10/06/2005 穂高へ

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長文になったが私の記録なので仕方ない。写真がないのでGPS記録画像だけ。右側の蝶ガ岳への軌跡はは5月のもの。今回、上高地横尾間はGPSを作動させていない。

10月6日、前夜遅かったので寝坊してしまった。4時起床も東京はまだ雨。昨夜チェックした松本の天気予報は10%の降水確率で晴れだという。もしや晴れるかもと一抹の期待を抱いて、雨を突いて家を出た。甲府までは雨、時々土砂降り..ダメなら下で一泊して帰ろう。とにかく先を急ぎ、7時過ぎ茶嵐に車を入れることができた。ゲートに近きゃTAXI代が浮く勘定。で、ここでみるみる空が晴れてきた。やった!こりゃイケルかも。
7:30バスターミナル着。やはり出発の遅れが響いている。晴天しかし出遅れ、あれこれと頭の中でスケジュールを考えてみた。
希望では涸沢の紅葉は外せないので、
河童橋->横尾->涸沢->北穂
だが、ダメなら涸沢泊まりとすることにした。ポイントは横尾までどれだけ時間を短縮できるか、コースタイムではほぼ3時間だという。そうと決まれば、途中脇目も振らずひたすら歩いた。誰にも抜かれなかった。大好きな徳沢園でもザックを置かずに顔だけ洗って歩いた。
横尾へ着いたのは9:15、ここまで1:45で到達。これで1時間浮いた勘定だ。上で寝られる希望が出てきたぞ。しかし、ここで少し代償を払うことになった。靴のシャンクが柔らかなせいか、左足が中で動いたのか、左の母指球全面水ぶくれ..大きく水膨れができていた。しまった!と思ったが、早く歩けたのはライケル・スカウトのシャンクが柔らかなお陰だし、これは痛みを我慢して行かねばなるまい。あいにくスペアの左足は持ってこなかった。ピンで刺して水を抜き、大きなバンドエイドを貼りつけて応急修理とした。
もう一つ落胆することがある。途中、あまりに紅葉が美しかったのでカメラを取り出したが..何と「カードがありません」と表示されるではないか。あちゃ!そー言えば出る前に急いでザックの記事をblogにupし、そのときメディアを抜いたままだったのかぁ。がっくし..予備の電池まで持ってきたのに。この2発の失敗のショックが抜けず、横尾で暫し休憩を余儀なくされた。
美しい景色を眺めながら一服し、何とか気を取り直し横尾で簡単カメラを買った。ここで水を2Lまで補給し、いざ、9:30横尾出発。涸沢へ12時までに着ければ後の行程に余裕が生まれる。
足の痛みを感じつつも渡河地点までは順調だった。が、渡河してから傾斜がキツくなり、速度が落ちた。足の痛みは繰り返しの刺激を脳が遮断したのか、脳内に鎮痛物質が生成されたのか、痛みは気にならなくなった。時折、体重を掛けるとムニュっと靴内で皮と足がズレる嫌な感触があるだけだ。ここからは筋力というよりは肺と心臓に頑張ってもらわなければならない。ほぼ4ヶ月ぶりの登山、机にへばり付いた生活..足の運びが休みがちになる。
前方にどーしても抜けないおばさんがいる。達者なものだと感心し、時折後ろ姿を確認しながら離されぬよう喘ぎながら歩を進めた。
しかし、周囲の紅葉黄葉は見事だ。空は快晴、寒さを予想したのがバカらしくなるほどに晴れて暑い。何だかんだと歩みを続けているうちに前方に日の丸発見!次第にザック無し三脚持ちのカメラな人々も増えてきた。こりゃ小屋が近いな、と思うもなかなか着かず。いずれ着くだろう、更に黙々と歩いた。ハッと顔を上げると建物の木の階段が見えた。
これで着いたのか?やれやれ、階段を上りデッキに立つと全面に大カールと視界を遮る木々から解放された空、モレーンに貼り付いた赤や黄の点描の世界が全て同時に目に飛び込んできた。ああ、いつか写真で見た紅葉の涸沢の風景だ!そしてビールを飲む多くの人たち。そこはまさに涸沢村。時間は12:00丁度。コースタイムをオーバーしての到着だった。
ここでカーっとビールといきたいところだが、12時までに着いたら上を目指す事に決めていたので、ビールは我慢しなければならない。日陰の一角にザックを降ろし、放心しながらコンビニで買った握り飯を食うことにする。喉は買ったサイダーで潤す。も、人様が食べているラーメンが旨そう。塩分補給もしなきゃね、と思い、ラーメンを頼んだ。ガハハ!やっぱりラーメンは旨いのだ!取り憑かれたように平らげ、やっと落ちつき、少し余裕もできて周囲の会話に聞き耳を立てた。
ガイドが登山客に大声で説明するには、今日は1畳3人の雑魚寝だという。ああ..小屋で寝る訳ではないがやっぱり上へ行こうと決心した。周囲を見渡すもカールの斜面を見るも登っている人がいないようだし。よっしゃ!上には静かな空があると確信し、俄然上昇志向が湧いてきた。が、横尾から2:30、明らかにバテてている。北穂は遠そうだし、あのギザギザを見たら明日、涸沢岳を越えて奥穂へ進む自信がない。そこで、予定を変更し、12:30涸沢発の16:00穂高岳山荘着で頑張ってみることにした。最悪でも17:00までに着けばテントを張ることができるだろう。そー思ったら糖分補給が必要と思い、あんパンと牛乳を追加し、胃の腑に押し込んだ。こんな高所で牛乳が飲めるのはありがたい事だ。涸沢なら身一つで来ても少し重い財布があれば何とでもなるなという感じ。
涸沢から穂高岳山荘までの高低差は688mである。通常なら1時間で300m上昇できるので2時間ちょいのはずである。しかし、馬力が落ちているから3時間で着けばヨシと思い、喧噪の涸沢を後にした。
ここからがキツかった。軽荷の爺様にも抜かれた。涸沢で見た若者が空身で平地を歩くようにすたすた登って行く。聞くと上の小屋のスタッフだという。昼休みを涸沢で過ごしたのか。何とも空身が羨ましい。
サイテングラードではもはや息も絶え絶え、数歩進んでは息を整えるというありさま。心臓がドクドク言っている。心臓ってさほど大きくないようだな、という感触が判るくらいにフル稼働を主張している。肺もしかり、煙草で働きが弱くなっているのだろう。口でゼイゼイ言うのを止めて鼻で大きく吸い込んで吐く。マラソンの時にこうするのだと教わった呼吸法で最大限の酸素を肺に送り込む作業に注力した。
やがて遠かった測量の櫓が近くなり、石垣の上に寝そべる人々の姿が見え、声も聞こえるようになり、なかなか近づかない小屋に苛立ちを覚えながらも歩みを止めずに進んだ甲斐あって、15:30丁度に小屋へ入ることができた。今回は何故か切れの良い時間で歩いている。ちょうど3時間、自分に許した時間が指標になっているのか?。コースタイムが2:40程度だから、まあまあか。こちとらテント担いでるんだい。常念、蝶の稜線の向こう側も見える。ついにあの写真の向こう側へ立ったのだ。
ここのテント場は急斜面に石垣を高く積み上げ、その僅かに稼いだ差分、棚田のような1.8m幅のみが平地だ。こんな見事な石垣を築くこと、大変なご苦労があったと思いつつ、ありがたくテント設営した。
BlackDiamonのFirstLightを張ったが、入り口が長手方向なので助かった。もはや石垣の端までは30cmくらいしか残っていない。横に入り口があるタイプだと出入りの度にかなりの危険を伴うことになる。下のテントまでは約3m。落石せぬよう気を遣う。FistLightはフレームが室内なので狭いテント場でも最大限に室内を広くできる。このテントを持ってきて大正解だった。このテント、天場で横と下になった2人から声を掛けてもらった。「あ、あの新しいテントですね!」と「これ、欲しかったんですよ」。お陰ですぐにうち解けた。FirstLightも知名度が上がったものだ。道具のお陰で会話も弾み、すぐに仲良くなった。その後、ドラマチックに渦巻く雲から見える笠ヶ岳に沈む夕日を皆で眺め、小屋の食堂脇の土間で夕食を摂り、それぞれの夜を迎えた。先ほど空荷で追い越して行った若者がなにくわぬ顔で配膳していた。
私の夕食はフリーズドライのガーリックライス。食後、鍋洗いを兼ねてマルタイラーメン。しかも薄モチ入り。腹も膨れたし、鍋もキレイになった。小屋外は冷えてきたので、PatagoniaのMicroPuffジャケットとPossumDownのグローブを持ってきて良かった。
夜も快晴のまま、あんなにきれいな天の川を見たのは久しぶりだった。その夜のテント内は5℃、ISAK Air450+BaprBivyなら楽勝でぐっすりと眠ることができた。チタンフラスコのバーボンを飲みつつ頭の中で考えた翌日の予定は
奥穂->前穂->岳沢ヒュッテ泊
翌朝、宇宙に近い高山特有の濃い紺の空が徐々に赤みを増し、やがて黄金に光る雲海の上の日の出を拝んだ後、時間に余裕があるのでゆっくりと出発した。朝食はジップ袋に詰めてきたグラノーラ、スキムミルク掛けをお湯でふにゃふにゃにして袋ままスプーンで喰う。食器要らずで穀物とミルクが摂れ、袋はゴミ袋になる。あまりに甘ったるいのでヲヤヂストーブで湯を沸かし直しコーヒーを飲んだ。ヲヤジストーブは気圧が低くアルコールが沸騰しやすいせいか、いつもより炎が大きい気がした。ま、ネジで調整できる範囲だろう。次回は小火モードにセットしよう。石で作ったかまどからは隙間風も強かったが、ヲヤヂはとても元気に燃えた。昨日に引き続き今日も快晴!日が出てからは急に気温も上がってきた。
GPSの記録によると、7:18分に出発、8:13に奥穂を踏んだことになる。途中から姿を現した槍が美しかった。その後、釣り尾根から前穂の下へ進み、サブザックにエマージェンシーキット、雨具、防寒着、行動食、水を分けて荷を作り軽荷で前穂登山をした。
前穂から見る景色もすばらしかった。雲海から突き出た富士を始め、名だたる山はほぼ見えた。足元の上高地も美しいし、山肌が纏った黄葉の点々もチャーミングだ!見える全球の全てが美しい。
その後は岳沢目指して下山、11:37前穂下出発、13:23岳沢着。13時頃から雲が出てきたが、この時点で焼岳山頂見えず、2400mより上は全て雲に覆われたようだ。
私は登りも下りも最も良い時間を頂戴したことになる。
岳沢泊まりの予定だったが、こんなに早くから泊まる気もしない。夕方からは天気が崩れるというし、6時のゲート閉鎖には余裕で間に合うから降りてしまうか。天気が保ちそうなら小梨平で天泊しても良いし。
またもサイダーを飲み、名物の?カレーを食ってから下山開始したのが13:50。緩く長い下りを歩き、河童橋到着は15:43。この20分ほど前から雨が降り出した。
今回は少しツイていたようだ。
これで写真の向こうに行きたいという私の夢は果たされた。今度は奥穂、前穂から見た山々に向かいたい。
Beyond the picture!
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by ulgoods | 2005-10-09 00:29 | 山行 | Comments(10)
Commented by カワサキ at 2005-10-09 01:01 x
こんばんは。テントかついでこのタイムは凄い。体力ありますねえ。
普段なにか体力作りをされているんですか?
Commented by supica-hosi at 2005-10-09 01:08
こんばんは。おかえり。!!
足のおまめは痛そう。それにしても、自分が読んでいてスガスガしくなりました。^^行った様な気分にさせていただきました。
お山のごちそうもなかなかであります。あそこに行けば幸せな気分でしょ。秋のこの季節は喉から手が出るほどですよ。いいなぁ。^^
わたしも何だかここをダッシュツしたいこの頃。明日は里山散策します。
・・で温泉。星空も拝めれてよかったですね。^^
Commented by ulgoods at 2005-10-09 01:08
こんばんは。
スポーツジムの会員なのですが、ここ2ヶ月は週1行けていませんでした。
ほとんど気力で歩きましたが、前日に足を塩水に漬けるんだった。大小5つのマメが土産です。
呼吸器系を何とかしないとイカンですね。
Commented by ulgoods at 2005-10-09 01:19
supica-hosiさん、こんばんは。
なんだか、今回は頑張った気がします。自分でもモヤモヤと道具に倒錯ていた気持ちも晴れたよう。これからはデジカメの具を忘れずに写真付きで山行記録を残したいと思います。撮り切りカメラの良い写真があればスキャンしてUPできるかな。
次回の山行までに足の裏を治したい。
里山歩き、これからは良い季節です。どの辺を歩くのでしょう?関西方面のようにお見受けします。昔、大阪に住んでいた頃、仕事関係で晩秋の猪名川の奥に入ったことがあります。のどかで良い里山がありました。懐かしい。
Commented by 『ターボー』 at 2005-10-09 09:31 x
すごい
恐れ入りました。
私が、涸沢行った時 テント無しでもこんな 
短い時間が出なかった。 すごいですね。
体力気力 充実ですね。

左の母指球全面水ぶくれとは 痛かったでしょうが、
それ以上の充実していた 記録。
楽しく 読みました。

ヲヤヂストーブ 持って行かれたんですね。
調子良さそうで 良かったですね。
久々 当方も 山に行きたくなりました。
(最近 おっくうで、、、  反省)
ulgoodsさんを見習います。<当方の年相応に (^^;)>

次回 写真も見せてください。 (今回 私も残念でした)
楽しく 素敵な 山日記 ありがとうございました。

Commented by TiCA at 2005-10-09 15:30 x
お帰りなさい&お疲れ様でした。
晴天の涸沢、素晴らしかったでしょうね~!写真がなくて残念。。なので!私もこの景色、見に行ってこようと思います。晴れるかしら。。
レポート参考にさせていただきますね。
足のマメ、お大事に~。
Commented by ulgoods at 2005-10-09 16:31
>TiCAさん
こんにちは。これから穂高へ行かれるのですね。残念、4日のニアミス?何やらこの数日は天気がよさそうな気圧配置ですね。寒暖の差が大きいと思いますのでお気を付け下さい。
Blogでの山行レポート楽しみにしています。
Commented by ulgoods at 2005-10-09 16:33
>ターボーさま
いや、疲れました。ピークハンターでもないのですが、ゆっくり楽しむ余裕を持ち合わせていません。とにかくテント担いで先へ先へと心が身体を許してくれない..
ヲヤヂは使えました。風で炎が揺れていましたが鍋の中央から沸騰してましたし、やはり勢いのある炎を収束させるのは効果あるようです。
もう少し熟成させたら頒布させていただき、感想など伺いたいと思っております。
Commented by カワサキ at 2005-10-14 12:57 x
いやー恐ろしいテン場ですねー(^^;)。ペグは立たなかったとの事ですが、岩に細引きを結びつけたのですか?
タープだと張るのがもっと難しそうですね。こんな場所でも タープ+Vapor Bivy で泊まれそうですか?

ところで、紙焼きした写真をスキャナで取り込むと、なんか独特の味が出ますね。これはなんかイケルかも。

ヲヤジストーブ の完成楽しみにしています。(^^)
Commented by ulgoods at 2005-10-14 14:15
この天場、横開きテントだとかなり辛いです。
私の奥に張ったカップルは、少し大きなテントだったので、其処しか張る場所が無くキャットウオーク歩行を余儀なくされたようです。ペグはほとんど効きません。チタンのネールペグが奇跡的に1本ガッチリ効きました。あとは少しペグを刺して石で重しして、ガイラインも石に取りました。テント側を自在結びにして張りました。
タープは片屋根にすれば..一方は石垣の壁面から、他方を地面という感じで張れるのではないかと思います。小さな石や割り箸を差し込んで向きを変えて効かせればガイラインが張れるかと思います。
風が飛騨側からだと尾根と石垣で風はかなり弱まっています。雨が降って石垣を伝って滝のように流れるとダメですが..
また行くでしょうから次回はもう少し工夫してみます。
オヤヂ、缶不足で停滞中...仕方がないので子供に飲ませてジュースの空き缶も動員しようかと。
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