谷川イグルー構築 最終

ガイド風間氏から行く朝の写真が届いた。写真を撮る余裕があるとはさすが。先を行くのはJOTARO氏
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こちらは私のラッセル風景。後ろの2人は途中で追いついたお父さんと屈強なお兄さん。向こうに小屋が見える。この辺、雪は浅い。
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そー言えば、靴は10年も前に行った先の須玉の雑貨屋で急遽買ったボア付きの安い編み上げ長靴を履いていた。底のスパイクを立てた畳んだりもできるし、背が高かく脱着が容易で暖かさも充分だった。かんじき用だろうかカカトに段が出ているのでスノーシューとの相性も良い。

で、就寝中の話しから
顔に舞い落ちる粉雪の冷たさに時々睡眠を妨げられたが、ペロっと口ひげに付いた水を舐めて水分補給しつつ生きていることを確認してから睡眠継続に努めた。たしかナミブ砂漠のゴミ虫がこんな感じで水分を得ていたんだっけ...なんて朦朧と思い出す。たぶん足元とかも埋もれているんじゃないか?と思いつつも、見ることすら面倒だし、幸い暖かさに関しては問題ないので寝続けた。穴蔵生活もテントと違って換気とか結露とかの心配が不要なのでかえって気が楽である。熊の冬眠の気分を味わっていた。
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この夜の寝姿は、まず、Goreの類の膜シェル物は全て脱いでスタッフザックに詰めて転がし(枕にすれば良かった)、ダウンのインナーパンツとダウンジャケット、化繊綿のテントシューズ、帽子、フリース手袋を着用している。暖気を逃がさないためには寝袋の首の回りのチューブを苦しくなる寸前までキツク締めること。これが緩いと台無しだ。顔自体はいつも外気に晒されているから比較的強いと思う。呼気で寝袋の口元が濡れるので、タオルなど仕込んでおく。なことを仕込んでおいたので朝までよく寝た。
POEのAeroGelマットは、ありがたいことに冷たくなかった。というか充分。AeroGel部分が梁になってマットが潰れすぎるのを防ぐことで厚みを維持しているのだと思う。
翌朝は8時行動開始を申し合わせており、各自の朝のスタイルを逆算して起きていただく。別々に寝ているので人に煩わされずに済むのがありがたい。合宿じゃないしね。私は6時くらいにアラームで起き、二度寝を楽しみ、7時過ぎから寝たままで餡パンを放り込み、珈琲を飲むのに仕方がないから寝袋から身を抜いた。直ぐに上下ともGoreのシェルを羽織って羽毛服を濡らさないようする。Jetboilに雪を詰めてどんどんお湯を作って多めのコーヒーをすすりながら穴蔵から首を出した。曇天、風雪..昨日より悪い。また積もったようだ。トレースが埋まりかけている。
さて、今日中に仕上げないと...
大量の湯を飲んで体も温まったので、周囲を散策した。といっても踏み跡を外れると雪に溺れるので気をつけなければなならない。LOCUS GEARのJOTAROさんは自作の極薄Cuben FiberのKhufu Shelterを持ち込んでテスト中。
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裾は雪で埋まっている。ん?換気不足で大丈夫?と思って声を掛けてみたが返事がない。ふと悪い予感が過ぎり再び呼んでみた。ら、うおぉーっと返事があった。なんだ寝てたのか。もう作業開始の時刻が近いのに..ま、仕事じゃないからいいか。しかし、自分でデザインして縫ったシェルターで過酷な夜を越えたというのは良い気分だろうな。ガイド風間さんもREIのテントでよく寝たようだ。この日の風間さんはプライベートモードで参加なので寝坊しても問題ない。私は朝の準備が済んでしまったので、みんなが来るまで寒いのでイグルーの回りをグルグル歩いて圧雪に勤めた。

パウダー雪条件でのigloo構築、初段は粉雪を投入して締め固めに苦労したが、昨日の作業で一度踏んで空気を抜いた雪を投入する方が質の良い材料を得られることが分かったので、体温キープと材料確保のために歩くのだ。
皆が朝の支度を終えてイグルー回りに集まったのは9時くらいであった。今日中に屋根の蓋をして空間を維持しないと、小屋の例からして数日内に雪に埋もれて雪の中のただの壁になり、投入した労力の全てが無駄になる。みな無言のうちに持ち場に着いた。
私と風間さんは交代で積む係を、JOTAROさんは入り口トンネルの掘削に取りかかった。積む方は、なかなかうまくいかない。箱の角度によって下段とのギャップが大きくなり上手く詰めないし、箱自体が水平に近く傾斜が付いてくるので雪を詰めた後しばらく養生して雪粒子の再結合を待たないと次に進まない感じだった。騙し騙し少しずつ、尺取り虫が進むようにそろそろと、とぐろの長さを稼いでいった。箱が内側を向くので外からの雪の投入はビルダーの胸をめがけて雪を放り込むようになる。ビルダーは胸で雪を受け箱に落とし手首のスナップを利かせながら、時には肘打ちもかませながら、イグルー作りは雪と格闘技といった様相を帯びてくる。とはいいながら、段の上に行くと少ないブロックで一周できるので急速に屋根が狭まってくるのは嬉しい。
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とかやっているうちにJOTAROさんのトンネルも掘り進んだ。もはやトンネルを造らないと中の人が外に出られない。が、このトンネル、堀り進みすぎの懸念がある...あまり掘ると入り口と反対側に取る2人分の居住スペースが無くなってしまうし、作業中は竿の設置点は崩す訳にはいかない。10ft.イグルー内の人の配置は、中央まで開削したトンネルの両側に1人ずつ、奥に2人で計4名となる。トンネル堀も楽しそうだが、中の人に竿の支点と壁の間からピットを掘って貫通させ適当なところで切り上げてもらって、グルグル歩いての材料作りに専念してもらった。
出られるようになったので昨夜の宴会場で昼飯を摂った。私は凍ったコンビニ握り飯を煮て、粉末のうどん出汁とうどんの残りも投入した雑炊ヌードルとした。下界では残飯並と言われるだろうが、コレがなんとも旨いのである。
まだ屋根がふさがっていない。この頃では箱の傾斜がきつくなって崩落も起こったりで進みが遅い。何だかんだとあと3時間で16時を迎える。とりあえず、パッキングを済ませて作業に戻った。ここからは時間との戦いになる。
飯も食って元気になって作業を再開したが、どーにも捗らない。もはや傾斜的には限界だ。箱をずらすとヒビが入って崩れてくる。ブロックが重いのだ。屋根は結構高くて背が届かないので足元は雪を盛ってある。
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もーだめか、言わずとも皆に諦めの空気が漂った。このまま蓋をしないで帰るのは悔しい。ビニールで蓋をしても雪で潰れるだろう。何とか薄くても良いから蓋をしたい。ここで、戦法を変えた。予定ではあと数段積むのだが、一気に閉じるモードに入ることにした。駄目なら諦めるほか無い。
閉じるモードでは箱をやめて内側の板だけにして手で厚みを取りながら、ブロックを巻くと言うよりは端面に雪を押しつけて、ちょうど蜂が巣を作るように少しずつ巻いていく。確か、一回目もこうやって閉じたんだっけ。問題は雪が着いてくれるかだ。この頃では雪の空気抜きも上手くできるようになり、上質の締まった雪が得られていた。少し盛って板をずらし、おおお、崩れないじゃないか!と安堵しつつまた雪を着けて、を繰り返していった。もはや竿は垂直に近い。何とかなるんじゃないかと思い始めた頃16時になった。日没まであと1時間、明るい道を帰るならリミットの刻限だ。が、惜しい..協議の結果、踏み跡があるので暗くなっても歩けるだろうから、このまま作業を続行することにした。やはり、地形を覚えたガイドがいるのは心強い。
と決まれば気張って最後の仕上げに掛る。もはや上半身を出すこともできないくらい口は狭まった。腕だけ出して手の感覚でペタペタと雪を着けていく。出した手をめがけて外から雪を放り投げてもらう。中では頭から雪をかぶるが、板に残った少しの雪を着けていくを繰り返した。不思議に水平に近いのに崩落しない。イけるのか!
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最後は竿を垂直に立て、外から雪を投げ込んで、もはや腕も出ないので外からスコップで叩いて固める。手で締めていないので感覚が分からない。板を外して崩れはしないか...心配なので、長い時間掛けて締め固めを行った。中の人も補強に余念がない。
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蓋をした途端に内部は暗い。トンネルの出口が青く光る。そ、この感じだ!海底に沈んだ浮遊感がある。やがて、そろそろよかんべ、と恐る恐る竿を緩めてみたら...おおお、崩れないぢゃないか!これにて目出度く半球を閉鎖することができた。嬉しい。皆で喜んだ。しっかりアーチが組み上がったので、今後は雪が積もって厚みを増して強くなっていくだろう。時々、風間さんに見に来てもらう。
内部を整地して寝転がったりする。蝋燭を灯せば、外からの光の透過で青みがかった壁面がオレンジに染まる。これもこれで美しい。
モデルは安らぎの座敷童と化した風間さん...入り口の青と壁面のオレンジがイイでしょ!
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外の風と音から遮断された安心空間。壁が垂直に立ち、少し堀込んだこともあって内部はかなり広い。やったなーと、しばらく喜んでいたのだが、内部は呼気の蒸気がいつまでも浮遊して濁ってきた。あ、換気口を開けないと。スコップのブレードを外したシャフトでグリグリやって天井に拳の太さで屋根を開けることで空気も流通し、たちまち空気が改善された。あまり細い穴では効果はない。拳ほどがちょうど良いのは前回のCO感知器を使った実験で学習済み。
とか遊んでいたら外はもう暗い。昨日今日の重労働の末に出来上がったシェルター、いとおしい。名残惜しいのだが帰えらねば...

とりあえず、蝋燭と風間さんのスコップを残置した。使う人は私か風間さんに連絡して欲しい。蹴りを入れるとかは勘弁してくれ。あるいは使ったら状態を知らせて欲しい。床を汚したら雪を交換してね!
風間さんの連絡先は所属する事務所ネイチャー・ナビゲーター(冬期は風間氏が留守番役)、
あるいはスタッフのブログのコメントで!
入り口の場所と換気口の位置を教えてくれると思う。彼にコマーシャルモードの案内を頼むとあれこれ安心だ。今シーズンはこのイグルーをベースとしてさらに増築予定である。
様子を見に行ったらblogに書いてもらうことになっている。

とっぷりと日が暮れてから、ヘッドライトを灯して埋まりかけたトレースを伝って土合に戻った。ナイトスノーハイキング!やろうと思ってはやらないが、それも良い経験だった。

雪は全てを埋め尽くし凍らせる。厳しい。が、ふっくら優しい面も見せ、
恐れながらも防御怠りなく近づく努力をすれば遊んでもらえる。
あ”-おもしろかった!



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谷川イグルー野郎どもの記念写真(Clickで拡大)
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by ulgoods | 2010-01-22 13:08 | 山行
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