渓流歩き岩魚釣り / TENKARA fishing

渓流歩き岩魚釣り

■口上
テンカラで岩魚をと思い、今期は釣れるまで尾根には出向かない願掛けをしていたのだが、幸運にも3回目の自然渓への釣行でやっと岩魚と出会うことができた。
結果として2回釣れた。1回目は5寸程度の小岩魚だったので撮影後にリリース。2回目は塩焼きにして充分サイズであったが、手にする直前に糸から針が外れて痛恨のエラーであった。針がついたまま逃がしてしまったので、あの魚も長くは生きられまい。ちゃんと取り込んで引導渡して骨まで食べてこの身にしたかったのに残念である。
今回のメンバーは総勢4名。前回の南ア釣行のメンバーにもう1人、西丹沢の猛者、その名も玄倉川の別名である丹沢黒部を名乗るT氏にも参加いただけた。いずれの方も経験豊富なULな渓流爆釣請負人である。テンカラは私一人で他はリール付きの洋式フライ竿。

■遡行開始す
行った場所は南ア深南部、東京から6時間車を走らせて干上がったダム湖が出発点となる。全長200mを越す針金と羽目板で作られた吊り橋を渡って向こうの世界に踏み出すのは結構勇気が要る。
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揺れるというか、裏返りそうでちゃんと怖い。
湖底に下りるとそこは干上がった別世界であった。ああ、今年は渇水なんだねって納得し掛ったのだが、肝心の水が流れていないではないか!川はどこだ?自分が降り立った異次元に一瞬たじろぐ。

とりあえず上流を目指して砂漠のようなダム湖底を歩き出した。10分くらい歩いたところか、微かに水音が聞こえた。音はすれど姿は無し。
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どうせ水まみれだろうからと飲料水を担いでいないので朝飯も食えずに、更に進むこと10分程か、水溜まりがあり、そこが川の終点になっていた。どうやら水が無い訳ではないらしい。気を良くして100mも上がると流れが現われ、更に行くと結構な渓流が出現したのは嬉しかった。おそらく渓流部分は生きていて、ダム湖の堆積部分で全部染みこんでいたものと考えられる。水を得たので安心して朝飯を摂った。

砂地を離れて岩の河原を進む。まだ若い角が多い岩だらけだ。この日の足こしらえは前回同様の沢足袋で足裏や爪先の保護が無いに等しい。次第に足裏のツボが刺激されというか、すぐに痛くなってしまった。たまにある数歩の砂地がオアシスに思える。その辺りは既に釣れそうな雰囲気もあるのだが先頭の人は更なる上流を目指し決して歩みを緩めない。ほどなく足裏に加えて爪先も泣きだした。2時間程か、予定通り最初の沢が差すところまで進んで竿を出した。1人J氏はは支流へ、残るT氏N氏と私は右岸左岸に分かれて追い越しながら釣り上がって行った。先ずは師範達の竿捌きやポイントの選び具合など見て、竿を振る練習などして後に続いた。
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ザックはGossamer GearのMariposaである。荷が軽いので担ぎながら釣り上がる。

しばらくは何でもなかったが、師範達もどうにも釣れない模様。そういえば来る途中でまだ新しい足跡を見た。神経質な岩魚のこと、先行者が居るとなると一気に難しくなるらしい。結局T氏とN氏が普段は放す骨酒サイズを一尾ずつキープするのみで3kmほど釣り上がり、14時くらいにビバーク予定地点に到着した。最初の沢で分かれた爆釣野郎AチームなJ氏も追いついて合流したが手ぶらである。ま、魚影さえ見ない私とは違ってアタリはあったらしいが、水量が少なく岩魚が警戒しているとのこと。今夜の岩魚尽くしの宴会計画に赤信号が点った。最悪、飯と塩昆布はあるが、何とか岩魚にはお出まし願いたいところだ。

■遊んで食う寝る
我々はビバーク予定地は支流が2本差すので三股と呼んでいたが、さっそく荷を置いて身軽になって散ることにした。確保の上限は一人4匹までとされた。私はしばらく泊地前で独り竿を振っていたが、岩魚の居ないことが明白なのでいよいよ渓を進むことにした。既にメンバーが入っている沢なので、彼らに釣り漏らしは無いはずであるが、もしもということもあるから釣れぬなりに丁寧にフライを流したつもりである。やがて行く手に釜が現われた。どうしたものかと思案したが、結局は竿を畳み胸近くまで浸かってヘツって突破した。ら、先行のJ氏が戻ってきた。どうやら滝がキツいらしい。高巻きは残置ロープで登れるが向こうに降りられないと。もちろん沢登りの技術が皆無な私には手も足も出まい。再び胸まで浸かって戻ったら、頭上の岩をJ氏が歩いていた。なるほど、ここは上を行くのか...少し沢歩きの技術がないと釣りにならぬと実感した構図の対比であった。

泊地まで戻り、J氏はもう一度釣り下がるという。ほどなく本流を行っていたT氏も戻る。泳ぎが必要な釜があるらしい。この時点で3尾程度の岩魚があったと思う。人数は4人。私は釣っていない。せめても薪集めで貢献することにした。1.2mスリングを2本、小学校の校庭の二宮尊徳のように薪を背にして対岸とこちらを何度も徒渉して薪を集積した。急峻な斜面に横たわる長さ10mくらいの猿梨の木も川の中を引きずって持って来た。タープの支柱が要るはずである。続いてT氏が魔法のザックから取り出した鋸で猿梨を切り、二間四方の農ポリシートを100円荷造りロープで立てる作業に入った。さすがは丹沢黒部氏である、全てが手馴れたものである。J氏も戻り支柱を建て終わったその瞬間、ザーーっと大粒の雨が落ちてきた。間一髪とはこのことか、とすればまだ天には見放されていないはずだ。
そんな折、独り沢に入っていたN氏が戻ってきた。どうやら腰の袋に膨らみがある。堂々5匹余の釣果らしい。いつもはこんなに確保はしない氏であるが、本日の状況に鑑み奮闘してくれたらしい。救われたと拝見したら..おお、尺ものも居るではないか。これだけあれば宴会はなる。
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早速T氏がガムテを着火剤にたちどころに火を熾し、続いて河原で岩魚を捌き始めた。あまりの手際の良さに私は火を育て飯を炊くことくらいしかできなかった。農ポリも2m程の高さに張っていたのでアホ程大きな火を立てねば溶けることもなく、渓の奥は余程のことがない限り風は穏やかだと言う。この環境であればこの屋根が最も理に適っている訳だ。
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やがて料理も出来上がり。
尺岩魚の刺身
岩魚ナメロウ
皮と臓物のバターソテー
岩魚骨酒
岩魚塩焼き
岩魚あら汁
飯4合
という豪華な夕餉になった。
刺身やナメロウも岩から出ている葉っぱを敷けば彩りも美しく、小さな演出であるがこの上ない清涼感と高級感を醸し出す。
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しかし、T氏の経験に裏打ちされた渓での確かな生活術とマメさにはほとほと脱帽した。いずれはああ在りたいものだ。

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酒も進み、飯も進み..4合の飯はあっという間に平らげられて、その夜のうちに更に4合を炊くことになった。飯炊きは私の担当だが、どうにも飯を失敗する気がしない。2回ともふっくら焦さず炊けて好評であったのはBOZEな私にはせめてのも救いであった。

ビールで始り骨酒で一升、仕上げはモルト酒1本と調子よく酒も回って、私も昨夜から寝ていないので急激に眠気が襲ってきた。予定の寝姿はGatewood Capeで屋根をこさえて薄手の化繊QuiktをPertex QuantumなBivyでくるむ予定であったのだが、まー、農ポリタープもあることだしと半袖姿でゴロリとリッジレストに横になった3秒後から記憶がない。夜半目が覚めたら皆様Bivyにくるまってちゃんと寝ていらっしゃる。私も慌てて寝具を整え、薪を足してから再び眠りに落ちた。
不思議なことに渓に充満する流れの音は気にすると聞こえるのだが気にしなければ3秒で消えるものだ。人間の耳というか脳は巧く出来ている。

翌朝、目を覚ますと既に明るく、T氏が朝餉の準備に取りかかっていた。岩魚は釣らないは、飯は喰らうは、酒は一人前だわ、朝は起きないでは立つ瀬がない。未練のQuiltから体を抜いて支度に掛った。
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朝はソーメン、揖保の糸を9束茹でるのが私の当番。そう、私は前回に引き続いて炭水化物担当を言いつかっている。火は既に熾きていた。ビリ缶に湯を沸かしてソーメンを茹で、バグネットに放り込んで川に晒して出来上がり。バグネットに移すときに間抜けにこぼさなければ失敗のしようもない簡単なお仕事だ。N氏が薬味を刻む、T氏が残り飯に岩魚の身を解いて混ぜて飯を握る。昨日の残りの岩魚汁も湯と味噌を足して温めた。まだ暗い渓にたなびく焚き火の煙に日が差して美しい。
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朝飯終えて、竿を損傷したT氏を残して三人が散った。私はN氏と交互に釣り上がっていくことにした。J氏が昨日岩魚を見たというポイントに岩陰から忍者のように忍び寄り、昨日の傾向から流心の白泡切れ目が狙い目だとアドバイスをもらってフライを流してみた。実は昨日の段階で軽いアタリは得てあり、フライの流し方など魚が居れば絶対掛ると言っていただいていたので、岩魚が居ると信じて2度3度流してみた。スゥうっとフライが沈んだので慌てて上げたが、どうやら早すぎたようだ。魚が掛るのは思ったより静かでささやかなサインでしかないと思った。TVで見るカジキマグロの1本釣りのような派手なジャンプなどはないのだ。1度失敗したので駄目かと思ったが、居ると分かったら勿体ない。もう一度フライを流したその時だ、再びフライが不意に水中に消えたではないか。キタ!と思ったが、そこは待ち、1、2秒後に竿を引き上げると、グビグビと竿に振動が伝わってきて魚が掛っていることが分かった。小さな魚だろう、針を掛けるに引き上げた反動でもう陸に引き抜かれていた。
よほど腹が空いていたのか、テンカラによる渓流岩魚の初釣果はかわいらしい小さな岩魚。これはキープサイズではないねとN氏に確認し、幸いにも返しのない針だったのですぐに針も外れたので放すことにした。
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小さいとは言え、引き抜いてから着地までのほんの数秒間、竿を介してだがその躍動感をこの手に感じることができたのは嬉しい。

その後、頭上の木を釣って針を無くしたので、ティペットと針を交換して先行するN氏を追った。その時点でN氏は一匹確保。さすがである。ここは試したので上へどうぞと言われて進んだポイントは、こりゃ釣れなきゃ嘘でしょという見事な一級ポイントに見えた。どうやら岩魚が居るかしら?とか半信半疑で臨んではいけないのである。先ほどの釣果でこれまでの確信の持てぬ気持ちが切り替わり、岩魚は居ると信じてフライを流すことが出来たその気が功を奏したか、3度ほど流してまた先ほどと同じように、フゥっとフライが消えたのを視認した。2秒待ち竿を引き上げたら、な、なんと水から揚がった岩魚は今度は塩焼きに充分なサイズ、腹の黄色も見て取れた。が、ここで慌てた。テンカラの場合は一気に引き抜くのが正しい揚げ方と後で聞いたのだが、こんなの初めて的なうぶな私のこと、岩魚を一旦水に落とし、ラインをたぐり始めた。今度は岩魚の振動と重さが直接指先に伝わってくる。私も狩猟本能が喚起される。ようやくラインをたぐり寄せ、水面から揚げようとしたときだ、それは不意にすっぽ抜け、揚げたのは針のない糸であった。糸が切れたのではない。縮れ具合からも糸が解けて針から外れたことが分かる。私も拍子抜けして立ちすくんだが、針を刺したまま逃走した岩魚も哀れである。今回はJ氏が巻いてくれた最後の1本、返しの付いた針であるから外れることもない。長くは生きられないだろう。ちゃんと釣らずに申し訳ないと詫びた。
件の釜まで進み、どうやらその上は岩魚の楽園なのかもと思ったが、登ってしまえば容易に戻れず、撤収時刻に遅れるので、余裕と余韻を残したまま引き上げることにした。
N氏の一尾をTさんが捌いてくれて、皮はソテーして、イクラも出来、再びソーメンを9束茹でて、残りのビールで乾杯して銘渓と別れの昼食とした。
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帰りは意気揚々とは行かないのは足のせいである。往路に増して足裏の刺激は許容量を超え、爪先をぶつけるのでおそらく内出血してるだろうと思いながら腰の引けた歩きをするものだから、みるみる遅れてしまった。休憩の度に追いつき、短い休憩での後、痛みに半べそをかきながら後を追うことになる。
やがて懐かしい足裏に優しいダム湖底に戻り、ほっと安堵して歩いたが、埋没していた石にけつまずき、涙ぐみながら石に悪態をついてしまった。やっぱ靴にするか。テンカラには足袋が似合いそうだが、こう痛いと釣りに障る。
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足裏と爪先を鍛えて思ったスタイルを通すのか、普通に靴を履くのか..どうしようか思いながら帰途についた。
数日経った。まだ足の裏に刺激は残り、足裏が厚くなった気もする。

さて、秋は尾根に戻れるな。今期中に釣れて良かった。


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こっちは、たぶん押してもらった1/100くらいしか反映されない模様...いいかげん謹慎を解いてもらいたい


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by ulgoods | 2010-09-11 04:44 | 釣りとか沢とか
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