炎の巨匠、あるいはサイクロンの魔術師とも異名を取るイグノーベル賞クラスのアルコールストーブ研究者であるJSB師によって紹介され、あっという間に世界的な注目を集めるまでになった夢の素材カーボンフェルト、私の所にもJSB師によって送り届けられ、無言で何か作れと催促されていたのだが、いきなりではおつむりの回転も悪くて世界初をひねり出す事ができず、誰かの真似では残念なので天の啓示があるまで放置されることになっていた。のだが、最近、複数箇所でカーボンフェルトを利用したチビストーブを見かけており、お山に行かれぬ三連休の公園で空き缶箱にその缶を見つけたので調達し、まずは模倣して作ってみることにした。火力具合とか確認しておかないとね...
素材の広口リシール缶は大和製罐のページに紹介が出ているが2008年国際スチールパッケージングアワード受賞品とのこと、今までの広口アルミ缶より更に広い飲み口を持った、本体と口の径がさほど変わらない面白い缶である。この缶の丈を詰めてチビとし、内部に巻いたカーボンフェルトを入れて芯としてアルコールを燃焼させるストーブを作る。 構造と工作は至極簡単、加圧も気化促進の加熱機構も必要なく、超難燃性で液体をよく吸うカーボンフェルトに吸い込まれたアルコールが即座に気化して燃焼するだけ、といっては身も蓋もないが、この缶は身も蓋もしっかりしており、蓋をすることで消火が可能&燃料を無駄にしないという従来の空き缶ストーブの弱点を克服する可能性がある。 書いているより金鋏を握って作ってしまった方が速い。 スチール缶なので少し固いが...適当に缶の口部分と底を残して切り分け、ぎゅっと押し込んで丈の詰まったチビ缶を仕立てる。のだが、押し込むのに少し技が要る。私は中に入る方の口をラジオペンチで摘んで捻り口径を狭めてから押し込んでいる。押し込まれる方は一度バーナーで赤熱させて焼き鈍しをして柔らかくしている。押し込むのもスチール缶では力が要るので、ネジ式クランプで挟んで少しずつ、傾かないように調整しながら押し込んだ。ま、この辺はいろいろ流儀があるだろうが、ともかく手を切らぬよう気をつけることだ。 今回は2種類、口側の筒が底側の筒の外側に来る物と内側に来る物を作製した。外側に来る物は見た目がきれいな利点があるが、(底部が絞られたビール缶の場合は)底から立ち上がる筒が上から被せる筒の絞った肩まで達していないと容易に潰れが進行するから底側の筒を長い距離押し込まなければならず、元々は同じ径の筒を無理矢理押し込むのだから途中で筒部分にシワが入って水密性が得られない場合が多く、隙間があると加圧式の場合は下向きに炎を吹くこともある。一方、底の筒を外に出した場合は押し込む長さは任意に選べるが、液体を入れるお皿としては寸足らずなので余程水密性良く上下の筒を密着させないと漏れる。 今回の作製では、口側の筒を外にした場合は、やはり底側の筒に締められて、内部に屈曲したシワができてしまった(今回は底が絞られていないので、そこまで入れる必要は無かったかも..)。で、1cm程度の押し込みなら大丈夫そうと思ったので、今度は底の筒を短めにして外に出したら屈曲無く押し込むことができた。熱して熱いうちにやったので、冷えてからは密着性も良いだろう。念のため、アルミテープを巻いておいた。大方の燃料はカーボンフェルトに吸われるだろうから、皿は背が低くても良いと思った。 内部に巻いたカーボンフェルトを入れて完成だ。30分も掛らずに作れた。 燃焼テストだが、先ずは単体テストを行った。 なかなかよく燃える。カーボン繊維が赤熱しているが、燃えるということはない。 息を吹きかけてみたが、筒の中に入った炎で内部のフェルトに着火するので、吹き消されることはなさそう。 着火性は素晴らしい、というかボワッと音を立てて着火するので少し怖いくらい。予熱が不要なので燃料を無駄に使うことがないのは嬉しい。 次に湯沸かしテストに移った。ストーブの高さはTrangiaと同じにしたので、ミニトラの五徳が使える筈。点火してすぐに鍋を載せてしばらく待ったが、どーも湯の沸きが悪い。今回は水400ccを沸かそうとしている。昔作ったアルコールストーブの記録を見返すと6分台で完全沸騰まで持って行くのだが、今回のカーボンフェルトでは16分経っても完全沸騰とはならなかった...あれれ、と思いながら炎をよく見たが、トランギアと同じ高さにしたのだが、カーボンフェルトを引き出しているので鍋底との距離が詰まっている。あと5~10mmくらい距離があるとイイ感じだ。と、やはりアルコールの蒸発量が少く、慎ましく燃えているようだ。カーボンフェルトをナルト状にしてやれば増えるかな?あまりゆっくり沸いても困るので何とかしたい。 最後に蓋で消火してみた。蓋の内部にはプラスチックのパッキングが付いているが、溶けずに消火でき、蓋を閉めると今のところ液漏れも起こさないようだが..あれ、ひっくり返して置いていたのだが、手で触ると微妙に湿り気を感じるな。蒸気で漏れているかな?蓋か、あるいは接合部か?接合部であれば耐熱性のエポキシ接着剤で閉じてしまう技が使えるので余り心配ないが、蓋だと辛いな。シリコンのパッキングとかいれないと...また、蓋自体の再利用に耐久性があるかは暫く使わないと分からない。 重量 カーボンフェルトちび:22g トランギア:88g 火力UPと水密性向上ができれば..火力調整の余地もあり、いろいろと面白そうだ。 今回はちょっと作りを間違えたっぽい。底の皿部分の背を低くして内側に入れて、内面からパテや接着剤で継ぎ目を塞ぐ作りにすれば、底の皿はリムがあるから圧縮に強く、外側は引っぱられるから屈曲シワができずに水密性が高く作れたかもしれない。ビール缶と違って尻がすぼんでいないから、外側を底まで被せれば潰れは進行しないな。ま、今回は燃焼テストと言うことで..もう1個空き缶を調達しないと。 燃料のアルコールだが、飲料以外に暫く買っていないうちに薬品瓶の形から洗剤のような形に入れ物が変わったようだ。燃料もエタノールが25%も入ってるって!エタノールの方が火力も強いし不燃ガスも悪くないと聞いているので嬉しい変化だ。 JSB師からもらったカーボンフェルトを使わなきゃと思って公園を歩いていたら、思いが通じたのか、偶然にもツェルトを試しに来ていたJSB師に声を掛けられてしまった。うひょ!びっくり!以前、馴染みの公園の張りやすい場所を紹介しておいたので来てみたら私が居た!ということだった。 試すツェルトはアライのシングルツェルト。私も昨年改造したりして使っていた物だが、JSB師はポールなしで張るためのガイラインの長さを調べたくてのご出陣だとのこと。 この張り方は一本の立木があれば張れて、ミニカラビナを使うのがミソらしい。 どうもシワが寄るので何度かご指導申し上げたが、この方法は自由度が高すぎて位置が容易に決まらないので設営に時間が掛るようだ。後ろを適切な高さにするには長い距離の索を伸ばす必要があるのも難点。後ろくらいは枝などで吊り上げるのが良いと思うし、稜線に力を掛けるのがシワ無く張れてわたし的には好ましい。 もちろん、あのポーズでの撮影を依頼された。 オリジナルは↓ 偶然行き会ったのだが、オリジナルと甲乙付けがたい渋い佇まいの撮影をお手伝いができたのはうれしい! オリジナルの張り方より出入りはし易そうだが、風が吹くと左右に振られると思う。 やっと連休もお仕舞い 天気が良くて、山は良かったろうな... 山にも行かれずに残念な私にはClicl でも...→
by ulgoods
| 2009-10-12 22:53
| 燃える系
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doting on ultralight gears more than mountains...
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