雨雪の奥多摩に遊ぶ

三日目、雨なので行動中の写真は無い。

07:30 雁坂小屋
08:07 水晶山
08:28 古札山
09:22 雁峠
11:26 唐松尾山
12:27 将監峠
12:39 将監小屋
16:17 飛龍山

沿面距離 17.3km
行動時間 09:17

7時チョイ前か、お隣が出立してからBivyから体を抜き取り、撤収して歩き始めが7:30であった。小屋の客もさっき出立したらしく私で最終である。シメシメ、暫くは静かな山歩きができるというもの。小屋は旨い水が豊富に出ていたので2L程汲んだ。出がけに小屋のご主人と少し立ち話をしたが、ストーブのことは根に持っていない様子なので安心して小屋を後にすることができた。しばらくトラバース道を歩き、雁坂トンネルの真上を通り、水晶山へと続く機能分岐した先の縦走路へ出る。雨は細かな霧雨であり、背の低い笹原では風も強い。気温は3、4度台。モンベルのブリーズドライテックの雨具の上のPitZipを開け(US版には付いている)、下はTシャツで熱の収支が拮抗して汗をかかずにちょうど良かった。ミスト充満の天候だったので、荒い呼吸を続けても喉が渇くこともない。手はフリース手袋の上にeVent製のRain Mittをはめているので温かく濡れていないし、袈裟懸けにしたCuben Fiber製のサコッシュも、脇の下に位置するのが良いのだろう殆ど雨の侵入もない。また、靴は非防水だが、Goreの靴下を履いているので足は濡れていないし冷たさも感じなかった。今のところ全て順調だ。ただ眺望が利かないことを除いては...
やがて雁峠へ下りていったが、晴れていれば気持ちの良い笹原なのに勿体ないな。あの景色に結構そそられていたのだがね、仕方ないからまた来よう。で、どーも奥秩父の甲武信からこっちは、要所要所の看板がやたらとデカい。記念写真用のサービスだろうか?有名観光地の案内板でもあんなにデカくはあるまい。かといって下が開いているので風除けににもならず、私にはあまり有難味はなかった。あんなに大きくなくとも地名は分かるのにね。もう少しヒッソリして欲しいかな。
雁峠へは水晶山とか古札山とか通過するが、両者ともさほど高低差もなく一気に雁峠へ下るという感じ。水晶に古札と来れば何やらお金持ちになれそうな気もするが、うっかり見逃しそうな小ピークである。雁坂峠(かりさかとうげ)、雁峠(がんとうげ)と、どうも名前がややこしいし。
ここで向きを変え、笠取小屋へは寄らずに笠取り山方面へ歩く。笠取山直下の水源公園へ通じる道は整備されて広く、ここも天気が良ければと悔やまれる道だ。笠取山は巻き、途中から唐松尾山を通る尾根道になった。気温は下がっている感じ。時々小物の出し入れで不用意に防水手袋を脱いだせいか、古くなってフェルト状に潰れたモンベルのフリース手袋は冷たい水を吸ってしまって指先が痛くなった。辛いのでPossumDownの手袋に交換し、指先をマッサージして血行を戻した。緩い防水手袋のインナーとしては厚みのあるウールが良いようだ。この手袋は濡らさぬように気をつけなければならない。
唐松尾山からは高度を下げて牛王院平へ出た。緩コンター好きとしては堪らない等高線の間隔、一度来てみたかった場所だ。武田の時代には金の採掘もされたというが、今は背の低い笹に埋もれている。さて、喉が渇かなかったし、将監小屋にも立ち寄りたかったので途中で水を1L程捨てたが、将監峠からのスキーのゲレンデを思わせる広大で急な刈り払いの斜面を見た時に後悔した。地図上ではさほどではない気がしたが、水を捨てた罰で風雨に身を曝しながらだいぶ下る羽目になった。こんな天気でも小屋からは煙が立ち上る。温かさげな感じは端から見てもホットする。天場には昨夜見たテントを含めて2張り張られており、寝袋で温々しているんだろうなと思いながら手を切るように冷たい水を2L程補給した。小屋の外に流れている水は豊富で清冽、旨そうだ。まだ12時、沈殿するには早すぎるので先へ進む。下がったからには登り返さなければならない。水を粗末にすると汗をかく羽目になる。下ったのと違う道で縦走路に戻った所で顔を上げたら人が居てびっくりした。そこで結構大きめの荷物のお兄さんに将監小屋へ行ったものかと尋ねられた。水があるなら寄ることはあるまいと答えたが、どーやら売店に立ち寄りたいようなことを言っていた。将監小屋に売店はあるのだろうか?分からないけど期待薄と思うと感想を伝えた。何か要る物があるのかと尋ねたが特に無いと言うし、よく分からない人だった。冷たい雨に打たれて人恋しくなったか?ま、こんな天気でも歩いている人が居たのは私も少し元気づけられた。ここからは飛竜山目指して歩を早めた。というのも夜間の氷点下が予想されたので充分に明るい時間帯にキャンプの準備を済ませたかったから。張る場所は見当を付けてある。とにかく急がねば。
16:17に予定地に到着。まだ歩けるがこの先は痩せた道で張れそうな場所の記憶がなかったので、ここまでとした。17.3kmか、まずまずの稼ぎである。と座って湯を沸かして一休みしたときに、またもや尾根を登り切って来た青年に会った。どーも道を間違っちゃって..と言う。どこで間違ったか分からないが、降りればよいものをここまで登って来た様子。で、どーするかね?と尋ねたら、こーなったら三条の湯へ行くと言う。時間的には日没を越すだろうが、日のあるうちに三岩の分岐まで行けば何とかなるだろう。ま、ザックはデカかったから色々入っているだろうし、最悪ここに人が居ることは分かっているから少しは安心だろう。しかし、道を間違うとは..サオラ峠で三条の湯へ行く道と間違ってそれでも登って来たのだろうか?私も万年初心者だが、私も心配になるくらいの元気者が多い。
湯を飲んで体を温め防寒着を着てBivyの設営に移った。ああ、冷えてガスライターは役に立たなかったので、香港モノの小さなオイルライターと小さく切ったTinder Quickで固形燃料に着火した。持ってて良かったという感じ。また、雨具は撥水剤漬けの高温乾燥後だったので良く水を弾いて面白かった。
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幸い、その場所は真っ平らなのでシワ無くきれいに張ることができたが、少し湿っぽいのが気になっていた。これが後の敗因か?その後、やはり袋のαドライカレーを食い、今夜の雪に備えて防寒ズボンも穿いてBivy内に横になった。この時、ドロ靴を入れる袋がなかったので靴を外に出して置いたのだが、翌朝はやはり凍り付いて紐を緩めるのに固形燃料で炙る羽目になる。ビニール袋を余分に持って靴は枕にするんだった。
17時を過ぎ、日も落ち雨も強くなり時々突風も吹いて天気が荒れてきたが、頭骨入りのLightsabre Bivyは狭い空間を3本のポールで張っているので突風が吹いてもミシリともしない。また、ペグが良く効いたので思いっきり張力を掛けて張った胴体部分も風で拉げることもなく、居住空間は完全に確保された。これからすべき事、どんどん体温を生成して湿ったダウンQuiltをふっくらさせなければならないが、どーも熱が袋に回らない様子だ。背中が冷たい。やはり冷えて湿った場所にRidgeRestマットだけでは地面に熱が奪われて上まで熱が回らない。せめてProLite4くらいにするんだったな。背中が冷たいので半身になって接地面積を減らしたが、微妙に体温生成が追いつかないらしく、定期的に体が震えた。
ふとBivyの側面がピカリと光った。ヘッドライトの電源でも入ったかと確かめようとしたとき、ゴロゴロおいでなすった。まさか雷まで、しかも側面で鳴るとは..前線でも通過するのか外は大騒ぎである。彼らの饗宴を覗いて見る気にもならなかったが、やがてカサカサと乾いた音が耳に入り、どうやら雨は雪に変わった模様。もーこうなったら朝まで体温が保つことを頼んでじっとしている他はない。しかし、寒くて寝られないのは困ったモノだ。同じ方向では接地面が冷えるので頻繁に寝返る。朝までウトウトしながらも寝た記憶がない。かと言って時間が退屈だったこともなく、半寝半覚醒状態で時間だけが過ぎていく感覚を味わった。少し悟りの境地に近づいたかしら?
とかしているうちに外に明るさが認められた。風は既に収まっている。ジッパーの隙間から覗いてみたら向こうの空が赤黒い。それから安心して少し寝たのだろう、次に外を見たときは日も充分に昇り、やはり周囲は一面真っ白であった。Bivy内温度は零度、風雨の吹き込みを避けるためジッパーを閉め気味にしていたせいで結露が凍っていた。中で暴れてBivyの雪を払いのけ、ジッパーを開けて上半身を起こした。やれやれ、ホントに降りやがった、雪だよ...先ずは半身を起こした状態で湯を飲まねば、あらら、外に置いたペットボトルはかなり内部まで凍っているじゃないか。ペットボトルにパンチを3,4発見舞って氷を砕き液体の水を得た。ま、Bivy内にはセイシェルの水を500cc程度Keepしていたのだが、これは末期の水のつもりで滅多に手を付けないことにしている。Bivyを開けたせいか、温度計は外気温のマイナス2.5度を指しており、日が昇ってこれだから昨夜はもっと冷えたのだろう、靴はガチガチに凍り付き、履こうにも紐が緩まない。
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参ったなぁ。仕方ないので固形燃料で鍋を空焚きし、その熱気で上の数段だけ紐を溶かしてGore靴下の足を押し込んだ。Gore靴下の中は昨夜厚手のPossumDownの靴下に履き替えていたお陰で氷の靴に足を通しても冷たさを感じなかったのは幸い。その他は昨日雨で濡れたから、Bivyに入れなかったあらゆるものが凍り付いていた。
最後の餡パンを食って、トレールミックスもボリボリ食って、たくさんお湯を飲んでやっと体温が戻った気がした。人心地付くまでは寒かったのでQuiltを身に巻き付けた。たぶん見た目はアレだろうが誰が居る訳でもなし、たっぷりのダウンが入っているのだ、別途ダウンジャケットを持つような贅沢は出来ないし。

今日も先が長い、あまりゆっくりもしていられない。寒いの嫌ならとにかく動くことだ。7:30撤収完了し四日目を歩き始めた。今日は雲取を越えて、できるなら石尾根経由で奥多摩駅まで歩きたい。飛竜から雲取は昨年に逆回りで村上さんと歩いた道だ。昨年は温かくて乾いていたのだが...でも足跡のない雪道を歩くのはガキの頃から好きなことの一つだ。少し嬉しい。
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08:44、三岩の三条の湯への分岐で四角いフットプリントがあった。おそらく昨日のお兄さんだろう。ここで無事に過ごしたかよかった。でもここも吹き曝しだから難儀したろうな。足跡からすると三条の湯に降りずに雲取へ向かったらしい。
雪は1,2cmくらい積もったようだが、地面はまだ凍えていないので日の当たる南面に付けられた道は一部雪も溶けかかり、不安無く歩くことが出来た。にしても昨日の夜が嘘のように素晴らしい天気だ。水蒸気が全て落ちたせいか、展望のある場所からは富士山はもちろん、海も見え、おそらくあれは相模湾、また東の方のグルリの海岸線は東京湾だろう、であれば富津岬まで見えたことになる。おそらく駿河湾で湧いた呑気なマッシュルームのような雲が順に風に流され次第に成長している様子も見て取れた。
09:43狼平通過。吹き曝しで一面雪であるが、小動物の足跡が付いているのがほほえましい。みんな夕べは大変だったな。
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さて、凍った靴であるが未だ溶ける様子はないし、靴には雪が付着しており、しかも中敷きなしであるが、Gore靴下とPossumDown靴下のお陰で全く冷たさは感じない。
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よく考えればGoreの皮登山靴とてさほど保温性がある訳でなく(ホントに寒いときは革ジャンじゃなくてダウンを着るだろ)、保温は専ら靴下に頼る訳だから、ズックにゴア靴下+保温靴下でも遜色がある訳でも無かろう。むしろ、Goreブーティーが破れ掛った靴よりはマシだと思う。それと、安いゴア靴などは足裏部分にはゴア膜が無く、しかも側面とは一体ではなく縫い付けられているので、どこかしらから水が回ってきて靴下が湿って冷たい、あるいは雨なら時間と共に濡れは免れないが、この仕組みでは足裏もゴアであり、全く濡れないので余計に有利かもしれない。靴が濡れないように外側に近い場所で防御するのよりは、本当に守るべき近傍で完全に防御する方が簡単なのかもと、つま先を見ながら考えた。また、自転車で育成した足の筋肉のお陰か、ボリボリ食ったアミノ酸のお陰か、足の筋肉が痛くなく通常戦力で四日目を歩けていることは嬉しかった。
10:23 三条だるみで大休止。お約束だから富士山の写真も撮る。
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11:27 雲取山。既に山頂には大勢の人が休んでおり、静かな場所もないのでそのまま下りに掛った。予定では石尾根から奥多摩駅に下ろうと思っていたが、寝坊をしたせいで時間が怪しい。日没に掛る危険があった。食料もまだあるし標高も低いから心配はないが、明日の午前の仕事に穴を開けてまで石尾根を歩く気は無いからそのまま鴨沢に降りることにした。そうと決めればサッサと降りる。結局、2.5時間で鴨沢まで降り、5分差でバスに間に合い、奥多摩のそば屋で一杯やって岩魚の燻製も食って天ぷらも食って田楽も食ってホリデー快速に乗って帰途についた。
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酒は澤ノ井の一番汲みというのが季節限定で出ていたので720ml瓶を一本買ったが、飲みきれずにザックに挿してある。

結局山ではチタンフラスコに詰めた酒は飲まなかったので運良く座れた電車の中でフラスコから直接飲み、まだ凍っているペットボトルの水をゴクゴク飲んでいたら、隣のおじさんに声をかけられた。その水は凍らせて持って来たんで?と言うので、昨夜のいきさつを話して応えたが、それにしても良い匂いの酒ですなと...おお、お判りで!せっかく担いでくるので今回は近所のスーパーで一番お高いニッカの竹鶴12年を仕込んであったのだ。とは言え、口を付けて飲んでしまったのでドーゾとも言いにくく、先ほどの余った一番汲みをセイシェルのカップに注いで味見して頂いた。一番汲みもアルコール度数は19%でけっこう旨い。期せずして山のお話など伺い、結局三杯ほど献上させてもらったが、最後におじさん一言、そっちの酒も...わはは、気になさらない方のようなので、チタンフラスコから酒を注いで飲んで頂いたのは言うまでもない。いや愉快愉快。山へ持っていく酒は奮発するのが正解だ。


長々と書き散らしました。読んでくれてありがとう。
何か情報として残ると幸い&こちらもね→


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by ulgoods | 2009-11-16 02:33 | 山行
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