかせねばと思う.. 夜はいっとき星が出た。星が濃い。視力が悪くなって星がだぶって見えるのが悲しい。昔は北斗七星の何番目の星だっけ、視力検査に使った星が識別出来たのに、今は何もしなくても二重に見える.. でも、凛と冷たい空気の中、良い空が見られた。Gatewoodから半身を乗り出し、何故か寒さも感じずに、頭も仮死状態か、あまり物を考えもせず、じーっ目にと染み入る星を見ていた気がする。何時間でも見ていられたかもしれない。が、そのまま意識を無くして寝ても危険なので切り上げたが。 翌日は気持ちのよい朝を迎え、倒木に座って朝食とした。ビニール片を発見したので、この場所はほかの人も泊まっていたなと分かる。というか、ここが一等地。 それ以上上にも似たような緩い地形の落葉林があるとトレンジャーに教えてもらったが、目的は達成したのでこれでよい。後は次回のお楽しみと言うことで食後に下山することとした。古くから山の人が入るのだろう、こんな遺構もあった。小屋の跡かな?案外、江戸時代の賭場の跡かも。 結構寝坊したし、バス便が乏しいし... 鍾乳洞まで下ったら道に20名ほど集まって双眼鏡をのぞく講習を受けていた。昨日のレインジャーの方もいて、降りませんでした?寒くなったかですか?など気遣ってくれる。自然教室らしいが付き添いかな?休日までご苦労さまである。ども、お世話になりましたと挨拶をして別れた。 冬の低山というのは実は初めてで、しかも登山道のない山も初めてだったが、よい山行ができた。いろんなULテクニックの練習にもなる。私の山行スタイルとしては頂上より山歩き派だから、こっちの方が性に合っているかな。 調子に乗らず侮らず、慎重に行動範囲を広げていきたい。 何 を 求 め る 風 の 中 ゆ く ...山頭火
by ulgoods
| 2007-01-23 07:36
| 山行
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