夜叉神、薬師観音、ドンドコ青木

夜叉神行きのバスも終わる10月の最終土日で道具の消化のために夜叉神、薬師観音、ドンドコで青木までを歩いた。

■出がけ
朝一あずさ71なら新宿6:30で甲府に8:07着、これなら9時の夜叉神行きのバスに余裕で間に合う。というか、間に合い過ぎ。次のあずさ1号なら7時丁度の8:28か..なんて思案していたのが懐かしい。あらかた荷物をまとめて仮眠して、目が覚めたのは6:30だった。うわ、やべ!まだパッキングは完了していない...意気消沈するも、ま、行けるところまで、という前向き思考(試行?、いきあたりばったりとも言えるが)に切り替え、とにかく重量の吟味もそこそこに気になるものを放り込んでパッキングを終わらせた。もうあずさ1は吉祥寺を過ぎているころだろう..
次のバスは確か甲府を10時だから8時丁度のあずさ5なら甲府は9時半頃でバスには間に合うはずだ。まだ希望はある。おーし、元気よく自転車のペダルを踏んで家を出て新高円寺の駐輪場7:30に滑り込み地下に自転車を..そこで何やら違和感が、を?はて?何か足りない。がーーー、トレッキングポールを持ってきていないではないかっ。普通に山に行くには杖が無くとも死にはしないが、今回はトレッキングポールで張るIntegral DesignsのSilShelterで寝ることになっているから致命的だ。重量削減トリックの具を忘れるとは!現地で枝を調達するか、とも思ったが、充分な強度のものが得られなければ辛い夜を強いられる。
正直なところ、全然歩いていないからポールは欲しいし。えーい、いざとなれば甲府からTAXIもあるさ、行けるところまで行ければいい。更に場当たり的にポールを取りに戻ることにした。が、すでに自転車のペダルを踏む気力がないので、早くもここでTAXIを使う。結局駅に戻ってきたのは7:40。
かなり絶望的にマズイ時間帯なのは明らかだ。で、丸ノ内線新宿駅が7:58くらい。あと2分、普段の私ならここで諦める。が、ここで軽量装備がものをいった。ザック担いで走れるではないか!軽量装備に力を得て猛然とダッシュした。も、アルプス広場であずさ号出発のアナウンスを聞くことになる。
あぁダメだ..と諦めた。その時、掲示板に目をやると何と!8:02に増発のあずさ53があるではないか。うひゃー、ウソみたい!それにしても2分後にもう一発なんて、なんという時間割だろう?まあいいや。喜んで直ぐ近くのエスカレータを上がったが、上を見たら違うホームに向かっていることに気づき、すごい形相でエスカレータを逆行し、今度こそ6番線の階段を駆け上がり、ドアが閉まる案内を聞きつつ電車に飛び乗った。JRの増発目論見は外れたか?指定席とはうってかわって自由席はガラガラだったし。寺田寅彦先生の言うとおり、混んだバスの直後のバスは空いている。など思いつつ。
わはは!常に前進あるのみ!求めるものを神は見捨てなかった。いや愉快愉快!と、めでたく車上の人となり甲府を目指した(ただ乗っていただけだがね)。

この調子で書くと長くなるので、以下要点のみ。

甲府駅で京樽の握り飯五種5個購入。今日の朝食と昼食用。バスの中で2個、疲労回復効果が望める梅とオカカは昼飯に。何かのために1個残したが、帰りのドンドコ沢でスープに投入して食した。

夜叉神を11:30位に出発。南御室小屋までの標高差は時計の高度計によると約1200mだから、1時間に300m登るとして4時間と見積もる。
実際、ストップウオッチによると、4時間1分で小屋に着いた。
夜叉神小屋を過ぎると下りの数名に遭っただけの静かな山歩きだった。
e0024555_13222835.jpg

e0024555_13224396.jpg


■熊
大崖頭山を過ぎた2200m地点でバキ!っという枝を踏む音を聞いて振り向いた。誰かに抜かれる気配はなかったのだが..音の方を見ると黒い犬?のような4本足の生き物が20m位向こうの登山道とブッシュの境目にある。..一瞬?と思ったが、よーく頭を整理して考えた。たぶん、犬はいないと思う。で、お山で、黒くてずんぐりして、四つ足といえば、えー、答えはクマでしょ!あの横顔はブタ系ではない。幸い、あやつ、うなだれて下を見ていたので目は合わなかった。小熊だな..と、ということは母熊が近くに?!。一気に一層マズい状況に陥たのを感じた。思わず反射的に二歩後ずさりしながらTracks Sherlock Staffのキャップを外して鋭い針を出そうとしている自分に気が付いた。でもここで小熊と悶着を起こすと母熊にやられる。ここで使うのは武器ではなくて歌だろう!そう思い乾いた口で「あるこー♪あるぅこー私はわぁげんきぃー♪」と口笛をやってみたが、音がかすれて役に立たない。弱ったな..と思った時、エマージェンシーキットに封入してあった熊鈴を思い出した。日頃、登山道や駅で聞かされる団体さんの熊鈴の輪唱を何より憎む自分ではあるが、この場はコイツに歌ってもらうしかない。コイツを取り出して使うのは初めてだった。封印された一品なのだ。
小熊を驚かさないように、自分が遠くにいると思わせるように音を絞ってシャンシャンと小さく打ち振り、足早に現場を後にした。
あとでザックに付けてみたが、なるほど、きれいな音を出すのは難しいものだと判った。その後はポールに付けてジャンジャン鳴らして歩いた。命を守ってくれる鈴の音が心強い。
実は同日夕刻、南御室小屋でも天場を走って横断する小熊を目撃している。小屋の主人は長い小屋生活でもクマを目撃したことはないと話していたが、私は日に2回、これは幸運なのだろうか?

■ザック
今回はGranite GearのVapor Trailを使った。実戦投入は初めてだが、これはよいザックだと感じた。900gで軽い!肩、腰共にパッドがよく効いている。ただし、ピッケルホルダー部分は柄を押さえるベルクロを取り付けた方がより良い。
e0024555_312359.jpg

今回は更に、GPS入れとしてShoulder Strap Pocket、寂しいトップには雨対策も兼ねてultralight lid,しかも腰には左右にbelt pocketを使った。
Granite Gearのロゴだらけのスタイル...
小屋到着時点の重量はおよそ9kgくらいか。あまり軽くはないが、それには深い訳がある..

■焚き火
今回もご主人のご厚意で焚き火にありつくことができた。感謝。戴いた薪割りの木っ端と油分を含むという乾燥したシラビソの樹皮は良く燃えた。大火にならないようにちょろちょろと3時間くらい掛けて楽しんだ。
そこで、今回、汗水垂らして担ぎ上げたシシャモ16匹を焚き火の熾火で焼きつつ、これまた担ぎ上げた芋焼酎の湯割りを焚き火にあたりつつ..ホホホ、何という贅沢!
e0024555_34574.jpg

最初、焚き火は期待していなかったのでMSRのWindProと250gの大きなガス缶も持って、さらにPrimusの折り畳みトースターも持った。焼酎は400ccくらいなので、シシャモ焼酎パーティーのために都合1kgほど、軽量化で浮いた重さを捧げたのよ。
最後にご主人に無事ゴミ焼却が済んだ報告をしたら、あんたも変わった人だねぇと言われた。実は2年と1週間前にも、小屋に早く着きすぎて暇そうにしていたらゴミ焼却を命じられたことがあった。その話をすると、ああ、サイトウさん?と、私はサイトウではないけれど一緒にいたものです。ということで、燃やす予定はなかったらしいが気が変わったらしく、ゴミを分けて貰い点火することを許された。ご主人はシェルパ斎藤さんのことは後で誰かから聞いたらしい(尤も顔は知らんと言っていたが)。彼がフリー雑誌の記事で書いたから。で、その文章に登場するヒゲの男性が私。あの夜の焚き火とは違って今回は一人だった、が、それはそれで私は楽しかった。
そういえば、天場で小熊を見たのは最初のシシャモをむしゃむしゃ食っていた時だ。匂いで出てきたか?やたら目ったらな所にビバークして宴会を開かないで良かったのかも。
焚き火の煙で燻されたシシャモは少し薫製の味もした。


■寝る
今回は天場でSilShelterを使った。500gに満たない。これだけで1kgの減量だ。この小屋の天場は以前来たことがあるので、ペグが効くことは確認済み。しかも周囲が樹林帯なのでULスタイル泊は何でもオッケーなのだ。Rainbowでも良かったが、風が出たら少し弱いかなと思ってやめた。風用のガイラインを取る改造をしないと山では使えない。
天場の中央にには最初に陣取っていた男女ペアと思われるテントがあった。雪を想定したのだろうか、吹き流し口のごついやつ。ま、それは良いのだが、テントの中の野郎さん、天場中に響くでかい声でかつての山行の自慢話を女性に語り聞かせている。あーあ、うんざりだ。テントを張らずにベンチにいるとご主人がまだ張らないの?というので、「あいつうるさいから近くはイヤだ」とゴネてみた。ら、ご主人曰く、森の奥なら良いだろうと。おおお、あっちも張れるのかと喜んで下見し、落ち葉の堆積した一等地を見つけた。実は、小礫の天場は平らなのだが、水が溜まった形跡があり、しかも霜が立っており、なにやら張る気がしていなかった。なんせ、こちとらテントと違って床がないのだ。
e0024555_363442.jpg

今回は枯れ枝を使って足元も吊り上げた。内部にポールが無いのでとても広く使えた。
e0024555_372676.jpg

この判断が後に幸運につながる。というのも焚き火した後、小屋に入れてもらって小屋泊まりの人(この夜は5名泊)と歓談し、眠りについた8:30頃から予期せぬ結構な雨が降り出した。雨は朝まで続いたが、落ち葉の地面はよく水を吸収し、床無しのSilShelterでも全然心配なしに眠ることができた。木立の中なので雨音も気にならなかった。正々堂々とこんなロケーションでシェルターを張れて、しかも焚き火までさせていただき、超ラッキー!あそこは水も旨いしね。
ただ、鞍部で水が湧くので少し湿っぽい。シェルターは開口部を大きく取ったが、手で触ると少し結露があった。ま、雨だし、仕方ない。上出来の方だ。

■寝具
シュラフはウエスタンマウンテニアリングのSummerLiteだが、寒かろうと思い、PatagoniaのMicroPuff P/Oを着、montbellのULサーマラップパンツをはいて寝た。夜半気温が下がったが十二分に暖かかった。下が落ち葉の堆積で冷えがなかったのだろうし。
しかし、雪にならずに助かった、というのが本音。
VaprBivyを使ったがやはり足元が結露した。こいつは湿っぽい場所ではイカンなと思う。少し重くても防水透湿シェルのシュラフを使うか、化繊が良いかなと思った。

■翌日
よく寝た。朝まで雨だったから慌てることもなかろう、と寝直したら、起きたら8:30頃。またしても寝坊だ。棒ラーメン&薄餅&α米の残りを朝餉とし、濡れたシェルターを片づけ..小屋を出たのが10時前。
11時前に薬師岳、12時に観音岳、13時に鳳凰小屋。
初めて自己陶酔ポーズで写真を撮った。バックの北岳も良い構図なので再掲してしまう。
e0024555_392226.jpg

時刻も遅いせいか、山頂は貸し切り状態。北岳や南ア深部もよく見えたし、山肌の黄葉も美しい。幸せ。
16:20に青木鉱泉。17時のバスなので風呂に入り損なったが、山菜蕎麦を食ってひとごこちつけた。

■さらに翌日
ドンドコ沢の下りは結構きつかったが、筋肉痛はさほどでもない。これも軽量化の御利益か。

■その他
下着にFineTrackのフラッドラッシュ スキンメッシュのシャツを着たが、これも良い。衣類の枚数にカウントせずに第二の皮膚としてこれからも愛用する。外の衣類に汗の拡散を促進し、また不思議に暖かい。
雨具は重いTNFのレインテック2をやめてmontbellのピークシェルの上下にした。これだけで300gの儲け。
装備を軽くしたので靴も見直し、TNFの軽いミドルカットを履いた。軽いがシャンクが入っていてソールは堅い。一応、くるぶしは保護されている。
たぶん、これが大正解。自動車ではないがバネ下荷重は軽いに限る。筋肉痛が楽なのはこのせいか?
あと、ホテル泊並に枕を2個贅沢に使った。これは別記事の予定。

■アイシング
最初、WindProの液出しでシシャモを焼いた。なにも液出ししなくても良いのだが、翌日冷えたらプロパンを残しておきたいと思い、液出しにした。全開では焦げるので燃料を絞って焼いていたら、ガス缶との接合部分に霜が付き、ついにはガスが出なくなってしまった。
理由を考えた。
燃料を絞る->ホースに出た途端に蒸発を起こす->気化熱を奪われそこいらが凍る->液化ガスが凍る?
何が凍ったのかは明らかではないが、ガスが出なくなったのは確かだ。こうなると缶全体ではなく重要な調整弁の一点で気化して凍るから条件としては悪い。
去年の縞枯では燃料を絞ってラーメンを煮たが詰まることはなかった。たぶん、寒かったのでホースに出た時に気化熱を使えずに液体のままジェネレータまで液体が届いていたのだろう。
暖かい時期に液出しは煮込み系には使えない。
もちろん、全開状態なら問題なく燃焼していた。

今回は電車バスを使った初めてのお泊まり山行だったが、下山後に飲めるのは良いことだ。今までは下山後にビールを飲む人たちを恨めしく思いながらハンドルへ向かうのが常だったから。仕事で何度も行った甲府だが、甲府からの帰りとなればもちろんいつも飲むのはハラモワイン。冷えた白に名産の干しぶどうがご馳走。
[PR]
by ulgoods | 2006-11-01 03:16 | 山行
<< A-Ring / alcoho... とりあえず薬師・観音 >>