マウントフライ 冬用シュラフ / Mt. fly Winter Sleeping Bag

日本のマウントフライという羽毛シュラフやジャケットのメーカーがある。その広告は雑誌「岳人」とその系統ムック本でしか見たことがない。
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2004年盛夏、暑さに辟易した私は雪中キャンプに憧れてダウンの冬シュラフを探していた。
で、雑誌の地味な広告から目に留まったのがこれ。Hand Pick Down ダウン98%スモールフェザー2%という数値に悩殺されて購入前に調べてみた。通常、高級なダウンでもダウン95%だが、こいつはダウンボールを手で選別した98%だという。ぶったまげなのである。
広告の中から目星を付けたのはHPD-900というダウン封入量900gのモデルだ。Hand Pick Down 900gね。名前は判りやすい。が、困ったことにこのダウン、ダウンの性能の指標になるfill powerが表示されていないし、シュラフとしての適用温度も書いていない。どんなもんか判らない..Webで検索してもほとんど引っかからない。情報がない。
困った。
ので、会社に電話をしてみた。電話に出たのはおそらく社長さん。電話口の後ろでTVの声が聞こえていることから考えて、居間兼オフィスな小さなメーカーなのだろう。
ずばり尋ねてみた。
Q:このダウンは何fill powerなのですか?。
A:うーん、わかんないなー
Q:え””、じゃ800くらい?
A:そのくらいはあるかも知れないなー
Q:...(何fillとか公開するためには面倒くさい試験をして、もしかして認定とか手続きや経費が要るのかなぁと考え込んでしまった。ワインでも日本酒でも格付けしていない隠れた逸品というのはあるし)
A:遠征隊とかにもよく使ってもらってるよ!
Q:ほぉー(隠れ逸品系かも!)
Q:羽毛量900gでネックウオーマーが欲しいのですが
A:要らないと思うけどなぁー。充分暖かいよ。(自信ありげ)
Q:付けられない?(肩から暖気が..)
A:いや、何でも出来るよ!
A:羽毛は100gいくらいくらで、売る時に詰めるから言ってよ。予め外皮は縫い上げているけど、羽毛はどの部位を多く詰めるとかも注文聞くよ。足元に多くとか、そういう注文も多いし。

とこんなやりとりだったと思う。
もう少し話してみると、この会社は本職は羽毛問屋さんで余技で(本人談)シュラフを作っているらしい。問屋だから羽毛は売らせるほど沢山あると。洗浄までしている羽毛で、そこからハンドピックしているということだった。ウヒャー、問屋さんが卸すほどある羽毛の山からハンドピックしてるんじゃ、そりゃ良い羽毛に違いない。
ここまで話したら、思考が停止したので、面倒くさいことは言わずに即お買い上げのお願いをしたのだった。
お願いしたスペックは、ダウン量900gでネックウオーマー付き。となると、羽毛量1000g用のシェルを使って、本体のダウンをHPD-900より減らしてネックに回す..ということ。HPD-1000はHPD-900にネックウオーマーを付けたモデルだ。当時は海外の寝袋を研究して1000gじゃ多いよなぁと100gの差を真剣に拘っていたのだ。いま考えると素直にHPD-1000にしておけば良かった。
ダウンの品質は判らないが、値段から考えてポーランドとかロシアとかそういうのでは無さそう。

電話でお願いして代金着払いで数日で届いた。注文を受けてからダウンを入れてくれたのね..何かうれしい。
第一印象、うわっ、でかい、厚い、こりゃ羽毛布団だ。スモールフェザーが極限に少ないせいか?バサバサ感は無く、しっとりした感じ。
手持ちのモンベルの#7と並べてみると、HPD-900はブリっと太ったマグロで、#7はカラカラに干した目刺し..そんな印象。
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上下面合わせたロフト量はナルゲンボトルの高さを超える。
長さ2m、肩部分の幅は70cm。下面は四角に小分けしたブロック構造で羽毛が偏らない。縫製自体はシングル構造だ。上面はもちろん内部にマチが取ってあるボックス構造となっている。
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このシュラフ、昔ながらで頭の形状が縫製が楽そうな平面半円を紐で絞り込むタイプ、最近の洋モノ達は立体裁断とかしてかっこいいのに比べると少し悲しい。頭部分にも結構大量のダウンが入っている。この分を本体に回せばいいのにとちょいと残念だが、頭が寒くないのは嬉しかろう。絞り込むと鼻と口が出るくらいまでは絞れる。けど、半円を絞り込むのでずいぶんとコードを手繰って引っ張らないと絞れてくれない。
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ネックウオーマーも絞り込める。きっちり絞ると肩部分からの暖気の漏れは少なそうだ。
フルサイズのジッパー付きで、ジッパーからの冷気の侵入を防ぐチューブが付いている。ま、ちょいと噛みやすいのが難点だが、深刻な問題ではない。
色は、外面が鮮やかなターコイスブルーで、中面は何とも言えないビミョーな紫。ま、ナイティーな用具なので、それもよかろう。その他、飾りも模様も何もない。質実剛健なのだと思いたい(いろいろ縫うのめんどくさそうだし)。メーカー名を示すのは内に縫い付けられた小さな洗濯タグにこれまた小さく「マウントフライ」と書いてあるだけ。
肩のベルクロは小さくて、すぐに外れるのがちょいと不満。
スタッフザックは締め上げる紐が2カ所縫い付いていた。要所要所補強されている。こんなに大きな羽毛布団がきゅっとΦ22cm長さ34cmに絞り込め、60L超のザックなら横向きで楽に入る。

さて、性能だが..判らない。
夏である。クーラーをガンガンにしてもシュラフに潜り込むとすぐに汗だくになった。2分と居られない。
困った...
で、当時いろいろ調べてみた。
国内のダウンの卸元と言うことは、ここのダウンが国内メーカで使われているかもしれない。国内大手のモンベルで考えると、羽毛量や重量は#0とEXPの中間くらいなので、温度チャートから考えると-20度と考えても良さそうだ。モンベルはダウン90%フェザー10%で725fill powerで、マウントフライは98/2%。だいぶこっちがグレードが高そう。マウントフライの広告ページによると90/10%と95/5%ですら嵩が20%違うというデータが示されているので、こっちは800fill powerくらいと考えて良さそうだな、850?ヨダレが出てくる..と根拠のない皮算用をした。

海外の超高級シュラフメーカーWestern MountaineeringとMarmotも調べてみた。
HPD-900ではロフトのはかり方が判らないのだが、一番厚そうな部分(胸)の片面をフワッと置いた時の床からの高さとした。

型番:我がMt.Fly HPD-900
羽毛:???Fill Down 900g.
ロフト:6" Loft
適用温度:-?? ℃
重量:1.42kg
価格:$270(32500JPY)

型番:Western Mountaineering Dakota SDL
羽毛:850+Fill Down 850g
ロフト:7 1/2" Loft
適用温度:-20.6℃
重量:1.42kg
価格:$585(70200JPY)

型番:Western Mountaineering Kodiak Super MF
羽毛:850+Fill Down 850g
ロフト:7" Loft
適用温度:-17.8℃
重量:1.33kg
価格:$455(54600JPY)

型番:Marmot Lithium
羽毛:900 Fill Down
ロフト:7" Loft
適用温度:-17.8℃
重量:1.13kg
価格:$449(53880JPY)

型番:Marmot Couloir EQ
羽毛:800 Fill down
ロフト:7" Loft
適用温度:-17.8℃
重量:1.70kg
価格:$509(61080JPY)

どーだろう。
ロフト量からすると-20度ものは7"超のロフトのようだ。ダウン量とロフト量から推測すると850fill powerは無さそうだな..。ま、計り方にもよるだろうし、スモールフェザーが多い方が見た目にロフトは稼ぎやすい。根拠はないが適用温度は0F程度か?と思った。マウントフライの普通そうなナイロン生地だがShellの重量的には洋モノに負けていないように思う。マーモットはすごく軽そうだが窮屈そうでもある。我がMt.Flyは胡座こそかけないが結構ゆったりしている。
心情的にはモンベルと比較した性能を採用することにした。

洋モノシュラフを航空便で輸入しても+$60くらい取られそうだし、こやつら洋モノ高級シュラフはJPのお店に行くとボトルキープした酒並みに値段が跳ね上がる。新宿の山道具店で見たけど、悲しいくらい、とても買えませんから..

このシュラフは実戦で2回投入。
1回目は2004/12末のオーレン小屋付近雪上キャンプで。このときのテント内気温は-10度だったが、朝までぐっすり熟睡。まだまだ余裕ありそう。
2回目は2005/11の縞枯山雪中ビバークで。外気温約-10度、Bivy内で-5度、空気断熱層のない状態だったが、もちろん余裕綽々。
撮影で取り出したらベタっとしていたが、体を入れて体温で暖めるとダウンが膨らんで、それこそマグロのようになる。

マウントフライのおやじは羽毛量は後で調整できるからと言っていた。中を見ると、なるほど、詰めた後で縫ったような縫い代が見える。現状は体部分は800+g程度と思われるので増量してもいいな。家でも寒くなるともぐって何度か寝てみたりしたが、現状で羽毛の抜けは皆無。スモールフェザーが生地を突き抜けるなんてことも全くない。
これで、Shellが薄々のPartexQuantumだったり、湿気透け透けのeVentだったり選べたら文句ないんだけどな。生地の持ち込みを相談してみようかしら。生地が変わると縫製テクニックも変わるか。fill powerや適応温度の表示、shellの素材やパターンの見直しとか行ったら競争力のある人気メーカーに化けると思うんだが。
山っ気(登山ではない)のある私は漠然と組んで商売してみたいと思った。

雑誌で某シュラフ大手のメーカーの作業行程や作業場をイラスト入りで紹介する記事を読んだが、どうせ大メーカのシュラフだって作っているのは小さな家内製の町工場だし(縫っているのは近所の内職のおばさん達らしい)。イスカとモンベルを持っているが、両者と基本の縫製技術的に遜色あるようには見えない。羽毛はマウントフライのような問屋から仕入れているんだし、羽毛で勝負のマウントフライは卸元だから負けることもないだろう。

値段性能比で大満足だ。
今のところ寒い思いをしたことがない。私が行ける範囲ではこれさえあれば、と充分に信頼が置けている。
こいつの限界を調べるには、厳冬期の高いお山へ行かないとだめだ。あるいはマグロ倉庫か..
デザインと、色が嫌いでなければ検討しても悪くない。
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by ulgoods | 2005-11-29 14:55 | 宿泊系
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