山と渓谷誌の2009年12月号の「こだわり山の小物インプレッション」というコーナーに出していただき、LEDランタンを多数しかも同時に触れる機会を得たのは甚だ有意義な体験であった。
というのも絶対感覚に乏しい&お店に出不精な私としては、このような機会がなければ好ましい物を選ぶためには結局全部通販で買って..という事を繰り返す事になり、いささか効率が悪い。で、今回、欲しいもの第1位に選ばせてもらったパナソニックのLEDランタンは少し惚れてしまったので撮影終了後即購入済みである。あれこれとライターさんに語り尽くしたのだが、紙面の関係もあり書ききれないのは仕方ないので補遺としてメモを残す。主に今まで持つことが多かったUCOの真鍮製キャンドルラタンとの比較になる。 ■良い点 ・軽い(後述) ・明るい(後述) ・壊れない。ホヤが割れる心配がないので、持ち運びに気を遣わなくて済むし、豆電球のように切れる心配がない。 ・防滴。雨の中でもテント位置を示すくらいには使えそう。 ・電球色LED採用で優しい光を発し、蝋燭ほどの風情はないが青みがかった白色LEDの寒々しさに比べるとほんわか和む。 ・光が均質なのがよい。 ・蝋燭と違って逆さ吊り下げができるので周辺を広く照らすことが出来る。その際、直下に影が出来ない。 特に以下の点は私の中で蝋燭を駆逐しそうな勢い ・軽さ LED 77g:これはリチウムイオン電池を入れた場合の重量。アルカリ電池では90gとなる。 キャンドル 339g:UCOブラスランタン、蜜蝋の蝋燭、組み立て笠、運搬用COCOON込み。 その差262g、きゃーーーと言うくらいLEDが軽い。リチウム電池での使用はメーカーの推奨ではないと思われるが、わたし的には冬期の使用を考えるとリチウムが使えないエレキ物は持ちたくないので、先ずはリチウムを詰めてみて壊れるならそれはそれで仕方ないと思っているが、このパナのランタンは私の所ではOKだったので先ずは第1段階クリアである。 ・明るさ 絞りとシャッター速度を固定して同距離で単行本に光を当てて文字の見え具合を撮影した。これで測定条件は同じだよね?文庫本は寺田寅彦の随筆集。 LEDはLOWで光を絞ってある。両者置いてみたが、LEDは高さがチビなのでちょと分が悪いが、明るさの差は歴然である。これまで山では何度も蝋燭の下で本を読んでいたが、まー読めるのだが、読んでいて目を悪くしそうなのに比べてLEDの明るいこと!また、LEDは逆さに吊れて直下に影が出来ないのが良い。 ・使用中の安心 キャンドルランタンを倒すと、あるいは吊っていて頭突きを喰らわせた場合どうなるか...裸火ではないから火事になるほどではないが、炎が消えるだけでなく、溶けていた蝋が火屋に飛び散り、収納時に無理に削れて火屋を押し込むので滓が出るとか、火屋の掃除は熱湯を掛けなければならないとか、憂鬱でもって心も暗くなる。が、LEDではそんなことは起こらない。転がそうが逆さにしようがまったく平気なのは当然。 バックパッカーには有名なメイベル男爵のバックパッキング教書でも、キャンドルランタンをゴム紐で吊って必要なときには手元に引き寄せるようなことが書かれていたが、かの達人にしても勢いよく手を離して蝋を飛び散らせ、自分が嫌になったことは一度や二度ではないと思われる。 ・保ちが良い ハイパワーで16時間、ローで55時間。キャンドルランタンは9時間と言われているので、ローであれば6本に相当する。ローでも蝋燭より明るいし。で、蝋燭って結構重い。UCOの9-Hour Candleで50g、6本で300g。 エレキ物と自然物を比較する際に、使用期間が長くなるとエレキ物は電池が嵩んで結局重くなる、という結果になることがあるが、リチウム単四4本で28g、電池は電気が抜けても重さが変わらないから抜け殻を持ち歩くことを考えると相当長い日数使えば逆転も起こるが...本体重量差だけでも272g(笠とCOCOON込み)-46g=226gで、この重さを電池に割り振ると4本が8セットで440時間相当になる。440時間灯す蝋燭の重量は2444gであり、勝負しようと担いで出るには絶望的な重量だ。また、太陽電池充電で持続的に使えれば更にお得。エネループはリチウムより少し重いが、4本セットで本体込み90gとして、太陽電池Power Filmの重量が110gだったから総重量200gで電池の充電性能限界1000回まで使えることになり、地の果てまで往復してもまだ大丈夫そうだ。 で、LED自体は切れる心配は、蝋燭を踏み砕いて粉々にしてしまう確率より低いような気がする。 と、良いことづくめ。 ■あまり良くない点 ・吊り下げの折り畳みフックが内蔵されているのだが、その作りが残念。安易な形状なので吊り下げていて頭がぶつかったりすると即座に外れて飛んでいく。まー、どういう物にぶら下げるかを想定しきるのは悩ましいと思うが、もう一工夫の余地がある。というか、壊れやすそうな部分なので、壊れたら吊れなくなるから、穴に紐を通して、あとはミニカラビナでドーゾとするくらいで良かったと思う。 で、面白かったのは、紙面で触った別のランタンも全く同じフックを使っていたということを発見してしまった。製造時に必要なのだろう切り欠き部分も全く同じ場所に付いている。たぶん、どこかに朝から晩までこのフックを作っている工場があって安く調達できるのだろうが、そういうところが家電屋さんだなと思ってしまった。 ・電池入れ 単四を4本入れるのだが、四本を上から見て四角形に固めて入れるのだが、普通は+-が交互にセットすると思うが、このランタンは++--とセットする。しかも、最初の+の位置が中のラベルを見ないと確認できない。電池の入れ方は配線をちょっとやればいい話でアフォーダンスさに欠ける。また暗闇でも電池交換が出来るように+位置は触って分かるくらいにして欲しい。 ■少しだけ気になる点 ・色 最近のパナに多いシャンパンゴールド。悪い色ではない。ベッタリ黄色に塗られたり色分けしてコストが嵩むよりは、なんらしか高級感が漂って、好きな人には抵抗がないだろう。私もLumix GH1のコンフォートゴールドは実際に見てみたら悪い色じゃないなーと思ってたし。見た人が、この成金趣味野郎めと舌打ちしないことを願うだけである。 ■希望 ・無段階調光機能。Low Highの所を回すと無段階で蝋燭より暗い所から眩いくらいまで。 ・BDのオービットのようなダブルフックがあれば無敵 ・電池の入れ方改善 ・そんなに長い時間保たなくても良いから電池2本でやってほしい ■その他 ランタンはパワーだけではない。狭いテントで直接光が目に入る場合、目が瞳孔を閉じるので肝心の照明対象物が真っ暗にしか見えない。 ■結局 実は最近はランタンを持つことはあまり無い。ライト系はPetzl Tikka XPとPhoton Microの組み合わせで満足しており、まともなシェルターで寝る訳でもないから明かりを灯してホノボノとというチャンスもない。でも年に一二度はキャンドルランタンを持って、時には炎に見入り物思いに耽った気分を味わったりするのだが、さて、UCOのキャンドルをパナのLEDに置き換えるべきなのか?仮にLEDが気を利かせて1/f揺らぎ回路とか内蔵されたりしても炎のダイナミズムや透明感を再現することは出来ない。燃えている炎を見て楽しむという楽しみ方もあるから。し、燃焼している訳ではないので文字通りの暖かみも炎には敵わない。光が私の中で単なるモノに成り下がってしまう懸念がある。LEDの発光現象も自然の物理だから、分かってその仕組みが石に焼き付けられたらば炎が燃える原理とどっちが高級か?問われてもどっちとも言えず、LED発光を見てもスゲーと感心する人は最近では少ないから、所有する歓びとして考えると昔ながらのどっしりとしたキャンドルの方だ。使ってきた履歴を匂わせる真鍮の鈍い光沢はプラスチックに塗ったシャンパンゴールドでは表現できない深みがある。たぶん、シャンパンゴールドは使い込むほどに塗装が剥げて、はしゃいだパーティーの後のような、少し切ない気分を誘発しそうだ。 と、思考が尻切れトンボでまた悩みが増える気もするが、適材適所で余分な物は持たないという姿勢からすると、少なくとも歩きメインの単独で行く場合はランタンは持たない。たまには山で本を読みたいときはLEDを持つ。山でシミジミと人生を考えたい夜にはキャンドルランタンを灯すか。ん!そう決めた。後で悩みたくない。 なるほど、身や心が軽いほど装備も軽くできるということだ。 持てなくなるのは少し寂しいがね.. よ び か け ら れ て ふ り か へ つ た が 落 葉 林 ...山頭火 Click!!
by ulgoods
| 2009-11-20 11:16
| エレキ系
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