消失


追記
水上のガイド風間氏の追跡聞き込み調査によると、1/18時点ではまだiglooは存在していて、ツアーの人たちが入ったり記念写真を撮ったりしたという情報が入りました。

本文
イグルー無いですぅ..と水上のガイド風間氏から少し裏返った声で電話が入ったのは土曜の夕方の事だった。昼頃にも電話をもらったが掛け直すも通じず、少し悪い知らせの気もしていたが、知人と多摩川縁で珈琲を飲んで写真談義などしていた、その帰りの自転車で二度目の電話は鳴った。
イグルー無いです..
え”!そんな莫迦な
あんなに突き固めた大きな雪の固まりが消えるなんて??一瞬、知人の死亡通知を受けたに似た暗澹たる気分に突き落とされた。なんしか、我々は合計8時間余の時間を掛けて構築し、最後の30分ほどしかそのドームの下に滞在していないのだ。今シーズンはそのドームを使って遊ぼうという気持ち満々で後ろ髪を引かれる気持ちでドームを置いてきたのだから、それが無い!というのはどーにも信じたくない。で、電話で状況を聞くが何とも分からない。幸い、写真をたくさん撮ったというので送ってもらうことをお願いした。
可能性は二つ、破壊か溶解。どちらかというと破壊?などという邪な気持ちが頭をもたげる。キンキンに冷えた冷凍庫の中に置いてきた突き固めた雪の固まりが雪シーズン真っ盛りの1月に易々と溶けることは私の感覚では考えにくかったからだ。とりあえず、JOTAROさんと事故調査委員会を立ち上げた。実は溶解よりは人為的な破壊の方がある意味救われる。場所を秘匿して再構築すれば済む。しかし、溶解では..お天道様には敵わないから辛い。

送られてきた写真を見ると、一段目の円周を残してドーム型は存在していない。
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基部だけキレイに残るのも変な感じだ。まずは破壊を疑った。通常、私の知る限りiglooの崩壊姿は、壁がやせ細って穴が空くが最後までドーム型を維持していることになっている。とは言え、自分の目で確かめたのではなく、あくまで海外の事例(Backpackinglight.com)だが...

見方によっては危険な構築物な訳で、見回り役の人の指導が入って撤去されたのかと。

で、泣く泣く風間氏がスコップで切開した写真を追っていくと、天蓋がそのまま残っている。ん?変だぞ。
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床に天蓋が静かに覆い被さっている。空間も残っている。一気に崩落したのではこうはなるまい。側面半分を切り崩したドームの上に大人2人が乗って更に側面に蹴りを入れて崩壊させたビデオを見たことがあるが、やはり高さのあるところから落とすと天蓋なども粉々になっていた。これは...
また別の写真では残った一段目の断面が滑らかだということが見て取れた。となると側壁部分が溶解というか緩くなって静かに潰れていった、例えばロングスカートのご婦人がしゃがみ込むときのスカート形状の感じ?うーん...側壁の腰の辺りから均等に潰れていけばドームの頂上は押されて盛り上がる形を保つだろうから、1枚目の写真と、この形状は納得できる。
風間氏が地元のガイドの方々に電話で聞きまくった結果では、Week-Dayに人は入っていないという。

誰かの仕業を疑っていると人相が悪くなりかねないので、気象台から水上のデータを取り寄せて検討してみた。水上と現地では条件が違うが、標高的には+100m程度だろう。水平距離もさほどないから都市熱も考慮して仮に-2度位を想定して大きな違いはあるまい。
我々の作業は16,17日である。
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どうやら、前日の15日が最も冷えていて最低気温は-10度、最高でも-0.5度、パウダースノーな訳だ。16、17も最高気温が氷点下であり、私が穴蔵で粉雪の中で寝た夜は水上でも-5度くらいであったことが伺える。が一転、我々がドームを置いて帰ったその日以後、気温グラフは急上昇を見せ、なんと、最高気温が+10度!19,20,21日では平均気温が+1,2度であった。コレでは溶けて当然だ。丁度、風間氏がレスキューの講習で水上を留守にしていた頃か...仮に付きっきりだったとしてもお天道様というか、周辺の気温の雰囲気には敵うまい。
穴蔵として使った小屋も軒先まであった雪が沈み、今では楽勝で利用可能な感じになっていた。
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しばらく降雪と冷気中で養生されればもっと強度が出ただろうが、翌日からコレでは駄目だ。運も悪かった。
下図は最高気温が出た日の水上の1時間毎の気温の推移である。一枚目のグラフと最高気温の整合が取れないのが気がかりだが..
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朝の9時以降、氷点より上、しかも、夜間ですらである。これでは強度は出まい。
のと、製造過程を思い起こすと、いろいろ端折った点があり、特に側壁を滑らかな懸垂曲線に仕上げるべきところを段数が嵩むのを嫌って適当にしてしまったことが思い浮かんだ。途中に変曲点が存在したし、間隙が潰れて壁が締まることを考えると、もう少しトンガリコーン状に潰れマージンを取っておくんだった。マニュアルを読み直して器具の製造元の意図を充分に反映できていない点を反省した。また、製造器が作る壁の厚みは一定であるのに比較的大きなドームにチャレンジしたため、上部の重量に対して相対的に側面が弱いということも圧壊の原因として挙げられよう。

で、今後の方針だが..
昨年のデータも検討してみたが、1,2,3月共に最高気温が+10度程度に上がる暖かい日というのは充分にあり得るという前提に立つと、一冬保たせるにはだいぶ標高の高い場所に行かないとダメっぽい。ということは、時間を掛けて大きなものを構築するよりは小さなものを短時間で構築してその夜を泊まって帰ってくるのが良いだろう。帰りは...気温の急上昇で崩落の危険性も排除できないから、自ら破壊するか。滞在型を作って残置する夢は水上エリアでは山の上でやることを考えるべきか。

というわけで、イグルー製造器をもう一セット発注した。2組で並行して小型を二基作る。連結もしてみたいな。
など、まだやる!!
世界のigloo野郎が集うForumにも入ったし、もすこし理解を深める。キレイに速く作れるようになりたい。越冬性ももう少し検証したい。弱点が分かったから補強のことも考えたい。
あの陽を通したブルーの下で過ごすのは何とも気持ち良いからね!

忘れはしないぜ、igloo2号!
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今はラッセル不要で歩きやすいそうだ。風間氏も装備を充実させてお待ちの模様。一緒に行けば初体験の人でも楽しめるだろう...新米ガイドであるが、よろしく頼みます。
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条件が良ければ一ノ倉沢が見えるところまで行けるかもしれない

冬期の気温を追って勉強になった。冷えているだけじゃない。刻々と状況が変化している。これじゃ急斜面で雪崩も起こる訳だし、締めた雪のプラスチックな性質(可塑性)というか、流動性にも目を見張った。


もしも惜しみない哀悼があるとすればクリックで... Click! Thank you!!


昨夜は弔いのつもりで飲みましたとも...
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by ulgoods | 2010-01-24 11:28 | 宿泊系 | Comments(6)
Commented by Scott at 2010-01-24 14:58 x
どうも、はじめてコメントします。輪行バッグでおせわになってます山口です。
イグルー楽しそうでいいですねー、あこがれます。
NEWTONの氷と雪の特集号とても勉強になるのでまだでしたら是非オススメです。
Newton (ニュートン) 2009年 03月号
では!
Commented by ulgoods at 2010-01-24 15:37
Scottさん、ども!
お手製の輪行バッグ、使う機会をうかがっておりますが、先週はこんな感じで雪で遊んでおりました。
情報ありがとうございます。雪、Newtonは図書館で読めるかな。中谷宇吉郎博士の本も読んでみます。

ではでは、今後ともよろしくお願いします。
Commented by joxter at 2010-01-29 00:48 x
なんたる終幕…聞くも無念、です。
でも、ただで終わらないのがULG流_という予感ですね。(笑

なんせ老頭児なので猫の手程で宜しければ、お供募集の際は末席にでもお加えくだされませ。
Commented by さんぽ at 2010-01-31 21:56 x
先週のハイクで立ち寄れる事を楽しみにしていましたが、その前に崩壊の話を聞きビックリ。
現地で諸事情により風間氏に会えた事もあり、どうしても行きたくなり、ちょっと飛ばして行って
確認してきました。

中で30分程でも楽しめればと自作バーナーも持っていたのですが、残念でした。
春並みに上がった気温+あそこは日中は陽が当たり続けるので保たなかったのかもしれませんね。

次回作を楽しみにしております。
時間が合えばお手伝いなども、ぜひ!



Commented by ulgoods at 2010-02-01 21:03
joxter さん、
igloo boxの弐号が着いたのでやりますよーーー。
その前に沿線でご一献よろしく...
Commented by ulgoods at 2010-02-01 21:06
さんぽさん、わざわざ見に行ってもらったのにすいません。
あの天気じゃ仕方ないけど、平地での長期滞在型は難しいかもしれません。
box弐号が来ましたので、二組6名?位で行きたいと思っています。ショベラー立候補の先約がありまして、順にお声掛けしますので、少しお待ち下さい。
よろしくお願いします。
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