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谷川イグルー構築 その2

さてigloo構築場所の定であるが、マニュアルに依れば斜面を崩して造成すべしとある。出入り口の設置が楽なためである。が、ここでは足の下に確実に2mの積雪がある、というか斜面に入ると積雪が胸で面倒だったので平地に作ることにした。さて、イグルのサイズを決めなくてはならない。今日中に作って泊まる予定が既に12:30になっている。小さいイグルーの方が圧倒的に少ないブロックで作れる(直径の二乗で効いてくる)のだが、ちょっとデカめの男3人が今夜泊まるつもりで作るのだから、ここは奮発して4人用、直径3mを作ることにする。大きいのを作る練習だからね、小さくまとめてもしょうがない。黙っているとそれなりに寒いので、2人にグルグルと円を描いての整地をお願いし、私は担いできた製造器を組み立てに掛った。スノーシューでは圧雪が足りない気もするが、ツボ足では果てしなく潜るだろうし...完成したイグルーが自重で沈まないかちょっと心配はあるが、不等沈下でなければ入り口を掘り直せばいいか。なんしか、もう作業に掛らねば絶望的だ。

このigloo ice boxによるイグルー作りは、基本的には中心を固定した竿の先に付いた箱に雪を詰めて円を描くようにブロックを置いくことを繰り返す。最初の数個のブロックは傾斜を付けおいて、一周したらその上に乗ってとぐろを巻いて上の段に移ってまた巻いて、巻いて巻いて半球のてっぺんに最後の1個を置いたら完成となる。って、てっぺんには置けないので途中で積み方を変えるのだが、とにかく今は土台になる一段目を丁寧に作らねばならない。しかしフワフアで良い雪。雪を投げ入れてもらって手でぺたぺた叩いて固めるのだが、容積的には4倍くらい必要だろうか。ひたすら雪を投げ入れ、叩いて固めて、枠をずらして進むを繰り返す。雪盛り係もぺたぺた係もすこし汗ばんできた頃、2人の呼吸が餅つきの感じでシンクロしてきた。
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二段目に上がるときにちょっと竿の長さを調整するのがミソらしいのだが、ここで過ちに気がついた。一段目を地面に垂直に置いたのだが、本来なら内側に10度以上の傾斜を付けることになっていた。マニュアル通りに竿を短くするとものすごい段差ができてしまう...ぐぐぐ、コレはまずい。仕方がないので、ここを一段目と考えることにして、二段目はごまかしながら積んでいった。破綻しなければよいが。ちょっと心配だが、そんな顔色を悟られないように...
とぐろを巻いて作るので下段ほど円周が長く、多くのブロックを要する。日没は17時を想定しているが、どーやら完成しないことは確実なので予め16時の段階で撤収か泊まり込みかを決めることにしてあったのだが、2周半ほど巻いたところでその刻限になってしまった。
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実は私、出来上がるものと思って屋根を持って来ていない。他の2人は泊まる用意があるらしい。実はテントを持とうと思っていたのだが...夜の宴会の食材などが嵩んでしまって、どーせ屋根は要らないしとか思い込むことにしてその分の容積と重量をPRIMUS ETA POWERストーブに振り替えてしまっていたのだ。拙い...一応、退却を提案してみたが、多数決で棄却されてしまった。何とか寝床を作らねばならない。どーするULG?
敷物用にビニールのシートがある。シートというか、昨年VBL用に使った全身がすっぽり入る巨大な袋なので、それに入って寝るか、切り開いてシートにして屋根にするか。寝袋は-15度実績のあるMnt.Flyダウン900g入りを持って来ているし、低地のお陰でそんなに冷えていないので、雪にさえ埋まらなければ何とかなるだろう...と思ってザックを取りに戻ったが、ん?目に留ったのは埋もれた小屋。ここの雪を掘って軒先に寝れば屋根の分だけ楽かということに気がついた。他の2人がテントを張り始めた時、私はスコップを振るって雪を掘り始めた。少し掘ってというか、踏みつぶして小屋の軒先に頭を入れて中を覗いてみたが、幸い奥の方は大棟の下に空間が空いていた。
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屋根の雪が崩れたら怖いのだが、幸い屋根の雪も固いし、屋根裏は切妻の端面が空いており、いざとなれば梁の間をすり抜けて脱出できそうな気配である。ここで寝るのが良さそうだな。決心を決めて、万が一の屋根雪の崩落に備えて奥の方を寝られる分だけ棚状に掘り出した。ついでなので、庇の下も堀って宴会場とした。なにしろガイドの風間さんがフルスペックの角スコを担いできてくれたので、雪相手に振るうには無敵の掘削能力を発揮する。こちらの作業は捗って、2人がテントを張っている間に寝袋を広げて宴会場にストーブを据え、首尾良く雪を溶かして湯を沸かし始めることができた。

今回の火器はPRIMUS ETA POWERのガス版に、近所のホームセンターで買ったcolemanのプロパン入りregularガス500を二缶持って来た。ガス消費が140g/hだから900gの燃料だと、液出しで低燃費だとしても5時間は燃やし続けられる算段だ。このストーブ、というか、Jetboil的な熱交換機を備えた専用鍋が付いたクッキングシステム、だいぶ前に海外で安かったので買っておいたのだが、グループ向けの重さなので今まで使わずに塩漬けだったのだが、風除けも付いて気化管も付いて液出しできるから冬場には良いだろうと連れてきた。国内版とは異なり、海外版は鍋の蓋がフライパンになる。その辺の鍋の性格に合せて考えた今夜の献立が、おでん。紀文のネタパックを4人前とウインナーソーセージも入れて煮る。次はその残り汁を当てにして餅入りうどん。フライパンではベーコンを焼いて、最後はコンビーフを焦し焼きしながら酒の肴にする予定だ。酒は日本酒を2L担いだので(JOTAROさんに担いでもらった)、別途熱燗用にJETBOILを持って来ている。回りの雪をどんどん投入してお湯を作り、おでんを煮込んで2人の野営準備の完成を待った。が、お腹も減ったし...大きい声で、おーいごはんだよー、って(笑)お袋さんの気分である。テント内じゃないので盛大に湯気を上げて煮込んで待った。
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ETA POWERの風除けは確かに機能している。液出しも問題ない。担いできて正解だな。
やがて3人が揃ったので、JETBOILで熱燗を作って乾杯した。きゅーっと胃の腑に染みこむ堪らない。おでん!ハフハフ言わして、鵜が魚を飲み込むように喰らい、口から盛大な蒸気を吐く。外は当然真っ暗、頭上は風が吹きピットに雪も舞うのだが、熱燗おでん、この上なく幸せだ。おでんは直ぐに売り切れたので、残ったつゆに雪を足して沸かし直し、粉の出汁も入れてうどん玉を茹でて、薄切りの餅を投入して煮た。溶けた餅がうどんに絡んで、これも堪りませんな。うどんは4玉に餅は一袋もあるので、心ゆくまで炭水化物を摂取していただく趣向だ。その間もお袋さん役は熱燗を作っては飲ませ、湯の加減を調整し、消えた蝋燭を点け直してと忙しい。うどんの後は風防を外してフライパンモードに切り替えて厚切りベーコンをジュウジュウ焼いた。タンパク質も取らないとね。この頃には日本酒2Lの紙パックも空く目処が付いてきた。ジェットボイルで直接沸かすので、アルコールが飛んで屠蘇みたいな熱燗を飲むのであまり酔わない。翌日に残っても重いだけなのでどんどん食べて飲んでいただく。やっと腹も満たされ、酒も回ってきたところで、コンビーフ缶を開けてフライパンの上を転がし、焼けたところから箸で突っついて食った。体温生成用に油も摂らないとね。コンビーフ焼きの途中で2Lの酒が空いたのでガイドの風間さんが担いできた缶入りの谷川岳という酒をジェットボイルに空けて燗をして飲んだ。このメニュー、おでん、ベーコン、コンビーフはタンパク質と油分で筋肉の補修と睡眠時初期の体温生成用カロリー源として、うどんの炭水化物で夜通し体温維持用の燃料のつもりで食べてもらった。必要な物を腹に詰め込んでもらったし、酒もなくなって寒いので、とっとと寝ることにした。

それぞれ分かれ私は雪の棚に敷いた寝袋に入ったのだが、やはり外で風が吹くと雪が舞い込んで顔に降る。このぶんでは顔がびしょ濡れになるので、向こうを向いて顔に雪が当たらない姿勢キープで寝ることにした。
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ああ、新しいマットの具合を見るのも今回の目的だった。前回の北ヤツではダウンマットの不調で寒い夜を送ったので、今回はPacific Outdoor Equipment Peak Oyl Aero Mountain Sleeping Padの短いヤツととRidgerestのやはり短い3/4を持って来た。躯体部分は二重化で足元にはザックとなる。POEのマットは夢の断熱材、AeroGel入りで軽い割にはR-Valueが高いという売り込み文句を信用してみようと思うが、裏切られると夜が辛いのでRidgerestで補強という構成だ。広げて思ったのだが、Aerogelといっても申し訳程度にしか部分部分にしか入っていない手触り。こんなんで利くのか不安だった気持ちもある。

やれやれ、旨い飯は食ったがこんな夜を迎えるとはね。


この稿、さらに続く...


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次回予告、でけた...
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by ulgoods | 2010-01-20 23:30 | 山行
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