UltraLight Backpackingの概念を日本に紹介して下さった
狩野川のほとりにて...で有名な川崎一さん、(本Blogにはカワサキのハンドル名(そのまま..)で常に的確で深いコメントをお寄せ下さいます) http://www12.ocn.ne.jp/~nature1/index.htm が VBLパイオニア http://www.warmlite.com/vb.htm の記事を 翻訳要約して下さいました。 お忙しい中、大感謝! 前編、後編二本立てですが、本日は前編を掲載させて頂きます。 参考として、飽和水蒸気量に関して、Webですぐに見つかりますが 体表温度を30度とすると30g/m3、外気0度とすると5g/m3、気圧の影響は少ないらしいです。 以下、カワサキさんの訳文掲載 Vapor Barrier さてさて、VBを実際製品ラインに載せた最古のメーカーは Stephenson's Warmliteですが、1957年から現在まで続いて一定のファンが居るので、やはりこれは何かあるだろう、、有効性が。と言う事で、ホームページに載っている『Why Vapor Barrier ?』と言う文を、要約して引用したいと思います。 非常に面白かったです。 単位を換算するのはメンドウクサイので原文のままにしておきます。 ー17℃の氷を溶かすのに必要なエネルギーよりも、水を蒸発させるのに要するエネルギーの方が、7倍以上も大きい。 汗は体を冷やそうとする生体反応から生じるもので、発汗すると言う事はすなわちオーバーヒートであると言う事だ。 しかも汗には塩分と油分が含まれており、この濃度が高まると蒸発しにくくなる。こうした濃い汗を蒸発させるのには、純水を蒸発させるエネルギーの3倍要する。 発汗初期の汗の方が冷却効果が高く、発汗が続き、塩分と油分の濃度が高くなって行くと、冷却効果が低下する様に感じるのはこの為である。 綺麗な水で汗を洗い流すと、この冷却作用はリセットされ、また涼しく感じるようになるだろう。 とにかく、発汗の目的とするものは、体を冷却する以外に無いと言う事を銘記すべきだ。他の動物に無い、発汗と言う現象で人類は問題を抱えることになる。皮膚上にある水分が蒸発し熱と水分を失う、これを『不感蒸泄』と言う。『不感蒸泄』は『汗』(液体)では無く蒸気であり、不感でも無い。皮膚が冷えるのを感じる事ができるだろう。但し濡れた感じはしないので『不感蒸泄』と呼ばれている。 そしてこの蒸気は、たちまちにして衣服内で結露する事になる。通常、冷たい外気では相対湿度はほぼ100%に達するので、外気はこれ以上の蒸気を受け取る事ができない。従って殆どの不感蒸泄は結露して冷たい水となり、衣服を濡らし、保温能力を奪いさる。そして再び相対湿度が下がると、更に凍えるような不感蒸泄が皮膚から起きる。この、蒸発→結露→蒸発のサイクルが繰り返し起きるのである。 たとえアウターレイヤーが『Breathable 透湿性』のものであろうとも、衣服の上で蒸気が露点にまで温度が下がると結露してしまうのだ。 この不感蒸泄による、冷却作用と水分喪失は、皮膚近傍の空気の相対湿度にのみ依存している。つまりあなた自身はコントロールできないと言う訳だ。 もう一つ、大事なのは我々の温度感覚は相対感覚しか無いと言う事だ。 そして温度変化を感知する事ができるのは皮膚しかない。 例えば、がたがた震えるほど(Shivering)寒くなった後で、温水の浴槽につかると、実際にはまだ温度が低いのに、とっても熱く感じるだろう。自分の体が暖まるにつれて、皮膚はもう熱いと感じなくなる。そして今度は浴槽から出ると、蒸発が起き、すぐに寒く感じる。しかし体を拭いて乾かすと、又すぐに暖かく感じてしまう。 我々が、オーバーヒートを感じるのは、皮膚が汗で『濡れる感じ』に頼っている。 吸汗性の下着を着ていると、オーバーヒートから来る汗をすぐに吸い取って皮膚から移動させてしまう。だからさらっとして快適ではあるが、オーバーヒートに気づきにくくなると言う皮肉な結果になる。こうした吸汗性の下着は、冷却が必要な時に気化熱による冷却作用を阻害し、保温層に水分を移動させ、後で必要なときには保温層が濡れてその役目を果たせないと言う仕儀に相成る。 ここで注意して欲しいのは、快適さを保つのに役立っているのは吸汗性であって、透湿性では無いと言う事だ。だから吸水性の無いポリエステルやゴアテックスにはこうした快適さは備わっていない訳なのだ。 オーバーヒートから来る皮膚の発汗で湿った感じがしたら、すぐに換気をして余分な熱を排除しなければならない。こうした事を適切な時に行う知識と技術が必要だ。 熱中症や熱疲労は、オーバーヒートに気づかない為に起きるのでは無いが、吸汗性のある衣服は発汗に気づくのを遅らせ、危険な状態になる可能性を増すと言える。 必要な時に発汗の冷却作用を発揮するのを阻害し、保温層の衣服を濡らしてロフトをつぶし、後で暖かさが必要な時にあなたを凍えさせてしまうのだ。 大げさに言うと、ずぶ濡れになるまでオーバーヒートに気づかず、気づいた時はすっかり手遅れ、、と言う事だ。 結露によって保温層が濡れてしまうと言う現象は、ほぼ外気温にのみ依存しており、アウターレイヤーが透湿性があるとか無いとかには関係が無い。 あなたが、『濡れても保温性を保つ』等と言う間違った広告文句の為に疲労凍死してしまう前に、是非一度、保温ジャケットをずぶ濡れにしてしぼり、それを着てみる実験をオススメする。 間違った広告文句はあなたを暖かくしてはくれない。 こうした事は、ごく短い野外活動であれば通常問題にはならないだろう。しかし! 長時間~複数日に渡って野外にとどまって活動をするスキーヤーやハイカー登山家にとっては大変シリアスな問題になりうる。 吸水性のある下着は不感蒸泄を防ぐ訳では無い。不感蒸泄を防ぐ唯一の方法は、皮膚の周りの空気(micro climate)の相対湿度を上げるしか無い。それは皮膚に接したVapor Barrierによって可能になる。Vapor Barrierは、気化熱と水分喪失を94%抑制する事ができれば上等である。ゴアテックスはなんと97%をブロックする。のこりの3%をしてゴア社は『breathable 透湿性』と称しているのだ。 仮に皮膚近傍の空気の湿度が100%だったら、蒸発はストップする、つまり不感蒸泄も凍える事もストップする訳だ。乾燥した日よりも湿気のある日の方が暖かく感じるのはそうした理由があるからだ。一方、雨の降る日は冷たく感じるのは、雨滴が結露促進作用(condenser)として働くので空気中から湿気を取り除き、結果的にドライなコンディションに近づくからと言える。 皮膚に発汗が起きても、蒸発に追いつかなければ、皮膚はドライになり、凍傷にかかりやすくなる。蒸発による冷却作用があると、0℃の気温でも体感温度はー11℃にもなるのだ。 『Breathable透湿性』のあるスリーピングバッグに寝た時、一晩の不感蒸泄で最高1800gもの水分を失うと報告されている。翌朝、スリーピングバッグの重量を測定してみると、900g~1800g も増加している事が分かる。 この事実は、発汗とその蒸気はスリーピングバッグから外に排出されずに中綿の中で結露してしまう事を示している。 1800gもの水が蒸発すると言う事は、あなたから4320BTUもの熱量が奪われ、同時に中綿内に結露した水分によってインシュレーションも失うと言う結果になる。 1ポンド(450g)の氷を溶かすのに144BTUの熱量が必要だが、4ポンド(1800g)の水が気化するのに必要な熱は実に30ポンド(13.6kg)もの氷を溶かす熱に相当する。30ポンドの氷を抱いてベッドに寝てみたいと思いますか? Vapor Barrier無しにスリーピングバッグに寝ると言う事は、まさにこうした事なのだ! 8時間の睡眠中に1800gの水分が失われると言う事は、次に続く活動中の16時間にはもっと多くの水分が失われるであろう事は容易に想像がつくだろう。こうして起きる脱水は深刻な循環障害を引き起こし、凍傷に至る事になる。寒くて乾燥した気候の時は、たくさんの水を飲むようにと言う、昔ながらのアドバイスは実に当を得たモノだと言う事が分かる。Vapor Barrierを使えば、一日中、皮膚の周囲に暖かくて湿気のある空気を作り出すことが出来る。この作用が脱水の進行を食い止めるのに役立つだろう。 第2次世界大戦中、寒冷地に赴く部隊はVapor Barrier(VB)のソックスと手袋が支給された。そして凍傷を防いだ実績がある。やがてこのVBが『Korean Bunny Boots』となり、現在なお、寒冷地でのスタンダードになっている。 我々は1957年からVBソックスを販売し始めた。それから手袋、シャツ、やがてスリーピングバッグにVBを使い出したのが1967年の事だった。他のメーカーもVBの衣類やライナーを販売したり、販売を止めたりしていた。 それは、不快なコーティングされたナイロン生地の使い心地のせいであったり、使い方を殆ど教育しなかったせいだったり、ライナーをスリーピングバッグに連結する方法に問題があったりしたせいだった。そして、殆どのヒトがVBを使わなくなっていった。 メーカーや販売店は、イージーな物を売りたがる。そしてカスタマーを教育する必要がある道具は避けるのだ。 『Breathable透湿性のある』素材に関して強力な広告戦略が展開されれば、販売店もカスタマーに真実を全部告げる事は、販売成績にリスクを負う事になるので、やりたがらなくなる。彼らは売らない物については語らないものなのだ。 VBライナーを売ろうとしないメーカーと販売店の最も良く聞く言い訳は『顧客を教育している時間が無い』と言う物だ。 なんたる思慮の無さ! スリーピングバッグにVBライナーを加えても、換気を頻繁に行えば、暖かさが増す事にはならない。しかし、少なくとも、汗や結露によって中綿を濡らす事だけは防げる。これが、全てのシーズンでVBを推薦する理由だ。 Stephensonの FUZZY STUFF は、表面が起毛して吸汗性があるので、オーバーヒートが予想されるような夏の時期には好ましいだろう。 VBに対する最も良く聞く議論は、過剰な期待によるものだ。つまり、VBは常にオーバーヒートをもたらすと思っているのだ。湿気をコントロールするだけで温度管理が全てまかなえたら楽でいいのだが、物理的にVBから得られる暖かさは、最高で11℃がせいぜいだ。VBの真のメリットの一つは、オーバーヒートを感知させる役目をする事なのだ。つまり汗をかきだしたら、すぐに湿った感じがして気がつく訳だ。体からのメッセージに敏感になれると言う事はメリットなのだと知って欲しい。 ウィル・スターガーは、スポンサーから与えられた『Breathable』な『Quallofil』のスリーピングバッグを使って北極 まで犬ぞりで到達する冒険を行った。当初17ポンド(7.7kg)のスリーピングバッグ(Stephenson's Warmliteの2kgのダウン寝袋と同じくらいのロフト)は、最も乾燥しやすいように犬ぞりの一番上に乗せて運ばれたが、2~3週間の旅の間に、結露と氷によって52ポンド(23.6kg)にもなってしまった。 一方カナダーソビエト連合チームはStephenson's Warmliteのダウンシュラフを買ってクロスカントリーで北極を横断したが、旅全体を通して、暖かく、ドライな寝心地だった。 その後、ウィル・スターガーは、我々から FUZZY STUFF Vapor Barrierを購入し、彼のQuallofilの寝袋に使用して、もっと長い旅の南極横断の旅に出た。(Duponから50万ドルものサポートを貰って!) その結果、旅の間ずっと暖かくドライな状態で居られたと言う。 カワサキさん専用カテゴリを設けました!
by ulgoods
| 2005-11-01 07:43
| カワサキさん
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