人気ブログランキング | 話題のタグを見る

MSR / WindPro

MSR / WindPro

ここでは推奨されない使い方をしているので、もしこれを見て同様のことを試みる場合はあくまで自己責任でお願いします、ぜ。

MSR / WindPro_e0024555_145149100.jpgMSRのキャニスタ分離型ストーブ。実測重量196g、軽量な一体型のストーブより100gも重い。このストーブは国内の代理店での取扱がないみたい。ガス検取っていないんだろうな。しかもMSRの燃料は手に入らない。ま、他社の燃料を自己責任で使う分にはいいでしょ。気になる人は私の周囲10m以内に入らないで下さい。私も人気がないところで使いますから..こんなことしてるからぁ..いつもSoloか。






ここにきて、なぜキャニスタ分離か?それには訳がある。まず、一般に分離型ストーブの利点として
・シッカリした脚と低重心で重量鍋も安定
・風防をセットしても燃料缶が過熱されないので安心
ということが挙げられる。強風下では防風がうまくいかないと燃料ばかり消費して一向に湯が沸かないということもあり得るから防風は大事。WindProではアルミ製の風防と熱リフレクタが標準セットで来る。
しかし、それだけの理由で重い分離ストーブを運ぶのは面白くない。私が注目したいのは低温環境での燃焼である。冬にキャニスタストーブの元気がないのは経験済みだ。これは燃料缶内の液化ガスが気化するに必要な気化熱を周囲から得られないことに起因している。一般にキャニスタ燃料の主成分はブタンガスであるが、液化ブタンの沸点は以外に高い。
ブタン0.5℃
ISOブタン-12℃
プロパン-40℃
という資料を見た。これだと氷点下だと液化ブタンは気化しないことになる。尤も高所で気圧が低いと沸点が下がるのでこの限りではないが、一般に高所は余計に寒いのである。冬季用ということでブタンに沸点が低いプロパンを混ぜた燃料があるが、これも沸点を見る限りでは最初に貴重なプロパンだけが威勢良く燃え、後はブタンだけになり元気がなくなってしまうことになる。気の抜けたコーラ状態。純なISOブタンの燃料はMSRが売っているが残念だが国内では入手することができないし、USから送ってもらうこともできない。混ぜものがなから燃焼の特性が変わらないということだが、ISOブタンにしろ沸点は-12℃だから、極寒ではそれなりだろう。ただ、それなりに使えると思うので売り出して欲しい。沸点が極低いプロパンを常温で持ち運ぶには強靱な外殻が必要だ。オートキャンプなら良いのだが、分厚い鋼鉄製のプロパンボンベ背負って歩きたいとは思わない。破裂するのはもっとイヤだけど。

ということからキビシーイ環境ではガソリンストーブが使われることになる。しかし、ガソリンストーブは予熱して気化管で最終的に液体ガソリンを気化しないと使えない。予熱方法にも依るが、一般にはガソリンを垂らして燃やして、という盛大に炎と不完全燃焼ガスが発生する方法を使うだろう。これをテントの中でやるとヤバイ。よほどでかいテントでないと火事になってしまう。極寒の環境でテントを燃やすと命に関わる危険があるので私は試したくはない。Solo用のテントは狭いしね。SVEA123でもテント内での使用はためらわれる。メタでうまく予熱したとしてもガソリンの燃焼は臭くてたまらない。気分が悪くなるというか、これも生命の危機。しかも予熱不足だとストーブが火炎放射するし、液体のまま飛び散るとかなり厄介なことになる。

そこで、キャニスタ分離型。これはキャニスタを別途暖めるという手が使える。手で暖めたり水に漬けたり。燃えているところと離れているから融通が利く。
ここまでは分離型の基本。いずれキャニスタが冷えることには変わりがない。炎に近づけて暖めるということもできるが、加熱しないように気を遣う..ま、よほど近づけなければ大丈夫だと思うけど。

ColemanのPowerMaxシリーズという独特の砲弾形状のキャニスタ缶がある。MSR / WindPro_e0024555_14561469.jpgアルミ缶でリサイクルに出せるというのがウリだけど、それだけではない。これは液化ガスを液体のまま送出して燃やす側で気化させるというガソリンストーブのような原理を採用するシリーズだ。液体のままで出すから(液出し)キャニスタが気化熱で冷えて萎えるということはない。キャニスタ内に液体を送出するだけの圧力がないとイカンのだがね。ColemanのX1ストーブはこのPowerMaxを燃料にするストーブだ。市販されている中では唯一液出し燃焼できる仕様を持っている。とはいっても初期に液ガスが出るわけでもなく予熱も不要だ。ポンピングも不要、予熱も不要、めでたし、これで問題は解決なのだが..やっぱコールマン、重い。本体だけで315g。このメーカー、良く言えば無骨、しかし軽量とか洗練されたデザインとか、そーいうことを考えるネジが一本不足しているとも言える。更に付属のハードケースがでかい。飯だけ大量に入る弁当箱(いわゆるドカベン)くらい。今時そんなデカい弁当箱に梅干し一つという御仁も見かけないが、このケースも何とかして欲しい。機器の保護の観点からはプロっぽくて良いのだが、軽量ハイキングで担いで歩くことを考えていない。わたし的には萎え萎えなのである。しかも、PowerMax燃料は一般的なキャニスタ缶と互換がない。た、弾が切れたぁぁ..と言ってもコールマン部隊ではない隣の戦友から砲弾を補給してもらえない。困った。
でいろいろ調べた。海外ではその辺の議論もされていて、禅Stoveサイトで考察を読むことができた。この記事もその辺のにわか知識が元になっている。

要はふつーのキャニスタガスで液出し燃焼できれば問題は解決するわけだ。液出しするにはキャニスタ缶を倒立させる。そーすると、上面に溜まったガスの圧力で液体燃料が送出される。気になる液漏れだが..試して大丈夫なら大丈夫でしょう。となるとミソは気化管にありますな。X1の気化管はかわいそうなくらい小さい。申し訳程度の盲腸みたい。もっと立派な大腸並の気化管を持っていれば液体ガスの気化くらいいけるでしょ。そーだ、人間だってガスは大腸小腸で作られるんだから。そーいう気化管を持っているストーブはスノーピークのBFストーブや、PrimusのHimarayaやMSRの昔のRapidFireや現行のWindPriなどが挙げられる。禅ストーブによるとPrimusのマニュアルには液出しの記述があるという。さすがヒマラヤ、ガソリンの類やキャニスタガスを一つのストーブで燃やせるんだからね。要は燃焼口に燃えるガスが送られればおっけーという単純なことが良くわかる。また、MSRの技術者の談話として、大きな声では言えないけど液出しおっけーよというのも載っていた。スノピに詳しい友人の話ではスノピの技術者からは従来のストーブで液出しは巨大な赤火が上がるからダメよと言われたらしい。で、彼らは液出し燃焼のグリル用Twoバーナーストーブを出した。Towバーナーですか..それはそれは、担いで持ち運ぶには辛いでしょう。ガス台を担いで山歩きしても面白くはない。しかし、液出し有効ということが実証されたわけでもある。是非、液出しの軽量シングルバーナーをお願いしたい。Backpacker MagazineのEditers' Choise Award 2006を狙って欲しい。世界が驚く匠の技をもう一度だ。
で、待ちきれないから売っているものからストーブ選びをした。気化管が太いのは気化しきれない液体燃料が残るかもしれないので敬遠。あるいは、細い管を通って来て太い気化管を充填するには時差がかかるだろうし調整のレスポンスも低下しそう。発生するガス量も多すぎるかもしれない。また、気化管が短いのもパス..正しい物理はわからないが、この辺は直感を信じることにする。となると残るはMSRのWindPro。こいつは気化管が細い、断面積あたりの円周が長いことになるので余計に加熱してもらえる&気化管の長さもバーナー部を半周していて長い。MSRの技術者が云々というのはずばりこいつかもしれないと思った。Primusも今年になってこのスタイルのストーブを出したが、ちょっと価格がお高いのと、背が低すぎで輻射熱で床を焦がすかもと思い除外した。ストーブが決まったので即USへ発注した。

夏期はブタンも外気温で容易に沸騰し盛んに蒸発するだろうからキャニスタの内圧が高く、液出し条件としては悪い側と思い、夏期で安全に燃焼できれば冬季はより安全だろうということで、早速テストした。写真の状態は後ろに転がっている缶から燃料が供給されている。
MSR / WindPro_e0024555_152244.jpg

最初に正立の通常燃焼で気化管が真っ赤になるまで加熱した。かなり真っ赤になるなる元気がよい。冬季でも初期の加熱くらいは貴重なプロパンを燃やしてもいいだろう。懐で暖めておけば多少のブタンも出るだろうし。で、気化管がチンチンに赤熱したところでおもむろに倒立した。禅にも書いてあったけど、その際はゆっくりと、しかも燃料の流出口をバナーより高くしてはいけないらしい。液面の圧力水頭など内圧に比べれば僅かだと思ったが、敢えて危険は犯さないことにする。私は臆病なのだ。で、数秒の時差の後に液ガスが気化管に達したらしく、急に火勢が強まった。ををと思ったが赤火大炎上とはならなかった。ちゃんと気化され、適度な混合比になっているのだ。通常の気体で出るより同じ管から液体で出て向こうで気化された方が燃焼ガス量は多いだろうから火勢は強いのはがてんがいく。少し燃料を絞って丁度くらい。火勢の調整も効く。これならテント内でも危険は少なそうだ。
液出し後も気化管の半分以上は赤熱しているので、ここでは既に気化しているんだろうな。残りの半分は炎の中にありながらも赤熱していないので、ここで頑張って気化熱を供給していることが判る。しばらく燃やしたがもーまんたい。安心して見ていられる。これで液出し試験オッケーとした。実際に使うかどうかは、寒くなってからもう一度試験して決めようと思う。冷えて液を押し出す圧が弱いと使えないからね。WindProは気化管が細いので、もし息で吹くとしたら頭の血管が切れそうなほど頑張らなくてはいけないかもしれない。

実は、昨年にColemanのPeak1というPowerMaxではないキャニスタストーブでこの実験をしたことがある。Yahooで新品をコッヘル諸共1500円くらいで落札した人気のないストーブだった。ただただ気化管があるので実験用に買ったのだ。これも暖かい季節だったが倒立液出しは一応成功だった。でもやっぱり気化管が貧弱で不安なので実際には使わずに友人に売り払ったが、友人は炭の火興し専用に酷使してこのストーブは短命で昇天したしそうとのことだ。
ところでPeak1ストーブはどうみてもEPIガスの分離型キャニスタストーブと瓜二つ。手元にピエゾがあるかないかの違いくらい。バナー部は細部まで一緒。どこかの記事でEPIは資本的にColemanの傘下だと読んだことがある。Colemanだと値段は叩かれるがEPIだと倍以上の値段でも売れるしね。それ以来、EPIの有難味が薄れた気がして最近はEPIに食指が動かない。誤った情報かもしれないが..

なお、スパイダーなど使って一体型ストーブを分離型に仕立てても気化管がないから恐ろしくて液出しで使えないことは自明。気化管があるストーブでも通常の使用法ではないので自己責任であることを肝に銘じる必要がある。猫を電子レンジで乾かすくらいの非常識さと思うべし。
by ulgoods | 2005-08-06 15:24 | 燃える系
<< 失敗作 Integral Design... >>